魔法つかいプリキュア‼︎短篇集   作:ヨザリイコイ

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大学で流れるみらいが結婚しているという噂。
気になったさらはれなを連れて魔法つかい邸を訪れます。


魔法つかい邸訪問

 最近、大学ではこんな噂が流行っている。

 

「朝日奈みらいは、実は既婚者である」 

 

 あの子の鉄壁のようなガードの堅さを揶揄したつまらない話だと思っていたけど、最近のみらいの様子を見る限りでは単なる与太話とも思えなくなってきた。

 友達とルームシェアをしているという話だけど、左手の薬指に指輪をはめているし、子連れで買い物しているしと、どうみても所帯を持っているようにしか見えない事をやっている。

 それで引越し祝いに託けて、噂を確かめることにした。

 もし本当だったら教えてもらいたいからだ。

 どうやったらパートナーと仲睦まじく付き合えるのかを。

 

 

「ねぇ、お蕎麦の方が良かったんじゃないの?」

 

「それは引っ越した側が持ってくるものでしょうが」

 

 いや、みらいならそっちの方が良かったかな。あの子、私たちの3倍は食べるから。

 それであのプロポーションだから羨ましいことこの上ない。

 

「それにルームシェアしている人まで大食いだったら、私たちの財布はたちまちパンクするよ? それなら茹でる道具を渡すのが無難だって」

 

 だから大きめの万能鍋を御祝いの品に選んだわけで。毎日お弁当を用意していることも考えれば、後々あれこれ使えるものの方が絶対にありがたいはずだ。

 

「確かこの角を曲がって……、ここだ」 

 

「本当にあってる? ルームどころかホームだよ」

 

 れなが疑うのも無理はない。目の前にあるのは、二階建ての一軒家だもの。それも集会所のようなものがついた大きめの家だ。

 

「みらいからもらった地図だと、確かにここだね」

 

「どうやってこんなところ借りたんだろう?」

 

「ぱっと見年季が入っているとはいえ、ルームシェアでもキツイよね」

 

 一軒家だもの、絶対に値は張るよ? 

 

「こりゃ結婚してるのはマジかも……」

 

「なら手土産を買い足しに戻った方が良くない?」

 

「なんで?」

 

「結婚してるなら夫婦茶碗とか……。それにほら、みらいが子連れで買い物してた話もあったから」

 

「ああ、なるほど」

 

 夫婦茶碗は余計なお世話だろうけど、子供向けには何か用意するべきだったかもしれない。 

 でもそれはそれでまた問題が出てくる。子供の人数が分からないんだ。私が見たのは1人だけだったけど、もっといる可能性もある。

 

「ええと」

 

 こういう時は、表札を見てみると良い。最近では少なくなっているけど、家族の名前もあわせて書いてある家もある。幸いにもこの家もそうらしい。そうらしいんだけど……、またまた困ったことになった。

 

『朝日奈・十六夜・花海・ピーちゃん・ひーちゃん・モフルン』

 

「子供はどれ?」

 

 苗字と名前がごちゃごちゃしてる。これじゃあ子供の人数を探るどころじゃない。

 

「モフルンは、みらいのぬいぐるみじゃないの?」

 

「ああ、そうか。じゃあ子供は……」

 

「あのー、うちに何か御用ですか?」

 

 あれこれれなと話していると、紙袋を抱えた桃色の髪の女の子に話しかけられた。前に大学で見かけた子だ。

 中学生くらいの子だから親戚だろうか? 

 

「みらいに引越し祝いを持ってきたんだ。ごめんね、玄関先で騒いじゃって」

 

「ああ、さらさんとれなさんだね! どうぞどうぞ!」

 

 みらいから話は伝わっていたのか、すんなりと通してくれた。

 

「お母さんはいる?」

 

 いや、みらいがお母さんは無理があるでしょ。

 

「みらいとリコなら2人とも家にいるよ」

 

「そうなんだ」

 

 いやいや待て待て! お母さんとすんなり認めたし、しかも2人いたよ?! まさか本当に母親……、いや流石にないか。

 

 

 客間に通されて待っていると、みらいがこれまたこの前見かけた美人さんを連れて入ってきた。2人とも左手の薬指に揃いの指輪をはめている。

 お相手は同性なんだ。これほどの美人ならそれもアリかもしれない。でもこんな人どうやって探せば良いのやら。

 

