箱庭ゲーム『生息演算』こぼれ話   作:キノント

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『異常が発生しました』

『異常が発生しました』

『異常が発生しました』

『新たなプログラムを構築し、リカバリーを行います』




仮定記録:ノースタート(イージー)

 

 

 テラの大地、その荒野に点在するいくつもの集落。

 

 その内の一つに、トランスポーターの青年が訪れていた。

 

 この集落に来るのが初めてでは無いのか、慣れた足取りで複数の民家を回った後、最後の荷物である一通の手紙を持って、とある家の戸を叩く。

 

 

「────爺さん、居るか? 龍門の息子さんから手紙だぞ」

 

 

 少し後、老人が扉を開けて出てくると、青年が持っている手紙を見てその瞳を輝かせた。

 感謝の言葉を述べながら手紙を受け取った老人は、しみじみと息を吐く。

 

 

「最近は随分と早く手紙が届くようになったんだな……」

 

「……同じこと、いろんな人が言うんすけど、前はそんなに時間掛かってたんです?」

 

「ああ、数年前の手紙が届くことも珍しくなかった」

 

「ははっ、…………流石に冗談すよね?」

 

 

 有り得ないと笑う青年だが、老人の瞳や声音に嘘は混じっていない。

 昔を思い出すかのように老人は暫し目を伏せていたが、やがてその目を開くと青年と二言三言を交わしてから別れ、家の中へと戻っていく。

 

 そして『右頬に露出している源石』を軽く撫でた後、嬉しそうに手紙の封を切るのだった。

 

 

 

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 先生、質問なのですが……どうしてこの時期から各国の協力体制が急に整い始めたんですか? 

 

 ────えっ? 詳しくは分かっていない? 研究や考察に論文も数多く存在するのに、どれも確証を得るに至っていない? 

 

 …………いえ、気になりはしますけど、私程度が調べたところで真相の判明は厳しいですよ。

 

 内容によっては評価にプラス? ……ちょっと頑張ってみます。

 

 でも他の人がやってないようなアプローチとなると……男女関係とか? 

 

 いや先生、私はふざけてないですよっ! 

 

 

 

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 森林近くに形成された小規模な集落。

 近くに存在する山は登るには大分厳しいものだが、自然の恵みを享受するには申し分ない。

 集落の者達は皆、裕福とまではいかないがそれなりに満足のいく生活を送っており、その日々は平穏そのものである。

 

 だが今日だけはその様子が異なり、山の向こうからやって来たという一団が、集落の入口に固まっていた。

 

 ボロボロの衣服を身に纏い、疲れ果てている老若男女の中から、一人の男性が前へと出る。

 

 

「突然の来訪、申し訳無い。この集落の代表者と、どうか話をさせて頂けないだろうか……?」

 

 

 警戒していた集落の人々は、両手をあげて掠れた声で訴える男性の声を聞き、手に持っていた武器を僅かに下げる。

 そしてその人々の間から身なりの整った女性が現れ、男性の前へと立った。

 

 男性が意を決して口を開こうとした瞬間、女性の良く通る声が先に響いた。

 

 

「山の向こうから移動してきた方々とお見受けします。人数と傷病者の数を教えて下さい。それと感染者が居るようであれば、その人数もお願いします」

 

「────か、数は四十五人、怪我人が十数名だっ。それで、その……感染者は……」

 

 

 有無を言わせぬ声音に男性は気圧され、逡巡を挟む間も無く素直に答えたが、感染者の数の部分になると途端に口ごもってしまう。

 こういった経験が初めてでは無かった女性は、しっかりと相手に目を合わせて微笑んだ。

 

 

「何か誤解をされているのかもしれませんが、薬の用意をするためですよ」

 

「薬……? 鉱石病の薬なんて存在するのか……?」

 

「ええ、症状を和らげるものであって、完治出来るものでは有りませんが……確かに存在します」

 

 

 ここ数年、各国家は急速な発展を遂げている。

 理由は様々有るが、大きな要因は『各国家における強固な協力体制の構築』と『ロドスアイランド製薬による鉱石病治療薬の開発』になるだろう。

 

 そしてその発展による恩恵は、移動都市だけに留まらず、国家同士の中継地点や多くの集落にも齎された。

 天災の発生が付き纏うため都市に比べれば遅々としてはいるものの、インフラの構築は数年前と比べるべくも無い。

 

 恐る恐る感染者の人数を伝える男性と、それを聞いて集落の住民に指示を出す女性。

 動くことすらままならない者にも手を貸し、固まっていた一団は次第にばらけて集落の中へと消えていく。

 

 彼等に待っているものは、暖かい食事と寝床、そして適切な治療である。

 

 

「……どうやら向こうの地域にはまだ情報が伝わっていないようですね。迅速に報告をしなければいけません」

 

 

 一仕事を終えた女性はそう呟き、小さく息を吐く。

 

 

「オーナー様、ノア様……」

 

 

 無意識に漏れたその言葉は、誰の耳にも届きはしない。

 

 

 

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「家族が揃うなんて何年振りだろうか?」

 

「そうね、欲を言えばもう一人参加して欲しかったけれど……」

 

 

 

「……巫女様?」

 

「侍従長、気持ちは分かりますが最近の貴女は気が抜け過ぎですよ? しっかりして下さい」

 

 

 

「嬉しそうね、タルラ。まだ半年以上も時間が有るのに……」

 

「そう見えるか? ……だがアリーナ、それはお互い様だろう」

 

 

 

「海の近くだと危険だからね。もしもの時も考えて見張ってるんだ」

 

「……不穏な動きをすれば、貴方と言えど容赦はしませんわよ?」

 

 

 

「ミュルジス、この辺りの準備は完了した。そちらはどうだ?」

 

「こっちも話し終えたわよ、マドロック。少し休憩したら次の場所に向かいましょ」

 

 

 

「治療薬開発に食料問題改善、種族間軋轢と感染者差別の解消……。根を詰め過ぎだ、テレジア」

 

「いいえ、テレシス。まだまだ問題は山積みよ。……少しでも、良い環境で迎えてあげたいの」

 

 

 

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 『目的遂行は不可能と判断します』

 

 『新たなプログラムによるリカバリー予測数値が基準値を満たしています』

 

 『最善のシミュレーション結果を送信します』

 

 『最善のシミュレーション結果を送信します』

 

 『最善のシミュレーション結果を送信します』

 

 

 

 

 

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「ただいま────―って、あれ? 兄さん、帰って来てたの?」

 

「そうよ。あの子、急に帰って来て『母さんの肉じゃがが食べたくなった』って……」

 

 




≪Tips≫

『計画の失敗を確認』


―― ノースタートルート ――

何らかの異常によりオーナーがテラの大地に現れないルート。

しかしシステム君のフレキシブルな対応によって、『もしもオーナーが降臨していたら』という本編の内容を一部の人々(多くのネームドとノア住民の一部)に送信。

脳を焼かれた人々はオーナー降臨に向けていろいろと頑張ります。

テラの大地はより早く、より良くなって皆がハッピー。

オーナーも家族と会えるしハッピー。

どれだけ待ち望んでもオーナーは現れません。

オーナーはいずれ一般女性と結婚し、天寿を全うすることでしょう。

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