嫁がクラバで死にそうなので、料理で肥やして生存目指します   作:隼河宗

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( https://x.com/RvySZdQLYgdo6Db/status/1919415891315270114 )
大変ありがたいことに、発案者の菓子折り様がたこ焼きを食べているシイコを描いて下さっていたので共有いたします()


約1000kcal「牛肉とサーディンのチーズグリル丼/ほうれん草とブロッコリーの味噌汁/ナッツ入りマンゴーヨーグルト」

宇宙世紀0082。サイド6、イズマコロニー8:25

 

 「もはや戦後ではない」が、日本の経済白書に載ったのは確か1956年度だったか。ちょうどここ最近イズマコロニーでは各種経済指標株価、債権価格が戦前の水準を越えたという。ここを含めたサイド6は、宇宙世紀でも屈指の豊かな時代を謳歌しているということだ……。

 

 

 そうした豊かな時代になると、なぜか人というのは運動をし出すようだ。正確に言えば、上昇した所得で増やした摂取カロリーのツケを払っていると言うべきか。かくいう僕も、今現在身重のハズのシイコと共にランニング(たしか「散歩に行きましょあなた」と言われただけだが)をしている。いや、共に、というのか……。

 

「あなた〜」

 

 ()()()()()()()()()()シイコの声に、思わず振り返る。

 

「……今何週目だっけ」

 

「たしか、3周目?」

 

「つまり僕はちょうど1周遅れってことだね」

 

 早朝。旧コロニー公社イズマ徴税庁舎……現在ツバメ市庁舎の周りは、計画的に造られた都市公園だ。外縁およそ2.6kmは地球連邦撤退後、経済的に豊かになったイズマコロニーでは、こうした旧公社の公園などの周りを走る公社ランナーがブームらしい。

 

そうした中で、僕の走りはまあ普通くらいだろう。なんなら基本的に僕は追い抜かれた人数よりも追い抜いた人数の方が多い。そうした中でシイコは水を泳ぐ魚のごとくスイスイと前に行ってしまう。

 

 繰り返すが、彼女は身重のハズだ。成人男性を1周遅れにした彼女は、なぜか医者からも止められることなくこの散歩という名目でランニングをしている。退役から二年はたっているはずだが体力の衰えは全く見られない。

 

 そして僕の料理も、勿論効果を発揮していないことがわかる。

 

「お腹の中に子供もいるし、あんまり走りすぎないようにね」

 

「ええ!」

 

 

 僕はそう言ってだんだんと離れていく妻の背中を見て、ふと原作の結末を思い出した。一度足を踏み出して追いかけようと考えた。だが僕は、焦ることなくペースを維持した。一度乱すと、もう一生追いつけないかもしれない。いや、それよりもとにかく、今は……

 

「自分の脂肪を落とさないと……!」

 

 僕、スガイ マサが年齢に十二プラスした血管年齢だと言われてから、今日で3日が経った。このままだと早死にらしい。ちょっと苦しい中だが、シイコより先に死ぬなんてあってはならないのだ。兎にも角にも走って……走って……

 

「でも未亡人のシイコもいいよな……」

 

 ……なお、この上の空の状態から数秒後、街路樹の根に足を引っ掛けて勢いよく転んだ。たぶんだけど天罰だと思う。

 

 

 

 

 そうして、結局僕らは、シイコが満足するよりも先に僕が名誉の負傷をすることになり、早々帰宅することとなった。

 

「おぉ、シイコさんですか。おかえりなさいませ」

 

「タムラさん。朝の忙しい時期にありがとうございます」

 

「いえ、無理言って働かせて頂いているのです。1日くらい問題ございません。しかし、マサさんは」

 

「それが……」

 

「ここです……」

 

「うーん、怪我ですかね。そうなるとは思っておりましたが……」

 

「まだ朝の時間は終わってませんね……。彼の介抱、お願いできますか?」

 

「ええ、承知いたしました」

 

 

 避難民になっていた友人。タムラが手際よく介抱してくれた。

 

「おう、マサ。痛みは落ち着いたか」

 

「タムラか。悪いな苦労かけて」

 

 見慣れた店の休憩室だった。ちょうど家と食堂の間にあった隙間をそのまま接続して作ったものだ。

 

「これくらいなんてこたねえ。それよりも、お前さんの運動音痴はなかなかだなぁ体力自体はあるってのに、肝心なところで転んだり……」

 

「まあ……それもあるかもしれんが、タムラの比較対象は大体が軍属だろうが」

 

