機動戦士ガンダム 進撃のオズマ   作:武者ジバニャン

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STAGE2 始まり

あの日。あの夏の日に、私の物語は失われた....。

 

父の優しくも大きな手。母の柔らかな声、あの子の愛おしい笑顔。

 

その全てが、あの夏の日に私の物語とともに失われた。

 

皇暦2010年8月10日。神聖ブリタニア帝国が日本に宣戦布告、極東で中立を謳う島国と世界唯一の超大国ブリタニア...両者の間には、日本の地下資源を巡る、根深い外交上の対立があった。

本土決戦においてブリタニア軍は、人型自在戦闘装甲騎ナイトメアフレームを実戦で初めて投入。

その威力は予想を遥かに超え、日本の本土防衛線はナイトメアによってことごとく突破されていった。

 

そして、日本は負けた。

 

日本は帝国の属国となり、自由と権利と、そして名前まで奪われた....日本はブリタニアに全てを奪われたんだ。

 

それは、私も同じこと。家族も、名前も、自分自身であることも奪われた。

 

今となっては本当の自分だと言えるのかも分からない。だけど、私は生きている。

 

日本とブリタニア....両方の血を持つ私は、偽りの家族と、偽りの名前で、偽りの自分自身を生きている。

 

私は、私自身の物語を奪われ、失ってしまった物語を取り戻したい。

 

 

そう。これは、私が、私自身の失われた物語を取り戻すための物語....。

 

 

 

 

 

 

そして....私が、あの人と出会い、導かれる物語でもある....

 

 

 

 

 

 

私の、大切な...あの人との.....。

 

 

 

 

 

 

 

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エリア11...日本が、神聖ブリタニア帝国の侵略戦争に敗北、属領とされた際に付けられた名称のこと。11番目の植民地。

日本の首都であった此処東京も、ブリタニアの侵攻によって様変わりし、エリア11におけるブリタニア支配の中枢であるトウキョウ租界と変わってしまった。

中枢の証といえる総督府が所在し、ここエリア11の統治が為されている。

しかしトウキョウ租界と銘打ってはいるが、現実の東京都あるいは東京23区全域が租界という訳ではなく、総督府を中心とする地域のみが租界となっており、租界周辺には外壁が張り巡らされている。

そしてトウキョウ租界の中にある、此処神聖ブリタニア帝国占領下のエリア11に存在する寮制の私立学校・アッシュフォード学園より、話しは始まる。

 

学園内は若さ溢れる生徒たちの活気に満ちていた。学問に勤しむ者、仲間と共に青春を謳歌する者、目標に頑張っている者など多くこの学園で切磋琢磨している。

その学園の廊下で、一人の少女がいた。

 

「今日も用事があって....」

 

彼女...マーヤ・ディゼル、此処アッシュフォード学園に通っている高等部の女子高生である。

その彼女は今、同じクラスの学友に誘われていたが、申し訳なさそうにして用事があると断った。

 

「そっか。じゃあ、また今度」

 

「せっかく誘ってくれたのに、ごめんなさい」

 

誘ってくれたクラスメイトは笑みを浮かべて気にしないでと、優しく言って他の仲間たちの下に向かう。

その姿を見ながらマーヤは呟いた。

 

「ブリタニア人のクラスメイト、か...。悪い人たちじゃない。そんなこと、接してみればわかること」

 

マーヤはそう言葉を吐露する。しかしどうしても彼女は馴染むことが出来ないと強く思ってしまう。

それは彼女自身に理由があった...。

 

「(――エリア11。ブリタニアの、11番目の属領を示す新しい日本の名前...此処アッシュフォード学園は、エリア11に建てられたブリタニア人の子女のための学園...私は、ブリタニア人としてこの学園に通っている。....半分、日本人であることを隠して....)」

 

