魔法つかいプリキュア‼︎短篇集   作:ヨザリイコイ

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みらいとリコと喧嘩をし、モフルンを道連れに家出したひーちゃん。
行き先も知らぬまま電車に乗ってしまった結果、とんでもない目に……。


PIXIVにも同じタイトルで投稿しております。


脱出

「ひーちゃん、もう帰ろうモフ」

 

「いやだ! 絶対帰んない!」

 

 電車に揺られてガタゴトガタゴト。おやつの時間もとうに過ぎて、そろそろ夕方モフ。

 

「みらいとリコが謝るまで帰んないもん!」

 

 しばらくお外で頭を冷やしたらお家に帰るかと思ったのに、誰に似たんだか強情だから参ったモフ。

 

「でもご飯はどうするモフ?」

 

「これがあるからだいじょーぶ!」

 

 そういってひーちゃんが自信満々に取り出した袋に入ってたのは、はーちゃんが今朝焼いてたクッキーモフ。

 

「しょっぱいクッキーだもん。ご飯になるでしょ?」

 

「そういう問題じゃないモフ。というかそれだけで足りるモフ?」

 

 あんなに食べるひーちゃんが、両手に収まるほどの量のクッキーで1食保つ訳ないモフ。

 

「我慢するもん!」

 

「ご飯の前に食べなきゃ良かったモフ」

 

「モフルンまでそんな事いうんだぁー!」

 

 あらら藪蛇だったモフ。

 

 

 

 

 それにしても……。

 

「いったいこの電車、どこに向かっているモフ?」

 

 さっきからずっと走ってるけど、どこにも着かないモフ。それに窓からは原っぱしか見えないモフ。なんで駅が一つも見当たらないモフ? 

 

「ひーちゃん、この電車どこ行くか知ってるモフ?」

 

「知らないよぉ〜! ひーちゃんと同じ色だから乗っただけ!」

 

「モフ?!」

 

 つまりどこに行くのか分からないものに乗っちゃったモフ?! 困ったモフ。モフルンは、行き先が読めないモフ。どこにいるのか分からないんじゃ、みらい達も迎えに来れないモフ。

 

「ひーちゃん、車掌さんに聞きに行こうモフ」

 

「どこにいるの?」

 

「ええと、電車の一番後ろモフ」

 

「分かった」

 

 ひーちゃんと一緒に電車の最後尾に行くと、車掌さんのいる部屋にはカーテンがかかっていたモフ。

 

「もしもーし!」

 

「車掌さーん!」

 

 窓ガラスを叩いて呼んでみたけど、ちっとも車掌さんは出てきてくれないモフ。名札が掛かってるからいないはずないのにどうなってるモフ? 

 

「もしかして病気で倒れてるんじゃ……」

 

「それモフ!」

 

 運転士さんを呼びに今度は一番前に行ったけど、ここもカーテンが閉まっているモフ。しかも車掌室と同じで窓ガラスを叩いても返事がないモフ。

 

「もぉ〜! どうなってるの〜!」

 

 このどうにもならない状況に、とうとうひーちゃんが癇癪を起こしたモフ。

 

「モフルン! 何とかしてよぉ!」

 

「無茶言わないでモフ!」

 

 ひーちゃんに揺さぶられながらなんとか良い知恵を絞り出そうとしたけど、こんな目に遭ったことなんか無いから何にも思いつかなかったモフ。

 でも遭った事ある人なんて、他にいるとも思えないモフ。

 

 

 

 

「モフ?」

 

 窓の外が暗い。いつの間にかトンネルに入っていたモフ。こんな時に暗くなるのは、嫌なことしか考えなくなるから気分が良くないモフ。

 

「ど、ど、ど、どうしよぉ」

 

「モ、モフ」

 

 もしかしてこのままずっと真っ暗闇の中に閉じ込められるんじゃないかと2人で震えていると、明るい場所に出たモフ。それもお花畑の中モフ。

 

「良かったぁ」

 

「ほんと……モフ……」

 

 歯切れが悪くなっちゃったのは許してほしいモフ。

 なんで百合の花と彼岸花が一緒に咲いてるモフ? 花の盛りが違うはずモフ。しかも百合の花は、縁起でもないことに白ばっかモフ。

 それに変なのはお花畑だけじゃないモフ。

 

「あれは……、海モフ?」

 

 お花畑の向こうに海のようなものが見えるモフ。いや、もしかしたら湖か川かもしれないけど、電車じゃそのまま渡れないような水溜りが横たわっているモフ。

 あれが何なのかは分からないけど、なんだかそこに近づかない方が良いような気がしてならないモフ。

 理由はわかんないけど、とにかくそう感じるモフ。

 

 

 

 

「ひーちゃんのも買ってよね!」

 

「分かってるモフ」

 

 水溜りの事もあって、なんとなく電車に乗り続けるのは危ない気がして、ジュースを買いに行こうとひーちゃんを誘って降りたモフ。

 

「さてと……、ここはどこモフ?」

 

 目の前の錆びた標識を見ると、「そうかば」と書いてあるモフ。そうかばってどこモフ? 