「お待たせ〜。ちょうどシフォンケーキが焼けたから持ってきたよ。リコの手作りだからとっても美味しいよ」

 

 料理を作る人と住んでるならあの手土産は大当たりだったね。良かった。

 

「みらいの旦那様の手料理なんだ」

 

「ちょっと、れな?!」

 

 いきなりビーンボールをぶん投げるなって。2人とも紅茶とケーキを落としそうになってるじゃない。

 

「だ、旦那様はまだ早いかしら……。まだ式も挙げてないし、何よりみらいのご両親へのご挨拶も済んでないもの……。結婚指輪だってこれから作るところだし……」

 

 まだ家族になるまでではなかったんだ。なんだかホッとした。

 それにしても指輪を2種類準備したり、式を挙げる予定だったりと、中々にアナログな人らしい。

 

「もうリコったら、今すぐに挨拶に行ったって大丈夫なのに」

 

「ダメよ! こっちでの仕事を軌道に乗せない限り、おじさまとおばさまにお許しをもらいに行けないわ!」

 

 収入があるだけじゃなくて、ちゃんと段階を踏むことまで考えている。今時珍しいくらいに真面目な人だ。

 

「それもそうだね。これからのことも考えると、焦らず一歩ずつ足場を固めるに限るか……」

 

「当然よ。砂上の楼閣に愛娘を送り出したい親がいると思って?」

 

「そうだね。どうせそうするなら難攻不落の城塞の方が良いに決まってるよ」

 

 なんだろうな。自分の親のことだけを話しているようにも見えないんだよね。自分たち自身の考えも話しているような感じがする。

 

「ねぇ、子供は何人いるの?」

 

 だからこういう質問が口を衝いて出てしまった。

 さっきの女の子とも実の子供のように接していたしね。

 

「4人だよ」

 

 あっけらかんとみらいが答えたことに驚いて言葉が出ないでいると、次はリコさんが口を開いた。

 

「故郷の親戚の子なのよ。両親が亡くなって私が引き取る事になったの」

 

「あぁ、そういう事情なんだ。ごめんなさい。無神経な事を聞いてしまって」

 

「気にしないで。すっかり実の親子同然になっているもの」

 

「私にも懐いてくれてね。もう可愛くて可愛くて」

 

「可愛いからって甘やかし過ぎよ」

 

「その分、リコが締めるところは締めているからね。安心して甘やかせるよ」 

 

「まったくもう……」

 

 いい具合に飴と鞭になってる。まんま子育てしている夫婦じゃない。

 

「でもリコもなんだかんだで過保護だよね。ピーちゃんとひーちゃんを初めておつかいに行かせた時に、後ろからこっそりついて行ってたもん」

 

「あ、あれはお金が足りているかどうか心配だったからよ。最近は物価も高いし」

 

「ピッタリ持たせていたのに?」

 

「落としでもしたら大変じゃない!」

 

「しっかりポーチを巻き付けていたのに?」

 

「それでも心配なものは心配なの! それに迷子になって帰れなくなったら大変だし!」

 

「それはそうだね。でも帰ってきたときに、滂沱の涙を流しながら抱き着くのはやり過ぎだったよ。2人ともドン引きしてたし」

 

「ぶ、無事に帰ってこられたのが嬉しかったんだから良いじゃない!」

 

 うわぁ、すんごい親バカだ。察するところ、みらいが割とドライだから上手く釣り合いが取れているのかな。

 

「それにあなただってご馳走を用意して待ってたじゃない! 人のこと言えるのかしら?」

 

「い、いや〜、お腹を空かせてるかなと思ってさ」

 

 前言撤回。頭を掻いているこの子もかなりの親バカだ。子供のおつかい一つでそこまではやらないよ。テレビに出る家族だってやんないはず。

 よっぽど可愛いんだろうけどね。

 

 

「リコさんは、この辺りでお仕事をしているの?」

 

「ええ。今のところは地域密着のね。この辺りは同郷の人が多いから」

 

 言われてみれば、木乃江津町は外国人がやっている店や会社が多いし、もしかしてどこかのお店のオーナー? 最近では若手の実業家というのも珍しくないしあり得るかも。

 

「もしかしてケーキ屋さんですか?」

 