そう。彼女は日本人の父親とブリタニア人の母親を持つハーフである。だが此処ではただのブリタニア人として身分を偽っているのだ。

自分には日本人の血があるにも関わらず、それを隠してブリタニア人として生きるのに違和感と、強い嫌悪感を抱いている。

そんな胸中の彼女、その時廊下の向かい側から人が歩いているにも気付かず――

 

ドンっ!っと、ぶつかる音と共にマーヤは尻餅をついてしまう。ぶつかったのは同じ年頃のブリタニア人の学生である。

原因は向こうの不注意で前を見ておらず、考えごとをしていたマーヤとぶつかってしまう。

 

「いてて....。わりぃ、前向いてなくて」

 

「いえ、こっちも考えごとをしていたから...」

 

マーヤがぶつかったのは何処かお調子者のような男子であった。マーヤは申し訳なさそうにしながら、スカートが直しつつ立ち上がる。

 

「何をやってるんだリヴァル....。悪かったな。これ、君のだろう?」

その彼女にもう一人の――黒髪と紫の瞳を持ち、容姿端麗な男子が友人に呆れつつ近づき、手を差し出した。

 

「え....」

 

彼から差し出されたのは、青い色の折り紙で折られた折り鶴であった。

 

「ぶつかった拍子に落としたみたいだ」

「あ、うん。拾ってくれてありがとう...」

「これ折り紙って言うんだろ。珍しいものを持っているんだな」

 

「!?」

 

マーヤは驚き、彼から差し出された折り鶴を受け取り、そのまま逃げるようにして走っていった。

その彼女の背中を彼は見つめるが、友人から呼びかけられる。

 

「ルルーシュ?」

「いや、何でもない。彼女、今日は学校に来ていたんだな」

「知り合い?」

「知り合いもなにも、うちのクラスメイトだ。まあ、あまり学校には来ていないようだが」

 

っと、彼――ルルーシュ・ランペルージは、マーヤが走り去っていった方へ見ながら心中で呟いた。

 

「(折り鶴...か)」

 

 

 

 

「はっ、はっ……!」

 

息を切らして呼吸を整えるマーヤ。まさかブリタニアの学園で日本の折り紙を知ってる人間が居るなど、思いもよらず焦って此処まで走って逃げてしまった。

 

「あの人、折り紙を知ってる…」

 

マーヤは懐に仕舞った折り鶴を取り出す。それを見て、先ほどの慌てた様子から穏やかな優しい笑みを浮かべる。

その折り鶴は彼女にとってとても大事なものである。

彼女は折り鶴を見ながら、これを貰った時のことを思い出した。

 

 

 

 

「お姉ちゃん、これ!貰って!」

 

「これは、折り鶴?」

 

「うん!いつもごはん持ってきてくれるから、なにかお礼したくて………」

 

幼いイレブンの女の子から青い折り紙で出来た折り鶴を、彼女は大切に受けとる。

 

 

「ありがとう、嬉しい。昔、父さんによく折ってくれたな」

 

亡き父親との思い出を口にするマーヤの顔は、嬉しそうであるが何処か悲しげでもあった。

そんなマーヤに女の子は首を傾げつつ問いかけてきた。

 

「お姉ちゃんのお父さんも、イレブンなの?」

 

「ううん。違うよ。私の父さんも君も日本人ーーイレブンなんて、ブリタニアが勝手に決めた名前じゃないよ」

 

マーヤは首を左右に振り、優しく諭すように女の子に告げる。

イレブンと言う言葉は、マーヤにとって嫌いであり呼びたくもないし、誰かに況してや日本人たちの口からも言って欲しくない言葉。

 

「そっか、私も日本人………」

「ところで、これどうやって折るの?私も折り方を習っておけばよかった………」

 

折り鶴の折り方など知らないマーヤは、これがどのようにして折られているのか知りたくて広げようとした。

 

「あ、ダメダメ!開いちゃ!今度教えてあげるから、その鶴は開いたらダメだよ!」

「中に何か書いてあるの?」

「だからぁ!ダメだってばぁ!」

 

 

 

