これまた体育祭より前の時系列
「ねぇ紅音」
「ん? どうした耳郎」
授業の合間時間、次の授業が英語という事に若干絶望していた時に耳郎が話しかけてきた
なんだかんだこのクラスで話すことの多い耳郎*1だがなんか用なのだろうか?
「いやただ気になっただけなんだけどさ紅音ってどのくらい姿変えられんの?」
「姿?……あぁ個性のことか」
手につけているリング*2を見せると頷く耳郎
「体育祭前に聞くのはおかしいとは思うけど何となく気になってさ」
気まづいのかイヤホンジャックを手に持ちコツコツとぶつける
「別に構わねよ姿の数だけじゃ戦い方もわかんねぇだろうし」
見た事ある奴ならともかくそうじゃなきゃ数だけじゃ分かりはしないだろ
「俺は全部で49の姿になれる」
「49!?そりゃ数がわかっても問題ないって言えるか」
驚く耳郎がつい面白くて頬が上がった気がした…最近コイツらの前じゃ上がりやすくなった気がする
「///」
「ん? おいどうした顔が赤くねぇか?」
「えっ!?いやそんな事ないし! 気にしないで」
変なやつ
「そっそう言えば紅音前まで敬語?っぽかったのに言葉使い変わったね」
「……昔幼なじみに口が悪いって言われて治そうとしてたんだよ」
「治らなかったかw」
やっぱあの口調は俺らしくねぇし…何より喋りづらい
「でもそっちの方が自然でいいじゃん 爆豪みたいにめちゃくちゃ口が悪い訳でもないし」
「聞こえとるぞ耳!!」
爆破の音がうるさい、キレるとすぐ個性発動させるのはやめろ
「うるせぇぞ」
「んだとゴラァ!やんのか!!」
「バカかお前いい加減その自信過剰な所治せよ」
((((紅音も大概だよ!!))))
「いい加減にしとけよお前ら」
相澤が入ってきた途端全員席につく、爆豪もだ ったくそれならはなかったら爆破なんかするなよ
放課後、今日は上鳴がどうしても外せない用事があるとの事で特訓は無し
「案外高いもんだな…」
このまま帰る気にもならず屋上に来てみた、前に屋上も出入りが自由と聞いていたが中々いい景色だ
ポケットに入れているハーモニカを取り出す、何となく吹きたくなった
「…スゥー」
ハーモニカから流れるメロディが空に消えていく、何処か故郷を思う古代のメロディ
目を閉じて吹けば懐かしいあの場所、夏になれば暑いのに2人でピクニックに行って花が咲く中この曲を良く吹いていた
(萌美…俺にも友と呼べる人が出来たんだ お前にも紹介してやりたいな)
物事にふけていると後ろから小さくだが音がした
「誰かいるのか?」
声をかければドアがゆっくりと空いていく
「その…ごめん盗み聞きするつもりはなかったんだけど」
「耳郎か…別に怒ってねぇさ」
こんな所で吹いてたらそら誰かに聞かれでもする
「ねぇもうちょっと聞いててもいい?」
「…あぁ」
もう一度ハーモニカに口をつけ、あの頃の思い出を乗せてメロディを奏でていく
紅音、ウチのクラスの同級生
何処かツンっとした態度で、でも優しいのが隠せてない不器用なヤツ
最初は同じ歳なのに敬語使ってるちょっと掴み所がないのかな?って思ったけど最近は敬語が完全に剥がれてしまった
最近はちょっとづつ笑顔を見せるようになってきて、急に微笑むからちょっとドキッ…じゃなくて!新鮮で心臓にちょっと悪いけどだんだん打ち解けてきたと思ってる
でもたまに、なんて言ったら分かんないけど無性に寂しそうな顔をしている時がある
今奏でてる音もそう、何処か寂しさを含んだ音の気がするんだ
「でもアンタはそんな弱音もはかないんだよね」
きっと今は言えないんだと思う、だから言える時までウチは待つよ、だから今はアンタの音を近くで……聞かせて
これは体育祭前の夕暮れが憂いを放つ一時
この時紅音が吹いた曲はダイノハープです