 

「モフルン。早くジュース買ってよぉ」

 

「分かったモフ。ええと……、あれ?」

 

 この駅、売店も自動販売機もないモフ。というかホームとこの標識しかないモフ。

 周りにあるのはお花畑と水溜りに掛かる鉄橋だけ。変モフ。なんでこんなところに駅があるモフ? 

 

「モフルーン、あのお花から蜜でも飲もうよぉ」

 

「駄目モフ! 毒だから死んじゃうモフ!」

 

 

 

 

「広いねぇ」

 

「ほんとモフ。溺れそうモフ」

 

 駅にいても仕方ないからひとまずお花畑に出てみたモフ。もしかしたら人がいるかもしれないと思って。

 でも行けども行けどもお花しかないモフ。それも彼岸花と白百合ばかりモフ。綺麗だけど気味が悪いモフ。

 

「疲れたぁ」

 

「モフルンもモフ」

 

 仕方ないから2人揃って地面に座って体を休めたモフ。お花がない場所があって助かったモフ。

 

「それにしてもここどこだろ?」

 

「分かんないモフ。こんなところ来たこともないモフ」

 

 1度でも来ていたら帰り道も分かるけど、来たことも見たこともないから、どうしたらいいか分かんないモフ。

 

「じゃあ晩御飯にしようか」

 

「まだお日様は出てるモフ」

 

 そういえばもう日が沈む時間モフ。なのにお昼みたいに明るいモフ。どうなってるモフ? 

 考えても考えても分かんないモフ。ここがとてもおかしな場所である事しか分かんないモフ。

 

「はい、これモフルンの」

 

 煮詰まっていると、ひーちゃんがクッキーを割って分けてくれたモフ。お茶碗の時もそうだけど、こういう時の気配りはありがたいモフ。

 

「ありがとうモフ」

 

 クッキーを受け取り、口に運ぼうとしたその時だったモフ。

 モフルン達の周りから、真っ黒な腕が何本も飛び出してきたモフ。

 

「モフ?!」

 

 咄嗟に変身してひーちゃんを抱え、上空に飛んで逃げるモフ。

 どんどん伸びてくる手を踏みつけ蹴り飛ばしながら箒を取り出し、できる限りのスピードを出してお花畑から離れるモフ。

 

「なにあれ?!」

 

「分かんないモフ!!」

 

 でも捕まったら絶対にとんでもない目に遭うのは見れば分かるモフ。もっともそれは背中にしがみついているひーちゃんも分かってはいるから、わざわざ言わないモフ。

 

 

 

 

 お花畑を抜け出すと、海辺じゃなくて河原があったモフ。どうやら水溜りは、海じゃなくて幅の広い川だったみたいモフ。

 どういう訳か手が伸びてこなくなったから、ひとまず河原に着陸したモフ。

 

「ちょ、ちょっと休憩しようよ……」

 

「賛成モフ……」

 

 変身を解かないまま、近くの大きな石に腰を下ろして河原を見やる。これだけでちょっと気持ちが落ち着いてきたモフ。

 

「喉渇いた。川のお水飲んでいいかなぁ」

 

「飲めるかどうか分かんないモフ……」

 

 そういうのはちんぷんかんモフ。

 

「じゃあ試しに飲んでみるね」

 

 そういって駆け出そうとしたところで、ひーちゃんが積まれていた石に蹴躓いて転んだモフ。

 

「いたたた……」

 

「大丈夫モフ?」

 

 幸い少し擦りむいただけだから、ほんのちょっと残っていた水筒のお水で傷口を洗って、絆創膏を貼ってあげたモフ。

 

「痛いの痛いの飛んでけ〜モフ」

 

 それにしてもあの石、なんだったモフ? 

