機動戦士ガンダム 進撃のオズマ   作:武者ジバニャン

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【イメージOP|Fighter|機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ】

【イメージED|prototype|機動戦士ガンダム00】


STAGE6 少女の決意と願い

そこは熱く、焼き尽くす程の炎がそこら中、ある物全てを飲み込み燃やしていた。

 

「お父さん!!お母さん!!ねぇ、どこにいるの?」

 

燃え盛る火の中を、一人幼い子供――マーヤが涙を漏らしつつ、父と母を呼びながら叫び探している。

しかし返ってくる声はなく、あるのは焼け続ける音と焦げ臭さ、子供には耐えられない位の熱....そして、周囲には多くの日本人の死体....。

 

「ひっ!...っぅ....お父さんっ!お母さんっ!」

子供のマーヤには到底見て平然といられるものではない、だがそれでも恐怖を抱きつつも尚も両親を呼び探すマーヤ。

早く両親に会いたい、こんな地獄絵図から早く親たちと共に抜け出したい....その一心で探す。だが――

 

 

「――!おとう、さん....?」

そこには無惨な死に様を遂げている父...そして――

 

 

「う.....あ.....あ....」

そこで彼女の視界が血で一杯に染まり暗転する。

 

 

 

 

 

 

うわあああっ!!

それは彼女の夢...悪夢を見ていたものだった。余りの凄惨さに叫びながら、眼を覚まして勢い強く飛び起きた。

 

「はぁっ...!はぁっ...!.....今のは、なに?」

尋常ではない汗を流し、呼吸も荒げる焦るマーヤ。夢にしてはかなり生々しい光景、だがこれは彼女自身無くしてしまった記憶、その一部なのかもしれない。

 

「昨日、あんなことがあったから....」

彼女は思い返す...シンジュクゲットーで目撃した、ブリタニアによるゲットーで生きている日本人に対する無法で理不尽な虐殺を。

ただ今を必死に生きていただけの人々に、ブリタニアはそんな彼らの命を弄ぶかの如く無慈悲なまでに奪っていった。

その時の死の光景を改めて思い出したマーヤに強い吐き気が迫る。

 

「うっ...!」

何とか口を抑えて耐えられたが、しかしあの光景が夢ではなく紛う事なき現実だった。それを実感してマーヤは静かに呟いた。

 

「....死んだ....ブリタニアに殺されたんだ――陽菜や他の子たちも...多くの日本人が殺されたっていうのに、また私は何も出来なかった....父さん、母さん...」

陽菜や子供たちの死も現実――その自分の無力感をヒシヒシと感じ、何もしてあげられなかった不甲斐なさを痛いぐらいに彼女の心に突き刺さる。

陽菜たちには帰る場所はゲットーしかなかった、しかし自分はブリタニア人としての帰る場所にこうして帰ってきてしまった。

それが余計に自責の念を強くすることに繋がる、だがどれだけ自分を責めても陽菜たちは帰ってこない。

その時、彼女の脳裏にブリタニアを蹴散らしたダブルオーガンダムが思い出される。

 

「ガン、ダム...確かそんな名前だったよね....ガンダム」

彼女はガンダムの名を口にしながら思った....自分にもあんな力が在ればと、あの人みたく、あの人と共に....っと。

 

朝から暗い気持ちのまま自室を出て、リビングに移動するマーヤ。

 

「クラリスさんは....もう出かけたみたい」

リビングには養母であるクラリスは居ない、代わりに食卓のテーブルには彼女が作った朝食が綺麗に置かれている。

これはマーヤにとってはいつもの事である。余りクラリスとの親子関係は良好という訳ではなく、正直悪いと言える。朝食や夜食も時間をずらして別々にして食べて、クラリスを避けている。

だがテーブルには決まって彼女からのマーヤ宛に書置きが置かれている。少しでも義娘に対しての母親としての思いがあるのだろう。

 

――今夜も遅くなります。何かあったら直ぐに連絡をください――

 

「昨日、あんな態度をとってしまったのに、気にかけてくれている。いつかクラリスさんにちゃんと謝らないと...昨日みたいなことがあったなら尚更...」

その昨日の出来事、彼女はふとテレビに顔を向けて、もしかしたらとテレビのリモコンを手にする。

ニュースにはもう昨日のことが報道されている筈だと――急いでテレビの電源を点け、代わる代わるチャンネルを変える。

 

