『五つ子ちゃんは風太郎を五等分できないっ』   作:Sphilia

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夏祭り

 ずっと屋内にいたせいか、夕日がやけに目に染みる。

 勉強できる時間がずいぶん減ってしまったが、らいはがあんなに喜んでたんだ。悔いはない。

 駅へと送る道すがら、五月にも「夜はちゃんと勉強しろよ」と声を掛けておく。

 それを聞いた五月は一瞬固まって唐突に「ここまでで大丈夫です」なんて言い出した。

 

 怪しい……。

 そのまましれっと帰ろうとする五月を「宿題、ちゃんとやってるのか」と追いかける。

 歩く速度を上げる五月。こいつ、誤魔化すのが下手すぎる。

 さて、どうしてやろうかと考えていると、

 

 ふと、らいはに手を引かれた。

「おにいちゃん、二乃さんが四人いる」

 らいはの視線の先には……

 

 華やかな浴衣を着て居並ぶ姉妹。

 

「五月、遅いわよ!」

「デート中にごめんねー」

「集まったし早くお祭り行こうよ」

 口々に勝手なことを言っている。

 

 ……こいつら、宿題終わらせてるんだろうな? 

 

「わー、上杉くんの妹ちゃんですか?」

 四葉がらいはに駆け寄ってくる。

「フータロー君に妹いたんだ」

「フータローと違ってかわいい」

 あっという間にらいはは姉妹に囲まれてしまっている。

 

 特に四葉はらいはに夢中だ。

 お気に入りのぬいぐるみみたいに抱き着いて離れない。

「らいはちゃんもこれから一緒にお祭りに行きましょう!」

 なんて言い出してる。

 夜は勉強する予定が……。

 俺の願いも虚しく、らいはもすっかりその気らしい。

 

「ダメ?」

「もちろん……いいさ」

 抵抗なんてできるはずもない。

 

 らいはの上目遣いの一言で、──俺の日曜日が潰れることが確定した。

 

 ──────────────────────────────────────―

 

「片付けるまで絶対祭りには行かせねーぞ」

 

 五月は浴衣に着替えるため一旦家に戻るという。これを奇貨として姉妹達も捕獲した。

 姉妹たちの部屋へ入った際、らいはが初めて見る摩天楼からの景色に目を白黒させていたことは申し添えておこう。

 非常に、かわいらしい姿だった。

 

 案の定、誰一人として宿題を終わらせていなかった。

「浴衣まで着て、なんで勉強しなくちゃいけないのよ!」

「花火大会終わっちゃう」

 抗議の声も出たが、仁王立ちする俺の顔を見て、本気だと察したんだろう。

 渋々ながらも全員机に向かった。

 

 拍子抜けするくらいの素直さだ。

 なんとしても夏祭りに行きたいらしい。

 まあ、そこまで思ってるなら俺も鬼じゃない。

 さっさと終えられるようできる限り手を貸した。

 

「やっと終わったー!!」

「はやく行くわよ」

 そんな姉妹の声に背を押されるように俺たちは祭りの会場へと向かった。

 会場に近づくにつれ、喧騒の声が大きくなってくる。

 

 思ったより本格的なお祭りらしい、色とりどりののれんや提灯が並んでおり、ちょっとした商店街みたいだ。

 食べ物だけでなく射的や金魚すくい、くじ引き……やりすぎなくらいに揃ってる。

 今年はもう着納めになるだろう浴衣姿の影も多く、淡い赤や派手な黄色、揺れる青色など道行く人までもが彩にあふれている。

 あいつらが行きたがる気持ちもわからなくはない。

 

「花火って何時から?」

「まだ一時間あるし屋台いこー!!」

 そんな会話もあり、俺たちも祭りの賑わいの輪に加わることとなった。

 

 お祭りの解放感も手伝ってか、らいははすっかり五姉妹に馴染んでいる。

 むしろ馴染みすぎていると言ってもいい。

 俺が羊の群れに飛び込んだ牧羊犬なら、らいはは群れに迷い込んだ子ヤギだ。

 妹がとられたみたいでちょっと面白くない……。

 