「そらまあそうかもしれんが……それでもなあ……」

 

 目の前の友人は訝しみつつも、僕に消毒液を持ってくるといい、裏の方から出ていった。この店は商店街の中にある。おそらく向かいの店までパッと買ってくるつもりだろう。あとで立て替えないとな……。

 

 っと、いけない。こんな時間か。僕は慌てて店の前に出て。店のシャッターを開ける。その時、店内で準備をしているシイコと目があった。こちらに笑みを向けた彼女だったが、朝は忙しい。僕も彼女も早々に作業に戻った。

 

 

 

 宇宙世紀0082年某日。今日は、途中塩が足りなくなるなどのハプニングもあったが、問題なく1日を終えることができた。

 

 

 そして午後18時、ボクはタムラに店を任せた。最近は夜の営業はタムラがバーをすることになり、避難民として僕と久々に出会った頃と比べれば、彼の表情も明るくなった。

 

 

 さて、そしてシイコはというと朝、僕がぶっ倒れて中断した散歩をもう一度行ってくると歩きに行ってしまった。

 

 ならばと、僕は前々から考えていたメニューを挑戦してみることにした。彼女は歩きに行くと言って30分から40分ぐらいは帰ってこない。僕がキッチンでオーブンを起動すると、オリーブオイルの芳醇な香りが静かに広がった。換気扇が入っているのを確認してシイコが散歩…いや、ランニングから戻るのを待ちながら、牛肉に醤油とにんにくを丁寧に刷り込んでいく。

 

 グリルパンがジュージューと音を立て、牛肉の表面がこんがり焼け、サーディンの油漬けが温まるにつれ、濃厚なうま味の匂いがキッチンを満たしていく……。

 

 鍋に目を向ければ、ごま油で炒めた玉ねぎとブロッコリーがシャキッと弾け、ほうれん草の鮮やかな緑が加わると、素朴な甘みがふわりと立ち上っている。

 

 昆布と鰹節のだしを注ぐと、シューッと湯気が上がり、豆腐が優しく沈む。味噌をそっと溶き入れる。

 

 カウンターでは、マンゴーを切り、アーモンドを砕いてヨーグルトにたっぷり盛り、蜂蜜を惜しみなく垂らす。キヌアブレンド米にルッコラを敷き、チーズがとろけた牛肉とサーディンをのせると、贅沢な丼が完成した。

 

 ちょうどその時、玄関からシイコの「あなた、とってもいい匂い!」という声が響く。

 

 ……こういうところは、見た目相応なんだがなぁ。

 

 

 

 

 シイコが散歩後の汗を拭い、食卓に座るとマサが笑顔で言う。

 

「シイコ、栄養たっぷりだ。たくさん食べて」

 

 牛肉とサーディンのチーズグリル丼を差し出した。

 

 こんがり焼けた牛肉は赤褐色に輝き、チェダーチーズがとろりと溶けて、サーディンの銀色の身に絡む。ルッコラの鮮やかな緑とミニトマトの真っ赤な彩りが、キヌアブレンド米の白に映え、醤油とにんにくの香ばしい匂いがふわりと立ち上がる。

 

 味噌汁の温かい湯気と混ざり、シイコさんのお腹はすぐさま反応してしまったようだ。彼女は箸で牛肉をそっとつまみ、チーズが糸を引く様子に目を奪われます。

 思わず笑いながら、慎重に一口。牛肉の表面のカリッとした焼き目が弾け、ジューシーな肉汁が舌の上でほろりと広がる。チェダーチーズの濃厚なコクがサーディンのうま味と溶け合い、醤油のしょっぱさとほのかなにんにくの刺激が後味を引き締める。サーディンのしっとりした身が、ルッコラのピリッとした苦味とキヌア米の甘みを引き立て、ミニトマトの爽やかな酸味がアクセントを加える。

 

「美味しいけど……こんなに高い肉いいの?」

 

「大丈夫大丈夫。記念にね……」

 

 その言葉にふとカレンダーに目をやったシイコは、こちらに向き直して笑顔で、そうね。と一言言った。

 

 そう、ちょうどこの日は僕たちが出会った日だった。

 




MAVがいないから実質未亡人だね
すみません。眠い中作ったので、もし意味がわからない文章だとございましたら、Twitter までお願いします…。明日以降自分でも確認します…

あ、観念したので匿名投稿をやめました。これで逃げられませんね。頑張ります
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