TS薄幸白髪赤瞳超絶カワイイ超能力美少女がサイバーパンク世界を行く   作:第616特別情報大隊

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マトリクスゴースト//TMCセクター13/6

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 ──マトリクスゴースト//TMCセクター13/6

 

 

 トーキョーヘイブンから逃げたチャンドラー博士。

 

「ジェーン・ドウ。エブリン・チャンドラーは逃走した。そちらで把握しているか?」

 

『今、トーキョーヘイブンの保安部に問い合わせています。彼女がいつトーキョーヘイブンを出て、どこに向かったのかを。全く、面倒な話になって来ました』

 

「これから俺たちも追いかけるが、まだどう処理するか決めてないのか?」

 

『まだ決まっていません。早まって殺したりすることのないように』

 

「了解だ」

 

 ジェーン・ドウから指示を受け、リーパーが頷く。

 

「エブリン・チャンドラーを追うぞ、ツムギ」

 

「彼女がどこに行ったのか分かるんですか?」

 

「先に言っていただろう。カンタレラに探すように頼んでおいた、と」

 

「そうでした」

 

 リーパーはこんなことがあろうかとカンタレラさんにチャンドラー博士の捜索を前もって依頼していたのでした。

 

「カンタレラさんから連絡は?」

 

「まだだ。とりあえず、ここを出るぞ」

 

 リーパーはそう言い、トーキョーヘイブンから出る。

 

『リーパー。チャンドラー博士はトーキョーヘイブンにいなかったでしょ?』

 

「いなかった。知ってたのか?」

 

『彼女と思しき人間をTMCセクター13/6で捉えた。そこにいないということは、この人物はチャンドラー博士で間違いなさそう』

 

「セクター13/6とはな。どこかに逃げるつもりか」

 

『分からない。けど、彼女はどうもひとりじゃないみたいだね』

 

 カンタレラさんが捉えたチャンドラー博士の映像が送られてきた。

 

 映像は恐らく宅配ドローンのカメラをハックして入手したものだ。

 

 そこ映っているチャンドラー博士は中年の白人女性で、髪は黒く、背丈はさほど高くない人物です。だが、セクター13/6では目立つ高級スーツ姿だった。

 

 さらにその近くには民間軍事会社(PMSC)スタイル──黒いポロシャツにオリーブドラブのカーゴパンツ、その上からタクティカルベストを身に着けたサングラスの男性。よく見れば自動小銃で武装している。

 

 何よりこちらの人物は総務省のデータベースに一致するIDが存在しない。

 

「これはもしかして…………」

 

「狙いは企業亡命か」

 

 アーコロジーから逃走したチャンドラー博士。

 

 TMCセクター13/6という大井統合安全保障が放置する巨大スラム。

 

 IDの存在しない武装した不審な人間。

 

 これらから導き出されるのはチャンドラー博士は大井から別の企業に企業亡命を試みているという可能性だ。

 

 セクター13/6での追跡可能性(トレーサビリティ)は事実上ゼロだと言われている。あそこに入った人間は忽然と姿を消すのだと。

 

 もちろんこれはただの都市伝説だ。

 

 だが、全くのガセというわけではなく、セクター13/6に逃げ込んだ人間を探すのは、大井統合安全保障であれ、他の犯罪組織などであれ、困難だということを知っている。

 

 チャンドラー博士はそんな場所で、IDはないが犯罪組織とは異なる類の武装した人間と落ち合っている。

 

 この手の人間は大体は民間軍事会社(PMSC)の非正規作戦部隊のオペレーターだ。拉致、暗殺、破壊工作などの非合法な活動に従事する人間である。

 

 さらに言えばそういう人間は他社から研究者や技術者を引き抜く行為────企業亡命も担当する。

 

「不味いですよ。チャンドラー博士がTMCから出たらどこに消えるか分かりません」

 

「ああ。すぐにセクター13/6に向かうぞ。ジェーン・ドウにもTMCから出る人間を監視するように要請しておく」

 

 リーパーはそう言い、高速道路を全速力で飛ばしてセクター13/6を目指す。

 

 景色が凄い速度で流れていき、リーパーは荒っぽく高速道路を降りるとセクター13/6に入った。それからも高速道路と変わらぬ速度で道路を駆け抜け、最後にチャンドラー博士が確認された場所に向かう。

 

 チャンドラー博士はセクター13/6にある、海宮市シティビルの傍で目撃されていた。

 

 あそこにはどこから流れてきたのか、本物なのかも分からない胡散臭い商品が並ぶ死体漁り(スカベンジャー)のマーケットがあったはずだ。

 

