魔法つかいプリキュア‼︎短篇集   作:ヨザリイコイ

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遊園地で私闘を行うキュアミラクルとキュアマジカル。

本作は暴力描写等の過激な描写が多いです。閲覧の際はご注意ください。

PIXIVにも同じタイトルで投稿しております。


みらリコヤンデレシリーズ
遊園地


 月が見下ろす遊園地に2人きりでデートする。

 それだけならばロマンティックな事なんだろうけれども、私とミラクルの間にはそんな空気は漂っていない。

 

「わざわざこんなところまで連れてきて、一体何のつもり?」

 

 戦いの後で疲れていたこともあり、やや苛立ち気味にミラクルに問いかける。付き合ってほしいと言われてついてきたのに、さっきからこの子がやっていることはといえば、回りもしない赤茶けたコーヒーカップに座ってだんまりを決め込んでるだけ。

 ただ今の私の言葉が気に食わなかったらしい。

 向かい合わせに座っていたミラクルがゆらりと立ち上がり、私の右隣に立つ。

 

「こんなところって……、そんな言い方ない」

 

 目の据わった氷のような顔つきで、静かに怒気を込めた低い声で話すミラクル。ただその程度の事で怯む私でもない。

 

「なんでこんな廃墟に連れてきたのよ?」

 

「『ここ』がどこだか分からない?」

 

「遊園地の跡地でしょう? それが……」

 

 どうしたのと言い終わる前に、右の頬に硬いものがぶつけられ、カップの破片共々外に吹き飛ばされる。

 

「何すんのよ!」

 

 頬を抑えて睨みつけるも、ミラクルは顔色ひとつ変えずにこちらに近づいてくる。

 

「薄情になったねぇ……。マジカル」

 

 そのまま左足を振り上げて私を踏みつけにかかるのを咄嗟に右手で受け止める。

 

「訳の分からない事」

 

 それをそのまま力任せに放り投げ、地面にミラクルを叩きつける。

 

「言わないで!」

 

 先手を取ってマウントを取り、彼女の胸倉を掴んで体を無理矢理引き起こす。普段なら絶対にやらないけど、いきなり殴り飛ばされた挙句、あんな事まで言われて何もしない程、私は人間ができていない。

 

「私のどこが薄情なのよ?!」

 

「それすら分かんないんだ……」

 

 私に怒鳴りつけられても全く堪える気配が無い。それどころか口元に笑みすら浮かべている。

 

「分かんないならさぁ……、もういいや」

 

 右手で私の左腕を無理矢理外すなり、一気に肩越しに放り投げる。受け身は取れたが、技の勢いの強さもあってすぐに起き上がれそうにない。

 その隙を突かれて両脇に背後から手を差し込まれ、羽交締めにされて振り回される。

 

 勢いがついたところで投げ飛ばされ、近くにあったメリーゴーランドの馬車に激突する。

 残骸の中から身を起こす間もなく、追撃の飛び蹴りがお腹にめり込む。

 

「ぐぇっ!」

 

「もう2度と忘れられないようにしてあげる。そうだなぁ……」

 

 私を踏みつける足の力が強くなる。

 

「ここを2人の最期の場所にしようか……。それならマジカルも覚えていられるよね?」

 

 普段なら絶対に言わないような寒気のする言葉のおまけ付きで。

 

 

 

 

「悪いけど……」

 

 お腹にめり込んだ右脚を右腕で振り払い、ミラクルの体勢を崩す。

 続けて時計回りに回って背中を見せたところに、右肩を突き出してショルダータックルを仕掛けて地面に押し倒す。

 

「心中ならお断りよ」

 

 更に頭を抱え上げて右の膝に乗せ、右足を振り上げて飛び上がる。

 そして勢いよく右足を振り下ろして着地し、その衝撃でこの子の頭を揺さぶる。

 

「しばらく寝てなさい」

 

 何も答えずに仰向けに地面に倒れるミラクル。これで終わったかと思うもそうは問屋が卸さなかった。

 

「痛いよ……」

 

