推し活に励む底辺冒険者、レア素材を貢いで実力者をざわつかせる   作:フーツラ

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第12話 ギフト鑑定

 ギフト開封配信終了後、白蘭魔法団の団員達は各々が受け取ったギフトを手にし、宿舎の自室へと戻っていた。

 

 配信を行っていた食堂に残っているのは後片付けをしている二人の職員と三人の団員。パオラ団長とカリー副団長、そして新人のエルルだけだった。

 

 エルルは蒼く輝く小瓶を手に持ち、じっと眺めている。その美しさに見惚れているようだ。

 

「なぁ、パオラ。この光る石、なんだと思う?」

 

 カリーがエルルの手で光る石を指差す。

 

「私も本でしか読んだことないけど、精霊石じゃないかしら?」

 

「精霊石」という言葉に、ベテラン職員が驚き振り返った。配信の後片付けをする手が完全に止まってしまっている。

 

「精霊石ってなんですか?」

 

 一方のエルルはよく分からない。という様子で首を傾げ、パオラに説明を求めた。

 

「精霊の力を閉じ込めた石。と言われているわ。それを持つ者は精霊の力を借りることが出来る」

「精霊の力を……」

 

 エルルは精霊石を見つめる。精霊石は、それに応えるように蒼く強く発光した。まるで、意思があるように。

 

「最も、相性もあるらしいから誰でも力を借りられるわけではないらしいけどね」

 

 パオラは付け加えた。

 

「とにかく鑑定だな。中の液体もちゃんと調べないといけないし」

 

 カリーの発言にパオラも頷く。

 

「【鑑定】ってどこでやってもらうんですか?」

「確実なのは冒険者ギルドね。【鑑定】スキルを持った職員がいる筈よ。明日、一緒に行く?」

「いいんですか?」

 

 エルルは嬉しそうにパオラを見上げた。

 

「ええ。冒険者は荒くれ者が多いから、エルルを一人でギルドには行かせられないわ。前回もらった白く輝く櫛もついでに鑑定してもらいましょう」

「はい!」とエルルは元気に返した。

 

「そういえば、エルルにそのギフトを贈ったやつも冒険者だったな」

「通りすがりの冒険者さん。ですか?」

「あぁ」

 

 カリーは腕組みをして、険しい顔でパオラに尋ねる。

 

「もし、これが本当に精霊石だとして、そんな伝説級のアイテムをポンと貢ぐ冒険者ってどんな奴だと思う?」

「うーん。少なくともA級、もしかしたらそれより上……」

「S級? 今、王国には二人しかいないが……」

 

 二人のやり取りを聞いて、エルルは目を大きく見開いた。

 

「通りすがりの冒険者さんが……S級……」

「本当に冒険者だったらの話ね。冒険者ではなく、商人や貴族の可能性もあるわ」

「どちらにしてもエルルには太いパトロンがいるってことだな! うらやましい」

 

 カリーはエルルの肩を小突く。

 

「とにかく、明日【鑑定】してもらましょう」

「はい!」

 

 エルルは笑顔で返し、愛しそうに蒼く光る小瓶を見つめていた。

 

 

#

 

 

 朝と昼の間。気の早い人が昼食の準備を始めた頃。冒険者ギルドの白いローブを纏った二人の女が現れた。

 

 ギルド内にいた冒険者達は二人に好奇の視線を向ける。

 

「あれは……?」

「白蘭魔法団の団長だろ……」

「もう一人のちっこい奴は?」

「見かけない顔だな。新人じゃないか?」

 

 冒険者達は白蘭魔法団のことを口々に噂する。パオラとエルルは居心地の悪そうな顔をしたまま、買い取りカウンターに進み、列に並ぶ。

 

「だ、団長……。凄く、見られてます」

「無視しなさい。目を合わせちゃ駄目よ」

 

 パオラはあえて冷たい声を出し、周囲の冒険者を威嚇する。懲りない冒険者達はパオラの声を聞き、あえて野卑な言葉を吐き続けた。

 

「? 本日はどうなさいましたか?」

 

 買い取りカウンターに座るブラウンの髪をした女がパオラとエルルに声を掛けた。明らかに冒険者とは風貌の違う二人が現れたことを怪訝に感じているようだ。

 

「ちょっと【鑑定】をお願いしたいアイテムがあるの。確か、冒険者以外でも【鑑定】はお願い出来たわよね?」

「はい。料金はかかりますが、可能です。大変失礼ですが、ご所属とお名前は?」

 

 カウンターの女は緊張した様子で尋ねる。

 

「白蘭魔法団の団長、パオラよ。こっちの子はエルル」

 

 パオラが名乗ると、周囲の冒険者が「やっぱりな」と口々に呟く。

 

「パオラ団長でしたか。ご活躍はかねがね伺っておりました。ここでは落ち着かないでしょうから、二階に参りましょう。応接室にご案内します」

「気を遣わせて悪いわね」

 

