TS薄幸白髪赤瞳超絶カワイイ超能力美少女がサイバーパンク世界を行く   作:第616特別情報大隊

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本日1回目の更新です。


リンカネーション
スラムにて


……………………

 

 ──スラムにて

 

 

 私は若くして重い病気になり、死にました。

 

 ただ日本に不満はなかったので転生しても日本に生まれたいなと思っていました。できれば、今度は健康な美少女にでも生まれ変わりたいな~などと思っていたのです。

 

 その願いは叶ったのですが、どうにも思い通りにはならなかった。

 

 そう、生まれ変わった私は確かに超がつくほどの美少女だった──。

 

 

 

「お腹空いた……」

 

 ……が、今日も今日とてご飯を求めてごみ漁り。

 

 私が転生したのは確かに日本だったが、私が暮らしていた時代から50年ほど経った未来の日本です。具体的に言えば西暦2055年の日本です。

 

 この時代の日本の東京は既にその存在はなく、トーキョー(T)メトロ(M)コンプレックス(C)という首都圏を統合した行政区分に塗り替えられていた。

 

 そんなTMCの中でも最貧困地区のTMCセクター13/6という場所で私は生を受けた。

 

 両親は電子ドラッグジャンキーで、私が5歳のときに売人からドラッグを買いに行ったまま帰ってこなかった。それから私は生きるために路上生活を続けている。

 

「ツムギ。何かあった?」

 

「何もないよ、エマちゃん」

 

 エマちゃんは私の友人で、同じく路上生活をしている孤児だ。私と同じで伸びっぱなしの黒髪を拾ったヘアゴムで辛うじて束ねている可愛い子です。まあ、私と同じであまり香ばしくない臭いがするのですが……。

 

 私たちは他の路上生活者と被らないように、セクター13/6内のごみ箱を食べ物を求めて漁っている。たまにラッキーだとほとんど食べてないハンバーガーなどが見つかったりするのだが、ほとんどの場合はまともな食べ物は見つからない。

 

「ねえ。前にここに食べ物をくれるって人が来てたの覚えてる?」

 

「そんなこともありましたね。きっとからかってるだけですよ」

 

「でも、何か貰えるかもしれないし、行ってみない?」

 

「う~ん」

 

 正直、怪しい話なのですが、お腹が減って死にそうなのも事実。残飯でもいいから何か食べられれば、それだけで十分じゃないかと私の心が揺らぐ。

 

「なら、行ってみましょうか……?」

 

 ついに私の心が傾いた。

 

「うん。あっちの方にこの前の人たちがいたから行ってみよう」

 

 私とエマちゃんはそう言って食べ物をくれるという人々の下に向かった。

 

 

 * * * *

 

 

「やあ。皆さん、お腹が空いているでしょう。こちらに来てください」

 

 半信半疑で問題の人間に会いに行くと、その人間は私たちを車に乗せて、TMCをセクター13/6からセクター12/10に向けて連れていった。私たちの他に何人もの孤児たちが、バンに乗って不安そうな顔をしていた。

 

 セクター12/10に到着すると私たちは『オウルクリニック』と看板がある4階建てのビルに通されたが、どういうわけか私たちは上階ではなく、地下へと案内されました。

 

 だが、地下に入ってエレベーターでさらに地下に降りてから無機質なコンクリートが打ちっぱなしの廊下を進むと、そこには広い食堂があり、食べ物がたくさん並んでいたのです!

 

 孤児たちは許可を得る前に駆けだし、私とエマちゃんも遅れないように駆けだした。

 

 並んでいる食べ物は決して高級なものではなく、安っぽい菓子パンだったり、合成肉の中でも安価なグレードを使ったぼそぼその唐揚げだったりしたのだが、空腹だった私たちには何よりの御馳走だった。

 

 けど、空腹が満ちてきたせいか、だんだん眠くなってきてしまった……。

 

 

 * * * *

 

 

 気づいたら独房のような部屋で横たわっていた。

 

 簡易なベッドと剥き出しのトイレがあるだけの、本当に独房のような部屋だ。扉は金属製で、私の力では全く開けることができない。

 

