布団に入ると、いつも考える。『明日なんて――』と。
長らくやっていたせいで、布団に入れば勝手に浮かぶくらいに、もう癖として染みついている。
……でも、最近は、それが変わってきているのが、分かる。
それはきっと。
「――――――~~~~~~」
先生の、おかげだと、思う。
顔が熱くなるのを感じて、布団を頭まで被る。布団の冷たさで冷えてくれるかと思ったら、布団ごと熱くなって、息が苦しくなった。
――何をやってるんですかね……。
あまりに自分の行動が馬鹿馬鹿しく思えて、勝手にため息が出た。
布団から顔を出して、見慣れすぎた天井を眺めていると――今日のことが、頭を過ぎった。
――先生、私の愚痴みたいなモモトークだったのに、来てくれるだなんて。……本当、先生って人は…………。
お人好しという言葉で片づけてはいけないくらい、いい人で。幹部の二人が呼んだら来てくれるのと同じように、私なんかが呼んでも、来てくれる。
そんな先生に、私がどれだけ救われたか。――分からない。
少しでも、ご恩を返したい。少しでも先生の助けになりたい。
そう思ってはいても、先生へのご恩は貯まっていくばかり。この間のコーヒーメーカーの修理だって、そう。あんな、ものすごいレストランに連れて行ってくださったら、恩をお返しするどころか、余計に増えちゃって。
今日だって、そうだ。
「…………あっ」
頭が幸せになりすぎて、先生にお礼のモモトークをお送りしていなかったと、今更ながらに気づく。
時刻は――日付が過ぎるかどうかと言ったところ。
「………………ううぅぅ…………」
この時間にモモトークをお送りするのは失礼、ですかね……と考える自分と。
頂いたご恩に、感謝の気持ちを伝えなきゃ……と考える自分とが頭の中でケンカをし始める。
考えに考え抜いて。結局、『言葉は伝えなければ伝わらないですから!』と強く主張する側が勝利して、モモトークを送ることに。
モモトークを開く。一番上の『先生』と書かれた名前をタップ。
それまでのやりとりが――慌てて打ち込んだ誤字も含めて――全てが表示されている。その部分を見ると恥ずかしいのだけれど、一度外に出た物は消えないから、そのまま。
息を吸って、吐いて。気合いを入れて、モモトークに文字を打ち込む。
【今布団に入ったんですけど】
【明日が、楽しみです】
つらつらと書くのはご迷惑かと思い、端的に書く。【先生のおかげで布団に入れます】だなんて正直に書きすぎたら先生が困ってしまうだろうから、少し遠回しに。
そして、帰り際にお話した、私の本心を付け加える。【先生のおかげで】という言葉は、なんだか恥ずかしくてmお送りする前に消した。
そしてそのまま、【おやすみなさい、先生】と打ち込もうとしたら、【書き込み中……】の表示が出て変な声が出そうになった。先生、こんな時間のモモトークにも返信してくださるなんて――。
【うん、私も】
「――――――」
表示された文字を読んで。……どうしようもなく、口がにやけてしまうのが分かった。胸がドキドキと鳴り始めるのが分かった。嬉しいって気持ちが、抑えられなくなるのが、分かった。
【これも全て先生のおかげです】
だから、だろうと思う。
一度は打ち込んで消しちゃった言葉を、送ろうと思ったのは。
【アオバが頑張ったからだね】
「…………そんなこと、ないです。私じゃなくて。全部、ぜんぶ、先生の、おかげですから」
先生が聞いてるわけでもないのに、声が出た。――そうじゃないと、恥ずかしさで、嬉しさで、幸せで、また、変な声が出ちゃいそうだったから。
先生からいただいた言葉が嬉しくて。なんてお返ししようかと、少しの時間悩んで――。
口から出た言葉をそのままお伝えするのは、やっぱり恥ずかしいから。一度打ち込んだものを消して、打ち込み直した。
【えへへ。そうかも知れないですけど】
【でも、嬉しいです。本当に……ありがとうございます】
【おやすみなさい】
お礼の言葉をちゃんと言えた。おやすみの言葉も伝えられた。
これが私の、一方的な満足だとは思ってるし、答えに期待なんてしていない。
これで安心して寝れますね、と思い、スマホの電源ボタンを押すと。
暗くなった画面に、ポコン、と、通知が表示された。
【おやすみ、アオバ】
先生からの、モモトーク。
――おやすみって、私が言って満足しただけなのに。
――全然、期待なんて、してなかったのに。
「………………」
なんだかそれでもう、嬉しいんだか泣きそうなんだから、分からなくなった。
「…………先生……」
気づけば、スマホを胸に抱きしめてた。
嬉しくて、幸せで、温かくて。
どうしても、布団の中で、胸がドキドキして、目が冴えて、仕方が無い。
症状は、これまでとまったく同じ。
直りようがない、胸の鼓動。直りようがない、目の冴え。どう叩いても、直りようがないと思っていたこれらは――今もずっと、私を襲い続けている。
でも、『明日が来なければいいのに』と思っていたことだけは、それまでと真逆で。
――明日が、楽しみ。
そう、思えるようになった。
「…………はぁ」
天井を見ながら口から出るため息も、前と同じはずなのに。
なんだか、そのため息の温度も、違って感じた。
絆エピソード&モモトークのネタバレ注意です。
初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はまたありがとうございます。みょん!です。
4月22日に実装された内海アオバちゃんが刺さりすぎて、今週、気がつけばずっとアオバちゃんのことばっかり考えてました。
アオバちゃんのかわいいところは随所に見えるですが、その中でも絆エピソードで、絆2の『あいへいとでぃすわーるど』から、絆4の『あいへいとでぃすわーるど(うぃざうとゆー)』になった瞬間は本当言葉に出来ない嬉しさがありました。
そんな絆4を元にした短編です。
内海アオバちゃんを幸せにしたい委員会末席です。どうぞよろしくお願いします。