折り鶴を見つめていたマーヤは、それを思い出して嬉しく笑った。

そして用事を済ませないとと、折り鶴を大切に懐に仕舞いこんで、用事がある学園の生徒が利用する購買部へと足を運ぶ。

 

「すみません。頼んでおいたもの、用意できてますか?」

 

「あ、ガーフィールドさんとこの!用意できてますよ。いつもありがとうございます」

 

購買部の店員から大きな紙袋を受けとる。その中には果物、パン、お肉、お菓子などの食べ物が突き詰められている。

店員とのやり取りを見るに、これが初めてと言うわけではない様子。

 

「あ、これお金」

「毎度あり!そうだ!教えてもらったエナジー・フィラーに替えてから、うちの車の調子がすこぶるいいんだよ。

お母さんにもお礼を言っといてくださいよ」

「伝えておきます」

 

苦笑交じりにそう返事するマーヤ、荷物を受け取りその場を後にする。

 

「さて、準備もすんだし、ゲットーに向かわないと」

 

彼女はそのままある場所へと向かうのであった....。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

その頃、旧東京湾海底にある一隻の船が潜んでいた。プトレマイオス2改....私設武装組織ソレスタルビーイングの多目的攻撃母艦。

3基のリニアカタパルトと格納庫を採用。両舷カタパルトはモビルスーツ用で、中央カタパルトは支援機用となっている。モビルスーツ用のコンテナは水中では下部のハッチが開くことで、迅速に展開させることが可能。

宇宙を始め、重力下での飛行や大気圏突入の他、海中への潜行まで可能となった。

そしてトランザムシステムによる長距離航行を行う為の最適化技術が導入され、艦尾には大型ブースターが追加されている。

だがこのプトレマイオス2改...本来であれば太陽炉であるGNドライブを搭載されておらず、GNドライブを搭載しているガンダムよりその粒子補給を行っていたが、エデンの技術により新たにプトレマイオス2改用に母艦用の大型GNドライブが開発・搭載されることとなった。

更に船体の中央部には、リング状の機関が配されておりそこに4基の単独移動可能のコンテナシップが新たに搭載された

そのプトレマイオス2改...通称トレミーのブリッジの艦長席に、シジョウ・オズマが座していた。

 

「.....」

 

オズマはトレミーより射出された小型無人機ドローンからの映像を、ただ静かに見つめている。

その彼に横から声をかける者がいた。

 

「ジッと映像を見て、退屈しませんか?」

 

「....ん」

 

オズマが振り向いた先には中性的な容姿をしたイノベイド...リヴァイヴ・リバイバルがいた。彼もまたリジェネと同様、嘗てリヴァイヴ・リバイバルとは別個体である。

このトレミーにはイノベイターであるオズマ以外、他は全てイノベイドによって構成されている。その全てが嘗てソレスタルビーイングと敵対した者の同タイプだったり、中にはソレスタルビーイングの構成メンバーの一部の生体データを素にイノベイド化させた個体も乗艦している。

だが元トレミー所属のマイスターと、そのメンバーのデータは使用していない。

しかしオズマの補佐であるリジェネは、今回乗っていない。彼はスペースコロニー型の方舟エデンに残り、オズマ不在の穴を守るために留まった。

オズマはリヴァイブに振り向いた後、すぐ前に向き直る。

 

「ドローンからの情報は大事だ」

「確かに、そうですが...それにしても信じられませんね未だに。なんせ異世界ですから」

「俺も元は、宇宙世紀世界からの元人間だ」

「ふ、そう言われれば、マスターにとってはこれが何度目かの異世界訪問ってことになりますね」

 

笑みを溢すリヴァイヴ。しかしオズマはただ淡々として冷めた様子でリアクションがない。

そこへオペレーターを務めるイノベイド...アニュー・リターナーから報告が挙げられる。

彼女もまた同タイプであるが、嘗てアニュー・リターナーとは別個体である。

 

「ドローンAより、トウキョウ租界からの映像を送ります」

 

