仮面ライダーStormDueler ~ライドウォーリアーズ~ 作:地水
最初に繰り出すバトルは、この世界に現れた怪人と、この世界を守る
『仮面ライダー』。
それは、世界の何処かで戦い続ける仮面をつけた戦士達の総称。
ある者は
ある者は超古代の戦士として。
ある者は最先端AI技術の申し子として。
彼ら彼女らは平穏な世界へ迫る巨悪から人々を守ってきた。
だが……。
この世界に存在するのは、かつて人類を守ってきた英雄・仮面ライダーではない。
偉大なる魔神・ライドマジンによって生まれた仮面の戦士・ライドウォーリア。
彼らは世界を守るためだけに戦っているわけではない。
選ばれたのは人間……善にも悪にも、神にも悪魔にもなれる可能性を秘めた者達だ。
力を持った人間は如何様にも『変身』できる。それが、例え自分自身にすら良くないとしても。
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日本の某所、とある湾内に位置する倉庫内。
そこでは暗闇に紛れて活動する謎の怪人の姿があった。ヒトデの意匠が入った人の姿形と表現した方が早い、赤を基調とした男のような体格をした異形はニヤリと口元を歪ませる。
「ククッ……、何とかゲットできたぜぇ」
ヒトデの怪人は嬉しそうな声を上げると、それを天井の窓から覗かせる光に透かして見ている。
それは、奇妙な文様が入った鉱石……だった。それも一つだけではない、いくつもその手にあった。
一番目立つのは緑と黒で彩られた禍々しい鉱石であり、綺麗に磨かれた石・ウォーリアストーンとは似て非なるものだと理解する。
「これがあれば、この世界にいる奴らを……!」
歓喜の声を上げているヒトデの怪人……その名は、『フィスタチオ・シースター』。
正体不明の謎の怪人は嬉しそうな声を上げて、ガッツポーズをとった。
後は手に入れた石を持って人知れずこの場から去って、これを仲間の元へ届ける……。
そんなところへだった。自分以外の声が聞こえてきたのは。
「アナタか、最近起きている盗難事件の犯人は……」
フィスタチオが振り向くと、そこにいたのは此方へと向かってくる一つの人影。
腰まで伸ばした長い黒髪、綺麗な顔たち、赤い袴が特徴的な和装の服装。
服の上からでも女性特有の柔らかそうな体つきをしているその若い女性は怪人であるフィスタチオを見ると、一言訊ねた。
「そのウォーリアストーン……と、その毒々しい石はこちらがもらいます」
「ハッ、誰だお前? 見知らぬ誰かでもそうでなくても、"ハイそうですか"って渡すかよ」
「なら……私の名は、
突如現れたその女性『海天 玲』は目の前に立つフィスタチオにそう言うと、手を胸元の服の中へ突っ込み、懐からとある物を取り出した。
それは『Xのマーク』が刻印されたウォーリアストーン……それと同時に玲の腰部には大理石を思わせる独特な質感をしたバックル『ライドドライバー』が出現。
【Ride Driver】
「行きます、変身」
【Xross Up……X】
ライドドライバーの中央部の装填口へウォーリアストーンをセットすると、玲の姿が変わっていく。
彼女の体は銀色のボディに赤い装甲を身に纏った強化スーツへと変わり、頭部は右から左へと銀色のマスクを装着。
最後に口部分のマスク部分が装着され、首元に黒と黄色のツートーンカラーに赤いXのマークがついたマフラーが出現。
――やがてそこに姿を現したのは、一人の仮面の戦士だった。
『ライドウォーリア・X』。
別名Xライダーともカイゾーグとも呼ばれているその仮面戦士は、その手に持った長い棒の型の武器・ライドルスティックを構えて走り出した。
いきなりのライドウォーリアの登場にフィスタチオは驚いた。
「お前、仮面の戦士か!?」
「いかにも、私はライドウォーリアX……悪さをするなら、私が止める!」