 見ると少し離れたところに似たようなものがたくさんあるモフ。ちょっと待つモフ。石が積まれている? あとここは河原モフ。まさか……。

 

「ひーちゃん」

 

「なに?」

 

「川の水、絶対飲んじゃ駄目モフ」

 

「どうして?」

 

「2度とクッキーが食べられなくなるからモフ」

 

「なんで?」

 

「今に分かる……、モフ!」

 

 遠くから人の声が近づいてくるのが聞こえたので、急いでひーちゃんを抱えて岩陰に隠れたモフ。

 そこからそっと石のある場所を覗くと、予想通り白装束の子供たちがやってきて、石を積み始めたモフ。

 

「夢じゃない……モフ?」

 

 頬っぺたを引っ張ると痛いモフ。夢じゃないモフ。

 ああ、とんでもない所に来てしまったモフ。

 

「ひーちゃん」

 

「なぁに?」

 

 小声かつ険しい顔でモフルンが話しかけたからか、ひーちゃんも小声で返事をしたモフ。助かるモフ。

 

「ここ……、どこだか分かったモフ」

 

「ほんと?」

 

「ほんとモフ」

 

「どこなの?」

 

「天国のすぐ近くモフ。この川を渡ったらもう帰れないモフ」

 

 あの電車を降りて本当に良かったモフ。

 でも困ったモフ。三途の川なんてどうやって迎えに来てもらえばいいモフ? 

 

 

 

 

「じゃあ、ひーちゃんとモフルン、死んじゃったの?! そんなぁぁぁあ!!」

 

「そんな事ないモフ。生きてる人でも偶に来ることあるらしいモフ」

 

 パニックを起こすひーちゃんを宥めすかしたものの、実のところモフルンも自信はないモフ。

 この手のお話だと、目が覚めたら病院のベッドの上で、脱線事故に巻き込まれてたなんてものもあるモフ。だから実際は死にかけているなんて事もありうるモフ。

 

「とにかく逃げなきゃ! 出口は! 出口はどこ?!」

 

「落ち着くモフ。そんなに騒いだら」

 

「おい、そこで何してる?」

 

 ひーちゃんの騒ぎ声を聞いたのか、岩の向こうから鬼さんが覗き込んできたモフ。

 

「いや、そのあの……」

 

「出口を教えてッ!!」

 

 鬼なんかと話した事ないからたじろいでいると、ひーちゃんが本題を切り出してくれたモフ。

 ただ鬼さんの方は、ひーちゃんを他の子供たちと同じだと考えたのかひょいと捕まえて連れて行こうとしたモフ。

 だから……。

 

「ごめんモフ」

 

 頭を思い切り蹴り飛ばし、岩を枕に眠ってもらったモフ。

 お仕事でしただけなのは分かってるモフ。でもひーちゃんを返してもらわないと、みらいもリコもはーちゃんも悲しむモフ。

 

 

 

 

 河原を飛び出して、箒での逃避行に逆戻り。

 どこか隠れられそうな場所は、どこか出口はと探していると、ひーちゃんが袖を引っ張ったモフ。

 

「ねえねえ、あの人たちに聞くのはダメかな?」

 

 ひーちゃんが指を差した先には、行列があったモフ。

 先頭は船着場らしいところまで延びてるモフ。ということは、渡し船を待ってるモフ? 

 

「ひーちゃん、あそこにいるのはみんな死んじゃった人だから」

 

「入口を教えてもらえたら出られるんじゃない?」

 

 なるほど、それはそうモフ。入口から出ちゃいけないなんてルールはないモフ。

 早速、行列に近づこうとしたのだけれども……。

 

「モフーッッ!」

 

「きゃぁぁぁあ!!」

 

 急に現れた山みたいに大きなお婆さんに服を取られそうになってそれどころじゃなくなったモフ。

 モフルン達、冗談抜きで死んじゃったモフ? さっきからそんな扱いを受けてるから、ますます不安になってきたモフ。

 というか、もし死んじゃったら、モフルンはみらいと一緒の場所に行けるモフ? ぬいぐるみ専用の場所に放り込まれるのは勘弁モフ。

 

 

 

 

 山の麓まで必死に逃げると、もうお婆さんは追ってこなかったモフ。

 山が怪物になるような事はなかったからひとまず安心できたけど、これが何の山なのかは分かんないから油断はできないモフ。歩道らしいものはあるけれども、登った後どうなるか分からないのは困ったモフ。

 

「ねぇ、モフルン」

 

「どうしたモフ?」

 

「お腹すいた」

 