アニューがオペレーターの端末から操作し、メインモニターに映し出した。そこには租界の中の一部の施設から大きな煙が上げられていた。

 

「これは、テロか?」

「ドローンから抽出した情報ですと、ブリタニアの施設でテロが行われたようです....それと」

「なんだ」

オズマは振り返らずにアニューに問いかけると、彼女の表情が一変する。

 

「っ!!...テロリストは施設より毒ガスを強奪したようです!それも二つ」

「なんだと?」

オズマは一切リアクションはおろか、動揺する様子はない。代わりにリヴァイヴが驚き、アニューの傍まで詰め寄る。

 

「毒ガスは今どうなっている?」

「現在、毒ガスを積んだトレーラー二台が逃走中とのことです」

「なんで植民地で毒ガスなど...」

顔を顰めるリヴァイヴの横を、先ほどまで艦長席に居たオズマが突如立ち上がり、すれ違い様に一言言う。

 

「リヴァイヴ、俺のコンテナシップだけ射出用意をしとけ。ブリング、デヴァイン、マレーネにも出撃スタンバイさせろ」

「っ!!出るんですか?まだ明確に何かが起きたわけでは...」

「確かにそうだが....射出後コンテナシップは光学迷彩で擬装する。俺の合図が出るまでは待機、いいな?」

「は、はい!」

オズマの肩越しから見えた眼つきにリヴァイヴは萎縮し、まるで蛇に睨まれた蛙の如く大人しく従う。

そのままオズマは、彼と彼の“機体”を乗せたコンテナシップがトレミーより射出され、光学迷彩を展開。

旧東京湾から浮上し、新宿ゲットーまで飛行する。

 

 

 

 

 

 

この先にイノベイターである彼にとっても、予想だにしない出会いが待っていると知らずに......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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シンジュクゲットー...そこは敗戦後に多くの日本人が強制的に隔離された地域。戦争前は日本の首都・東京の街の一つで、渋谷や池袋とならび東京を代表する人気の繁華街で、外国人にも人気のエリアだった。 数多くのデパートが集まり、巨大な家電量販店、ファッションビルも多く便利なイメージのある街であったが、敗戦後には見るも無惨な姿に変わり果て、現在はイレヴンと呼ばれるようになった日本人たちが閉じ込められ、身を寄せ合う悲しき場所となっている。

 

そこに彼女...マーヤ・ガーフィールドがいた。

 

「警察のVTOLがあんなに飛んでいる....。租界の方で何かあったのかな....」

空にはブリタニアの警察が所有するVTOLを多数見つけ、不安を抱くマーヤである。

 

「あ、おねえちゃん!」

そんな彼女の不安を一瞬で拭ってくれる癒しの声が響いた。マーヤはその声に振り向くと共に、優しい笑みを浮かべる。

 

「こんにちは、陽菜。ひとり?ほかの子たちは?」

「あこちゃんとゆうちゃんはお客さんがとれたから遅くなるって。まりとともは中にいるよ...みんなぁー!おねえちゃんが来たよぉー!」

陽菜と呼ばれる幼い女の子は、他にも自分と同い年の子や年下の子たちにマーヤが来たことを教える。

この子たちは7年前のブリタニアの侵攻で親を亡くした子供たち。

身寄りもなく、子供たちだけで身を寄せ合ってこのゲットーで隠れて住んでいる。

マーヤは偶然此処に来た際に、この子たちと出会った。自分も半分同じ日本人の血が流れている故か...いやそれ以前に彼女の優しい心から、この子たちに何かしてあげたいと願った。

それ以降からブリタニア人の立場を利用し食料や医薬品を買って、この子たちに渡すようになった。

だがマーヤはそれだけで何とかなってるとは思っていない。

 

「(こんなことが何の解決にもなっていないのはわかってる。本当なら、こんな所から連れ出してあげたい)」

そう心に呟いたマーヤ。しかし彼女にはそんなことをできる地位も権利も金もない、無力な子供、そしてこれは彼女の自己満足でしかないのだろう。

 

