OK、じゃあもう一度だけ説明しよう。
地獄、落ちちゃった。
それで、俺、デーモンになっちゃったよ…
以上。
ねえまって、その前は?記憶無いなったけど。え、てかお金は?
小麦色に焼いたはずの俺の肌が、まるで腐った肉のような緑色になってるのは何で!!?
赤だらけで目が痛くなる建物、ものが腐った臭いが充満してるし、周りの悪魔たちの話してる英語が早いわ訛ってるわそもそも英語話せないわで全くわからん!
「あかーーーーん!!!」
パニックになって叫んでみれば、日本語が珍しかったのか牛だの熊だの動物がもとになったであろう悪魔がなんだなんだと集まってきた。
本能が告げる、ここにいては危険だ。
気付けば俺は走っていた。びよんびよんといつの間にかばねになっていた両足を使いながら。
一飛びで屋根を超え、両手をばたつかせて何とか体勢を整えながら走っていく。
しばらくそうしてから人通りの比較的少ない路地で、俺はやっと一呼吸置くことが出来た。
落ち着いたところでまずは状況確認である。
右見て肉片、左見てマフィア構成員っぽいの、上見て絶望、下見てゴミと腐乱した何か。
通りで臭いはずである、どうやら俺は地獄に来てしまったようだ。
アメリカの路地でもこんなん無かったぞ…
おー?アメリカとな?あ、なんか少し思い出してきたな。
そうそう、俺は確かアメリカ旅行していたんだった。
本場のハンバーガーやらピザに舌鼓を打ち、ハリウッドにも行った。
まさか世界に名をはせる有名俳優達に会えるなんて思ってもいなかった、ハグして貰ったのは良い思い出だ。
楽しかったなぁ。
で、話を続けると、俺は酒を飲んで、ハッピーになってウヒャヒャヒャと遊んで歩いていたら。
路地から出てきた目がキマっている明らかにやべーのに因縁を付けられて…
腹をさする。
あー…なるほどね。俺がこんなところにいるの、死んだ場所がアメリカだったから説?
そんな情報知りたくなかったなぁ…神様もなんて適当な…
てか俺普通に地獄に落ちたんか、いや実はここが天国という可能性も……どう見ても治安悪すぎだから無いな。
状況を理解したらなんか滅茶苦茶腹減ってきた。
そろりと路地から顔を出し、通りを見てみたらなんかホットドッグらしいものやタコス的なを売っている。
最悪なのは値札が付いていたこと、要は貨幣経済があるってことである。
腹減りの俺にそれは拷問であったが、頑張って耐えた。俺は偉い子だ。
さて、となると金を得る必要がある。
最悪乞食を…
「GAHAHAHA!DO YOU WANT GOLD?TAKE THIS!!」
横目で見ていた乞食の悪魔へぶちまけられる大小混じった汚物。
止めよう、ろくなもんじゃない…全身を排泄物塗れにされるのはゴメンだ。
というかこいつ等マジでイカれてやがる。
街中でドラッグパーティーが行われてるし、銃の乱射等当たり前であちこちで爆発や叫び声や喧噪が繰り広げられている。弱肉強食レベル100かな?
それに伴い、街はいたるところがボロボロだ…塗装ハゲどころかえぐれてやがる。
しかもさっき飛んで来た瓦礫のせいで俺の一張羅がダメになりかけている。
ここらは汚水だらけで洗うための綺麗な水さえ見つかりやしない、おかげで喉もカラカラだ。
人間、水がなくても動けはするらしいが、金も何もない俺、これから先大丈夫かね?
案外悪魔になったおかげで体が丈夫になってたりして大丈夫かもしれん、知らんけど。
はーっとクソデカい溜息が口からまろび出る。これからどうしよ。
「MAY I HELP YOU?」
「オーセンクス!」
いっそのこと盗みを、と考えていた所で声がかかる。
うぉお!!?ビックリしたがこれは知っている英語!!
なんとか声を絞り出し、ムキムキな赤肌悪魔の兄ちゃんへ何か飲み物はないかとジェスチャーで伝える。
相手は何やらふぅむと考える素振りを一瞬して、付いてこいとこれまたジェスチャーで返してくれた。
事情を一瞬で察してくれたようだ、心底ありがたい!
そして歩くうちについたのは肉屋さんだった。
ここは多分、さっきのホットドッグ屋に卸してる肉屋ってところかもしれない。並んでいるソーセージが同じ色なのだ。
ちょっと紫がかってるので間違いない。
腹が減ってるとこういうものでも普通にうまそうに感じるのだから空腹とは恐ろしいものである。
まあ、血で作ったソーセージとか黒だし、そんなもんよね。ドイツのあれはそこそこだった。
野菜で言えば紫キャベツとか、ビーツみたいなものだと思おう。
さてさて、美食の思い出に浸る前に現在はと。
「Q#$’(=~=」
早口だし、訛っているっぽくて言葉は分からないが、ゆっくりしてくれというところだろうか。
ジェスチャー的には肉屋の兄ちゃんが刃を研ぎ、肉を捌いてくれるようだ。
台の上の極厚肉塊を振舞ってくれるとかならとても嬉しいな。
お、こっちへ来いって?せっかくだし見学でもどうだってことだろうか?なんかあんまり見たことないしそれじゃお言葉に甘え…
「CHOP?*‘{}{>>!!!」
「うぉっ!?あぶね!!!」
兄ちゃんが俺へ向かって肉切り包丁をフルスイングして来やがった!
気のいい兄ちゃんだと思ったのに、とんだ注文の多い料理店だったってわけか。
俺は大きく縦に振られた包丁を頑張って避け、相手の鼻っ柱を右ストレートでぶっ飛ばした。
身に着けてて良かったボクシング。
海外旅行で何かトラブルに巻き込まれた際に使えるよう、俺はこれまで頑張って来たのだ。
腰の入った一撃は結構いいところに入った様子で、なんと一発で赤肌野郎はのびていた。
ぺっ、甘ちゃんが。
ではさっさとお暇することにしよう。
「最悪だよ全く…これ正当防衛で大丈夫だよな?」
法整備されているのか分からないが、取り合えずこれ以上やり返すのはなんか日本人的に嫌なのでこれくらいにしておこう。
せっかくだ店のソーセージとレジそのもの、携帯食料や等の生活必需品あたりを持っていくことにする。
正当防衛正当防衛、へっへっへ。
はぁ…しかし前途多難だなぁ。早いとこ安心安全な職場を見つけたいものだ…
そういうことで、俺はバネ足をびよびよ使って、この場を後にした。
尚、ソーセージはあのホットドッグ屋へちょっと早いけど納品に来ましたよ感を出して買い取って貰った。相変わらず言葉は分からないが小学生英語でもギリギリ伝わってよかった。
一人海外旅行者のコミュニケーション能力を舐めるなよ。
さっきの兄ちゃんの所業的に何が入ってるか分からないのは食べたくないから必死である。
こういう袋包装された、どこにでもある食べ物の方が安全で良い。
「っぷはぁ!生き返る~」
レジを抱えながら屋根から足をぶらつかせながらミネラルウォーターを胃にぶち込む。
地獄で初めて飲んだ水はそこそこ美味かった。
これから、これをいつも飲むことになるんだと、ちょっと覚悟も入れることになった。
書きだめは無いので、気が向いた時に書くことになると思います。
楽しんでくれたら最高、感想くれたら絶頂です。