「クッキーはどうしたモフ?」

 

「落としちゃった」

 

「あらら、といっても食べ物なんて……」

 

 そもそもここの食べ物を食べて大丈夫モフ? 三途の川の水は、似たような川の水を飲んだら大変な事になるから飲ませないようにしたけど、境目の場所の食べ物はどうだかわからないモフ。

 

「あっ、見て! たけのこ!」

 

「本当モフ」

 

 ひーちゃんが立派な筍を見つけたモフ。でもモフルンじゃお料理できないモフ。

 

「これ、食べられるよね?!」

 

「お料理しないと食べられないモフ。このまんまだととってもまずいモフ」

 

 1度みらいが下拵えし忘れたものを食べたことがあるけど、舌が痺れるくらい酷い味だったモフ。あんなのひーちゃんに食べさせられないモフ。

 

「じゃあお料理して!」

 

「みらいとリコじゃないと無理モフ」

 

「みらい……、リコ……。ちゃんとご飯食べるんだった……」

 

 空きっ腹のせいと訳の分からない場所で怖い目に何度もあったせいで、とうとうひーちゃんが泣き出してしまったモフ。無理ないモフ。モフルンだって辛いんだからいわんやひーちゃんでは。

 

「ひーちゃん、心配しないでいいモフ。すぐにみらい達が助けに来てくれるモフ」

 

 背中を摩りながら安心させる為にぎゅっと抱きしめるモフ。

 気休めかもしれないけど、何もしないよりマシモフ。それに泣いてると幸運も逃げていっちゃうモフ。

 

「いや、来てくれないよ」

 

「どうしてそう思うモフ?」

 

「だってひーちゃん……、悪い子だもん……」

 

 モフルンのお腹に顔を埋めるひーちゃん。じんわりとそこが温かくなっていくのも気にせず、モフルンはおしゃべりを続けるモフ。

 

「悪い子だと来てくれないモフ?」

 

「悪い子だと嫌われちゃうもん! それじゃあ来てもらえないもん!」

 

 わんわんと泣き声が大きくなるモフ。

 

「クッキー、ちゃんと我慢するんだった……」

 

「それが分かったならもう大丈夫モフ」

 

「大丈夫じゃないよ! 嫌われちゃったら帰れないもん!」

 

「なら謝ればいいモフ。悪い子だったって分かったならそうするだけでいいモフ」

 

 反省したのならそれで十分モフ。みらいとリコもきっと許してくれるモフ。

 

「でも……、2人とも怒るととっても怖いもん……」

 

「一緒に謝ってあげるモフ。元気出すモフ」

 

「うん!」

 

 

 

 

 疲れて寝ちゃったひーちゃんをおんぶして、山道に足を踏み入れるモフ。山登りなんて初めてだけど頑張るモフ。

 

「モフ……」

 

 とはいえ結構キツイモフ。モフルンが野生のクマならなんてことないんだろうけれども、道が険しいし足しか使えないから歩くのが大変モフ。しかも歩道はすぐ無くなって獣道しかないものだから尚更モフ。

 おまけにさっきと打って変わって空が暗くなってるモフ。だから……。

 

「モフ!」

 

 知らない間に木の根に足を取られて転びそうになったモフ。

 なんとか踏ん張って堪えたけど、この後もこうできるかどうか不安モフ。

 

 

 

 

「モフ……」

 

 木々の生い茂る斜面を抜けた先にあったのは、断崖絶壁とその上を通る岩の小道だったモフ。高さからして足を滑らせたら船着場か賽の河原に逆戻り、いや2人別々にされるかもしれないモフ。

 

「それでも歩くモフ……」

 

 震える足を前に出そうとした。その時だったモフ。

 

「待って!」

 

 後ろから誰かに呼び止められたモフ。

 またお化けの類かと警戒して振り返ると、そこには魔法学校の学生さんがいたモフ。いや、見たところみらいよりも少し歳上くらいだから学生さんじゃないモフ? 

 それにしてもどこかで見たことのあるような人モフ。

 

「夜遅くにここを通るのは危ないわ」

 

「心配してくれてありがとうモフ。でも家族が心配してるから、早く出口を探さないといけないモフ」

 

「出口? ちょっと待って。あなたたち……」

 

 学生さんは、モフルン達の頭から足までをじーっと見てるモフ。何かついてるモフ? 