 

「いつもありがとね。わたしたちにご飯を持ってきてくれて」

「ううん。私にはこんなことしかできないから」

お礼をいってくれる陽菜に、マーヤは自身の力無さを謝罪する。陽菜はそんなことないと笑顔で言って返してくれた。

 

「おねえちゃんはいっぱいしてくれてるよ!戦争で親が死んじゃったわたしたち子供に、ご飯を持ってきてくれるんだもん。いつかわたしが働けるようになったら、お礼するからね!」

「陽菜....」

その優しくもあどけない笑顔がマーヤの暗い心を癒してくれた。こんな幼い子に励ましてもらう自分はしっかりしないとと、暗い気持ちを振り払い彼女は笑顔で言う。

 

「ううん。陽菜からはちゃんとお礼をもらってるよ。ほら」

マーヤは懐から青い折り紙を大事に取り出し、陽菜に見せた。

 

「それ、わたしがあげた折り鶴。持ってくれてるの?」

「当たり前でしょ?私の宝物なんだから」

「...嬉しい」

マーヤが自分の折った折り鶴を大事にしてくれてることに、嬉しくなり頬を赤くする陽菜。

 

「次くる時は新しい色紙を持ってくるから、折り紙を教えてくれる?」

「うん!」

マーヤと陽菜...まるで端から見ると本当の姉妹のように仲が良かった。この時間が長く、そして穏やかに続いて欲しいと願うマーヤ。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが.....

 

 

 

 

 

 

 

トウキョウ租界エリア11政庁。

 

「愚か者っ!!!」

この声の主は、神聖ブリタニア帝国第三皇子クロヴィス・ラ・ブリタニア。このエリア11の総督である。

彼は今先ほどまで、招待客たちと共に優雅にパーティーを楽しみ、直後テロが行われブリタニア人8名の死者が出た報告を受けてパーティーの真っ最中にも関わらず、わざわざメディアを利用して大々的に演説パフォーマンスを見せて国民感情を見事に鷲掴みにした。

その演説を終え、パーティーの参加者たちより賛辞の声を満足そうにその身に受けていたクロヴィスに、配下でありブリタニアの将軍であるバトレーが焦りと共に“ある報告”をした所、今のように 責を受けた。

 

「け、警察にはただの医療機器としか。全軍を動かすと...」

 

「直属を出せ!!ナイトメアもだ!!!」

 

焦るようにしてクロヴィスはバトレーを連れ、パーティー会場より出ていく。その道中、彼はバトレーに問いかける。

 

「“魔女”と“聖女”...両方もか!!どうなのだ!!バトレー!!!」

 

「は、は!その、両方もでして...」

 

「警備は何をしていた!!貴様は!!馬鹿者が!!」

は!申し訳ございません!!っと冷や汗を流し、早歩きのまま平伏するバトレー。クロヴィスはそんな部下の謝罪する姿など目にする余裕などない。

一刻も早く“あの二つ”を回収せねばと躍起になり急ぐのであった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

シンジュクゲットーにいるマーヤは異変に気付く。

 

「なに、この音?ゲットーの上空にブリタニア軍の輸送機?」

大量のブリタニア軍輸送機がシンジュクゲットー上空を飛行していた。更には陸上戦力までも次々にゲットーになだれ込んでいる。

異様な光景にマーヤは驚きを隠せないでいる。

 

「(さっき見たVTOLといい、何かがおかしい。嫌な感じがする)」

「どうしたの?おねえちゃん」

陽菜はそんなマーヤの様子に気づいたのか、彼女の服の袖を掴んだ。マーヤは陽菜や、まりやともを見つめて決心する。

 

「陽菜、まりやともを連れて一度ゲットーから離れましょう。ブリタニア軍が、ゲットーに大勢入り込んでいるの」

「で、でも、あこちゃんやゆうちゃんは....」

「手紙を残していく。それに客といるのなら、きっと租界の方。ここよりも安全。何もなかったらすぐに戻ってくるから、さあ早く」

「うん、わかった。まり、とも、すぐに用意して」

陽菜はまりととも共に避難の用意を始める。その中でマーヤは考える、このようなことになっているのはレジスタンスが、ゲットーに逃げ込んだという可能性。

 

