まぁ忘れられてると思いますがね。
時間経って四年生になりました星野ソラです。今日は休みでアイと一緒に外に出ています。
四年生になってから2人だけの外出許可が出たから、早速遊びに行くために外に出て人通りが多い所に行ったんですよ。その結果多数の人に見られて居心地が最悪です。主に見られているのはアイだけど。
いやアイがね、魔法を使わずに行こうって言ったんだよ。別に俺も良いかなって思ったよ。と言うか狙いもあって魔法を使ってないし、見られる事も承知の上で外に出ているし。だからと言って見過ぎだろ。
「あははは! 私が小さくなってもやっぱり分かっちゃうんだ~」
一度立ち止まって俺を見て楽しそうに言う。
「何を言ってるんだこのバカアイドルは。別にアイの事を見ている訳じゃ無いぞ」
「そんなの分かってるよ。でもさぁ周りを見てると、みんな私を見てるよ」
確かにアイの言ってる事は合っている。ある人はアイを見て泣き崩れる人、ある人は荒んだ心に癒しを得たのか胸を抑えている人、ある人はスマホのカメラで撮影しようする人。撮影したい気持ちは分かるが、撮影をしようした人は魔法でスマホを一時的に使えないようにしている。後はさっきから尾行している人だろうか。
尾行については俺がとやかく言う事は出来ない。俺だって尾行とか普通にやるからな。ただこれが誘拐だったら話は別になる。狙いはアイなのは確定だが、俺も含まれているかは分からない。だがどうでもいい。アイを狙うなら容赦なく叩き潰してやろう。
「怖い顔をしてどうしたの。何か変な人でもいた?」
「―――いやなんでも無いよ。ただこの後が大変だなって思ってたんだよ」
「ふーん…」
アイは俺が言った事に訝しんでいるが、俺ならどうにかするだろうと思っているのか、前を見て歩き始める。俺も歩きアイについて行く。
「で、休日初めてのデートになるんだけど。何処か行きたいところにあるのか?」
「ソラってそう言う、恥ずかしくなるような事を平然と言うよね。なに羞恥心が無かったりする」
「あるに決まってるだろ。際どい服を着たりとか裸を見られたりとか」
「え、それって私がいつも見てるよね。今でも恥ずかしいと思ってるの?」
「思ってるよ。家族ならまだしも異性に見られるのはどうも慣れない。何度も転生してもな。夫婦になった後でも恥ずかしいと思ってたし」
「へぇー…ならもっと見れば私の知らないソラを見ることが出来るってこと」
「よーしこの話は終わり! 何処に行くんだ?」
「―――洋服を見に行きたい。そろそろ私とペアルックしても良いと思うんだよね~」
「ペアルックか。それって俺は女装しないといけないのか?」
「うん」
「なるほどお揃いの服か。スカートだったらストッキングは履いても良いよな? スカートで生足を晒すのは嫌だぞ」
「ど~しよっかな~」
「嘘だろ。履くなって言うのか。止めてくれ、俺はスカートを履いて生足を晒したくない。半ズボンとはまた違った感覚なんだぞ。聞いてるかアイ? アイ!?」
アイは何も言わずに早歩きで目的地の洋服屋に向かう。俺も早歩きでアイについて行くが、出遅れたせいかアイは店に入って行った。店に着いたとき靴紐を直すフリをしながら、一度周りを確認する。
やっぱりまだ付いて来てるな。しかも物陰に隠れながら付いて来ている。何でこれでバレて無いと思っているのか分からないレベルだな。後は他にも尾行している人がいるが、これは尾行している奴を尾行してるって感じだな。さっきからそいつに対して殺意を送ってる感じがする。俺が何かする前に周りの人たちが何とかするかもしれないな。
尾行している奴の顔を憶え、店に入ってアイを探しに行く。アイを見つけ近くまで行くと、まるで待ってましたと言いたげな顔で、両手に持っている服を俺に差し出してくる。俺は何も言わずに服を受け取って試着室に行く。
☆
何度か試着をしてみたがこの店の服は、良いデザインを仕入れているな。お陰で買いたい服の候補が増える一方だ。さすがに持っているお小遣いでは精々二着買うのが限界だ。今まで試着したものの中から選べるだろうか。
さてそろそろ現実逃避から離れて、目の前で興奮しながらも猛禽類の目になり、俺を狙っているアイを何とかしないといけない。
「落ち着けアイ。いくら興奮するような状態だとしても、ここではマズいし子供の俺たちがしては駄目だと思う」