 

「そっか……。あなたたち、間違えて来ちゃったのね」

 

「間違えてモフ?」

 

「そうよ。安心して。まだ2人ともここに来なくても良いから」

 

 それを聞いてモフルンは胸を撫で下ろしたモフ。でも肝心なことがまだ分かってないモフ。

 

「お姉さん、出口ってあるモフ?」

 

「それは…………、あるわよ」

 

 知っているかどうか分からないからダメ元だったけど、結果希望の見える答えがかえってきて嬉しいモフ。

 でも……、なんで一瞬躊躇したモフ? 

 もしかすると教えちゃいけなかったモフ? 

 

「ありがとうモフ。じゃあ明るくなったら出口を探すモフ」

 

「待って」

 

 そうだとすれば、申し訳ないからどこにあるかまでは聞かず、木々の中に引きかえそうとすると、また呼び止められたモフ。

 

「この山のことは知らないんでしょ?」

 

「知らないモフ」

 

「なら案内してあげるから」

 

「そんな事して良いモフ? お姉さんが困ったことになるなら……」

 

「心配しなくていいわよ。私はもう身体がないから」

 

「モフ?」

 

 じゃあこの人はもう亡くなっている人モフ? 

 

「お姉さん、お名前教えてほしいモフ」

 

「どうして?」

 

「帰れたらお礼がしたいモフ」

 

「お礼なんか良いわよ。私はもう死んでるもの」

 

「お墓にお花やお菓子を持って行くモフ」

 

「ありがと……。じゃあジェーン・ドゥって名前のお墓を探して。ナシマホウ界にあるわ」

 

 ナシマホウ界に住んでた人らしいモフ。なら魔法学校に情報があるかもしれないモフ。

 

「何か欲しいものはないモフ?」

 

「特に無いわよ」

 

「いや、でもこんな時だから教えてほしいモフ。モフルンもなんとか用立ててみせるモフ」

 

「それなら花盛りが来てからでいいから、白いカーネーションをいただけるかしら。それだけで良いわ」

 

「分かったモフ」

 

 

 

 

 ジェーンさんに導かれて、さっき来た山道とは別の道を歩くと、小さな木組みの小屋と木の門と柵があったモフ。まるで関所モフ。

 

「ちょっと待っててね。それと私が上を向いて出てきたら門目掛けて全力で走って」

 

 モフルン達にそう言い含めて、ジェーンさんは小屋の中に入っていったモフ。

 

「走ってってなんだろうね?」

 

「分かんないモフ」

 

 目を覚ましたひーちゃんと小屋の様子を伺っていると、中から言い争う声が聞こえたモフ。ジェーンさんと誰かが揉めてるモフ。帰す帰さないという言葉からして、モフルン達のことで喧嘩してるモフ。

 

「モフルン、止めなきゃ!」

 

「モフ!」

 

 小屋の中に飛び込もうとすると、扉が開いてジェーンさんが出てきたモフ。それも上を向いて、杖を逆手に構えているモフ。なんだかどこかで見たことのあるような形の杖モフ。

 どこだったモフ。

 でもそれを考える時間は無かったモフ。

 

「キュアップ・ラパパ、小屋よ、燃えなさい」

 

 ジェーンさんが小屋に火を掛けたからモフ。

 

「モフ?!」

 

「走って!」

 

 ジェーンさんの声に我に返り、門目掛けて全力疾走するモフ。

 そして扉を蹴倒して、その向こうへと走るモフ。

 

「何も考えずに走って!」

 

 真横で並走するジェーンさんに言われるがまま、道なき道を走って走る。凸凹の斜面だったり、川の中だったりと、ぬいぐるみのままだったら破けてたような場所ばかりだったモフ。

 

 

 

 

「ここまで来れば、しばらくは大丈夫……」

 

「モフ……」

 

「はぁ……」

 

 あちこち走り抜いてたどり着いた場所には、大きな岩があったモフ。なんだか何かを塞いでいるような。

 

「この岩の向こうが……、生きてる人の世界よ……」

 

「モフ?!」

 

「キュアップ・ラパパ。岩よ、そこを退いて」

 

 ジェーンさんが魔法を掛けたけど、岩はほんのちょっとしか動かなかったモフ。

 

「モフ〜!」

 

 それならとモフルンが力一杯岩を押したけど、これでもまだ動かないモフ。死んだ人が出られないようにする為か、しっかりしているモフ。

 

「ふぅぅぅん!!」

 

 ひーちゃんも一緒に押してくれたけど、全然動かないモフ。どうしたら良いモフ? 