『先ほど、政庁より発表がありました――』

 

「!」

偶然入ったニュース番組で昨日の報道が始まろうとしていた。

 

『犯人は、軍施設より有毒な化学薬品を盗み出し、毒ガスを精製。テロを画策していたものとされ――』

 

「毒ガス!?ウソ!!そんなもの使われてない!!」

ニュースの内容は余りに昨日のこととは、全く違うことを報道されていた。

それはブリタニアが被害者で、イレブン…日本人が加害者として取り上げられていた。

ブリタニアにとって都合のよいフェイクニュースと言って間違いない内容に、マーヤは大声を上げた。

 

「ゲットーの人たちを殺していたのはブリタニア軍じゃない!!」

そこで彼女は気づく、これが奴等の情報統制による捏造だと。

自分たちの都合でやった殺戮を、全部無しにしようと言う意図に。

 

「全部無かったことにするつもりなの?街を焼き払ったことも、陽菜たちの死も………」

ブリタニアのやり方に苛立ちと憎悪が膨れ上がるマーヤ。

怒りで身体を震わし、眉間に皺を寄せ、憎しみに満ちた彼女の感情が爆発する。

 

 

 

「ブリタニア!!!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ここアッシュフォード学園・生徒会室。

 

「こーら、ルルーシュ!今、寝てたでしょ?手が止まってた」

ルルーシュの頭を叩いたのはミレイ・アッシュフォード、アッシュフォード学園理事長の孫娘で、生徒会会長を務めている。

そのルルーシュの周りには、級友で水泳部に掛け持ちで所属している少女・シャーリー・フェネット。

同じく生徒会役員で楽天家でルルーシュの悪友・リヴァル・カルデモンド。

ミレイとは幼馴染で、メガネを掛けたおとなしめの性格で人付き合いが苦手な少女・ニーナ・アインシュタイン。

そしてルルーシュを入れて四人で生徒会をやっている。

 

「だからって叩かないでくださいよ」

などと自分を叩くミレイに苦情を入れるルルーシュ。

 

「今は部活の予算審査、とっとと済ませないと何処も予算が下りないでしょ」

そんな寝ていたとされるルルーシュに、今は生徒会の仕事の説明を説明する。

現在各部活へ予算審査の会議中である。

 

「せめてもう1日早く思い出してくれれば良かったんですよ」

「もう1日遅くが正解、諦めがつく」

「いい考えだ。今からでも」

シャーリーが苦言を呈して、リヴァルとルルーシュなんかはもうサボる気でいる。

だがミレイは笑みを浮かべて大声を上げた。

 

「ガーッツ!」

「あぁっ…!」

ミレイが気合いを込めてガッツの掛け声を飛ばす。ニーナは思わず驚き声を発した、だがミレイは続けて話した。

 

「はーい、あなた方は頑張りたくなりまーす」

「かかりませんよ、そんなインチキ魔法じゃ」

「会長、私かかったことにします!」

呆れるルルーシュだが、シャーリーは根が真面目だからか自ら率先して名乗りを上げる。

流石は肉体派と褒めるミレイに、シャーリーは元気にガッツポーズをして見せて鍛えてますと言うが、ミレイとしてはそうではなくーー

 

「立派じゃん♪この間女子寮のバスルームで確かめた。トップとアンダーのバランスがいいよねぇ~」

「な…………何を言ってるんですか!変態!」

悪戯っぽく可笑しく言うミレイに、シャーリーが恥ずかしながらに怒る。

などと楽しい生徒会の時間が終わり、ルルーシュたちはクラスに戻る。

教室では何か騒いでる様子だった。

 

「毒ガステロだってよ」

「こわーい」

クラスメイトたちが騒いでスマホなり、学校配布のノートPCで何かを見ている。

 

「怖いよなぁ。シンジュクなんて30分と離れてないのに」

「私見た!シンジュクから煙上がってるの!」

 

「シンジュク?」

クラスメイトたちの話にシャーリーは首を傾げるが、ルルーシュはーー

 

