深淵歩きが異世界に召喚されるそうですよ? 作:(( ´・ω・))
突発的復活
えたった?帰ってきたからノーカン
ーーーやった。
問題児たち前方に着地した黒ウサギは拳を握り、土煙の舞うアルトリウスがいた場所を睨む。しかし、鬼気迫る表情を見せていた彼女の顔は笑みとは言い難い口角を上げ目を見開いてを浮かべ、今にも踊りだしそうに歓喜をこらえていた。彼女の後に付いてきていた問題児たちは、それぞれ唖然とした表情を浮かべ、土煙を見やる。
「「「やったか....?」」」
砂埃が落ち着き、視界が晴れた先、そこは大きく土を減らし、巨大なクレーターを形成していた。
そこは問題児たちのいるところからは最も深く掘り起こされた場所が確認出来ないほどの、過剰と言っていいほどの威力の爪あとだった。すると、黒ウサギは幽鬼のように立ち上がり、ふらふらとした足つきでクレーターの淵に歩み寄る。両膝をつき、中をのぞき込んで、目を再度、見開いて歓喜に打ち震え、天を仰いだ。
「.....やったんだ」
「終わったんだ......!」
「お父様、お母様、黒ウサギは、黒ウサギめは、やりました!!」
涙をこぼし、喜ぶ黒ウサギ。そんな彼女の背後から人影が一つ歩み寄り、頭に手が置かれた。
「うんうん、偉い偉い」
「はいっ、はいっ.....、はい?」
彼女の頭に置かれた手は、彼女の頭よりはるかに大きく、金属と金属を打ち合わせた音を立てながら、彼女の頭をなでた。
「たまにやりたくなるのはわかる」
黒ウサギに貫かれた場所である胸部には無傷の鈍色が光り、アルトリウスはそう言って無傷の腕で黒ウサギの背を叩く。
「じゃ、次行ってみよう!」
「なんっ.....!?くっ!」
何事も無かったかのように隣にしゃがんで指摘してくる無傷のアルトリウスに驚愕して一瞬行動を鈍らせた黒ウサギだが、持ち前の脚力でクレーターを挟んだ外門の階段の上に飛び込む。受身を取ろうとして二転した後、身を起こさず元いた場所を見た。しかし、そこにアルトリウスの姿はなく、その奥のこちらに向かって指を差す問題児しかいない。
「Shit!」
思わず舌打ちをしたことも気に止めず黒ウサギは視線をめぐらし、耳を立てて全方位を探る。そして気づいた。隣りに寝そべった状態で草笛を吹いていた騎士に。
「貴様....!」
「怒ればいいってもんでもないんじゃないかな?」
無性に腹が立つ彼の顔面に起き上がりざまに右拳を振るうが、彼の鎧の肩部に阻まれ、指の付け根、髄質を大きく変形させた。鋭い痛みと鈍痛を味わい、苦悶の声音で唸る。
当の騎士はどこ吹く風と松のような針葉樹の葉でオーケストラを奏でようとするが、それは黒ウサギによって中止された。刀をためるように腰をひねり、矢を射るように肩全体で引き絞り、槍を突き刺すように至近距離から放たれた彼女の拳は、彼の顔面へ一直線に振り抜かれた。しかし、その渾身の一撃は彼が身を引き上方へ反らしたことで、その勢いにより姿勢を崩された。全身を使った一撃のため、浮き上がった黒ウサギの体はそのまま、アルトリウスへ背中から倒れ込み、彼に拘束された。
「離せ!こ!の!」
「先ずは人の話を聞いてからでもおかしくないんじゃないかな?」
「うるさい!貴様もアレの龍なんでしょう!」
「頭を冷やせ。何を言いたいかもわからん」
羽交い締めの状態でも暴れる黒ウサギの頭を叩き、外門の内側にあるシンボルでなく、モニュメントとして置かれている噴水に放り込む。しかし空中で姿勢を起こすことなど造作もなく、黒ウサギは胸を中心に半回転して地面と平行に、足から飛び込むような体制となり、噴水の出水口である壺を抱えている女神像の頭に着地しようとする。
しかし、アルトリウスがそれを許さず追撃に入る。大剣を下段に構え、踏み込み、踏み抜きつつ、中段に持ち上げながら突き上げる。
ジンが声を上げる。黒ウサギは崩れるように水へ落ち、アルトリウスが剣を収めながらすくい上げる。
「ほうほうほうほう、するとなにか、お前は俺を一族の仇のその変なの一味と間違えたと。確認もせず殺しに掛かったと。....へぇえええええええ」
「ま、誠に申し訳なく...」
土下座をして小刻みに震えている黒ウサギ、正面に体長2メートル強に及ぶ痩身の騎士が足を組んで見下ろしている。傍から見れば、否、傍から見なくとも虐めているのだが、圧倒的なものが弱者を搾取しているように見えるソレは辺りから避難の眼差しを向けられてるが、本人は、アルトリウスは全く気にするそぶりもなく、眼前の少女を見下ろしている。
アルトリウスの後方から拍手がなる。何事かと問題児たちが見ると、金髪を後ろへ撫でつけ、野生味が溢れる顔つきをし、似つかわしくない今にも裂けそうなピッチリとしたスーツを着た男が歩いてきた。男は貼り付けたような笑みでアルトリウスに近づき、ジンを見て目を見開いた。
「おやおや、なにか騒ぎがあったと思い来てみれば、ノーネームごときが...。先ほどのお手前拝見させていただき、私の名はガルド・ガスパー。先ほどの一閃、ワタクシ真に感動いたしました。騎士様、この者達はノーネーム。このような過去の栄光にすがりつくものでなく、どうでしょう我がコミュニティに是非とも入ってください!我がコミュニティ、フォレス・ガロはこの外門を司っており!」
ガルドが雄弁に語っていると、先程まで頬杖をしていたアルトリウスが頬杖をやめ、人差し指を口元に当てた。それを見て男は口を弓なりに曲げ頭を下げ一歩下がる。アルトリウスが組んでいた足を外し立ち上がろうとすると、黒ウサギがその足を土下座をしたまま掴んでいた。アルトリウスはその足を動かさず、片方の足を滑らせて、片膝たちになり黒ウサギを見た。
「頭をあげよ、俺が許す」
黒ウサギは絶望していた。自分の間違いにより、相手を攻撃し、その謝罪をしている時という最悪のタイミング。白夜叉の庇護下の組織のものではなく、流れてきた者。しかも魔王の庇護下の者、という最悪の相手。さらにそれらを差し引いて残ったコミュニティ自体の価値の圧倒的な差。そして今現在、ガルドと自分に対するアルトリウスからの評価。終わった。そう、思った。現在自分たちの価値は無どころかマイナス。そこにブランドの消失、信用の消失。消え入りたい気持ちであった。せっかくのゲームで手に入れたコミュニティの救世主になってくれるかもしれない人を失うのだ。目の前のアルトリウスが立ち上がる。どうか、行かないでと願い。手が伸びた。彼はそれを払いもせず、跪いて言った。頭を上げろと、荘厳な声音で言われる。どうする。どうやって彼を引き止めるその事が脳を駆け回る。すると視界に映るそれを見て気づいた。価値ならあった。残っていた。ここにあった。意は決した。
黒ウサギが何かを言っている。アルトリウスはそれを見るばかり。そして黒ウサギが勢いよく頭をあげ言った。
「私のすべて、あなたに捧げます」
世界が止まった
頑張る