 

「ごめんなさいね、本当はもっと簡単に通れるはずだったのだけど」

 

「そうなの?」

 

「さっき小屋で揉めた時に、1日だけ向こうに帰れるチケットを取り上げられちゃって」

 

「モフ?!」

 

「そんな大事なもの、ひーちゃん達のために使おうとしてくれたの?!」

 

 とんでもない事が分かって、ひーちゃん共々びっくりしてしまったモフ。取り上げられただけでも申し訳ないのに。

 でもジェーンさんは、なんでもない事だと笑っているモフ。

 

「会いたい人がこっちに来るのを待てばいいのよ。気にしなくて良いわ」

 

「良くないモフ! それならモフルン達と一緒に会いに行くモフ!」

 

「そうだよ!」

 

 迷惑かけた訳だからそれくらいはしないといけないと思ったけど、ジェーンさんは首を縦に振らなかったモフ。

 

「お気持ちだけもらっておくわ。本当ならそれも受け取れないもの。キュアップ・ラパパ!」

 

 そう返して何事もなかったかのように、少しずつ岩を動かす魔法を掛けるジェーンさん。

「それも受け取れない」ってどうしてモフ。むしろモフルン達の方が受け取れないものが多いモフ。

 

 

 

 

 もうちょっとで人1人が通れそうなまでに開いた時に、辺りが俄かに騒がしくなったモフ。見るとモフルン達が走ってきた道に、大勢の小鬼が押し寄せてきていたモフ。ジェーンさんが火を掛けて逃げた事からして、お話ししても帰ってくれないのは確実モフ。

 

「ひーちゃん、ジェーンさんの所から離れないでモフ」

 

「えっ、モフルン。どうするの?」

 

「小鬼たちと戦うモフ」

 

「そんなのダメだよ! もうちょっとで開くかもしれないのに!」

 

「大丈夫モフ。すぐに追いかけるモフ」

 

 ひーちゃんを少しでも安全であろうジェーンさんのところに行かせてから、元来た道を引き返すモフ。

 

「みらいとリコとはーちゃんによろしくと言っておいた方が良かったモフ?」

 

 そう独り言つも答えは誰も返してくれないモフ。

 目の前にいる小鬼たちも。

 

「ひーちゃんが帰る邪魔をしないで欲しいモフ」

 

 その言葉を合図に、モフルンは小鬼たちの中に踊り込んだモフ。

 

 

 

 

 一斉に飛びかかってきた小鬼の一群を左腕の一振りで吹き飛ばし、更に後ろ蹴りで別の一群を吹き飛ばす。

 髪の毛に噛みついてきたのを頭を振って新手にぶつけ、さらに近くにいた小鬼を両手に1匹ずつ掴んで得物にするモフ。

 

「モフ!」

 

 振り回して周りにいた群れを薙ぎ倒し、身体がボロボロになったところで、掲げられていた灯り目掛けて投げつけるモフ。これを倒して、遠くにいた敵も一網打尽モフ。

 

「モフッ」

 

 まともに戦ったら相手にならないと思ったのか、背中に大勢の小鬼がしがみついてモフルンを押し倒したモフ。おまけにあちこち噛みついてくるモフ。

 

「モフルンは食べ物じゃないモフ!」

 

 両腕で身体を持ち上げ、勢いをつけて逆立ちして小鬼を火の海目掛けて投げ飛ばすモフ。

 それでも残っていた鬼は、引き剥がす為に近くの岩に背中を叩きつけて減らしたモフ。

 

「痛いモフ……。ってまだ残ってるモフ?!」

 

 急いで振り払おうとしたらカッと光って、背中が物凄く熱くなったモフ。

 

「モフゥゥゥッ?!」

 

 まさか爆発するなんて思わなかったモフ。

 

 

 

 

「全く……、脅かさないでほしいモフ……。モフッ!」

 

 爆発が全く大したことなかったからホッとしたのも束の間、今度はさっきの10倍、いや100倍の敵が押し寄せてきたモフ。ちょっと辛いモフ。

 

「でもやるモフ」

 

 箒を6本取り出し、輪っかのように並べてプロペラ代わりにして突進するモフ。

 

「モフッ!」

 

 小鬼の群れを左右に跳ね飛ばして、それの親玉らしい鬼との一騎打ちに雪崩れ込むモフ。

 プロペラ箒は、エンカウントした時に金棒の一振りで跳ね飛ばされたから、すぐに使える武器は身体だけ。

 