「(おかしい………。なぜ"あの情報"を隠す?)」

ルルーシュが言う"情報"ーークロヴィスの死、そしてそれを殺ったのが正体不明のナイトメア?とされる、謎の機体。

 

「(クロヴィスの死……それを隠すということは、混乱を防ぐためか。しかしそれを発表するということは――だがそのクロヴィスを殺したのは――)」

ルルーシュの脳裏に、あの機体――ガンダムが思い浮かぶ。

 

「(あの機体は一体何なんだ?ナイトメアとは根本的に違っていたようだが、まさか何処かの国の新兵器?....まさかな)」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

軍施設の内部、そこにある執務室にて純血派筆頭のブリタニア軍人であるジェレミア・ゴットバルトと、その次席キューエル・ソレイシィ、ジェレミアの副官である女性軍人ヴィレッタ・ヌウが何やら密談をしている。

 

「バトレー将軍は?」

「今もまだ意識不明の重体です。もしかしたら....」

「眼を覚ます可能性は低い、か....」

ジェレミアがヴィレッタに問いかけているのは、クロヴィスの副官であるバトレー将軍のことである。実はバトレー将軍、先日のシンジュクゲットーでのガンダム襲撃によりG1ベースは破壊され、クロヴィス以下参謀たちは悉く戦死したのだがバトレー将軍だけは瀕死の重体で発見され、現在は集中治療を受けて生死を彷徨っている。キューエルはそれを聞いて難しい顔を見せる。

 

「奇跡と言える強運かもな....」

「しかしあの状況でよく生きて....」

「そもそも復職すら危ういかもな」

難しく考えるキューエル、深刻な顔のヴィレッタにジェレミアは切り捨てるように口を開いた。

そもそもバトレー将軍は文官出の軍人、叩き上げのジェレミアからしたらそのような人間がクロヴィスの傍らに居たことに嫌悪していた。

話を変えるようにジェレミアは、キューエルに問いかける。

 

「所でキューエル卿....本当なのか?その正体不明のナイトメアが、クロヴィス殿下のG1ベースを破壊したのは...?」

「ああ。この目で見た」

「しかし俄かには信じられません。ナイトメアよりも大きい見たこともない機体など....」

「だが事実だ。お前やジェレミアは先に戦線より離脱してしまったから見てないが、私はこの目で確かに見た....あの機体の二つ目が禍々しく光る瞬間をっ」

ヴィレッタの懐疑的な発言にキューエルは、眉間に皺を寄せてその時の光景を思い出したのか、震える手を二人に見せつける。

それを見た二人はキューエルという男をよく知っている。決して冗談や噓を平然と吐くような軽々しい男ではない、何事も勤勉実直な人物であることを。

しかしこれでは今後どうすべきかが問題となる純血派の三人。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

一方、未だシンジュクゲットーにコンテナシップを置いてトレミーに帰還していないオズマ、彼は今リジェネとリヴァイヴの二人と通信で話し合っている。

 

『ご苦労様だったね、マスター』

『圧倒的勝利でしたね』

「ああ」

二人からの賛辞に淡々と受けるオズマであるが、ブリタニアの動向がどうなっているのかが気になっている。

 

「ブリタニアの様子はどうだ」

『それがニュースで未だ報道していないようだよ。代わりにゲットーで毒ガスを流したってフェイクが報道されている』

「情報統制か?」

『恐らくはそうでしょう。いま皇族殺しを広めれば、国内のテロ勢力を刺激し兼ねないですから』

『リヴァイヴの言う通りだね。今のところシンジュクゲットーでは目立った騒ぎもないしね』

オズマは顎に手を当てつつ考えこむ。一つのエリアの総督が死んだのであれば、本国でも情報は行っているはず。

しかし何も表立ったリアクションがないとなると、本国への報告すらもまだしていないのでは踏んだ。

 

「現状このエリア11の統治はまだ誰もしていないのか?」

『まぁね。だけど軍部は今、純血派という組織が掌握しつつあるようだ』

「純血派?」

純血派とは...神聖ブリタニア帝国軍内部にて、ブリタニア人至上主義を掲げる若手軍人の新興派閥のことである。

【軍内部の人員は、騎士ではない一般兵に至るまで純血のブリタニア人が務めるべき】という思想と目標を持っており、帝国のナンバーズを起用する名誉ブリタニア人制度の排斥と全廃を訴えている。