 シフォンケーキが美味しかったからか、れなは期待の眼差しでリコさんを見ている。

 でもその期待には応えられないようで、小さく笑ってリコさんは首を横に振った。

 

「残念ながら違うわ。故郷の人たち向けに塾をやっているの。みらいにも手伝ってもらいつつね」

 

 所謂、海外の日本人学校みたいなものか。

 

「みらいも先生をしているの?」

 

「うん。といってもアシスタントみたいなものだけど」

 

「言われてみれば、みらいは教えるの上手いよね」

 

「そうなのよ。だから生徒のフォローも満遍なくできているの」

 

「そんな事ないよ。基礎はリコがしっかりと固めてるから」

 

「でも貴女じゃないと分からないこともあったし……、本当に助かってるのよ」

 

 人前でイチャイチャし始めた。甘ったるくて紅茶よりもコーヒーが欲しくなる。

 それにしても一緒に仕事をやっていくのか。そういう付き合い方もあるんだ。

 私はまだやりたいことなんてないし、あったとしてもパートナーとやっていくとなるとどうかなぁ。そのあたり揉める事はないのかな。

 

「ねぇ、2人で仕事して困った事はないの? 例えば方針が違って喧嘩したりとか」

 

 仕事に限らず、数人で集まるならありそうな話だけど、2人はあっさりと首を横に振った。

 

「リコも私も手探りでやっているから分からないことだらけなんだ」

 

「つまり喧嘩のしようがないってことか」

 

「そうね。それに故郷で身につけたやり方が、そのまま通じるとは限らないことも少なくないのよ。だから経験をそのまま当てはめるのも難しいの」

 

「人を相手にする訳だしね。むしろそっちの方が大変か」

 

「ええ。だからヘトヘトになったお互いをケアするのが、最近の日課になっているわね」

 

「どうやっているの?」

 

 上手くいく秘訣は、その中にあるのかもしれない。そうした心遣いは、相手の気持ちを繋ぎ止める上ではとても大切だからだ。

 

「まずは夜食に好きな料理をたくさん用意することかしら」

 

「私もリコほどじゃないけど色々作れるしね」

 

「貴女の料理ならなんだって大歓迎よ」

 

「どんな料理を出すことが多い?」

 

「そうだなぁ……。強いて言えば安くてお腹に溜まるものかな……」

 

 色々当てはまりそうだ。

 

「お腹に優しい物かな?」

 

「そうだね。それはあるかも。たまごの雑炊にとろろを落としたりね」

 

 あー、それは良いかも。温まりそうだし食べやすそうだ。

 

「逆にガッツリしたものの方が良い時もあるから、何を出すかはお互いの様子次第ね」

 

「何か基準があるの?」

 

「お互いを見てしがみついてくるかどうかね。しがみつくならまだ元気があるから重めの物で大丈夫。何にもしないなら疲れ切っているから軽めの物を用意する」

 

 そういう見方があるんだ。私も確かに疲れてる時はベタベタする気力なんてなかったっけ? あいつはどうだったかな。

 

「あとして欲しそうなら口移しをするとなお良し」

 

「ごめん。ちょっと何言ってるか分かんない」

 

 事もなげに言うけどさ、そこまでできるもんなの? 

 

「そんなに難しい事じゃないよ」

 

「どうやったらそこまでできるようになるのさ、みらい?」

 

「一緒に暮らして離れられなくなるまでになれば、自ずとかな……」

 

「リコさんと一緒に住んでたことがあるの?」

 

「中学2年生の時に1年間ね」

 

「へぇ……、その時から同棲してたんだ」

 

 また何を言い出すんだか、この子は。リコさん、紅茶を吹き出しそうになってるよ。

 てーか、そういう『準備期間』があったんだ。そしてさっきのイチャつき具合から察するに、かなり濃い日常を送ってたんだろうな。

 

「まさかとは思うけどさ、その時から2人で暮らしてたの?」

 

「残念ながらそれはないわよ。その時は私もみらいも学生だったもの」

 

 まぁ、中学生で一人暮らしもそうそう無いのに、同棲生活はもっと無理があるか。

 

「でもできればやりたかったよね」

 

「何を言ってるの! 貴女のお財布の紐の緩さを考えたら絶対にとんでもないことになってたわ!」

 

