終盤に気分を害する可能性のある描写もあるのでご注意ください。
大好きな人に贈り物をするバレンタインデー。
初めて迎えるイベントだからあれこれ調べてみたところ、定番の贈り物はチョコレートだと分かった。チョコレートなら用意するのにそこまで手間も掛からないし、私の『愛情』も詰め込みやすい。
「あ・い・じ・ょ・う・は・い・れ」
お母様の真似をしてから、『愛情』をチョコレートの中に加える。香り付けのためのキルシュヴァッサーも忘れない。前に身体に揉み込んだら喜んでくれたしね。
「リコ、何作ってるモフ?」
甘い匂いに釣られたのか、モフルンがひょっこりと顔を出した。
「みらいに贈るチョコレートよ。もうすぐバレンタインデーでしょ?」
「そういえばそうモフ。モフルンもみんなの分のチョコレートを準備しておくモフ」
「それは楽しみね」
モフルンだとチョコチップかココアのクッキーかしら? もしくははーちゃんたちと一緒に何か作るのかも。
「14日を楽しみにしていてモフ。ところでリコ?」
「何?」
「それ、本当にチョコレートモフ?」
「ええ、そうよ? まさか違うと思ったの?」
チョコレートの香りが分からないモフルンでもないのに。
「いや、チョコレートよりもずっと甘〜い香りがするモフ」
「キルシュを入れたからじゃない?」
「ああ、さくらんぼのお酒モフ?」
「前に私の香り付けに使ったら喜んでたもの」
「なるほど、そういうことモフ。てっきり愛情で甘くなったんだと思ったモフ」
「それもあるかもね」
もっとも『愛情』がどんな味なのかは、私もよく分からない。自分のものの味なんか興味ないもの。
みらいの『愛情』なら食べてみたいのだけれども……。
「はーちゃん達のバレンタインチョコ、すんごいのがきたね」
「ええ……。チョコレートでできた私たちの彫像なんて予想だにしなかったわ」
しかもみらいには私の、私にはみらいの像を作っていたから驚いたわ。
「ガトーショコラで足りたかなぁ」
「心配いらないわよ。愛情は込めてあるし、喜んでいたもの」
「そうだよね。足りなかったらまた焼こうよ」
「そうね。さて、みらい。ハッピーバレンタイン」
さっき冷蔵庫から取り出したばかりの紫色の包みをみらいに差し出す。ガトーショコラに込めたものとは違う『愛情』がたっぷり入ったチョコレートだ。
「私からもハッピーバレンタイン」
みらいからも桜色の包みが差し出される。こういうのなんだか良いわね。
「お互い食べさせ合わない?」
「良いわね。そうしましょう」
箱から取り出したチョコレートをお互いの口に運ぶ。面白いことに大きさまで一緒。まさかに中身までは一緒じゃないでしょうけどね。
「あら、オレンジの香りじゃない」
「キュラソーを入れたんだ」
「なるほど、それで……」
口の中にこの子の髪のような明るい色の甘い香りが広がる。
イメージカラーに因んだものの方が良かったかしらと反省していると、直後にみらいが口の中に押し寄せてきた。
「あら、貴女の味がするわね」
「こっちはリコの香りと味がする……。さくらんぼと……血?」
「経血よ。生命の素を貴女に捧げるにはまだ時間がかかるから、それなら食べてもらおうと思って。貴女の血肉になれるならそれも良いじゃない」
「リコもおんなじこと考えてたんだぁ」
へぇ、この子も嬉しい事を考えてくれたのね。食べたかったものを入れてくれただなんて。
「私は美味しい?」
「ええ、とっても」
「卵だけで足りる?」
「とても足りないわ」
「だよね。その為にリキュールを使ったんだもん。リコもそうでしょ?」
「そのつもりよ。今夜も寝かせないから」
「ワクワクもんだぁ」