 ダメージをものともせず、ミラクルは立ち上がってくる。一撃で沈められる技を使ったはずなのに嘘でしょ。

 

「マジカルには、酷いことしたくなかったんだけど……」

 

 こちらが動揺している隙を突いて、ミラクルは右足でハイキックを叩き込んでくる。

 それを慌てて防ぐと、前に踏み込んで左足でミドルキックを仕掛け、さらにそれを防ぐと追撃の後ろ回し蹴りで私の胸許を蹴り飛ばす。

 

「頭が冷凍みかんみたいだもの。仕方ないよね」

 

「誰が……」

 

 右肘を打ち込んできたところを掴み、右足でこの子の右膝の裏を外から掬い上げて転ばせる。

 

「カチンコチンよ!!」

 

 これ以上の追撃をかけられないように覆い被さろうとすると、力任せに押しのけられて逆に馬乗りにされる。

 

「固いから『ここ』がどこかも忘れたんでしょ……。だから」

 

 顔を鷲掴みにされて後頭部を地面に叩き付けられる。

 

「解してあげる」

 

 

 

 

「余計な……お世話ッ!」

 

 3発打ち付けられたところで、全力で身体を起こしてミラクルを弾き飛ばし、真上に飛んでジェットコースターの作業用の通路に逃げ込む。ふらつく頭でなんとかなるような相手じゃないから、ここは逃げの一手しかない。

 それに考えたい事があった。

 

「なんでこんな事を……」

 

 いきなり心中を迫るような子じゃないのは、長い付き合いだから重々承知している。つまり何かがミラクルをこんな行動に駆り立てた。

 

「敵に何かされた……?」

 

 いや、それなら何もかも終わった今に仕掛けが動くなんて考えにくい。そんな事をする意味もないからだ。

 

「頭が……」

 

 散々揺さぶられて叩き付けられたのもあって、頭が揺れて考えがまとまらない。

 このままだとまずいのに足ももつれる。

 

「ここじゃ、遊べないよ?」

 

 階段の上からミラクルの声と共に足音が近づいてくる。

 

『ここ』か……。この遊園地に何か意味があったのかしら……。

 呆けた頭じゃ、その意味も分からなかった。解すどころか潰されている。

 

 

 

 

 目を覚ますとジェットコースターのレールの上に寝かされていた。

 別にそこにジェットコースターが走ってくるとかそんな事はない。変わったことと言えば、ミラクルが膝枕をしてくれたことだけ。

 

「さっきはごめんね」

 

 コーヒーカップに乗った時とは違う情欲をそそられる艶やかな目で見下ろされるけれども、ちっとも食指が動かない。

 

「あんなところじゃ、マジカルも分かんなかったよね」

 

「何がよ……」

 

「『ここ』がどこだか」

 

 また『ここ』の話題が出た。ジェットコースターに何かあるのだろうか。

 みらいと一緒に行った遊園地は、みらいのご家族に連れて行ってもらったものも含めれば、両手で数えきれないほどある。ジェットコースターにもいつも乗った。

 

「みらい、ここのジェットコースターが好きだったの?」

 

 もしかしたらと思って聞いてみたのだが、これがいけなかった。

 

「何言ってるの?」

 

 低い声でため息混じりに返される。見当違いの答えを出した私にあからさまに失望している事がわかる。

 ただそれだけならともかく死刑執行のスイッチまで入ってしまった。

 

「仕方ないなぁ。それじゃあ……」

 

 私の頭と背中を掴み、ミラクルは膝枕の体勢からすっと立ち上がる。

 

「これなら……分かる?!」

 

 レールの上から海に面した方へと投げ飛ばされ、咄嗟に箒を呼び出してそれに掴まる。足場も何もないから危ない所だった。

 

「そうそう、それで良いの、それで……、良いの……」

 

 レールに腰掛けて満足そうに手を叩くミラクル。

 

「ミラクル……」

 

 大事だったのは箒に乗ることだったらしい。

 でも遊園地に箒で来たことなんてない筈、来たことなんて……。

 

「ちょっと待って……」

 

 箒の向きを変えてこの近くに何があるかを確かめる。

 

