魔法つかいプリキュア‼︎短篇集   作:ヨザリイコイ

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大学の同級生にある物の作り方を教えてもらっていたみらい。
ようやくそれが完成して、リコにプレゼントする事になるのですが…。

「遊園地」の後日談です。リコにある「やきもち焼き」の部分が膨らんでいます。
この作品も過激な描写が多いので、閲覧の際はご注意ください。

PIXIVにも同じタイトルで投稿しております。




「すっかり遅くなっちゃった」

 

 愛にも夜遅くまで付き合わせちゃって、申し訳ないことをしてしまった。今度埋め合わせしなきゃね。

 

「季節外れなもの作っちゃったけど」

 

 リコ、喜んでくれるかな? 

 思い出ボトルをいつも作ってもらっているから、何かそのお返しになる物を贈りたくて、毎晩頑張ってたんだ。

 

「ただいま」

 

 リコの喜ぶ顔を想像して玄関のドアを開けた。

 その時だった。真っ暗な部屋から2本の手が伸びて、私を部屋の中に引っ張り込んだ。

 

「むぐっ?!」

 

「遅かったじゃない。愛さんの身体は美味しかった?」

 

 怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになって訳がわからなくなったリコの声と一緒に。

 

 

 

 

 部屋の中に出来ていた磔台に私は架けられた。

 その前に鋭く磨がれたダガーナイフを持ったリコが立っている。遊園地で私がリコを痛めつけた時のような表情を浮かべて。

 

「ねぇ、みらい。あの女の身体は美味しかった?」

 

「美味しかったってなんの……、げぶぅっ!!」

 

 しらばっくれたのだと思ったのか、リコは私のお腹に拳をめり込ませた。

 

「味わってなかったの? じゃあなんで毎晩毎晩帰りが遅かったの? なんであの子の家に通ってたの?」

 

「それは……」

 

「ねぇ、私の事なんか飽きちゃったの?」

 

 プレゼント作りの為だと言い出す前に、リコの啜り泣きが聞こえてきた。

 

「忙しいのを良いことにほったらかしにしてたし、あなたが欲しがってたもの一つ分からなかった女よ。あんな可愛い子の方が良いって言われても仕方がないことくらい、分かってるわよ」

 

「リコ……」

 

「でもそれなら……」

 

 リコがナイフを構える。この後どうなるかはもう言うまでもないだろう。

 プレゼント作りのためだって言わなきゃいけないのに、舌が回らない。いや、言ったところで多分リコは止まらない。

 プレゼントどうこう以前に、他の女の子の家に毎晩内緒で長居したのはまずかった。

 そうなるとここで私ができることは一つ。

 

 大人しくリコの手に掛かって、翡翠色の電車に飛び乗るだけだ。

 それなら2人一緒が良いんだけど、わがまま言えた立場じゃないか。 

 

 じゃあせめて刺してもらうところを見ておこう。そう考えてナイフの刃先をじっと見つめる。

 でもナイフの刃が私の肌に噛みつく事はなかった。代わりに噛みついたのは……。

 

 

「リコ!!」

 

 

 リコの顔だった。それも右目の下から左頬までを一直線に切り裂いている。当然、血が滲み出すが、リコは構わず私に抱きつき、傷を私の口元へと押し付ける。

 

 

「私の血をあげるから……、だから……、捨てないでよ……」

 

 別の血を私の顔に流しながらリコが震え声で訴える。

 

「血で足りないなら……、肉でも目でもあげる。なんだってあげる……。あの子に……、あの子に…………、こんなことできるかしら?」

 

「ごめん……」

 

「なんでみらいが謝るの……?」

 

「リコにここまでさせた……。知らない間に心も体も傷つけたから……」

 

「ここまでしなきゃいけなかったのよ……。目移りされないように……、遠くにいながらあなたのものでいるためには……、これくらいのことしなきゃダメ……。身体を全部差し出すくらいできなきゃ……」

 

 

 

 あなたの隣にいられる筈ないじゃない。

 

 

 

 

「リコ……」

 

「なに?」

 

「鎖を……、外して……」

 

「私の血なんか嫌だった?」

 

「いいから……!」

 

 強く迫って拘束を解かせると、私は素早くリコからナイフを奪い取った。

 でもリコは何にもしない。それどころかこちらを期待する眼差しで見上げている。赦しでも乞うかのように。

 

「私なんかいらなかった? それなら一思いに消してちょうだい」

 

「ごめん」

 

 残念ながらその期待には沿えない。だって刃を立てる先は……。

 

「みらい!!」

 

 私の顔だから。

 リコとは鏡写しになるように切り傷をつけ、さっきリコがやったように口元へと押し付ける。

 

「ねぇ、さっきリコが言った通りだと、私も全部あげなきゃいけないや」

 

「そんなことしなくていい! しなくていいから!!」

 

「なんで? 私も普段離れているのに、リコだけのものでいようとしてるんだから…………、できない方がおかしいんだよ」

 

 手放したくないから血でもなんでもあげる。

 考えてみたら私からこれをできなきゃ駄目だ。それくらいしないと、リコも安心できないだろうから。

 いや、安心してもらうとしたら刺さなきゃいけない場所がある。

 

「リコ」

 

「なに……?」

 