文字通り【純血】を意味しており、赤を基調としてメンバーは全員軍服に赤い羽根を象ったバッジを付けている他、メンバー各自が搭乗するサザーランドもファクトスフィアと肩部アーマーを赤く染めた専用の機体を用いている。

 

「何やら至上主義を掲げると言う点に関して、どことなく既視感を覚える」

『“古巣”を思い出すからかい?』

「....」

『おっと失礼...』

『...今後の行動はいかがしますか?マスター』

地雷だったねとリジェネは苦笑交じりに謝罪する。リヴァイヴはそんなリジェネを通信越しに一瞥しつつも、今後の行動をどうすべきかをオズマに問いかけた。

 

「ブリタニアの動向を更に詳しく調べる必要がある。奴らの行動如何で決定する」

『『分かったよ|分かりました』』

そこで通信を終了するオズマ、その彼の背後から柔らかい温もりが押し寄せてきた。

 

「オズマァ、お仕事は終わりましたか?では、私と男女のひと時を....あら」

彼の背中に抱きついてきたのはZ.Z.であった。彼女はあれ以降オズマにべったりしてくるが、オズマ自身はどうでもよく必要以上に馴れ合うつもりはなく、ほとんど無視している。

この女は何故かオズマに対して鬱陶しいぐらいにすり寄ってくる。その彼女を自分から引き離し、オズマは事務的な話をする。

 

「明日辺り、俺の母艦戻る。その時余計なことは言うなよ?」

「ギアスもですか?」

ギアスやZ.Z.のことはまだリジェネたちに伝えていない。しかしギアスなどとオカルトなものをどう説明すればよいかは、未だ悩みどころではある。

 

「所で....大事にしまっている、あの鳥の形のしたものはどうするんですか?」

「......」

笑みを浮かべてオズマに尋ねる。彼がしまっている物――それは彼がコンテナシップにある自室のデスクに保管されている一羽の折り鶴である。

 

「.......探すか」

「はい?」

「お前は明日留守番してろ。ハロ」

「「ハロ!ハロ!」」

オズマは白ハロと黒ハロを呼び出した。保管していた折り鶴を手袋をはめて取り出して、ハロたちに差し出す。

 

「この折り鶴にある指紋を調べろ。そのままヴェーダを通してエリア11のネットワークに侵入、住民データから割り出せ」

「「リョウカイ!リョウカイ!」」

 

「......」

オズマは折り鶴を見つめながら、あの時涙を流していた彼女の顔を思い出す。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

その夜マーヤは自宅に帰宅した。リビングに入り電気を点けると、食卓の席にクラリスが座って待っていた。

彼女はマーヤを見ながら険しい眼つきをしている。

 

「お帰りなさい」

「....!クラリスさん。今日も仕事で遅いはずじゃ....」

いつもは仕事で遅く帰ってくる筈が、こんな早く帰宅しているとは露とも知らず、驚くマーヤである。

だが当の本人のクラリスは「はぁ」っとため息を漏らすも、厳しめな顔つきを緩めない。

 

「....学校から連絡があったのよ。あなたが学校に来てないって....学校にも行かず、こんな時間まで何処に行っていたの?」

「......」

「昨日も何かあったのでしょう?言わなくたって、それぐらいわかるわ」

「......」

本当のことを話して欲しいクラリスの願いに、マーヤは黙るしかなかった。義娘の様子にクラリスは逸る思いを抑えることができずに問い詰める。

 

「どうして黙ってるの?私が本当の母親じゃないから?」

「.....そうじゃない」

「だったらどうして!!私だって貴女のことが心配で....」

血は繋がっていない、本当の親子ではない。それでもクラリスはマーヤの為に少しでも支えたいと、助けたいといつも思っている。

 

「....ごめんなさい。でも放っておいて、大丈夫だから.....」

だがそんな彼女の思いに申し訳なさそうにしつつ、それを拒んでしまう。

だがそれでクラリスが納得できるわけではない。

 

「大丈夫なわけないでしょ!!昨日だって近くであんなに大勢の人が...!」

いいから!!放っておいて!!!