「あッ!」

 

 コースターの近くに船着場があり、難破船が留められている。そして少し離れた場所には、見覚えのある塔もある。

 

「そうか。ここ、あの夜の……」

 

 みらいとパジャマデートした時に来た遊園地だ。

 考えてみると2人だけで来た遊園地は、ここが初めてだった。

 

「そう、あの夜の」

 

 ミラクルも箒に乗ってやってくる。

 向かい合わせになったときに見せた顔は、とても嬉しそうだった。

 

「楽しかったよね」

 

「そうね……」

 

 ここまで来るまで思い出せなかった。なるほど、これなら私が薄情に見えるのも当たり前だ。

 

「でもさぁ、この楽しい場所に来るのも今日限りなんだ……」

 

「えっ? ああ、そうか。解体工事が」

 

 そういえば入り口にその案内があった。それにバリケードも。

 

「始まっちゃうの。壊されちゃうの。大事な思い出の場所なのに……」

 

 そこからみらいの表情が一気に暗いものへと変わる。

 

「みらい……」

 

「私のものじゃないから……、仕方ないけどさぁ……。皆んなで住んでたアパートだったり……、いつか行ったいちご園だったり……」

 

 しゃくり上げ滂沱の涙を流すみらい。

 

「大事な場所、なくなってばっか……。もうそんなの見たくない。でも思い出に引きこもるのも、今のリコがいないからヤダ……。じゃあもう……」

 

 

 

 一緒に死ぬしかないじゃない。

 

 

 

 

「これから新しい大事な場所を作るのではダメなの?」

 

 極論に走るみらいを宥める。何がこの子をこんなにしたのかが分かったのならば、説得して止める事だってできる。

 

「いつでも会えるようになったんだから……」

 

「リコ、それはそれだよ」

 

 しかしこの答えでは焦点が合っていなかった。その証拠に両手で首を掴まれる。

 

「これからのお話なんかしてないでしょ? 問題は『これまで』……」

 

「ああ……」

 

「それにさ、リコは『これまで』のことだって大事にできていないんだもの。『これから』を大事にできると思う?」

 

 そこまで言われてしまうともう何も言えない。

 現に私は忘れていたのだ。つまり大事になんてしていなかった。

 そんな奴に新しい大事な場所を作ろうだなんて言われても、信じるはずないか。

 

「分かった……。最期にしましょうか」

 

 私もみらいの首に両手を掛ける。

 デウスマストやクロノウストにやられるのは死んでも嫌だけど、この子ならば嫌じゃない。何より一緒に最期を迎えられるのだもの。

 

「じゃあ、行きましょうか」

 

「うん……。これでずっと一緒だね」

 

 お互いの目を見て、タイミングを合わせる。ズレたら台無しになるから。

 

「「いくよ」」

 

 苦しめないように一気に力を込めようとした。その時だった。

 山吹色の影が下から飛び込んできて、私たちの間に割って入った。

 

「な、なに?」

 

 戸惑う間もなく、影は上空からみらい目掛けて突進し、鳩尾目掛けて左腕で肘打ちをかまし、さらに右腕でボディーブローを叩き込んだあと、みらいの箒を足場に宙返りして踵落としを肩に叩き込み、あの子を船着場に蹴り落とした。

 

「みらい!」

 

 慌てて助けに行こうとすると、影は踵落としの反動をそのまま利用してこちらに突撃し、胴にタックルを仕掛ける。

 それを受けて体勢が崩れた所を両脚の太腿を掴まれて持ち上げられ、影の肩に首を載せられる。自由なままの両手を使って逃げようとするが、力が入らずそれもできない。

 私が何もできないまま、真下にあった遊歩道の上に影は着地する。その衝撃を受けて意識が遠のく。

 

「しばらく休むといいモフ」

 

 影、いやモフルンに促されるままに、私の意識は闇の中に落っこちていった。

 

 

 

 

「よいしょ、モフ」

 

 悪い夢を見て暴れていたみらいとリコは、今は丘の上で大人しく寝ているモフ。2人に痛い思いをさせた事は後で謝っておくモフ。

 