 そんな場所に私はひとり。

 

 私は不安になって扉を叩いたり、叫んだりしたが、何の反応もない。

 

 ああ、やはりこれは何かの罠だったんだと後悔しても時すでに遅し。私は脱出の手段を見つけられず、ずっと独房の中に閉じ込められていた。

 

「13番! 来い!」

 

 それから何時間、いや何日経ったのか、不意に扉が開き、屈強で機械化された肉体をした2名の男が入ってきて私の手を掴んだ。その男たちは防弾ベストと黒い制服を纏っており、軍人のようにも見えたが、正体は分からない。

 

 私は男たちに引きずられるように連れていかれる。

 

「ツムギ!」

 

「エマちゃん!」

 

 私は連れていかれた先の病院のような白い壁とベッドが並ぶ部屋でエマちゃんに再会した。エマちゃんはベッドに横になっており、頭に包帯を巻き、あの長い髪は一部剃られてしまっていた。それでもエマちゃんは元気そうで安心した。

 

「ここは何なの? エマちゃんは何をされたの?」

 

「分からないよ……。もしかしたら殺されちゃうのかも……」

 

「そんな……」

 

 エマちゃんが泣きながら言うのに私も不安が強くなり始めた。

 

「13番!」

 

 再会も束の間、また男たちがやってきて私の腕を掴むと、部屋から引きずっていく。

 

 次に連れていかれたのは、手術室のような場所で私はベッドに拘束された。それから白衣の人間と手術着姿の男女が入ってきて、私の方を見てくる。

 

「13番の検査結果です、博士」

 

「うむ。健康体だな。他の被験者より使えそうだ」

 

「では、例のインプラントを試しませんか? まだあれは成功例がありません」

 

「ああ。そうしよう。上も期待しているだろうからな」

 

 手術着の男性と白衣に女性が会話し、私が不安になって拘束を解こうとする。

 

「大人しくしていろ!」

 

 しかし、黒い制服の男に顔を殴られて大人しくせざるを得なかった。

 

「麻酔を。すぐにインプラントのインストールを行う」

 

「了解」

 

 それから私は意識を失った。

 

 

 * * * *

 

 

 頭が痛い。

 

 

 脳に異物が入り込んでいる。

 

 

 吐いても吐いても嘔吐が止まらない。

 

 

 視界がぐるぐる回っている。

 

 

 また吐いた。泡立った胃酸がまき散らされる。

 

 

 頭が痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。

 

 

 死にそうだ。

 

 

 信じられないくらい頭が痛い。

 

 

 脳が爆発しそうに熱くて痛い。

 

 

 なんでこんな…………────。

 

 

 * * * *

 

 

 エマちゃんが死んだ。

 

 

 朝起きたらエマちゃんは冷たくなっていて、黒い制服の男たちが運び出した。

 

 

 私もああいうふうに死んでしまうんだろうか。

 

 

 頭は今は痛くない。

 

 

 ただ死にたくない。

 

 

 * * * *

 

 

「成功だ!」

 

 白衣の男が歓声を上げた。

 

 私の前では男が私に与えたルービックキューブが宙に浮かびながら、高速で回転して、それぞれの面が正解の色に揃いつつあった。

 

 ルービックキューブを宙に浮かべているのも、宙に浮かべたまま操っているのも私。

 

 これが例の脳に入れられたインプラントの効果らしい。

 

 この成功のあとで映画で見たような実験が繰り返し行われた。

 

 伏せてあるカードの模様を当てる実験や相手の考えていることを当てる実験。それから最初に成功したようなものを宙に浮かべたりして自在に操る実験だ。

 

 さらにあとで私が自在に何もない空間に炎を起こすことができるファイアスターターだということが分かると、それについても実験が行われた。

 

 そんなある日、私はそんな力を使い、この地下施設にいる科学者たちの思考を読んで、私に関する重要な事実を知った。

 

『13番は順調なようですが、どうしますか?』

 

『そうだな。インプラントをそろそろ取り外そう』

 

『え? しかし、インプラントは既に13番の脳に定着しています。取り外せば悪い結果になるのではないですか?』

 