「やっぱり何か異常なことが起きてる」

であれば、陽菜たちを租界まで避難させることを決める。その後は自分の家に連れていくことまでも、マーヤはその方向性で固めた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

一方、シンジュクゲットーのある地下区域、そこにトレミーより発進したコンテナシップがあった。

現在は光学迷彩を展開して擬装している。

 

「こちらオズマ。トレミー聞こえるか?」

『聞こえます。マスター』

通信越しに聞こえるのはリヴァイヴの声、通信感度は良好であることを確認したオズマ。

 

『マスター、そちらからの様子はどうですか?』

「こっちでもドローンを出して見たが、ブリタニア軍が大量に展開中だ」

『そこまで....いや、毒ガスとなれば軍が動くのも分かりますが、しかし...」

確かに毒ガスなどの科学兵器となれば、軍が動くのは分からない話ではない。しかし規模が余りにも尋常ではない、もう戦争でも起きるぐらいの大軍となっている。

 

「ナイトメアを空輸している航空兵力までも見つけた。確実に異常だ」

『ですが、まさかテロを起こすレジスタンス如きに、ここまで....』

「....毒ガス、なのか」

『え?』

オズマの言葉にリヴァイヴは聞き返す。

 

「本当に、奪われたのが毒ガスなのかという話だ」

『毒ガスよりも、更に厄介な物だと?』

「恐らくは、な。それに先ほど飛ばしたドローンが、逃走した二台のトレーラーの内、一台をこの先で見つけた。それの調べに向かう」

『わかりました。こちらも動けるようにしています』

「ああ。通信終了」

通信を終えたオズマは、一度コンテナシップから降りる。

そしてオズマ自身生身で件のトレーラーの下まで旧地下鉄構内を移動開始する。

 

「....酷いな」

 

地下構内も七年前から時が止まったかのよう、全体がもうボロボロでヒビが割れ、天井も今も崩れて落盤するのではと不安定な中、漸く目的のトレーラーを発見する。

トレーラー自体損傷激しく、前輪が外れていた。運転席を確認すると、テロリストと思われる男が血を流して絶命していた。

 

「死んでるか」

 

冷静にテロリストの死体を確認後、今度はトレーラーの荷台を見る。荷台は中身が露出された状態になっていた、見れば大きなカプセル状の装置が置かれている。

 

「これが、毒ガスとされている物か」

 

オズマが近づいたその時、カプセルが突然開いた。中から光が溢れると共に、彼の視界に飛び込んできたのは艶やかなパープル。

毒ガスなどとは無縁なカプセルの光が、後光となって拘束衣を着た女性を照らしていた。

 

「....毒ガス、じゃなかったか...やはり」

 

その時、一瞬視線が合ったかと思うと、女はそのまま気絶して倒れ込んだ。

オズマは近寄り抱き起す。気を失っただけで、外傷は全くなかった。

彼はその女を見て、こいつは絶対に面倒な奴だと感じた。イノベイターとしてではなく、彼個人としての勘である。

険しい顔で気を失った女性を見つめた後、仕方ないと自分に言い聞かせながらコンテナシップまで戻ることに。

女をコンテナシップに備えてある簡易医療用のベッドに寝かせた。

 

その時......

 

 

 

 

 

大丈夫だから、陽菜....