 へぇ……、意外と金遣いが荒いんだ。食費で溶かしているのかな? 使い過ぎていないかどうか、今度気をつけて見ていようかな。

 それで浪費家の方はというと、ちっとも堪えないどころかニヤニヤと笑っている。

 

「え〜、リコだってこの前カラオケボックスで私のバイト代パーにしたじゃん」

 

「うわぁ、マジ?」

 

「マジマジ」

 

 この人はこの人でえげつないことしてるなぁ。きっとわざとじゃないんだろうけど。

 

「あ、あれは料理が美味しかったからよ……」

 

「リコの食いしん坊」

 

「貴女もそうじゃない! いつも物凄い量を平らげるんだから」

 

「それはそうだよ。リコの料理だからね」

 

「あ、ありがとう……」

 

 みらい、丸め込むのが上手いな。ケーキの味からして本心なんだろうけど、リコさんが操縦しやすいタイプなのも大きいか? 

 

 

「お、おほん……、ケアの方法に話題を戻すわね。次にリラックスできる物を用意すること」

 

「例えばどんな物を?」

 

「アロマキャンドルやお香かな。あとは入浴剤」

 

「といってもそのあたりで売っているもので大丈夫。身体を休めるために良さそうな物を用意するだけで良いわ。ここまでは前座だもの」

 

 そんな適当でいいんだ。というか前座だって言ったよね? つまり本命があることになる。

 

「なら一番肝心なことって何?」

 

 私の質問に2人は顔を見合わせてから意を決したように頷き、声を揃えてこう答えた。

 

「自分の身体でパートナーを精いっぱい受け止めること。イライラもモヤモヤも全部吐き出してもらうんだ」

 

 身体を使う。つまりセックスか。

 

「そこまで……、やる?」

 

 あいつとそこまでいかなかったからか、どうしてもそういう疑問が浮かんでしまう。いくらパートナーのためだからって、自分をストレス発散の道具として差し出すのは抵抗がある。 

 

「やりたいんだよ。苦しい事は1人じゃなくて2人で抱えたいんだ」

 

 でもみらいの答えは、そんな私の考えとは全く違うものだった。発散じゃなくて負担を分けるという考え方だ。

 

「その為に私がいるし、みらいがいるんだもの。丸抱えなんかしないし、させないんだから」

 

「すごい……」

 

 続くリコさんの言葉に、この2人は良い意味でカップルなんだなと思わず感嘆の声が出た。  

 

「すごくもないよ。本当にすごい人なら心配なんかさせずに1人でなんとかしちゃう」

 

「その方が逆に怖いよ。1人だけだと訳の分からないことをやり出すかもしれないしさ」

 

「耳が痛いなぁ。私も1人でなんとかしようとして、結局ジンに溺れただけだったから」

 

「この前までたまに青い顔をしていたのはそれ?」

 

 頭を掻き掻き苦笑いしてるけど、あれ心配だったんだよね。でも訳を聞いてはいけないような気もしてさ、踏み込むに踏み込めなかった。今度からは踏み込むことにしようかな。

 

「貴女ったらそんなになるまで飲んでたの? 1杯だけだと思っていたわ」

 

「2,3杯煽らないと寝られなくて……」

 

「当分禁酒した方が良さそうね」

 

「そんなぁ」

 

「私も付き合うから」

 

「ならその分リコを食べちゃうから」

 

「いつもと同じじゃない」

 

「違うよぉ。リコにキルシュヴァッサーを揉み込んで、生クリームも掛けてぇ……」

 

「なんで私のボトルを引っ張り出すのよ」

 

「甘い匂いがするから」

 

「もう十分でしょ」

 

「そうかしら?」

 

「リコの身体は目一杯甘くしても食べられるのに?」

 

 溜まりかねて口を挟むと2人揃って首を傾げる。河豚が自分の毒で死なないように、この2人には自分の甘さが分からないらしい。

 

「さら、新しい彼氏とはここまでになりたい?」

 

「いや、流石にこれは無理だわ……」

 

 

「そうだ。2人でも重荷を背負いきれないときはどうするの?」

 

「その時は子供たちにも助けてもらってるわね。あの子たちも自分なりの方法で励ましてくれるのよ」

 

 甘ったるい空気をかき消すために新しい質問をぶつけるとまともな答えが返ってきた。

 

「ま、まさか身体に蜂蜜を塗りたくらせて」

 