「なんですか、そのお祭りにふさわしくない顔は」

 少しあきれた声で話しかけられた。

 落ち着いた赤にアクセントとして黄色を配置した縦縞の浴衣。髪は結い上げられている。

 姉妹の誰かなんだけど……すまん、正直わからん。

 

「あんまり……見ないでください」

 気恥ずかしそうに視線をそらされた。

 手に持ったアメリカンドッグに口をつける様子もなく固まっている。

 俺が何か話しかけるのを待っているようだ。

 

 姉妹当てクイズでも挑まれているんだろうか。

 全く同じ顔なのに見分けられるわけないだろう……。

 早々に白旗を上げた俺は、誰だかわからない、髪型を変えられると区別がつかないからやめて欲しいと簡潔に伝えた。

 

「五月です!」

 なぜか怒ったように叫ぶ彼女。

「どんなヘアスタイルにしようと私の勝手でしょう!」

 そう言い捨てると、プリプリと歩き去ってしまった。

 なんでいきなり怒りだしてるんだ……どうにもあいつとは噛み合わない。

 

「女の子が髪型変えたらとりあえず褒めなきゃ~」

 そんなこと言いながらしなだれかかってくる。

 確率は四分の一だが……外すと面倒だ。

 

「一花、そんなやつほっといて早くいくわよ!」

 助かった、こいつは一花か。

 幸いにも浴衣の柄まで五人お揃いってわけじゃないらしい。

 今のうちに服装で見分けられるようにしておこう。

 

 まずは一番近いこいつの浴衣から。

 オレンジの地に幾何学模様が並んでる。名前をつけるとしたら夕日の中の風車(かざぐるま)かな。高級な折り紙みたいだ。

 

 で、さっき一花を呼んだのが二乃だな。

 紫に……ウサギ? なかなか個性的なデザインの浴衣だ。

 首元からはレースが覗いてるし、帯にはハートの女王。

 留め金は時計。

 ここまでくればさすがにモチーフはわかるが……。

 それはそうと、悪趣味さを全く感じさせずに着こなせてるのはさすがだ。

 

 らいはを屋台のほうへ引っ張っていってるのは多分四葉だ。

 草原のような黄緑の中に白い合弁花が咲き誇ってる。

 いつも走り回ってるあいつにぴったりの柄だ。

 

 5、1、2、4。ってことはあそこで草履の鼻緒を気にしてるのが三玖か。

 涼しげな青地に紺の燕があしらわれている。

 あいつの趣味からすると、蒲生氏郷……は安直。正解は上杉謙信あたりか。

 で、さっきの赤いのが五月。

 まあ、覚えたところで使えるのは今日だけだ。

 

「ほらほら、浴衣は本当に下着を着ないのか興味ない?」

 一花がたちの悪いよっぱらいみたいな絡み方をしてくる。

 下着を着けないのは昔の話で、今は着るのが主流だと冷たくあしらったが、

「本当にそうかな~」なんて返してくる。

 着物をはだけようとするのは洒落にならないからやめろ……。

 

「なーんて、冗談です。どう? ちょっとはドキドキした?」

 頬に熱が集まってるのを感じる。気づかれてないといいが。

 祭りの空気にあてられたのか一花は妙にテンションが高い。

 ねこじゃらしを見つけた猫みたいにじゃれついてくる。

 結局、一花に電話がかかってくるまで俺は解放されなかった。

 

「一花、さっさと追いついてきなさい、はぐれちゃうわよ」

 長女から解放されたと思ったら、今度は次女がやってきた。

 一花はあそこで電話中だよ、と背後を指さすとやきもきした様子で足踏みなんてしている。

「なんか予定でもあるのか」

「別にいいでしょ」

 ため息交じりに返される。教えてくれる気はないらしい。

 

