信疑≠真理(シンギノチカラ、シンリニアラズ)   作:サモア リナン

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名前のない他者巻き込んでいくスタイル


第五話『共感≠救済』

人混みが散りかけた夕方の繁華街。

不穏な熱気はすでに動画という形で拡散され、誰かの信仰が暴走するには十分すぎる土壌が整っていた。

 

「……来てる。あの動画の人たち……本物だ」

 

すれ違いざまに耳にした、そんな声。

その直後、遥たちを囲むようにして群衆がざわめいた。異様な熱に浮かされたような眼差し。光るスマホ、加熱したコメント、ひび割れた信仰。

 

「おい、あれ見ろ……!あの人、光ってる……!」

 

「“信じれば力が手に入る”って、本当だったんだ!」

 

突如、群衆の一人が地面に手をかざし、光の柱のような信象を発現させた。

その紋様は青白く輝き、空間を歪ませながら周囲に威圧を放っていた。

 

「ウソ……本当に発現してる……!」

 

星姫が後退りながら、カメラを下ろす。

 

「私たち……やばくない?」

 

遥も凪も固まったまま動けずにいた。

 

「配信、やめよう……」

凪が震える声で言った。

 

「でも……消したってもう……!」

 

遥の言葉が終わる前に、信象を発現させた青年が叫んだ。

 

「お前らの配信が、俺を目覚めさせてくれたんだ!だから俺は正しい!」

 

その声とともに、破裂音のような衝撃が走る。街路の舗装が隆起し、辺りが破片と土埃に包まれた。

 

「下がって!」

凪が前に出ると、彼女の背にうっすらと浮かび上がる模様――渦を巻くような灰色の疑象が輝いた。

 

しかし、それは攻撃を防ぐものではなく、相手の信象のバランスを微妙に揺らす「干渉」の能力だった。暴徒の動きに一瞬の迷いが生じたが、攻撃は止まらない。

 

「凪っ! 下がれ!」

 

遥が凪を引き戻そうとしたその瞬間――

 

「そこまでだ!」

 

強い声とともに、群衆の前に割って入ったのは、新藤 真土だった。彼の前に浮かぶのは、鉄錆のような赤銅色の信象。

彼は鋼鉄の柱のような構造を作り出し、暴徒の攻撃を防ぐ。

 

「真澄!こっち!」

 

群衆の外側から走り込んできたのは、真澄だった。

彼の腕には、銀と灰の幾何学模様――「双極構式」がくっきりと刻まれている。

 

「信じるだけじゃ、間違えることもある……でも疑うだけじゃ、立ち止まるだけだ」

真澄がそう呟くと、彼の前に現れた紋様が空中に広がった。

 

幾何学模様が組み替わり、銀色の回転式盾が形成される。

一方で、灰色のスパイラルが地面に展開し、暴徒たちの足元の地面を鈍く歪ませる。

 

「――これは、俺の“折り合い”。信じることと、疑うことの両立だ」

 

その瞬間、双極構式の能力が暴徒の信象を分析し、対となる反応を引き起こした。

過剰な信仰が中和され、力を失った暴徒はその場に膝をついた。

 

「……は……なんで……?」

 

一人が崩れ、次いで他の暴徒たちも力を失ったようにその場に座り込んだ。

 

「終わった……?」

遥が呟く。

 

「いや、まだだよ」

真澄が言った。「誰かが、俺たちの動画を見て事故に遭った。……それを、忘れちゃいけない」

 

「……同じ高校生……だったよね」

凪が、ぎゅっと手を握りしめる。

 

真澄の目には、痛みと責任感の混じった色が浮かんでいた。

 

「力は、簡単に持っていいもんじゃない。信じたって、疑ったって、その重さは変わらないんだよ」

 

その言葉に、誰もが返す言葉を持たなかった。

 

ただ、心に刻むように――静かな沈黙が、場を包んだ。

 

 

次回に続く。

 




思いの力って強いよね!

自分だけだと思わない事だね
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