「チィ、お前らのような奴らにはあんまり関わりたくはないんだがなぁ!」
バツが悪そうにしながらフィスタチオは振り下ろされるライドルスティックを避けていく。
太刀筋からして相当の強者だと悟り、フィスタチオは防戦する方を選んだ。
その一方、Xは目の前にいるヒトデ怪人の戦い方に違和感を感じるが、攻撃の手を緩めるわけにはいかない。
正確無比な鋭い一撃がフィスタチオへ狙って放っていく。
「てりゃあ!」
ライドルスティックの一撃がフィスタチオの胴体を捉えた。
ドスリ、という鋭い攻撃を受け、フィスタチオは遠くの湾外外まで突き飛ばされてしまう。
地面を派手に転がりながら、痛みに苦しみながらフィスタチオが叫ぶ。
「くっそぉ!? 中々やるじゃ、ねえか……だがッ!」
自分に一撃与えた相手に感心しつつも、フィスタチオは手で地面を思いっきり叩く。
するとフィスタチオが叩いた足場から荒波に乗った海水が勢いよく発生……突如発生した水場にXは驚いてその猛攻を止めた。
「なっ……これは!」
「この隙にぃ……おっりゃあああああ!」
まるで自身をサーフボードの如く水場に浮きながら荒波に乗ってフィスタチオは猛突進。
Xは咄嗟にライドルスティックを用いて防ごうとするが、フィスタチオの突撃を受けて軽くよろめく。
「くぅ!? 待てっ!」
自分を押し退けて逃げようとするフィスタチオにXは追いかける。
常人離れした速度で波に乗っていくヒトデ怪人と、同じく常人離れな脚力で追いかけていく。
彼の目的は不明だが、異形の怪人がしでかした企みを見過ごすわけには行けない……そう思いながらXはライドルスティックを構え、そして技名を叫ぶ。
「ライドルロープ! てりゃあ!」
ライドルスティックのグリップ部分を操作し、ロープ形態・ライドルスティックへと変形。
Xはそれをフィスタチオ目掛けて投擲し、真っすぐ飛んでフィスタチオの体に絡みつく。
自分の体に絡みついたライドルロープににフィスタチオは驚く。
「なんだ、これは!?」
「逃がすものか、ぐぬぬぬ!」
拘束された状態で必死に抵抗するフィスタチオに対し、Xは力づくで引っ張る。
暫しの間、両者が拮抗するが……先に崩しに来たのは、フィスタチオだった。
彼は手足を大の字に伸ばし、そのまま体を大きく側転の形で回転し始める。
「うぉおおおおおお! シースタースピン!!」
フィスタチオはヒトデのような光を纏いながら自身の体を大回転。
ライドルロープで拘束したまま回転しているため、Xライダーもその回転に巻き込まれ、振り回されてしまう。
「ちょっ、待っ、きゃああ!?」
余りの勢いに悲鳴を上げてしまうX。
やがてフィスタチオに絡みついていたライドルロープが解けてしまい、Xは凄まじい勢いで湾内の海上へと飛ばされてしまう。
大きな水柱を立てながら落水したX……すぐさま海上へと戻るとフィスタチオの姿を確認しようとする。
「あのヒトデは……!」
湾岸の方へ見てみると、もう既にフィスタチオの姿はない。
それを見たXは仮面の下で悔しい表情を浮かべる。
「くぅ……逃げられましたか」
挙動不審だったヒトデの怪人はどこかに逃げてしまったのだろう。
そう思いながら、Xはフィスタチオの行方を捜すために追いかけることにした。
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東京近郊・
そのとある街角のこじんまりとしたお店。
看板には【F-Stand】と店名として書かれており、中からは珈琲の匂いが香ってくる。
喫茶店のような飲食店なんだろうか……その匂いに連れられて一人の人物が入ってくる。
彼の鼻孔は美味そうな珈琲の薫りを捉え、その鋭い眼光は珈琲が香る店を捉えた。
「あそこにするか」
そう言葉に出したのは、一人の青年・玄野太陽。