「今日は五人で花火を見に来たのに。なんであんたもいるのよ」

 少し拗ねた感じでそんなことを言いだす二乃。

 まあ、こいつとしては姉妹五人だけで遊びたかったんだろうな。

 そう思うと少し悪い気がして、俺は妹と来てるだけだ、なんて言い訳が口をつく。

「……別にいいけど」

 唇は不満そうにちょっと尖っていた。

 が、一応お許しはいただけたみたいだ。

 

 そんなことを話しているとらいはがトテトテと戻ってきた。

「あんまり離れると迷子になるぞ、ここ掴んでろよ」

 花火の開始が近づくにつれ、混雑具合が洒落にならなくなってきた。

「はーい」と素直に俺の袖を掴むらいは。

 二乃からやけに視線を感じる気がするが、……まあ気のせいだろ。

 

「あのね、お兄ちゃん見て見て」

 四葉さんが取ってくれたのと見せられたのは……

 そのまま屋台を開けそうなほど大量のスーパーボール。

 

「あはは……つい張り切っちゃいました」

 いつのまにか近くにいた四葉がテヘヘと頭をかいている。

 張り切るにしても限度があるだろ……屋台のおじさん、どんな顔してたんだろう。

 

「これも買ってもらったんだ!」

 らいはが自慢げに取り出したのは、『超デラックス』なんて大きく書いてある花火セット。

 今日一番いらないものじゃないか……! 

「だって待ちきれなかったんだもーん」

 なんてのたまうらいは。可愛い。

 それにしても結構本格的で高そうな花火セットだ。

 

「四葉お姉さんにちゃんとお礼言ったか?」

 と確認すると、

「四葉さんありがと、大好きっ」

 なんて言いながら抱きついた。……やりすぎだ。

 

 抱き着かれた四葉は目を輝かせ、何かに耐えるように手をわななかせたが、

「らいはちゃん可愛すぎます! 私の妹にしたいです!」

 結局耐え切れなかったんだろう、勢いよくらいはを抱え上げて二回転。

 驚く俺をよそに、勢いよく頬ずりし始めた。

 らいはもまんざらでもない様子で受け入れている。

 まるで主人にじゃれつく大型犬だ。千切れんばかりに振られる尻尾まで見えてきた。

 

 微笑ましいなと眺めていると四葉が突然停止する。

「私が上杉さんと結婚すれば合法的に義妹にできるのでは……」

 真面目な顔でとんでもないことを言い始めた。

 

 隣の二乃もあきれた様子で頭を押さえてる。

 仮に四葉の言う通りになったら──俺は四月生まれだし……年下の義姉? 

 そんなことを考えていると目が合ってしまった。

 

「四葉に変な気起こさないでよ!」

 焦ったような顔で二乃が詰め寄ってくる。

 変なこと考えたのがバレたか。

 いや、まさかな。

 

 ドンッ

 二乃の迫力に後ずさると誰かにぶつかってしまった。

「悪い、──って三玖か」

「うん、大丈夫」

 怒られるかと思ったが、まったく気にしていない様子だった。

「こんだけ混んでると、落ち着いて花火見られないな」

 おもわず漏れたボヤキに対して、すぐ返事が来た。

「二乃がお店の屋上借りてるって。だから、ついていけば大丈夫」

 ブルジョワジーめ……。

 

「じゃあさっさとここ抜けて行こうぜ」

 二乃に向かって呼びかける。

 俺はともかくらいはにとっちゃそろそろ過酷な環境だ。

 

「お祭りにきたのにアレも買わないで行くなんてありえないわ」

 振り返った二乃はわかってないわねって表情。

 

「あ、もしかしてアレの話してる?」

「そういえばアレ買ってない……」

「アレやってる屋台ありましたっけ」

「早くアレたべたいなー」

 

 どうやら姉妹には伝わる定番の一品ってやつがあるらしい。

 こんな時ばかりは息ぴったりだ。

 ずっと仲良かったんだろうなって感じられて少し暖かい気持ちになる。

 

「で、なんなんだそのアレって」

 それはそうと人混みはさっさと抜けたい。

 アレとやらを買ったら涼しいところに行きたい。

 

「「「「「せーの」」」」」

 

 どうやら発表してくれるらしい。

 声を揃えて発表なんてさすが五つ子だ。

 

「「「「「焼かりチん人ョご形コ焼飴きバきナそきナ氷ば」」」」」

 

 ……全員違うじゃねーか! 

