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おせちにお雑煮に食べきれない程のご馳走でお腹いっぱいになった頃、みらいから小さな袋を貰った。
「私からのお年玉だよ」
「お年玉って何?」
「今年1年、ひーちゃんがすくすく育ちますようにというおまじないだよ」
これもおまじないなんだ。
本当にここには魔法がないのかな?
「おまじないなのに、杖は使わないの?」
「使わない。その代わりにお金を渡すの」
お蕎麦の次はお金。でも袋の中身は硬くない。
開けてみると中には紙のお金が入っている。滅多にもらえないお金だ。
「0がいち、にい、さん、よん、よん! こ、これって……」
「1万円札だよ」
「いちまんえん!」
みんなのお茶碗やお布団を買った時に出てきたお金だ! そ、そんな凄いお金がひーちゃんの手の中に……。
「う、うぅぅむん」
びっくりしちゃったから目の前が夜になっちゃった。まだ眠くないのに。
「わ、わぁっ! ひーちゃん、しっかりしてぇ!!」
目を覚ましてからリコからもお年玉を貰った。それも1万円。モフルンからもお年玉に5000円貰えた。みらいのお父さんとお母さんとおばあちゃんからも貰ったから、合わせて3万円がひーちゃんのお財布の中にある。
「いちごメロンパンなら100個。おでんなら3日はお腹いっぱいになる……」
ノートに使い道をあれこれ書き出して考える。こんなにたくさんのお金をもらった事なんかないからどうするのかよく考えなきゃ。
「リコに怒られそうになった時に、どこかに隠れるお金にしようかな」
「あら、なかなか良い使い道じゃない」
「そうでしょ! ひーちゃんだってお馬鹿じゃないもん。えっ……」
後ろにゆっくりと振り返るとリコがにっこりと笑って立っている。聞かれちゃいけない人に聞かれちゃったぁ!
「り、リコ! さ、さっきのは冗談だから!」
「おでん屋さんでお腹いっぱいになることかしら?」
「違うよ! 怒ったリコから逃げる時に使う……、あっ!」
みらいに揶揄われている時のリコみたいな事をしちゃった。ど、どうしよう。お年玉を没収されちゃうかもしれない。
「どう使うかはひーちゃん次第よ」
でもリコはそう言っただけで何にもしなかった。
「一日で使い切るのも、貯めるのもひーちゃんの好きにして良いのよ。ただね」
「なぁに?」
「後悔しない使い方をするように」
くるりと背を向けてお部屋を出ていくリコを見て、今の言葉の意味を考える。
後悔しない使い方ならお腹いっぱいになるのが良いのかな。
でもみらいもリコもお腹いっぱいになってもお金を使い過ぎると落ち込んでる。それによく考えたらいちごメロンパンを100個も食べられない。飽きちゃうから。おでんだっておんなじ。
あとは何に……。
「そういえばみらいとリコにはお年玉はないのかな?」
2人ともお父さんとお母さんがいるし、みらいにはおばあちゃんもいる。でも大人だからかな、お年玉を貰ってなかった。
リコは多分貰ってない。お年玉はナシマホウ界にしかないらしいから。
あとよく考えるとモフルンもぬいぐるみだから貰ってない。
それなら……。
子供たちにお年玉を渡した3日後に、私とみらいとモフルンはひーちゃんからお年玉を貰った。
お年玉といってもお金じゃない。それよりもずっと味のある物を受け取った。
「みらいの実家に昨日行ったのは、この為だったのね」
それは小さな翡翠の入ったペンダント。みらいのおばさまに手伝ってもらいつつあの子が作ったもの。
翡翠も欠けて売れなくなってしまった物をわざわざお年玉で足りる値段で売ってもらったとか。また折を見て御礼を言いに行かなきゃいけないわね。
「本当によく出来ているわね。私たちには勿体無いくらい」
「全くモフ。初めてのお年玉にこんなに良い物を貰えるだなんて思わなかったモフ」
「そういえば貴女も貰ったことなかったものね」
「もうそんな歳じゃないから気にしてなかったけど……、本当に嬉しいモフ」
「そうね」
ペンダントを見る目に、モフルンはうっすらと涙を浮かべている。私の目にも思わずじんわりと熱いものが浮かぶ。
「モフルーン、リコー!」
あら、みらいが呼んでいるわ。どうしたのかしら?
「何かあったモフー?」
「はーちゃんがお年玉準備してるよー! 急いで降りておいでー!」
あらあら、嬉しいことは何度も起きるものなのね。
「分かったモフー! さぁ、早く行こうモフ」
「すっかり浮き足立っちゃって」
でも気持ちは分かるわ。子供たちから素晴らしい贈り物をたくさん貰えるのだから。
今年も良い年になりそう。