TS薄幸白髪赤瞳超絶カワイイ超能力美少女がサイバーパンク世界を行く   作:第616特別情報大隊

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地獄の門が開く//悪魔殺しにして英雄

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 ──地獄の門が開く//悪魔殺しにして英雄

 

 

 私たちの前に現れたサロメ。

 

「ほう。こいつがお前の言っていた悪魔か」

 

「リーパー。あなたにも見えているんですね?」

 

「ああ。はっきりとな」

 

 リーパーの視線は確実にサロメを捉えていた。

 

「お前たちはさしずめ地獄門を閉じるために来たと言うところか。愚かなことだ。虎穴に入らずんば虎子を得ずと言えど、地獄門を閉じるために地獄に来るとは。ここがどのような場所か、お前たちには分かっているのか?」

 

「さあな? ただ楽しそうな場所だということだけだ」

 

「楽しそう、か。愚かにもほどがあるな…………」

 

 サロメは嘲るような視線をリーパーと私に向ける。

 

「ここは地獄。あらゆる宇宙の可能性を飲み込みながら膨れ上がり続ける捕食者。我々はこれまで多くの世界を飲み込んできた。ここには多元宇宙の様々な世界が、我々への贄として吸収されてきたのだ」

 

 そう言ってサロメが周囲を見渡す。

 

「じきにお前たちの宇宙もこの地獄に飲み込まれる。今さらお前たちにできることなど存在しない」

 

「そいつはどうかな?」

 

 サロメを相手にリーパーが“鬼喰らい”の柄を握る。

 

「ほう。人間の身でありながら、私に挑もうというのか。面白い。見の身ほどをわきまえさせてやろう」

 

 リーパーに向けてサロメが手を伸ばすと、すぐさまリーパーが回避行動。

 

 リーパーのいた場所の地面が抉れ、衝撃波が吹き抜ける。

 

「悪魔狩りの時間だ」

 

 攻撃を回避したリーパーはすぐさま反撃に転じる。

 

 “鬼喰らい”を手に加速し、サロメに迫り、そのまま一閃。

 

 しかし、サロメに刃は達さず、謎の障壁によって攻撃は防がれてしまった。

 

「お前、やはり人間にしては奇妙な存在だな。イレギュラーか……」

 

「だとしたら、どうする?」

 

「ここで始末する」

 

 リーパーが余裕の笑みで尋ねるのに、サロメがリーパーから距離を取って再び不可視の攻撃を放つ。

 

 大地が抉れ、蒸発し、大気が揺さぶられる中でリーパーが駆ける。

 

「なるほど! こいつは面白い!」

 

 リーパーはサロメの放つあらゆる攻撃を回避しながら再びサロメに肉薄し、一閃を放った。サロメが袈裟懸けに斬られ、彼女は眉を大きく歪める。

 

 さらにリーパーから一撃。もう一撃と連続して斬撃がサロメに叩き込まれるが、障壁によって防がれ続ける。さらに彼女はそれを無視して再び不可視の攻撃を放った。

 

 彼女を中心とする大地が削れ、抉れ、蒸発する。

 

 リーパーもこれは回避できないと考えた私がリーパーを援護。指向性エネルギーフィールドで彼を包み、彼を攻撃から守る。

 

「ナイスだ、ツムギ」

 

 リーパーはにやりと悪ガキのように笑う。

 

「お前たちはどうやって地獄門を閉じるつもりだ? その錨を破壊すれば、地獄門が閉じるとでも思っているのか?」

 

「ええ。思っていますよ」

 

「愚かな。地獄門は確かにその錨を破壊すれば閉じられる。しかし、錨を破壊すると同時に門は閉じるのだ。ならば、どうやってお前たちは自分たちの宇宙に戻ろうというのか? 考えていたか?」

 

「それは…………」

 

 錨は地獄門の側にあり、地獄門を閉じるために錨を破壊すれば私たちはこちら側に取り残される。自分たちの世界に戻れず、地獄に留まることになってしまう。

 

 それは正直に言って最悪の状況だ。

 

「地獄門はもう閉じられない。諦めろ。そして、死ね」

 

 再びサロメから不可視の攻撃。

 

 リーパーは回避し、私も指向性エネルギーフィールドで回避。

 

「ツムギ。心配はするな。地獄には俺が残る。お前は脱出しろ」

 

「リーパー! 何を言って……!?」

 