 女職員はカウンターから出てきて、二人を先導するように歩き始める。一階フロアの奥にある階段を上がり、重厚な扉を開く。中は、落ち着いた雰囲気の部屋だった。皮のソファーが向かい合うように並び、間にローテーブルがある。

 

「どうぞ、お掛けください」

 

 女職員に促され、パオラとエルルはソファーに腰を下ろす。エルルは「わっ、柔らかい」と驚きの声を上げて少しはしゃいだ。

 

「私は鑑定師のコリーナと申します。一階では不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした。冒険者ギルドに魔法団の方が来られることは珍しいので……」

「いいのよ。冒険者はあんなもんだって分かっていたから」

 

 パオラは「何でもない事よ」と加え、軽く笑顔を作った。

 

「それで、アイテムを【鑑定】されたい。とのことですが?」

「ええ。この子が受け取ったギフトの品を【鑑定】して欲しいの」

「ギフトですか?」

 

 コリーナは不思議そうな顔をした。【鑑定】が必要なほどの品がギフトとして贈られるのが意外だったようだ。

 

「はい。この二つを【鑑定】してもらいたくて」

 

 エルルがピンク色のポシェットを開き、何かを取り出してローテーブルに置く。それは白く輝く櫛と蒼く光る石のついた小瓶だった。コリーナが目を見開く。

 

 明らかに普通の品ではない雰囲気を感じとったようだ。

 

「では、失礼します」

 

 そう言って、コリーナは先ず、小瓶に手を伸ばした。蒼く光る石に軽く触れ、瞼を閉じて集中する。

 

「えっ……!?」

 

 驚きの声がコリーナから漏れた。

 

「どうだった?」

 

 探るようなパオラの声。

 

「……これは、水の精霊石です……」

「やはり」と呟き、エルルにチラリと視線を送る。

 

「あの……。瓶の中に入っている液体は何か分かりますか?」

「ちょっと失礼しますね」

 

 コリーナは小瓶の中身をローテーブル一滴垂らし、慎重に指を触れる。

 

「……? 水のエレメンタルスライムから作られた化粧水……?」

「水のエレメンタルスライムですか?」

「はい……。そのように【鑑定】結果が出ました」

 

 そう答えながら、コリーナは考え込んでしまう。様子の変化にパオラが気付き、問い掛けた。

 

「何か思い当たることでも?」

「……はい。実は最近、星の湖周辺に水のエレメンタルスライムが出現したという情報があって、討伐依頼が出されていたんです」

 

 パオラの目つきが鋭くなる。

 

「で、討伐されたのか?」

「はい……」

「それは、誰に……?」

 

 コリーナが唾を呑み込み、時間を稼いだ。パオラはじっと見つめ続ける。

 

「B級冒険者のトマージです」

「B級冒険者。ベテランなの?」

「いえ。確かまだ、十八歳の筈です」

「十八歳でB級……。かなり優秀な冒険者のようね」

 

 パオラは目を細める。エルルは何故か頬を赤くする。

 

「こちらも【鑑定】しますね」

 

 コリーナはローテーブルの白く輝く櫛に手を伸ばし、軽く触れる。そして、再び瞼を閉じて集中した。

 

「……そんな……嘘でしょ……」

 

 瞼を開いたコリーナが櫛を持つ手を震わせる。

 

「どうしたの?」

「あの、これもギフトとして贈られた品なんですか?」

 

 コリーナはパオラの質問には答えず、エルルに尋ねた。

 

「はい。精霊石を贈ってくれたのと同じ人からのギフトです」

「……そうですか……」

「一体、どんな素材から作られた櫛だったの?」

 

 パオラが急かす。

 

「これは、白龍の爪から作られた櫛です」

「白龍……!?」

 

 今度はパオラが腰を抜かした。

 

「白龍ですか?」とよく分からない様子のエルル。パオラが諭すように説明を始めた。

 

「実は最近、王国と帝国の国境の山間部に白龍が現れたという情報があったの。ただ、両国は緊張状態にあるから調査が進んでいなかったのよ。そもそも、白龍が危険すぎて、誰も近付きたくないっていうのもあったけどね」

「白龍ってそんなに強いんですか?」

 

 パオラは呆れた様子で返す。

 

「白龍は光属性をもった龍よ。強固な障壁を展開し、全てを無に還すブレスを吐くと言われているわ。もし、単独で討伐できる人がいるとすれば、それこそS級冒険者でしょうね」

 

 エルルは黙り込んでしまう。

 

「もし、エルルに二つギフトを贈ったのがトマージって冒険者だとしたら、その男は将来S級になるかもしれないわね」

「ええ……。冒険者ギルドとしても、彼にはより一層注目していきます」

 

 パオラとコリーナは頷き合う。

 

 エルルはじっと、ローテーブルの上の白く輝く櫛と蒼く輝く小瓶を見つめていた。

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