 

 

 

「ん?」

 

 

彼のイノベイターとしての脳量子波が誰かの声を感じ取った。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「大丈夫だから、陽菜....」

「うん...」

 

 

その頃、マーヤは身を隠してゲットーの様子を確認していた。

 

「さっきの兵士たちの姿がほとんど見当たらない。旧地下街の方に入ったのかな。それなら好都合」

これはチャンスとマーヤは、いつも租界からゲットーに行き来するルートを使用して租界に戻れると判断した。

 

「いい?ここから北に向かってオオクボのゲートまで行く。そこから租界に入りましょう」

「でも、わたしたち名誉ブリタニア人じゃないから租界には....」

そう。租界に入れるのは純粋のブリタニア人か、ブリタニアより認められ名誉ブリタニア人となったナンバーズの人間でないと無理なのだ。

だがそんなことを今言っている状況ではないと、マーヤは子供たちに言って聞かせる。

 

「私がなんとかする。ここはブリタニア軍とレジスタンスの戦場になるかもしれない。租界にいけば、ひとまずは安全だから、ね」

「うん。おねえちゃんの言う通りにする」

「ありがとう、陽菜。さあ、まりとともも行くよ」

「あ!おねえちゃん!あれを見て!」

「あれは!?」

陽菜が指さしたその向こう――それはナイトメアフレームの輸送機、この異様さはもういつものレジスタンスへの対応では断じてない。

 

「ブリタニアは、ナイトメアまで使う気なの...?」

この時マーヤは思考を巡らした。いっそのこと軍に保護を求めるか?それはNGと即断する、何せブリタニア軍はナイトメアまでも持ち出している。

まともな状況ではない、ならばできるだけ軍に見つからず、租界に入った方が安全である。

 

「そこの入口から入って、地下道で駅を超えましょう」

「うん......。でも、さっき....」

マーヤの提案に幼い陽菜は弱弱しい返事をしつつ、不安そうに先ほどの光景を思い出す。

 

「大丈夫。地上よりは安全だから」

心配させまいとマーヤが優しく諭す。

 

「う、うん...」

 

だが事態はそんな彼女たちを嘲笑うように変わっていく....。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ここはG-1ベース...ブリタニア皇族もしくは上級指揮官が戦闘指揮所として使用する指揮用陸戦艇である。

そのブリッジではバトレー将軍が報告を待っていた。しかし結果は酷く、名誉ブリタニア人が目標を発見、その場に急行し捕獲しようと近づいた瞬間にトレーラーが爆発したのである。テロリストが自決用に仕掛けていたらしい。

目標のトレーラーは二台、一つは先ほど報告の通り爆発、もう一つも未だ見つからない。

 

「...作戦は次の段階だな」

「し、しかし殿下....」

不甲斐ないバトレーの様子に冷静なクロヴィスはそう告げた。次の段階―――それが何を意味するか知っているバトレーは焦る。

 

「あれらが外に知られたら、私は廃嫡だよ。本国には演習を兼ねた区画整理と伝えよう」

そう言われればもうバトレーは黙るしかなかった。そんな部下を余所にクロヴィスは玉座より立ち上がる。

 

 

 

 

「第三皇子クロヴィスとして命じる――シンジュクゲットーを壊滅せよ!!!」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

そうしてクロヴィスの全軍命令により、エリア11のブリタニア軍によるシンジュクゲットーの攻撃が始まった。

攻撃――と言うにはそれは聞こえはいいかもしれないが、しかし包囲網を敷き、一斉に中央に向かって進軍、その包囲網の中で民間人レジスタンス関係なく殺されていく。

 

つまりは虐殺である。ブリタニア軍のナイトメアによる殺戮によって、何の抵抗力もない日本人たちが一方的に無惨に殺されている。

ナイトメアだけでなく、戦車や歩兵が、理不尽に攻撃している。その揺れは地下道にも響いた。

 

「今の揺れ、それにこれは発砲音....!?」

それは当然マーヤたちにも感じ取っていた。

 

「地上で何が起こっているの?もしかしてさっき見たナイトメアが....」

彼女がそう推測したその直後.....