 ちょっと前の俺の感傷を返して欲しい。

 

「「「「「全部買いに行こ―っ!」」」」」

 

 こいつら、本当に五つ子か……? 

 

 ────────────────────────────────―

 

「あんたたち遅い!!」

 マイペースな一花に移り気でフラフラしてる四葉。さらには食べ物に夢中な五月まで。

 個性豊かな姉妹を引率する二乃はまるで学校の先生だ。

 ……普通こういうのは長女の役割じゃないのか。

 

 らいはは四葉に引っ張りまわされている。

『らいはが四葉を』、ではなく『四葉がらいはを』なのがポイントだ。

 

「二乃のやつ気合入ってんなぁ」

 隣を歩く三玖に声をかける。

 花火なんて毎年やってるだろうに、五つ子全員妙にテンションが高いように感じる。

「花火はお母さんとの思い出なんだ」

 顔に疑問符が浮かんでいたのだろうか、三玖が教えてくれた。

 

「お母さんが花火好きだったから、毎年揃って見に行ってた。

 ──お母さんがいなくなってからも、毎年五人で、揃って」

 幸せな思い出なんだろう、自然と三玖の口角が上がってる。

 

「私たちにとって花火って──そういうものなんだ」

 

 ……どうりで家族想いのあいつが張り切るわけだ。

 

 ──────────────────────────────────────―

 

 ──大変長らくお待たせしました

 ──まもなく開始いたします

 

 そんな放送が始まった瞬間、人の流れが一気に加速した。

「どっちだっけ?」「もう花火あがってるの?」なんて声に混じって「危ない!」「押さないで」なんて悲鳴があちこちで上がってる。

 

 背の低いらいはも、慣れない草履の姉妹たちもあっという間に俺の視界から押し流されていく。人の壁に阻まれて、声すら届かない。

 

「くそっ……!」

 背筋に冷たい汗が伝う。

 せめてもと足を踏ん張り、人波に抗おうとするが、濁流の中の小石同然だ。

 俺一人が抵抗してどうにかなる勢いじゃない。

 

 このままじゃ、本当にバラバラになる……! 

 それでも、無我夢中で伸ばした手が、誰かの腕を捉えた。

 温かい感触。

 誰なのか確かめる余裕もないまま、なんとか引き寄せて壁になってやる。

 

 捕まえられたのは──

 

 見覚えのあるウサギ柄の紫の浴衣……二乃だった。

 その顔には、驚きと、一瞬だけだが恐怖とは違う種類の戸惑いが浮かんでいたように見えた。

 

 結局二乃以外は捕まえられなかった。

 らいはは無事だろうか、不安が胸を締め付ける。

 ……いや、今は完全にバラバラにならなくてすんだことを喜ぼう。

 体力自慢の四葉なららいはを守ってくれていると信じて早く合流するしかない……!! 

 

 体感では永遠にも感じた混乱がようやく収まり、人の流れが少し緩やかになってきた。

 安堵のため息をついた際、こちらを見上げていた二乃と目が合った。

 

「いつまで掴んでるのよっ」

 焦ったように二乃が腕を振り払う。

 

「はぐれたらどうするんだ、掴まれるのが嫌なら掴んでろ」

 ほら、と左腕を差し出してさらに言い募る。

「五人で花火見るんだろ」

 

「あんたなんかお呼びじゃないわよ!」

 納得いかないとばかりに二乃が声を張り上げる。

 

「はいはい」

 心がささくれ立つのを感じる。

 どうしてこいつはこんな時まで……

 