 むしろ隣がおかしなことを言い出す始末。そんなことやらせたら今頃2人揃って檻の中だよ。まぁ、この2人なら嫌がらなさそうだけどさ。

 

「そんなことさせないよ! 料理を作ってくれたり、一緒にいてくれたりと、できることを精一杯やってくれるんだ」

 

「情けない話だけど、あの子たちがいないと行き詰まることも多かったのよ。みらいの深酒にも最初に気づいてくれたし、この子と喧嘩した時も仲裁役に回ってくれたし」

 

「喧嘩したときは2人揃って叱られたよね。教育方針で揉めてたから本末転倒になっちゃってさ」

 

「負うた子に教えられたわけか……」

 

 お互いだけじゃなくて子供たちとも持ちつ持たれつの関係なのは、中々できないよね。その子達もそれだけ2人のことをよく見ているのかな。

 

「お互いオープンなんだね」

 

「まぁね。カッコ悪いところをよく見せちゃうけど、皆んなも辛い時は話してくれるからさ、気恥ずかしさが出てくる事も無くなってるし……」

 

「失望なんてものもなくて、純粋に心配できるのよね」

 

「良い家族だね」

 

 カッコつけずに家族全員で支え合える空気を生んでおく。それだけでうまくやっていけるものなんだ。

 

「うん。自分の良いところもダメなところも見た上で一緒にいてくれるんだもん。最高の家族だよ」

 

「最高の家族か……」

 

 確かにお互いのことをそこまで知り尽くしてるならそうだって言い切れるよね。でもそこまでの相手を探すのは簡単じゃない。

 そうだ。一つ聞き忘れていたことがあった。

 

「みらいって、リコさんとどうやって知り合ったの?」

 

「リコの故郷に短期留学した時に知り合ったの。その時に同じ寮を割り当てられてね」

 

 そこから同棲生活のスタートってわけか。でも普通そこまでにはならないよね。

 

「恥ずかしい話だけど、その時の私が落第生だったのよ。でもそんな私に正面から向き合ってくれてね、困っていた時は手助けしてくれたし、自信を無くした時は励ましてもくれた。だから留学が終わったときに離れたくなくて、ここまで押しかけたのよ」

 

 行動力あるなぁ。

 

「リコがこっちに来てからは、逆に私がワタワタしているところを助けてもらったり、お互い努力していることに触発されたり……」

 

「昔から二人三脚だったんだ」

 

「お互い得意な事も苦手な事も正反対だったからね」

 

「そういう人を見つけりゃ良いのかなぁ……」

 

「それが良いかもしれないわ。といっても最初は水と油だと思ってしまうから、お互い違っているからこその良さに気づくまでに別れちゃうかもしれないのは気をつけた方が良いわね」

 

「リコも最初はそんな感じだったもんね」

 

「貴女みたいにグイグイと押し込んでくる子と付き合ったことがなかったからよ。友達だっていなかったし」

 

「なるほど〜。だから私を独り占めしたがったわけか〜」

 

「う、うるさいわね。貴女だって私のことを独り占めしたがってたじゃない」

 

「私のリコだもん」

 

「独占欲も強い方が良いみたいだね。うん」

 

 お互いベタベタしておけば、離れるに離れられないのか? こればかりは人にもよるのかもしれないけど、私はそこまででも無かったしなぁ……。

 

「その方が自分が持ってるものはなんでも渡せるからおすすめかな」

 

「なるほど」

 

 それは確かにそうかもしれない。ケアのことも絡めたら素直になれるのは良いことだしね。

 しかし水と油のような人で、それでいてお互いに素直になれるだなんて、中々に厳しい条件だ。簡単には見つかりそうにない。

 でもお互いを支え合いたいという考え方は、すぐにも真似できそうだ。そういう考えが根っこにあるならパートナーと末長く付き合うこともできそうだし、何より近くにいる皆んなをより大事にすることもできそうだから。

 

 

「持ちつ持たれつ支え合いか……」

 

「それであそこまで良い家族ができてるんだから大したもんだよね。しかもさ、あれ家族以外にも使えるじゃん。友達相手とかさ」

 

「本当にね。ところでさ、さら……」

 

「何?」

 

「実は明日までのレポートがまだ手付かずなんだけど、支え合いだと思って手伝ってくれない?」

 

「それは自分でやりな」

 

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