魔法つかいプリキュア‼︎短篇集   作:ヨザリイコイ

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人助けの帰りに屋台のおでん屋に立ち寄るはーちゃんのお話です。

PIXIVにも同じ名義で投稿しております。


おでん屋

「は〜〜」

 

 ずぶ濡れの体を乗せて箒を走らせる。自分で言うのもなんだけど、酷い有り様だ。

 魔法ガールとして火事場に人助けに行ったんだけど、運悪く放水に巻き込まれて全身ずぶ濡れ。

 

「はっくしゅん!」

 

 寒くてくしゃみまで出てしまった。このままだと風邪を引いちゃうかも知れない。

 

「みらいとリコからお小遣いも貰ったことだし……、どこかで温かい物食べて行こうかな……」

 

 お夕飯の後だけど、少し身体を動かしたからすぐにお腹が空いてしまった。

 何かないかなと探していると、下からいい香りが漂ってきた。甘い匂いだけどお菓子のものじゃない。お鍋のそれに近い。

 

「あ〜、おでんだ〜」

 

 匂いの元を辿ると、おでんと書いてある提灯をぶら下げた屋台があった。それも昔のドラマに出てくるようなものそのまんまの。

 でもこんな所にお店なんてあったかな? 

 いや、最近できたのかもしれないし、もしかしたらテレビでやっていた隠れた名店というものなのかもしれない。

 

「それならわくわくもんだしぃ!」

 

 

 

 

「いらっしゃい」

 

 暖簾をくぐると、みらいのお父さんくらいのおじさんが湯気の向こうにいた。

 

「何にします?」

 

「う〜ん、じゃあはんぺんとがんもどき。あ、あと厚揚げも」

 

「あいよ……、さぁ、どうぞ」

 

 熱々のおでんの入った器が湯気の向かい側からやってくる。

 

「はぁ〜、あったかい」

 

「それもご馳走ですからねぇ。この時期になると特にそうでさぁ」

 

「ほんとだね〜」

 

 おしゃべりしながら小さく割いた厚揚げを口の中に放り込む。噛むとお豆腐の味と一緒に、じんわりとお出汁の風味が口の中に広がる。みらいのお母さんの作った物とは違った甘めの味付けだ。モフルンも好きそう。

 

「おでんって色んな味があるんだ」

 

「嬢ちゃんの家とは違いましたかぃ?」

 

「うん。もう少し甘じょっぱいんだぁ」

 

「へぇ……。まぁ、おでんって土地によって変わりますからねぇ」

 

「そうなの?」

 

「少し遠くに足を伸ばしてみなさいな。入れる物も出汁も違いますぜ。いやぁ、俺もここに来るまで知らなかったんですがね」

 

「知らなかったなぁ」

 

「おでん一つでこれっすからね。とかくこの世界は広いですぜ」

 

 

 

 

「大根としらたきね。嬢ちゃん、趣味が中々に渋いね。若い子は肉の方が好きだから」

 

「大根はお出汁がいっぱい入ってるもん」

 

「なるほど。じゃあ、これなんかどうです?」

 

 そういっておじさんが鍋から引き上げてくれたのは、出汁で煮込んだうどんだった。そういえばうどんを入れるお店も見たことあるようなないような。

 

「寒い日に水浴びなんかした日にゃ、こういうのは堪えられんでしょ」

 

「うん……。んむっ?!」

 

 思いがけない言葉に、思わず啜ったうどんを丸呑みしてしまった。

 何で水を浴びた事を知ってるんだろ? もしかして魔法ガールやってたところ、見られちゃったのかな?! 

 ま、まずい。何とか言い訳しなきゃ。

 

「は、はー、水浴びなんかしてないよー」

 

 でも咄嗟に出たのは、脂汗とモフルンがやりそうな酷い演技だった。昔、演劇部に誘われた時に入らなくて良かったなぁと、こんな時なのにしみじみと感じてしまう。

 そんな私を見ておじさんは苦笑いする。

 

「心配するこたぁないですよ。その制服を着たことが無いやつなんざ、この界隈だと見つからねえくらいですからねぇ」

 

 そんな事を言ってスッと取り出したのは、ダイヤの結晶のついた魔法の杖……。

 

「おじさん、魔法界から来たの?」

 

「えぇ、かれこれ20年前に」

 

「はー」

 

「こっちの方が住み心地が良くってねえ。おでんなんか向こうにはねえですし。それに……」

 

「それに?」

 

「嬢ちゃんたちみたいに陰で頑張ってくれてる魔法つかいがいるから、最近はもっと暮らしやすいんでさぁ」

 

「へっ? それって魔法ガールズのこと……?」

 

「ええ。近頃は妙な奴が暴れてたせいで肩身が狭くて困ってましたからね。だから良い事してくれる人がいると、俺たちも助かるんです」

 

「あ〜、あの人の件だね」 

 

 リコのお父さんや校長先生まで出張る事態だった訳だし、ここに住む人にだって話が伝わっていてもおかしくない。

 

「ええ。まぁ、片付いた今となってはどうでもいい事なんですがね。ご近所さんも俺たちが関係ねえ事は知ってますから……。ほいこれ、感謝の気持ちです」

 

 そういって差し出されたのは、初めて見る具だった。確かみらいの家のおでんには、入ってなかったはず。

 

「さえずりって言うんです。この辺りだと珍しい鯨の舌でさぁ。頑張ってる子には、このくらいのことはしなきゃね」

 

「ありがとう」

 

 別にお礼欲しさでやってた訳じゃないけど、感謝してもらえたりご褒美を貰えたりするのは嬉しかった。世界の外だとこうはいかないもの。

 

 

 

 

「あ〜、いたいた。探したんだよ〜」

 

 身体がポカポカになってきた時に、暖簾を潜って皆んなが入ってきた。心配して迎えに来てくれたんだ。

 

「嬢ちゃんのご家族ですかい? お勤めご苦労さんで」

 

 そういっておじさんは4人前のさえずりを皆んなに差し出す。モフルンの分もさりげなく用意しているなんて思わず、私も皆んなもびっくりしてしまった。

 

「この寒さの中、あちこち駆けずり回ってたんでしょう? おあがんなさいな」

 

 その言葉に促されて、皆んなが椅子に腰を下ろしたことは言うまでも無い。

 この後はもう5人揃って店仕舞いになるまで食べて身体をあっためた。皆んなで食べたから身体はもっとポカポカになった。

 

 

 

 

 でも案の定というべきか……、お財布の中身は冷え切ってしまったけど。

 

 

 

 

「助けて魔法つかい、懐がひやっこいです……」

 

「そりゃ、どうにもならんでしょ」

 

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