ライドウォーリア・ブラックサンである彼はF-Standへ近づき、その扉を開けて店内へと入った。
内装はアメリカのダイナーを模しており、いくつものダイナーテーブル席とカウンター席があった。
カウンターの向こうに覗かせるキッチンには一人の人物が料理を作っている様子だ。
白髪交じりの黒髪に顎鬚を生やしたその壮年の男性は太陽の存在に気付くと、少しだけ顔を向けて接客の言葉を口にする。
「おお、いらっしゃい」
「ああ……一人だが、席は空いてるか?」
「まあそうだな。好きな席に座ってくれ」
男性――『
着席するとすぐに冷たい入ったグラスが差し出され、太陽はその御冷をすぐに手に取って口をつける。
よく冷えた水が口内を通り過ぎ、乾いていた喉元を通り過ぎる。その心地よさは太陽の心を安堵させた。
そんな彼を見て、陵駕は嬉しそうに笑う。
「なんだよ君。そんなに美味そうに飲んじゃって」
「ああ、いや……少し忙しかったもので、一息つくのも久しぶりだったもの」
「そうかい。でも嬉しいよ。そんなお前さんにこれをサービスだ」
陵駕から差し出されたのは、一杯の珈琲と一つの豆菓子。
豆菓子の方は一般的な大豆のようなものと見て取れたが、注目したのは珈琲の方。
普通なら黒く注がれているはずソレだが、ミルクを足したのか明るい茶色をしていた。これがすぐにカフェオレだと気づいたのは、砂糖とミルクの匂いが鼻についたからだ。
「こいつは……美味そうだな」
「そりゃどーも。で、お味は」
ニヤリと笑った陵駕の表情を見て、太陽はとりあえずカフェオレを飲む。
甘さとほろ苦さが舌の上で広がり、一息つく太陽の様子を見て男性はニコリと笑う。
「美味いってのは顔を見るほうが早いなこりゃ」
「ああ、そうだな。メニューはあるか?」
「そうだねえ……オレは大抵のものは作れるけど、今日のおすすめは」
カフェオレの味が気に入った大陽に対し、陵駕はメニューが書かれたファイルを渡そうとする。
そこへ扉が開いて、エプロンを付けた一人の若い少女が入ってきた。
「店長、ただいま戻りました」
大陽がチラリと視線を向けると、帰ってきた若い少女は眼鏡をかけた知的そうな見た目だった。
黒いミニスカートタイプのワンピースの上に白いカーディガンを身に纏っており、亜麻色のショートヘアーをしているのが見えた。
片目が隠れる程の前髪を伸ばしているが、それでも彼女の端正さは隠しきれていない。
……そんな彼女は太陽の顔を見て、少し驚いた顔をした後に訊ねてきた。
「あの、もしかして……玄野先輩、ですか?」
少女から自分の名前を呼ばれた大陽の顔を見て驚く。
そんな少女は嬉しそうに笑みを零しながら自己紹介を口にした。
「やっぱり、玄野先輩ですね。わたしです、マシロです。光城マシロです」
少女――『
その名前を聞いて太陽はふと脳内を巡らせて、そして思い出す。
……かつて自分がいた学童保育施設にて出会った少女。
自分より年下で、いつも不安そうに涙目だったのが印象的だった。
確か、彼女の名前も『光城マシロ』だったというのは覚えている。
そんな彼女が年月を経て、誰が見ても美少女な見違えた美貌になっているのは驚きだが。
大陽は少し見開きながら素直な気持ちを口にした。
「まあ、なんというか……マシロ、久しぶりだな」
「はい先輩、お久しぶりです」
先輩である大陽に名前を呼ばれ、嬉しそうに笑うマシロ。
そんな彼女を見て、陵駕は感心する。
「マシロちゃん、もしかしてこの人と知り合い?」
「はい、私の先輩で玄野太陽さんです」
「太陽、です……よろしく」
後輩であるマシロにそう自信満々に紹介され、照れくさそうに太陽は陵駕に名乗った。
嬉しそうにする彼女の様子を見て、陵駕は嬉しそうに笑顔を浮かべる。
大陽とマシロ、そして陵駕。
彼らの出逢いと再会は、この時起きていた一波乱と共に幕が上がっていたのであった。