『それを含めての最後の実験だ。最悪、あれが死んでも構いはしない』

 

 ああ。そういうことか。

 

 なら、私もいつまでも大人しくモルモットでいることを止めよう。

 

 

 * * * *

 

 

 警報が鳴り響いている。

 

 地下にある研究所全体の赤色灯が点滅しており、それによって赤く照らされた壁に血飛沫が飛ぶ。真っ赤なナノマシン混じりの血が壁にべちゃりと飛んで滴る。

 

 死体。死体。死体。死体。死体。死体。死体。死体。死体。死体。

 

 あちこちに死体が散らばっている。

 

 私が殺した死体が。

 

『…………緊急避難プロトコルが進行中。全職員は手順に従って当施設から脱出してください。繰り返します。現在、緊急避難プロトコルが…………』

 

 私は自分の周囲に武器になる金属片を浮かべて、地下施設内を進んでいた。

 

 私の脱走を阻止しようとした警備員たちは残らず殺した。金属片を飛ばして首の動脈を裂き、ファイアスターターとして生み出した炎で燃やし、テレキネシスで心臓を握りつぶしてやった。

 

「私は生きるんだ……! 死んでなんてやるものか…………!」

 

 力を使えば使うほど頭痛がする。その痛みに耐えて、私は進む。

 

 死にたくないという、その一心で。

 

「────いたぞ!」

 

「撃て、撃て!」

 

 銃火器で武装した警備員たちはバリケードを展開して私に向けて発砲。

 

 しかし、私が右手をかざして力を振るえば、数十発もの銃弾は全て空中で静止し、発砲した人間へと叩き返される。警備員たちは自分たちが発砲した銃弾によって引き裂かれて、血の海に沈んだ。

 

「ば、化け物……」

 

「お前たちだって化け物だ」

 

 血だまりでそう呟く警備員に私は吐き捨てるようにそう言った。

 

 エマちゃんを殺し、私も殺そうとしたくせに、と。

 

 そうしてバリケードを越えれば、見覚えのある食堂が見えた。私たちが連れて来られた食堂で、偽りの希望が与えられた場所だ。

 

 ここまでくれば地上に繋がるエレベーターまではもう少し……!

 

「ぎゃああああ────っ」

 

 そこで食堂の先の廊下からいくつもの悲鳴が聞こえてきた。悲鳴はひとつ上がっては消えていき、同時に響き始めた銃声も少しずつ消えていく。

 

「こいつ、どうなって────」

 

「た、助け────」

 

 悲鳴。悲鳴。悲鳴。

 

 それから固い靴底が立てる足音が私の方に迫ってきた。

 

 新しい脅威の出現に私の心臓が緊張で高鳴る。

 

「おや────?」

 

 現れたのはブランド物のスーツをラフに着こなした長身で若い男だった。

 

 実に整った顔立ちをした男で、恐らくはアジア系だ。その黒髪を後ろに伸ばし、ちょんまげのように括っている。それだけならば繁華街でホストでもやってそうな人で説明は十分だろうが、異質な点があった。

 

 その手に握られた日本刀だ。

 

 日本刀からは血が滴り、これまで悲鳴を上げていた人間の悲鳴を止めたのは何なのかを示していた。彼らは切り殺されたのだ。あの日本刀で。

 

 ですが、銃火器で武装した相手に日本刀で挑んだんですか…………?

 

「────へえ。随分と面白そうなのがいるな?」

 

 その男は私の方を見ると獲物を狙うオオカミのような空気を漂わせた。

 

『──……リーパー。あなたの仕事(ビズ)はこの施設の迅速な制圧です。いつまでも雑魚を相手に遊んでいないで急いでください……──』

 

「ああ。分かっているさ」

 

 私がテレパシーで盗聴した会話の中で女性の声でリーパーと呼ばれた男は、そう言って少し馬鹿にするように笑う。

 

 そして、彼はさっきの話などまるで聞いていなかったというように、日本刀の刃を私の方に向けた。

 

 

「さて、少し遊ぼうか、お嬢ちゃん?」

 

 

……………………

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