マーヤはゲットーでのことを思い出し、つい大きな声を上げて部屋に逃げ込むように駆け込む。

 

「う......くっ....うう.....」

またもマーヤと分かり合えず反発し合ってしまい、涙をながす。

自室に戻ったマーヤは顔に影を落としている。

 

「....言えるわけがない。シンジュクゲットー壊滅の真相を...」

マーヤはそれをクラリスに言って信じて貰えるとは思っていない、言ったとしても有り得ない一蹴されるのがオチである。

純粋のブリタニア人であるクラリスと、ハーフのマーヤ....こういう面で違いある。日本人の血を持つマーヤにとって多くの日本人が殺されるのを許せるものではない。

そんな思いを抱く中、彼女は一つ...無くしたものの行方を気になっている。

 

「今日、様子を見てきたシンジュクゲットーの南の方は封鎖されていた。明日は東の方から回ってみたら探しにいけるかな」

だが果たして見つかるのかと不安げになってきた。きっとあのシンジュクゲットーでの騒ぎの途中、無くしたのだと思い絶望的になってきた。

 

「....あれは特別なもの。陽菜がくれた大切なもの....」

もう二度とこの手に戻ることはないのかもしれない...マーヤの心に暗い気持ちを強くしてしまう。

 

「あの折り鶴、なんて書いてあったんだろう...叶うことなら、もう一度陽菜たちの笑顔を見たかった...もう一度」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、彼女はシンジュクゲットーに再び来ていた。彼女が今立っている場所は地下道への入り口前であった。

そこはあの日、陽菜たちを連れて入った場所...そしてあの子たちが死んだ場所でもある。

 

「....っ」

妹のように思っていたあの子たちが死んだ場所...そこにもしかしたら陽菜がくれた折り鶴が落ちてあるかも知れない。

彼女の足が動こうにも前に進めない、だがこのまま眼を背くことはできない。マーヤは意を決して中に入ろうとしたその時――

 

 

 

 

「もうそっちに死体はないぞ」

 

「.....え?」

 

マーヤが振り向いた先には、オズマが立っていた。

 

「あ、貴方は...!」

「こんな所で何をしている」

淡々としてマーヤに問いかけるオズマ。彼女はまたオズマに会えたことに何処か嬉しいと思うが、そのマーヤにオズマが懐より何かを取り出した。

 

「おい、これ」

「え...?あ!!」

オズマが差し出した掌には陽菜の折り鶴があった。彼女はそれを受け取り、陽菜からの宝物を大事に両手に包み込むようにして瞳を潤ませる。

 

「あ...ありがとうございます!私...!」

 

「――マーヤ・ガーフィールド」

 

「え....?」

お礼とあの時助けて貰っていたが名乗れなかったので、自己紹介をしようとしたがオズマがどういう訳か、彼女の名前を口にした。

どうして彼が自分の名を知っているのか理解できない。だがオズマは話を続けた。

 

「マーヤ・ガーフィールド...17歳。養母であり、エリア11でエナジーフィラーを軍に供給する企業「DGEコーポ」の社長を務めるクラリス・ガーフィールドと共に暮らしている。

学生で私立アッシュフォード学園に通うが、ほとんど不登校気味で一切クラスメイトと交流を図っていない。

しかし成績は上位で優秀....ある意味問題児だな」

「どうして...私のことを」

「調べただけだ....それよりも、あれを見ろ」

オズマが指さした先を追うように振り向くと、それを見たマーヤは眼を見開き言葉を無くす。

 

 

 

「あ...あれは....」

彼女が見つめた先、そこには一つの墓が作られていた。マーヤはゆっくりとその墓に近づき、膝を折り姿勢を墓と目線が合うようにしてそこに刻まれた名前に優しく触れる。

 

「っ....っぅう....陽菜、まり、とも」

そこにはいつもマーヤが気にかけていた子供たち...陽菜たちの名前が刻まれていた。静かに涙を流しながら、墓の書かれた陽菜たちの名前に自分の頬をそっと触れ合う。

オズマはマーヤを静かに見守り、時間は少し経ってから彼女は立ち上がり彼に振り向いた。

 