「モフッ!」

 

 リーチを詰める為に、振り下ろされた金棒の上でハンドスプリングをして勢いをつけて、鬼の首に両脚を絡みつけるモフ。

 

「いっけぇ……モフッ!」

 

 身体をぐるりと回した勢いで鬼を投げ飛ばし、落下地点にいた小鬼を押し潰すモフ。

 これで少しは崩せたと安心していると、また小鬼が乗っかってきたモフ。しかも今度はさっきよりも多いモフ。

 

「ぐぇっモフっ」

 

 大勢の小鬼に覆われて、たくさんの蜜蜂に抑え込まれたスズメバチみたいな格好になってしまったモフ。このままだとモフルンは川の向こうに放り出されるモフ。いや、でも……。

 

 モフルンがこのまま囮になれば、ひーちゃんは逃げやすくなるモフ。

 

 

 じゃあこのまま動かない方が……。

 

 

 そう思うと身体の動きが鈍くなるモフ。あちこち噛まれて痛いし、下敷きにされて苦しいのに眠くなるモフ。

 

「モフルゥゥゥゥゥゥン!!」

 

 でもそんな時、翠色の光がモフルンと鬼を包み込んだモフ。

 

「モフゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 光の奔流に吹っ飛ばされて、逆さまの体勢で木に叩きつけられたモフ。身体中痛いけど助かったモフ。

 

「モフルン、大丈夫?!」

 

 身体を起こせずにいると、木の杖を持ったひーちゃんが駆け寄ってきたモフ。どうやらミラクルとマジカルが危なかった時と同じ力を使って助けてくれたみたいモフ。

 

「ひーちゃん……、どうして……」

 

「一緒にみらいとリコに謝ってくれる約束でしょ!」

 

 ああ、いけないモフ。すっかり忘れてたモフ。

 

「ごめんモフ……。今いくモフ……」

 

 でも身体が動かないモフ。せっかく助けてもらったのに。

 

「動けないの?! じゃあひーちゃんが連れて行くから、背中で休んでて」

 

 そういってひーちゃんはモフルンを背負って、大岩目指して歩き出したモフ。

 お姉ちゃんなのに、こんな時に動けないのは恥ずかしいけど、同時に無性に嬉しくもあったモフ。

 

 

 

 

「み、見えた」

 

 ひーちゃんの肩越しから明るい光が見えるモフ。出口ができたんだモフ。

 

「キキっ」

 

 でも小鬼の方も簡単には逃してくれないモフ。ひーちゃんの足が遅いことを良いことに、すぐそこまで追いついてきたモフ。

 

「ああっ!」

 

 このままじゃどうにもならないモフ。これからのことを考えると悲しくなるけど、この際四の五の言わずに覚悟を決めるモフ。

 

「ひーちゃん……、モフルンを置いてくモフ」

 

「ダメだよ! 約束破る気?!」

 

「2人とも捕まったら謝るどころじゃないモフ!!」

 

 普段絶対にやらないような怖い顔で怒鳴りつけ、ひーちゃんの背中を思い切り押すモフ。

 

「早く行くモフ!!」

 

 モフルンの剣幕に押されてひーちゃんが駆け出したのを見送った後、ヨロヨロと立ち上がって小鬼の群れを睨め付けるモフ。もうこれくらいしかできないけど、時間稼ぎくらいにはなるモフ。

 小鬼の群れはモフルン目掛けて牙を剥き出しにして飛びかかってくるモフ。でも避けられないモフ。

 

「みらい……、先に……」

 

 行ってるモフと言わないうちに、モフルンの身体がふわっと浮いて後ろに投げ飛ばされたモフ。

 

「ダメよ。お姉ちゃんなら一緒にいてあげないと」

 

 見るとジェーンさんがさっきまでモフルンのいた場所に立っているモフ。モフルンを投げ飛ばしたんだモフ。でもあのままだと小鬼にやられるモフ。

 

「危ないモフ!」

 

 モフルンの叫び声にジェーンさんはチラと後ろを見やったけど、すぐにこっちに向き直って……、深々と頭を下げたモフ。まるで悪い事をしたのを謝っているかのように。

 

 

 

 

 目を覚ますと、みらいが目に涙を一杯溜めてモフルンの顔を覗き込んでいたモフ。

 あの後、近くの山でひーちゃん共々倒れていたところをはーちゃんが見つけてくれたそうモフ。ひーちゃんは、ちゃんと1人でみらいとリコに謝れたらしいから一安心モフ。

 