「私は悪くない。ショートヘアーで似合うのがいけない。可愛いのがいけない。綺麗なのがいけない。私をこんな気持ちをさせたソラが悪い。だがら…ね」
「駄目だけど。待て、近づくな顔を掴むなキスをしようとするんじゃない!」
「――――――お客様、少々よろしいでしょうか!!」
あと一歩。あと一歩でキスをされる所を店員さんに声をかけられた。アイは今にでも舌打ちをしそうになるが、グッと我慢して店員さんを見る。
「お客様。なにやら洋服選びで迷いがあると見ました。そこで不肖わたしくめがこちらの洋服をご用意させていただきました」
店員さんが持って来た服を見ると、シンプルなデザインで他者から見られても恥ずかしくない服だった。俺はその服を受け取ってすぐに試着室に入り、服を着替えて試着室から出る。
「どうですかお客様。シンプルでかつ汎用性のある洋服です。シンプルが故に服より着ている本人で勝負する事になりますが、彼氏ほどの人物なら充分着こなせるかと」
「―――これはこれでありかな。でもさっきの服の方が可愛かった。うん。髪を伸ばせば今よりももっと可愛くなるし、私が着ても問題ないね」
だろうな。俺と似ているからアイが着なくても似合うだろう。後は魔法で服を複製してサイズを合わせれば問題無く着れる。店員さんは俺が着ると解っていて、この服を勧めるのはどうかと思うが、気にしない方が良いな。よし、この服とさっき着ていた服を買おう。
「買う服が決まりました。今着ている服と先ほど着ていた服にします」
「ありがとうございます! ですがその…お金の方は大丈夫でしょうか」
「大丈夫です。この日の為にお小遣いを貯めてきました」
「あ、私も半分出すよ。言い出したのは私だしね」
「いや別に出さなくてもいいぞ。そのお金は何か別のものに使ってくれ」
「いいからいいから」
アイに押し切られる形で進んで行き、最終的には俺とアイで半分づつ出す事になり服を買った。買い終わった俺たちは店から出て出入口の邪魔にならない所に移動する。
いない。尾行してた奴が消えている。もしかしたら大人たちが対処したのか。そうだったらお礼を言いたいが誰だが分からないから、お礼を言えないな…。
「―――買ったのは良いけど、この場で着替えて行きますかって言われるとは思わなかった」
「着てもよかったと思うんだけど。嫌だった?」
「嫌じゃないけど楽しみが減るんじゃないか? どうせなら六年生になれば修学旅行があるだろ。その時にペアルックにすれば良いだろ」
「その手があった! ソラは天才だね」
「いや普通に考えつく事だろ。さて一度休憩―――」
俺が最後まで言い切ろうとしたら、こっちを見ている少女を見つけた。ただの少女は何処かで見た事がある人物だった。
―――まさか
気付いたらアイは黒川あかねに近づき抱きしめていた。アイの行動に疑問に思えるが、かなにも同じ事をやっているから何とも思わない。黒川あかねは顔を赤くしながらアイを引き離そうとしているが、意外にもアイの力が強いせいか離せてない。俺はすぐに2人の所に行き、とりあえず腰を下ろせる場所に移動しないかと言う。黒川あかねは助け船が出て嬉しそうにするが、アイから離れる事は出来ないまま場所を移動する。
☆☆
どうにか座れる場所を見つけて、そこで座り自己紹介などしながら話をしているが、いつの間にかアイと黒川…いやあかねとは仲良くなっていた。俺はちょっと離れて2人のやり取りを見ていたが、いまアイは席を離れていない。
「アイがごめんな。いきなり抱き着いてきて驚いただろ」
「うん。いきなり抱き着いてきたから、てっきり何処かで会ってたのかなって思ったよ。そのアイちゃんっていつもこんな事してるの?」
「まさか。誰構わず抱き着いたりはしない。俺は何であかねに抱き着いたのか分からないよ」
「そうなんだ…」
実際は前世で会っていて可愛がっていたからなんだが、こんな事言う訳にはいかないからな。でもあかねなら納得して信じそうだな。
「でも傍から見ていた俺から言わせてもらうけど、意外と嫌がって無かったな。もしかしてちょっと良いなって思った?」
「そそそそんな事ないよ! ただ可愛いなぁって思ったけど…」
「思ったけどなんだ? あ、もしかしてもう少し抱き着かれていたかったとか?」