「いいから、店まで案内しろよ」

 らいはとはぐれた。その焦りのせいだろう、自分でも驚くほど低い声が出てしまった。

 これじゃ火に油かと内心焦りながら様子を窺うと、意外なことに二乃は目を丸くして、完全に動きを止めていた。

 まるで初めて見る相手かのように俺の顔を凝視している。

 

「ほら」腕を差し出してもう一度促す。その声で二乃はようやく我を取り戻したようだ。

 何か言い返そうとして口をパクパクさせたが、

 結局、言葉にならないような息だけが漏れた。

「……ありえない」

 ぽつりと、自分に言い聞かせるような声でつぶやくと、顔を伏せる。

 

 しぶしぶといった感じで唇を一文字に引き結びながらも、掴んでくれた──袖を。

 ──―指先だけで、そっと触れるように。

 

 なんとか人混みを抜けて目的地のビルにたどり着いたころには、

 花火の打ち上げ開始が目と鼻の先に迫っていた。

「やっと抜けたわ! あんたが道を間違えるから遅くなったじゃない」

「お前が歩くの遅かったせいだ」

 こいつはいつも言葉が強い……。

 

「ここの屋上よ、きっとみんな集まってるわ」

 お互い焦ってるせいだろうか、いつものような言い争いには発展しなかった。

 

 全力で階段を駆け上っていく。

 二人同時に、屋上のへのドアを押し開ける。

 

 ひんやりとした夜風が火照った頬を撫でた。

 

 眼下に広がる街の灯り。祭りの喧騒も随分と小さく聞こえる。

 

 ──一瞬の静寂

 

 ヒュゥゥゥゥゥゥ──

 

 空気を切り裂くような音が響き、俺たちの視線は自然と夜空へ吸い寄せられる。

 

 ──―ドォォォォンッ!!! 

 

 星空のキャンバスに巨大な光の花が咲き誇る。

 ストロンチウムの深紅が夜空で破裂し、すぐ後を追うように冷たい銅の青が広がる。

 絢爛豪華な花々は、その一瞬の命を100ルクスの輝きへと燃やし散る。

 散りゆく花びらは眩い黄金の流れ星となって降り注ぐ。

 

 目をそらせない。──儚くも苛烈な美しさが、網膜の奥に確かに焼き付いた。

 

「…………綺麗」

 そんな声に隣を見ると、彼女もまた空を見上げていた。

 

 同じ空を見ている、ただそれだけなのに。

 思い出の花火──その意味を、少しだけ共有できた気がした。

 

 ……そこで、ふと我に返る。

 らいはは? 

 屋上には──俺たち二人きり。他に誰もいない。

 地上の喧騒が嘘のような静けさの中で、色とりどりの花火だけが律儀に上がり続けている。

 

「あっ」

 

 二乃がハッとしたように周囲を見回した。

 その顔から急速に血の気が引いていくのが薄明りの中でもはっきりと分かった。

「おい、どうしたんだ」

 ただ到着が遅いだけじゃここまで取り乱さない。

 

 妙な胸騒ぎがする。

 

「どうしよう、よく考えたら今年のお店の場所──」

 声から悲壮感が溢れている、その続きは聞きたくない。

 ……こういう悪い予感に限って当たるんだ。

 

「私しか知らない」

 

 俺は天を仰いだ。

 さっきあんなに輝いて見えた花火も、今は色あせて見える。

 屋上には、呆然と立ち尽くす俺と、完全にフリーズしている二乃。

 そんな俺たちの様子にかまうことなく、儚い夜の花が、淡々と咲いては散っていった。

 




らいはが兄の袖をつかむ様子をじっと見つめる二乃。
やがて彼女も、反対側とはいえ同じ袖口にそっと指をかける……。

このシーンが大好きです。
"ワイルドな男がタイプ"だと思っている二乃が、
心の奥底で欲してるのは兄や父といった、自分を守ってくれる存在だと暗示されている。

寂しがり屋のハリネズミがツンツンした針の奥でぬくもりを求めている。
そのアンバランスさが、二乃の美しさを引き立てる。
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