「お願いだからもうこんな無茶しないで」

 

「ごめんなさいモフ」

 

 ボロ切れ同然になって戻ってきたものだから心配かけちゃったモフ。あの時は仕方なかったけど、ここは反省するモフ。

 みらいがモフルンの後を本気で追いかけてくるかもしれないことを考えると、特に、モフ。

 

「はい、これ食べて早く元気になってね」

 

 みらいがすりおろしたリンゴを持ってきてくれたモフ。そういえばあの時クッキー食べ損ねたから何にも食べてなかったモフ。

 

「ありがとうモフ」

 

 スプーンで口の中にリンゴを入れると、当然だけど甘い味が広がったモフ。それとなんだかホッとしたモフ。落ち着いて「みらいが作ってくれた」甘いものを食べられたのだから。

 

 

 

 

「みらい」

 

「何?」

 

「ジェーン・ドゥさんって魔法使いさん、知らないモフ?」

 

「知らないなぁ。その人に助けてもらったんだっけ?」

 

「そうモフ。みらいよりも少し歳上っぽかったから魔法学校の先輩だと思ったモフ」

 

「う〜ん、名前は聞いたことないし、それにその名前」

 

「どうしたモフ?」

 

「多分本当の名前じゃないよ」

 

「モフ?」

 

 なんでそんなことが分かるモフ? 

 

「英語で名無しの権兵衛って意味だもん。それに苗字があるのも変だよ」

 

 言われてみれば、リコにも本来苗字はないモフ。

 

「でももしそうならなんで嘘をついたモフ?」

 

「う〜ん。モフルンに名前を教えられない理由があったのかなぁ」

 

「そういえばモフルンに頭を下げていたり、お礼なんか本来受け取れないなんて言っていたりしたモフ。別にそんな事ないのにモフ……」

 

 むしろ家族に会いに行けるチャンスを駄目にしたモフルンの方が、悪いことしてしまったモフ。

 

「モフルンやひーちゃんに何か申し訳ないことがあるみたいだね」

 

「モフルンはまだしも、ひーちゃんはあの人に会ったことが無かったのにモフ?」

 

「もしくはさ……、その人じゃなくても家族が何かしたとか。それで申し訳なく思ってなんて事もあるのかも」

 

「家族モフ?」

 

 それならますます……、いや、ちょっと待つモフ。ひーちゃん絡みならひょっとして。

 

「みらい、ナシマホウ界に来た魔法界の人のリストってあるモフ?」

 

「あるけどどうしたの?」

 

「ちょっと見たいページがあるモフ」

 

 リストを受け取り、ページを捲る。あ、い、う……。

 

「え、え、え……。やっぱりモフ!」

 

「えっ、この人!」

 

 みらいと目当てのページを覗き込み、顔を見合わせたモフ。

 そのジェーンさんの正体は、少し前にひーちゃんを付け狙っていたあの男の人のお母さんだったからモフ。

 

 

 

 

「ねぇ、モフルン」

 

「なにモフ?」

 

「ひーちゃんたち、良い子にしてようね」

 

 2人乗りのブランコで遊んでいると、急に神妙な面持ちでこんな事を言い出したモフ。

 あの事件がよっぽど堪えたみたいモフ。

 

「急にどうしたモフ?」

 

「悪い子だったら、みらいとリコをエリナさんみたいな目に遭わせちゃうから」

 

「ああ、なるほど。それはそうモフ」

 

 自分の不始末の罪滅ぼしをさせるなんて、亡くなった親にやらせていい事じゃないモフ。

 

「そうなるくらいならさ、ひーちゃん幾らでも良い子になるよ」

 

「良い心がけモフ。でも……」

 

「でも?」

 

「なり過ぎてもいけないモフ」

 

「どうして?」

 

「逆に心配されるからモフ」

 

「改めて孝行するも不孝なり。大事な親の肝や潰さん」なんて言うくらいモフ。良い子になり過ぎて気に病ませたら本末転倒もいいところモフ。

 

「そうなの? でも良い子にしてると喜んでるよ?」

 

「そうでもないモフ。お母さんってそう単純でもないモフ」

 

「難しいなぁ」

 

 この匙加減は、やっぱりひーちゃんにはよく分からないみたいモフ。だから一番分かりやすい喩えを教えてあげたモフ。

 

「あの電車にまた乗らないくらい良い子ならいいってことモフ!」

 

「分かった!」

 

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