TS薄幸白髪赤瞳超絶カワイイ超能力美少女がサイバーパンク世界を行く 作:第616特別情報大隊
VIPサービス//ジェーン・ドウ
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──VIPサービス//ジェーン・ドウ
ジェーン・ドウからの呼び出しがあったのは、ニュクス17殺害の
「ジェーン・ドウがセクター4/2の喫茶店に来いと言っている。行くぞ」
「りょーかいです」
リーパーとともに地下駐車場まで下り、以前のようにSUVでTMCセクター4/2の喫茶店に向かった。
ジェーン・ドウが指定したのは同じ喫茶店だった。ここが彼女のお気に入りか。
「リーパー、ツムギさん。
ジェーン・ドウは挨拶も早々にそう持ち出した。
「あなた方にはとある人物を
確かにシンプルだ。
「世の中、親がしっかりした資産と愛情を持ち、適切な教育を受けさせてやれば、子供が道を踏み外すことなどない。そう信じている親は大勢います。ある種の性善説にも似た考え方で────実に愚かな考えです」
ジェーン・ドウはどこか呆れたような、あるいは馬鹿にしたような口調でそう語る。
「子育てとは非線形方程式であるとどうして理解できないのでしょうか。そう、子供を育てるというのはカオス理論にも似ています。そこに絶対はないのですよ」
どうやら今回の
「カオス理論を名作の中で披露した学者のセリフを借りれば『生き物は道を見つけ出す。そして悪童も道を見つけ出す。非行への道を』と。今回の
「全然」
リーパーは何を言っているんだという顔でジェーン・ドウを見ていた。
「はあ。そうですね。あなたにこんな雑談をした私が愚かでした」
そうですよ。リーパーは戦闘時にはIQ180くらいになりますが、普段はIQ60くらいですから。彼に難しい話をしてはいけません。
「大井の重役。
「俺に回す
確かにリーパーが引き受ける
「重役があなたの噂を耳にしたそうで。『金に糸目は付けないから最高の傭兵に娘を守らせてくれ』と。これも有名税だと思ってください」
「はあ。しょうもない話だな」
「ただし、報酬は言うだけあっていいですよ。大した脅威もない
「了解だ。引き受けよう。拒否権はないんだろう?」
「もちろんありません」
リーパーがからかうように笑って言い、ジェーン・ドウは極めて真面目な顔をしてそう返事をした。
「
ジェーン・ドウはそれから
「五十嵐メイジー。帝都大学文学部社会学科2年、と」
「住所はセクター4/3か、ここから近いな」
私が情報を確認するのにリーパーがそういった。
「それでは
ジェーン・ドウはそう席から立ち上がって個室を去った。
「では、早速向かいますか」
「そうだな」
リーパーは明らかに気乗りしていない様子だったが、一応
「やる気なさそうですね、リーパー」
見るからにやる気はございませんというリーパーを見て私がそういう。
「やる気が出る要素があるか? 今さら難易度が低すぎて盛り上がらない
「たまには平和な
「俺にはそれが全てだ」
この
ここは私がどうにかしなければいけないでしょう。
「そろそろだな」
「おお。あれですね。リーパーの自宅にも劣らない高級マンションじゃないですか」
セクター4/3にある超高層マンションがクライアントのメイジーさん宅だ。
大学生で独り暮らしとジェーン・ドウからの情報にはあったのですが、随分とリッチな独り暮らしをしておられるようで。
「段取りを決めておきましょう。まずクライアントがどういうトラブルを抱えているかの把握。それからそのトラブルの望ましい解決方法。そして、期日までの
「適当に傍にいて危ないやつを斬り伏せればいいだろ」
「ダメです。今回の
「ますますつまらないな…………」
いつもの攻撃できる対象を全て攻撃してクリアという
相手は特権階級のご令嬢であり、彼女の周りのトラブルになっている人間というもの同種の階層に所属する人間かもしれないのだから。
「最悪、私がどうにかしますので、リーパーは睨みだけきかせてください」
「そうする」
もうこの
リーパーはSUVをマンションの前に止め、私たちはエントランスに入る。ここにも警備ボットが配備さており、近づいた私たちをセンサーがスキャンしてくる。
「五十嵐メイジーさんに用事なのですが。アポはあります」
「お待ちください」
警備ボットは暫く通信をしているのか沈黙し、それからエントランスの扉が開いた。
「お通りください」
「どうも」
警備ボットに通されて、私たちはマンションの中に入り、メイジーさんの部屋に向かう。ジェーン・ドウの情報では部屋は20階にあるそうだ。
エレベーターであっという間に遥かに高い20階に到着した。
ここからの眺めは結構なものだ。
「この部屋ですね」
「さて、どんなくだらないトラブルがあるやら」
私が部屋のブザーを鳴らすと扉が開き、高級モデルの家事ボットが出迎えた。
「お待ちしておりました、お客様。こちらへどうぞ」
家事ボットに案内され、私たちは部屋の中に。
「ああ。あなたたちがパパが頼んだ私の護衛ってやつ?」
部屋にいたのは紫と黒の髪をミディアムボブにして、バンドでもやってそうなゴス系のファッションをした若い女性。そんな女性が爪とぎで爪を手入れしながらのまま、私たちを迎えた。
ARデバイスの生体認証が確認したが、この人が間違いなくクライアントの五十嵐メイジーさんだ。
耳にはピアスばちばちで、お洒落と言えばお洒落。
「へえ。凄いイケメンが来たと思ったけど、子連れなの?」
一目見ただけでメイジーさんはリーパーが気に入ったようだ。軽口を叩きながらも、リーパーに熱い視線を送っている。
こいつの中身が殺ししか楽しみがない快楽殺人者だと知らない人は気楽なことだ。
「
「そうです。彼は別に私の父ではありません」
こんなのと親子であってたまるものですか。
「まあいいけど。イケメンが護衛してくれるなんてパパも気を使ってくれるじゃん」
ふうっと爪に息を拭掛けながらメイジーさんはそういう。
「それなのですが、一体どういうトラブルがあって傭兵の
「それそれ! マジでヤバいの! マジでね!」
「正確にお願いします…………」
テレパシーで記憶を見てもいいのですが、口で聞いた方が正確でしょう。
「あたしの元カレがさ。あ、元カレって言っても別れたのは3日前でね。そいつが大学内でオールドドラッグの売人してたんだけど、仕入れ先のチャイニーズ・マフィアとトラブったくさいの。それで別れたんだけど」
天下の帝都大学もこの時代においては構内にドラッグの売人がいて、学生が組織犯罪と繋がっているらしい。
「でさ。そいつが関係している人間はもしかしたら報復があるかも~って言うから、あたしも用心して、パパに頼んであんたらを雇ったってわけ」
「その元カレの人はどうしたんです?」
「今シンガポールに逃げてる。ほとぼりが冷めたら帰ってくるってさ」
シンガポールはこの荒んだ2050年代において安定している数少ない国家です。国全体がある種の経済特区みたいになっているそうだ。
「じゃあ、チャイニーズ・マフィアに襲われるかもしれないんですね?」
「そーいうこと。ってなわけで、
割と深刻な事態だろうに、メイジーさんは酷く呑気そうだった。
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