「ありがとうございました。陽菜たちの墓を作ってくれて...」

「簡易ではあるがな」

「いいえ。陽菜たちもきっとお礼を言っていると思います」

「そうか...じゃあな」

終始淡々とするオズマは彼女から離れ立ち去ろうとしていた。

 

「あ!....待ってください!!」

マーヤはオズマを呼び止めるべく、彼の歩く方向へ先回りして立ちふさがる。

 

「どうした?折り鶴は返したはずだ」

「あ、いえ。私......」

「.....」

オズマは静かに彼女が言わんとしている事を待つ。彼女は深呼吸をしてからオズマに問いかける。

 

「....貴方は、この世界をどう思いますか」

「......この世界をか?」

「はい」

先ほどと代わってマーヤの顔が真剣な表情になっている。オズマは少し考える素振りをしてから――

 

 

「.......ゴミだな」

「っ!!」

「ゴミだろ、今この世界は。人間が人間を家畜以下の扱いにして飼殺す.....これが真面だと思うか?君は」

「....いいえ、思いません。思うわけがないです」

マーヤはオズマに同調する。この世界は狂ってる、強者が弱者を弄び悪戯にその命を奪う....これが真面であるはずがない。

だがブリタニア人は他民族を許容することはなく、植民地のナンバーズとなった人間を人間と扱わない。

 

「改めてこの世界は異常であることが認識できる。だから――変革が必要かもな」

「変革...?」

「そうだ。変革の為には今ある世界をそのルールごと、全て破壊しなければならない。そしてそこから変革を行う」

「そんなこと、できるんですか?」

「君はあの時、コンテナシップから戦闘の様子を見ていたんじゃないのか?たった四機のガンダムで大軍を壊滅させ、処か敵の司令官――ああ、ここではエリア総督だったか。そいつを見事に殺してみせた....これでも不可能だと思うか?」

マーヤはあの時のガンダム四機によるブリタニア軍殲滅を思い出す。確かに現実にブリタニアのナイトメアが成す術もなく、只々塵を払われるが如く次々に蹴散らされていった。

そもそもこの世界とガンダム世界とでは兵器技術のレベルが違いすぎる。モビルスーツとナイトメアでは機体の全高がモビルスーツが余裕で上なのは明白。

それにGNドライブ搭載のガンダムと言うオーバースペック機体相手では、勝てる要素はブリタニアには薄い。

そのガンダムという力を初めて目撃していた彼女であれば、理解できないわけではない。

 

「逆に君に問うが...懸命に生きている人間が、無慈悲に、理不尽に、悪戯に殺されるこの世界で君は満足か?」

「違う...違う!」

「傍観者を気取り、自分は関係ないと閉じこもり無視するのか?」

「それも、違う!!だから!!私は貴方にお願いしたいんです!!」

オズマの言葉を強く否定するように彼女は、一歩前にでる。

 

 

「私を、私を!貴方の下で戦わせてください!!」

「何の為に」

オズマの眼つきが変わり、鋭く射殺すようにマーヤを捉える。

 

「私はブリタニアに復讐したい。そのために、力を貸してください」

「.....何故復讐がしたいんだ?」

「私は...純粋なブリタニア人じゃない。日本人の父と、ブリタニア人の母の間に生まれたハーフ」

「ハーフだと?」

そこまでは調べてはいなかった。だが彼女がハーフなのであれば何となくわかってくる、自分が日本人の血も持っていることでブリタニア人が日本人を差別することに嫌悪している。

だからゲットーで子供たちとも居たのかと納得もする。

 

「だけど、七年前の侵攻で二人ともブリタニア軍に殺されたんです」

「だからブリタニアに復讐を?」

「ええ。私は七年前のあの日、色んなものを失った....大切な家族、大切な思い出、自分自身を形作るものすべてを....。だから!!私はブリタニアを許せない!!奴らを絶対に!!

「.....」

 

 

 

 

 

俺は絶対にジオンの連中を許さないぃっ!!奴らを、奴らを!!一匹残らず皆殺しにしてやるっ!!!