「後はこれを……」

 

 モフルンのお船を2人の頭の側に置いておくモフ。

 どうしたらいいかのモフルンなりのヒントモフ。これがあっているかどうかは分からないけど、もしかしたらみらいが納得してくれるかもしれないから残しておくモフ。

 

「それにしても……、モフルンのリンクルストーンがあって良かったモフ」

 

 もし無かったら、はーちゃんにとんでもないところを見せる事になっていたから本当に有難いモフ。

 

「でも……、もう使うことなんかないと良いモフ」

 

 モフルンもあんなところは2度と見たくないモフ。あんな悲しいだけの光景は、モフ。

 

 

 

 

 顔を照らす陽光に目を覚ます。

 辺りを見回すとここが遊園地ではなく、どこかの公園である事に気づいた。それと見覚えのあるボトルがあることも。

 

「これ、確か」

 

 モフルンが最近趣味で始めたボトルシップだ。

 なんでここに置いていったんだろう。

 

「リコ……」

 

 その意味を考える前に、後ろからみらいに声をかけられ、さっきまでの事があったからか思わず飛び退る。

 

「ごめん。後ろから声を掛けて……。あの……、コーヒー買ってきたんだ」

 

 そう言って腰を下ろし、私に缶コーヒーを差し出すみらい。

 目付きを確認して、いつものみらいだと確信して受け取る。

 

「ありがとう。それと……、ごめんなさい!」

 

「みらい」

 

「いくら思い出の場所がなくなるのが辛いからって、関係の無いリコの命まで奪ろうなんてどうかしてた!」

 

「ちょっと待ちなさいよ。関係ないって何よ」

 

 今の言葉は聞き捨てならない。思い出の場所になんで私が関係ないんだ。

 

「だってリコは、場所にはそんなにこだわりがないみたいだったし……」

 

 その答えに思わず引っ叩きたくなるが、ボロ雑巾にされた理由が理由だけに手を引っ込めて、そっぽを向くだけで留める。

 

「薄情で……、悪かったわね……」

 

 

 

 

「ねぇ、リコ。花を大きくする魔法は使える?」

 

「逆に小さくする魔法のこと? 何に使うのよ?」

 

「私を小さくして、このボトルに閉じ込めてくれないかな」

 

 ボトルシップを差し出して、みらいが妙なことを言い出した。

 

「この中だったらリコに酷い事なんてできないし、外で何があっても分からないから、そんな気も起きないもん」

 

「あのねぇ、それじゃ石になった人と同じでしょうが」

 

 瓶詰めにしてもみらいを現実逃避させる事にしかならないから、もう少しマシな方法を提案することにした。モフルンの船もきっとそういう意味だろうから。

 

「あの遊園地を瓶詰めにするんじゃ駄目かしら?」

 

「えっ?」

 

「それくらいの事が思いつかないほど……、薄情じゃないわよ」

 

 

 

 

 モフルンから譲ってもらったボトルの中に、遊具の一部を削って作った部品を入れて、昨日行った遊園地のジオラマを作り出す。

 とはいっても遊園地を丸々作るほどの腕はないので、星空の下で箒に二人乗りした時の光景を再現するのがやっとだった。

 

「こんな感じでどうかしら?」

 

 模型なんて作った事がないし、記憶とさっき見た光景を頼りに作ったものだから、出来栄えはお世辞にも良いとはいえない。

 

「そうそう! こんな感じ、こんな感じ!」

 

 しかしそんなものでもみらいは喜んでくれた。

 

「こんなので良いの?」

 

「こんなのなんてとんでもない! リコがちゃんと思い出してくれた事が分かるから良いの!」

 

 そっか、そっちが大事だったんだ。

 思えばその事を忘れていたせいで機嫌を損ねたんだから、見た目がそれっぽくできているなら良いのか。

 

「こういうので良かったらまた作ってあげる」

 

「ありがと……」

 

「なんて事ないわよ。『薄情』だなんて……、もう思われたくないもの」

 

 

 

 

『これまで』が大事なのは、私だって同じなんだから。

 

 

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