「リコ以外に、目移りすることもした事も本当にないよ」

 

 そう言い残して、お腹目掛けてナイフを振り下ろす。昔のお侍さんがお腹を切れたのは、やましい事がないからってことの二番煎じだけど、きっとここまでやったら信用してもらえる。

 

「やめて!!!」

 

 でもすんでのところでリコに腕を抑えられてしまった。

 

「なんで邪魔するの? 嘘ついてないって見せたかっただけなのに」

 

「みらいが死んでから分かったって仕方ないわよ!」

 

「リコだってさっき……」

 

「あれはもう私なんかいらないんだって思ったから……」

 

「いらないなんて言ってないでしょ」

 

「でもあんな子がいるなら……、私なんか……」

 

「リコじゃなきゃ血を飲ませない。血じゃ足りない?」

 

 リコの理屈をそのまま使うとなると……、どこか削って食べさせる? でもどこがいいかな。何かあった時に戦えないとまずいし……。

 

「いっそ私を全部リコに食べてもらおうかな」

 

「何を言ってるの……?」

 

「一つになっちゃえばずっと一緒だもの。浮気なんてできないよ」

 

「それは嫌! みらいが消えちゃう! 分かったから……! 分かったから……! 消えるのはやめて……」

 

 

 

 

 顔についた傷はお互い魔法で止血したけど、痕は残ってしまった。でも別に後悔はない。そのうちまた開けることになるかもしれないから。

 それに傷をつけておけば、変に言い寄ってくる人もいなくなるだろう。

 

「リコ」

 

「何かしら?」

 

「あの子の下に通ってた件だけどさ……」

 

 お互いに落ち着いたところで、例の件の種明かしをする。これで解決するかどうかはさておき、今なら教えたって良いだろう。

 

「これの作り方を教わってたからだったんだ」

 

 腰掛けていたベッドから降りて、鞄から取り出したのはスノードーム。ありゃ、ちょっと崩れてる。

 

「リコにボトルを作ってもらってるから、私からも何か作って贈りたかったんだ」

 

「えっ…………」

 

 ドームを見てリコが目を見開きわなわなと震え出す。

 

「じゃあみらいを勝手な思い込みで傷つけたってこと……?」

 

「傷なら私が勝手につけただけだから」

 

 でも私の言葉はリコには届いてない。その証拠に震えが大きくなっている。どうやら贈り物がかえって悪い方向に効いてしまったらしい。

 

「傷つけちゃった、壊しちゃった、壊しちゃった、壊しちゃった……」

 

「キュアップ・ラパパ!」

 

 壊れたレコードのように譫言を呟くリコの様子に、咄嗟に磔台の鎖を引き延ばして絡め付ける。

 

「あはは……。みらいにお仕置きしてもらえるんだぁ……。嬉しいわ。ねぇ、どんなことしてくれるの?」

 

「何言ってるの?」

 

 お仕置きなんてするつもりはない。

 でも傷はつける。リコの血を舐めたいからもう一度顔の傷口を斬りつける。

 

「私もリコを壊しちゃったよ? これでおあいこだね」

 

 甘い赤い蜜を舌で舐め取りながら囁く。

 

「ねぇ、リコ。別に私たち、お互いを壊しても良いと思わない? だってこうしなきゃ、私はリコから甘いものが出てくるなんて知らなかったし……」

 

 机の上に置かれたスノードームを指差して、私は言葉を続ける。

 

「リコもあれがもらえるなんて分からなかったんだもの……」

 

「あのプレゼントは、何もしなくても私にくれたんでしょ?」

 

「じゃあ」

 

 私も傷口をもう一度裂く。

 

「私の蜜の味もわからなかったという事にしておけば良いよ」

 

「なに……、それ……」

 

 リコが笑ってくれた。つられて私も笑う。

 顔中真っ赤というとんでもない絵面だけど、少しも気にならなかった。

 

 

 

 

「ねぇ、リコ」

 

「何かしら」

 

「リコは、私が他の人に取られないかが不安なんだよね」

 

「そうよ。5年前からそれが怖くてたまらないの。あの人だって私よりも可愛いし、体つきもモチモチしてそうだったし……」

 

 そういえば七夕のイベントの準備の時も、皆んなにヤキモチ妬いてたものね。ここをちゃんと考えてなかったのは失敗だった。私も『薄情』者だ。

 それなら分かりやすい手を取ってみようか。

 

 

「じゃあさ、どこかで焼き鏝を買ってきてさ、お互いお腹に押し付け合うってのはどう? 私だったらリコ専用とか細工してもらって」

 

「無茶苦茶言うわね。そこまでしなくても良いわよ」

 

「でも心配なんでしょ?」

 

「ええ、だから」

 

 ナイフを手に取ったリコは、私の右頬に浅く傷をつける。

 

「これで私のものって印にしておくわ」

 

「それなら私にもつけさせてよ」

 

 私も左頬に傷をつけさせてもらう。これで鏡合わせの十字傷の完成ってとこかな。

 

 

 

「今度はどこにつけて欲しい?」

 

「癖になったの?」

 

「私だけのリコだから可愛くしたいもん」

 

「そうねぇ、少し考えさせて。私だって私だけのみらいを可愛くしたいから」

 

「へぇ、ワクワクもんだぁ」

 

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