「違うよ!! あ、全く違うって訳じゃ無いけど、ただもう少し優しく抱きしめてほしかったと言うか…」
アイよ。一体この僅かな時間で何をした。あかねがちょっとかなみたいな事になってるぞ。まだ子供で色々影響を受けやすい時期に何をやっているんだ。これだとあかねも同じ事になりかねないぞ。
「――――――ソラくん聞いてる!?」
「聞いてる聞いてる。よはあかねは最初は戸惑ったけど、時間が経つにつれ『これ良いかも』って思えてきたんだろ」
「違わないけど、違うよ!」
「そっかーあかねちゃんはそんな風に思っていたんだー。嬉しなぁ」
「アイちゃん!?」
またアイに抱き着かれているが、なるほど。これが昔のかなだったら文句を言っているが、あかねは少し嬉しそうになるんだな。ここで2人の違いを見つけるとはな。で、これはいつまで続くんだ? 周りの視線がちょっと痛いんだが。俺に対して嫉妬の視線が刺さるんだが。子供に対して嫉妬は流石にみっともないと思うんだが。これは我慢しろって事ですか。我慢しろって事ですね。
雑・説明
星野ソラ
初デートでもう色々疲れた人。周りの人から見られたりしたが、居心地は悪かった。だがあかねが加わった事で嫉妬の視線に変わり、これはこれでどうかと思ってしまう。途中で慣れてしまったが。
尾行していた人物を何とかしてくれた人達に、お礼を言えないことがちょっと心残りになった。
星野アイ
楽しい初デートだった。移動中はいつもニコニコしていたせいで、通行人は泣いたり癒されたり倒れたりした。ソラに魔法を使わせなかったもこれが狙いでもあるが、せっかくの初デートで邪魔なものは付けたく無かった。
あかねに会ってすぐに抱き着いた。かなもそうだが前世で可愛がっていたから、今世も可愛がるのと出来れば友達になりたいと思っている。友達どころかヤバい方向に行っているが、気にしないでおこう。
帰る際にあかね一人だと不安ってことで近くまで送って行った。その際に連絡など交換した。
まだ大丈夫な黒川あかね
ソラとアイを見たのは偶然。余りにも周りから浮いていたから、目に入り見惚れてしまった。見惚れていたせいかアイに抱き着かれてドキッとした。
自宅に帰った後は今日の事を思い出していた。
「アイちゃん。かなちゃんとは別方向で可愛かったなぁ。目も綺麗だし笑顔も可愛かったなぁ。あんな笑顔で話しかけられたら、勘違いを起こす人でるって。でも星野アイって言っていたけど、あの亡くなったアイドルと同じって凄い偶然だよね。もしかして同一人物? それとも隠し子? 隠し子だったら同じ名前は付けないよね。なら違う。同一人物もあり得ないね。亡くなっている事が偽装になるし、どうやって身体を小さくするんだろ? …あり得ないけど転生とか? 最近そう言った小説とかアニメが人気あるから、もしかしたらその可能性もあるよね。でも年齢が合わないからこれも違うかな。じゃあ憑依転生? だったらアイちゃんの元の人格って消えちゃったのかな。そうだったら嫌だな。ダメ。今日会ったばっかで何も分からない。今度亡くなった星野アイを調べようかな」
「ソラくん。見た目は男の子だけど顔が可愛い方だった。本人に言ったら傷つくから言わなかったけど。あとちょっとアイちゃんに似てる。髪を伸ばしたら瓜二つかも。これで双子じゃ無いのは驚いた。男の娘って存在してたんだね。ソラくんはアイちゃん以上に分からない人。何て言うのかなぁ、オーラがあるって言うより別の何かがあるって言えばいいかな。でもそのオーラが分からない。テレビで見た霊能力者とか超能力者よりもっと凄いオーラを見た。ソラくんって本当に人間? 地球を観察するために人間に変装してますって言っても驚かないよ私。それでも人間って言うなら、転生者になるのかな。よくよく思い出したら2人とも余裕があった。アイちゃんは天真爛漫みたいに振舞っているように見て、何処か余裕がある。そんなソラくんは振り回されているけど、同じように余裕がある。こう考えると転生者って考えるとシックリくるね。でもソラくんの目はちょっと見ない方いいかも。アイちゃんも目に星があるけど、ソラくんは違う星を持ってる。その星に魅入っていたら私が可笑しくなりそう。満月は人を狂わせるって話があるけど、ソラくんの目はそれに似ている。顔を見るのは良いけど、目だけは絶対に合わせられない。気を付けないと」
コワ…何でそこまで判るんだよ…。