『リーパー。追加の情報だよ。チャンドラー博士がセクター13/6の埠頭に向かっているのが確認された。埠頭にはボートが止まっているけど、これのIDを読み取ったところ、何とハンター・インターナショナルのものだった』

 

「ハンター・インターナショナル。アトランティス系列の民間軍事会社(PMSC)か」

 

 アトランティス──アトランティス・グループはイギリスに本社を置く六大多国籍企業(ヘックス)の一角だ。

 

 その事業内容は金融業から防衛産業、エネルギー事業まで多くの六大多国籍企業(ヘックス)がそうであるように多岐に渡る。

 

『これは引き抜き臭いね。引き続き監視を続けるよ』

 

「頼んだ」

 

 リーパーはセクター13/6の狭くて、ぼこぼこの道をある程度SUVで進んで、埠頭に先回りするようにした。

 

 しかし、ここは見放されたセクター13/6だ。道路整備など遥か昔に行われただけの、その道は狭すぎてリーパーのSUVではやがて通れなくなってしまった。

 

「ここからは降りるか」

 

「それでしたら案内しますよ」

 

 セクター13/6は私が暮らしていた場所だ。近道も知っている。

 

 今回は珍しく私が先導する形となり、埠頭を目指す。

 

 埠頭と言ってもまともな港湾能力はなく、漁業や海運などの何かしらの港湾事業の拠点となっている場所でもない。もう廃棄された場所だ。

 

 今でもそれを使っているのは犯罪組織で、彼らはドラッグや武器、あるいは人間のささやかな密輸にそれを利用している。

 

「こっちです。そろそろですよ」

 

 近道をしながら進み、私たちは無事に埠頭に到着した。

 

「あれじゃないですか?」

 

「ビンゴ」

 

 私とリーパーの視線の先には、2台のSUVが止まっており、自動小銃や機関銃で武装した民間軍事会社(PMSC)スタイルの人間が複数いる。

 

 さらによく見れば、そこにはエブリン・チャンドラー博士もいたのです!

 

「やるぞ。エブリン・チャンドラーは殺すな。他は殺せ」

 

「了解です」

 

 このリーパーの物騒な号令のあとに私たちはチャンドラー博士を護衛する人間に襲い掛かった。

 

 私がSUVをテレキネシスで持ち上げると、敵の注意がそちらに向き、その隙にリーパーが一瞬で距離を詰める。

 

「まずは1体」

 

 リーパーの振るう“鬼喰らい”の刃が護衛の首を刎ね飛ばし、鮮血がぴしゃりとコンクリートの地面に線を引くようにまき散らされる。

 

「クソ! 敵襲、敵襲!」

 

射撃自由(ウェポンズ・フリー)!」

 

 私はあたかもハチの巣をつついたようになった護衛たちに向けてSUVを薙ぐようにしてぶつけた。

 

「何が起きて────!?」

 

「畜生!」

 

 次々に車に跳ね飛ばされたように護衛たちが蹴散らされ、最終的にSUVは埠頭に停泊していたボートに叩きつけられた。

 

 ボートが大きく揺れ、SUVは沈没。

 

「これは負けてられないな」

 

 リーパーは私が大胆にやったのを見たせいか、テンポを上げて殺し始めた。

 

「撃て、撃て!」

 

「敵はサイバーサムライだ! 距離を詰めさせるな!」

 

 そんな敵は明らかに機械化した人間だ。巨大な重機関銃すらも平気で振り回して、リーパーを狙っている。

 

 いや、今時の兵隊さんで機械化していない人間の方が少ないのですが。それでも敵の機械化具合は恐らく生体機械兵(マシナリー・ソルジャー)一歩手前ほどの高度なレベルと思われた。

 

 単純な膂力から反射神経まで、機械化された兵士のそれは人間を遥かに上回る。

 

 そのはずなのだが──────。

 

「クソ、クソ! 当たらないぞ!?」

 

「ど、どうなっている! クソッタレ────!」

 

 次々に斬り倒される敵の護衛。

 

「流石に犯罪組織より難易度は高めか?」

 

 リーパーはそう呟きながらも敵を圧倒し、一方的に斬り伏せていく。

 

「クソ! 撤退、撤退だ!」

 

 ここで敵は交戦を放棄し、チャンドラー博士を連れて逃亡を試みた。

 

「させませんよ」

 

 私はそんなSUVを軽く持ち上げた。タイヤが空を切って回り、SUVは全く動けない。

 

「ゲームセットだな」

 

 リーパーは運転席にいる護衛を防弾ガラスの窓ごと貫いて殺し、私はSUVをそっと地面に降ろした。

 

「さて、話を聞くとしようか?」

 

 

 私たちの前には南部博士を殺したと思われるチャンドラー博士がいる。

 

 

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