 そんなときにリーパーがそう言い、私は思わずうろたえる。

 

「ここは楽しそうだからな。永遠に遊べるエンドレスモードだ。俺はここに残って悪魔を殺し続ける。だが、お前は逃げろ。お前にはここは向いていない」

 

「ですが!」

 

「どうせ誰かが残らなければならんのだ。仕方ないだろ?」

 

 リーパーは本気でここに残るつもりのようです。

 

「ダメです! あなたが残るならば私も……!」

 

「やめておけ。こういうのが楽しめるのは上級者だけだ。それにお前が望んでいるのは、俺と残ることではなく、俺と脱出することだろう? そこには大きな違いがあるぞ」

 

「……いつからテレパシーが使えるようになってんですか?」

 

 そうだ。私は残りたいわけじゃない。リーパーと一緒に脱出したいのだ。彼をおいてここを脱出するなんて、私にはできそうにないのだから。

 

「何を話している? 門は閉じさせぬと言っただろう。私を差し置いて門を閉じる相談をするとは悠長な連中だ。ふざけているとすらも言える」

 

 私とリーパーが話しているのにサロメが再び攻撃を放ってきた。

 

「お前は既に倒せると分かったからな」

 

「何だと……」

 

 リーパーは攻撃を余裕で回避し、それから一瞬でサロメに肉薄。

 

「サロメってのは聖人の生首を欲した女らしいな。ならば、俺もお前の首を求めるとしよう。その首を貰うぞ」

 

「何を……!」

 

 リーパーは再び“鬼喰らい”を一閃。

 

 サロメは自分の首を守ろうとしたが、リーパーの動きの方がはるかに早く適切だった。サロメの首は刎ね飛ばされ、生首が宙を舞う。

 

 ついにリーパーの刃はサロメに達したのです!

 

「ゲームセットだ、悪魔」

 

「おのれ……!」

 

 リーパーはサロメの首を踏みつぶし、サロメの肉体は消滅していった。

 

「やりましたね、リーパー」

 

「ああ。あとはこれを閉じるだけだな」

 

 リーパーはそう言って錨を見上げる。

 

「……本当に残るのですか?」

 

「そうだ。俺が残る。異論は聞くつもりはない」

 

「そうですか……」

 

 私はリーパーの言葉にそう呟いて俯いた。

 

「何、退屈したらまた戻ってくるさ。そのときまで元気でな」

 

「……はい。あなたもお元気で」

 

 私はジョロウグモ君の上から手を振ると、地獄門の外に向かう。

 

「リーパー! 絶対ですよ! 絶対戻ってきてくださいね!」

 

「約束する! また遊ぼうな、ツムギ!」

 

 それから私が地獄門を出て数分後、富士先端技術研究所でそうであったように地獄門は一瞬で消滅した。

 

 リーパーとともに。

 

「リーパー。私にはあなたが…………」

 

 地獄門の消えた粒子加速器を見て、私は小さく、とても小さく呟いた。

 

 それから私はジョロウグモ君とともにコールドハーバー島のミネルヴァ施設を出て、既に大井とメティスの連合軍によって占領されている地上に出た。

 

「終わったようですね、ツムギさん」

 

「ジェーン・ドウ」

 

 私と迎えに来たのはジェーン・ドウだった。

 

「ええ。終わりましたよ。ですが、リーパーが…………」

 

「必要な犠牲だったのでしょう。仕方のないことです。もっとも腹は立ちますが。あの男に私がどれほどの投資をしていたかを思えば、断りもなくいなくなるなど許しがたいことです」

 

 ジェーン・ドウはリーパーがいなくなったのにそういう語る。

 

「しかし、あなたは戻ってきた。それは高く評価します」

 

「ですが、私もどうせΩ-5インプラントで死にますよ」

 

「その点は解決する見込みがあります。Ω-5インプラントを除去する手段は見つかりませんでしたが、その代わりにこれ以上の脳への侵襲を防ぐ手段が見つかりました」

 

「本当ですか……!」

 

「ええ。本当です。脳神経に関するナノマシン開発の第一人者であるマグレガー博士に依頼していたのですが、彼がインプラントの影響から脳機能を保全するナノマシンを開発できると約束してくれました」

 

 

 私は助かる。死なずに済む。

 

 

 今はそれが嬉しいのと、それでもリーパーはもういないということを認識して、私はただ涙を流していた。

 

……………………




次回、最終回です。
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