 

 

 

 

「.....」

自身の記憶の一部が脳裏に現れたオズマは、静かにマーヤを見つめる。その彼女の瞳に既視感を覚える。

 

「(この目....俺は知っている。失って全てが見えなくなり、未来すら見失ってしまっている目だ....)」

何処となく過去の自分自身と重ねるオズマ。彼女は本気でこうして自分に願い出ている、復讐を抱くその心が今にも壊れてしまいそうなのも理解できる。

嘗て自分もそうであったように、彼女もそうなると....。

 

「.....覚悟はあるのか?」

「っ!!...はい!」

「言っておくが、この先を進めばもう真面な人生は負えないぞ」

「覚悟しています」

「この先...俺と来れば、間違いなく否応なしに人を殺すことになる。それも一人二人のレベルじゃない。多くの人間を、力の有無関係なく、容赦なく殺してしまうことになる....それでも覚悟はあるのか?」

先ほどの射殺す程の眼つきが、更に強く酷く殺意を込めてマーヤを睨みつける。その眼光に彼女は一瞬怖じ気づきそうであったが、自分にもゆずれない願いと思いがあるからか、踏ん張ってその睨みを耐える。

耐えた彼女は深呼吸をゆっくりと整えてから、負けじと鋭く射殺す程の決意に満ちた眼つきでオズマに返した。

 

「今の私に迷いはありません。だから!!私を!!貴方の下で戦わせてください!!」

「....わかった」

「っ!!ありがとうございます!!」

彼女はオズマの許しに歓喜した。

 

「そう言えば、君はあの折り鶴の“中身”を読んだのか?」

「折り鶴の中...?」

陽菜が生前何度も開けてはダメだと言っていた折り鶴の中身....マーヤはそれをゆっくりと大切に開いてみた。

 

 

そこには――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おねえちゃん だいすき

 

 

陽菜からマーヤに宛てた大切な思いが詰まった言葉であった。

 

「これ、は………」

陽菜の思いが込められた文字にマーヤの瞳は潤んでしまう。

 

「悪いが、読ませてもらった。君は随分慕われていたんだな」

「っ……ぅ……っぁ…………陽菜」

先ほど止んだ涙が溢れ止まることなく、彼女の目から流れ続けた。

 

「いつも元気に笑っている子だった。どんなに辛い環境でも、お日様のような笑顔の子だった。身寄りのない子供たちだけで寄り添って、その日その日を生きていた....一生懸命に生きていただけ。それなのに、陽菜は....私の目の前で....」

「その子は弱かったから死んだ。力が無かったから殺された」

「っ!!」

オズマのその鋭い言葉にマーヤは彼を見る、だが彼は尚も言葉を続けた。

 

「だがそんな弱者を玩具にする世界にしたのは誰だ?子供すら純粋に生きられない世界にしたのは誰だ?....ブリタニアだ。奴らは味わったことがないんだ、大切なものを...愛するものを奪われる痛みと恐怖を....その絶望を。

奴らは平然としている、自分たちだけは奪う側であり続けられるんだと...だから教えてやらなければならない。

奴らもまた奪われる弱者だということを...そして」

オズマは彼女に向き直り見つめながらに言う。

 

「力ない者たちが、強さを持たない者たちが、安心して未来に生きられる....そんな世界に変えなくてはダメだ」

「安心して、未来に生きられる...世界」

彼女はオズマの話に見入っていた。そう、今の世の中は間違いだらけ。

ブリタニアだけが満足し、その他の人間たちを搾取し虐げるこの世界を変えなくては陽菜のように力ない者たちが生きられない。

マーヤの心にもう迷いなど在りはしなかった。

 

「私に迷いはありません。私は決意しています....ブリタニアを壊す覚悟を!!」

「そうか、分かった。では改めて君を歓迎しよう....マーヤ・ガーフィールド。俺の名は、シジョウ・オズマ....

ガンダムマイスターのシジョウ・オズマだ」

「シジョウ....オズマさん」

「これから、よろしく...マーヤ」

「はい!!オズマさん!!」

彼女はオズマの手を両手で握りしめ、決意に満ちた声を上げる。これを機にオズマとマーヤの道が始まる...そこに何が待っていようとも....。

ヒロイン増やすなら誰

  • モニカ・クルシェフスキー
  • 紅月カレン
  • オルドリン・ジヴォン
  • シャーリー・フェネット
  • ミレイ・アッシュフォード
  • 篠崎咲世子
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