 

 

「ああああっ....!」

「陽菜!?」

突然陽菜が頭を抱えていきなり悲鳴を上げた。

 

「この音.....お母さんとお父さんが、こ、殺され.....。ああああっ!」

陽菜のこの様子、これはフラッシュバックによる精神的発作。7年前の戦争を思い出して突発的に苦しみだしたのだ。

 

「陽菜!陽菜....大丈夫。大丈夫だから。この音が怖いのね」

「お、おねえちゃん.....」

陽菜を安心せるべくマーヤは抱きしめる。彼女の背を優しくそっと撫でる、陽菜もそんな自分を癒してくれるマーヤに必死にしがみ付く。

するとマーヤが陽菜や、まりとともに外の状況を見るべく伝える。

 

「大丈夫。私が外を見てくる。陽菜はまりとともと一緒に、ここに隠れていて。すぐに戻ってくるからね」

陽菜はうんと心細くも素直に従い、マーヤから離れる。まりとともも、陽菜と同じくマーヤに傍にいて欲しいと哀願するような目をするが、でもマーヤが大丈夫だよと言うと、二人も陽菜と同様に言うことを聞いた。

 

マーヤは後ろ髪を引かれる気持ちではあるが、しかし外の状況を確認しに行く。

そこで彼女が見たのは驚くべき光景であった。

 

「まさか、こんな....」

 

彼女が見たのはブリタニア軍による日本人への容赦ない殺戮であった。ナイトメアが必死に逃げる日本人たちを追い回して、KMF用のアサルトライフルで一人残らずハチの巣にして殺していく。

 

「なんでブリタニア軍が....ぎゃっ!」

 

「助けて....!」

 

叫びを上げて次々に日本人たちが殺されていく光景に、マーヤは言葉を無くす。

 

「(ブリタニア軍がゲットーの日本人を手当り次第に殺している....こんなのただの虐殺じゃない!!)」

彼女はそこでハッと気づいた。

 

「まさかシンジュクゲットーの日本人全員を殺すつもりなの?」

だが彼女はそこで合点いってしまう。ブリタニア軍の展開に、ナイトメアフレームの投入、これら全てが物語っている。

であれば保護を求めるなど最早自殺行為。地下に戻って、なんとかして租界に逃げ込まないといけない。

マーヤは急いで地下に急いで戻る。

 

「陽菜....みんな!」

 

「あ、おねえちゃん!」

彼女が戻ってきたことに陽菜たち子供らは嬉しさから、先ほどの寂しい感情が消えていた。

マーヤも陽菜たちの無事な姿に安堵する。

 

「良かった。みんな無事...」

一刻も早くこんな殺戮が行われてる場所より、子供たちを連れて逃げよう!マーヤの気持ちは今、それのみ強くなる。

 

 

「陽菜!急いで――」

 

 

だがその瞬間、轟音と共にけたたましい衝撃がマーヤたちを襲い、直後天井が崩れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――なに?何が起こったの?

 

 

何も見えない。何も聞こえない。

 

 

陽菜....まり、とも.....。

 

 

とにかくみんなを連れて逃げないと.....。

 

 

「うっ!」

 

身体中が軋む。動かそうとすると激痛が走る。でもようやく五感が戻ってきた。

 

「て、天井が....。陽菜...?まり、とも.....」

 

それよりも早く!あの子たちを!その時私の目の前に赤い液体が流れていた....。

 

「あ....ああ....あ....」

 

私は噓だ、噓だと信じたくない気持ちで眼を背けようと思った...でも、無意識に私は“そこに居た筈の陽菜たち”を視界に入れてしまった....。

 

 

そこには、大量の瓦礫の下....そこより潰された陽菜の手とあの子のリボンが、覗き出ていた。

 

 

「そんな、あれは....あれは....!うああああああああっ!!!

 

意識を失いかける私....その時、誰かが近寄る足音がした。視界がぼやけて今にも気を失しないそうの私の目の前に、誰かが足を止めた。

 

 

 

 

「だ..れ....?」

 

 

「......」

 

 

この時、私は思いもしなかった....この最悪の出来事から始まった出会いが、世界を変える為の出会いだったことを....。

 

 

 

 

 

そうこれが、私と...オズマさんとの出会いだ....。

 

 

 




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