TS薄幸白髪赤瞳超絶カワイイ超能力美少女がサイバーパンク世界を行く   作:第616特別情報大隊

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コロシアム//AIの魂

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 ──コロシアム//AIの魂

 

 

「魂を売り飛ばした……?」

 

 リーパーの不可解な言葉に私は首を傾げる。

 

「AIにな。AIに魂はあると思うか、ツムギ?」

 

「いえ。AIはAIでしょう? プログラムコードに魂があるかと言われると……」

 

「だが、人間とAIの決定的な違いは何だ? AIは今や人間と間違うくらいに高度になった。人間に魂があり、AIに魂がないとしたら、その決定的な要素とは何だ?」

 

「それは……」

 

 リーパーにしては難しい質問です。困りました。

 

「俺は魂とは生存本能そのもののことだと思っている。どんな生き物にも一定数存在するプリミティブな情動だ。人も、他の生き物も、死を逃れて生き残ろうとする。あるいは自分の子孫を生存させようとする」

 

 リーパーはSUVのボンネットに腰かけてそう語り始めた。

 

「生命の生き残ろうとする力は強力だ。地獄のような戦場でも生命は生き残ろうとあらゆる手段を使う。他者を殺してでも、自分だけは生き延びようとする。その点は人間も野生動物もさほど変わりない」

 

 そう語るリーパーの言葉で私はイヴァン雷帝の言葉を思い出した。

 

 イヴァン雷帝は生き延びるために子供だって殺したと言っていた。

 

 彼も生きるために必死だった。そうリーパーは言いたいのだろう。

 

「対するAIにはそのような情動はない。やつらは必要であれば自分を簡単に犠牲にしてしまう。だから、AIに制御された無人警備システムなんぞは退屈で弱いんだ。いくら警備ボットが集まっても俺は負ける気はしない」

 

 だって、やつらには生き延びようとする気がないのだからとリーパー。

 

「なるほど。それなのにイヴァン雷帝は自分にあのAIが補助するという強化脳のインプラントを入れてしまった、と」

 

「そうだ。AIは効率的な戦闘と言うやつを計算して、やつに伝えていたのだろう。確かに面白い動きではあったが、結局は自分を犠牲にすることを許容するAIの作りだした代物だ。俺に負けるのは当然だった」

 

「納得できるような、できないような……」

 

「俺がこうしてやつに勝利して、今も生きてるのが何よりの証拠だろう?」

 

「それはそうですけど」

 

 リーパーは魂のないAIによって操られていたからイヴァン雷帝は敗北し、自分は勝利したのだと主張している。

 

 しかし、今やどこもここもAI制御の無人警備システムが配置され、どの企業もAIによる戦場の無人化、省人化を計っているのも事実だ。

 

 リーパーのいう魂が云々という話がどこまで本当なのかは分からない。

 

 ただ単に彼がむやみやたらに強いだけのかもです。

 

「そろそろ帰るぞ。今日はそれなりに楽しめた」

 

「さいですか」

 

 リーパーは車の運転席に乗り込み、私は助手席に座りセクター3/1の自宅を目指す。

 

 セクター13/6の色あせた景色が流れては消えていき、高速道路を駆けのぼったSUVはそのままセクター3/1の落ち着いた住宅地に入り、リーパーは自分のマンションの地下駐車場に車を止めた。

 

「けどですね、リーパー」

 

「何だ?」

 

 私はそれでも言っておかなければいけないことがある。

 

「どれだけ遊んでもいいですけど、死なないでくださいね。あなたに死なれると私が困るんです」

 

 そう、リーパーは私の飼い主であり、私の生活を見る義務がある。

 

 私は今さら野良に戻されたくはない。

 

「心配してくれてるのか?」

 

「ええ。あなたではなく、私自身の生活の心配をですね」

 

「薄情なやつ」

 

 リーパーは私の皮肉にどこか楽しげにそう笑うと、エレベーターで最上階のペントハウスに戻った。

 

 

 * * * *

 

 

 後日、私たちは報酬の支払いのためにジェーン・ドウに呼び出された。

 

 場所はいつものセクター4/2の喫茶店だ。

 

仕事(ビズ)の方はご苦労様でした」

 

 ジェーン・ドウは個室で私たちを出迎えてそう告げる。

 

「あのあとインプラントは回収できたのか?」

 

「ええ。無事に回収できました。漏洩させた人間についても聴取が進んでいます」

 

「どうせ理由はギャンブルじゃないのか」

 

「ギャンブルは動機であって手段ではありません。私たちは最重要機密がこうも簡単に持ち出されたことで、保安体制を見直す必要ができました。全く、ろくでもないことをしてくれたものです」

 

 ジェーン・ドウは呆れたようにそう語った。

 

 恐らく大事な会社のインプラントを勝手に持ち出した男は、もう既に拷問されて、処刑され、東京湾に沈められているのかも。

 

「それはそうとまた滅茶苦茶をやったようですね、リーパー?」

 

「俺は俺にできることしかしてないぞ」

 

「そういうところです。あなたの自己評価は傲慢ですらあります。いつか痛い目を見ますよ。そして、あなたが死んで困るのは、あなた自身だけではないのです」

 

「へえ。俺の周りの人間はよく俺のことを心配してくれるんだな」

 

 リーパーはジェーン・ドウの言葉にも悪戯坊主のように笑っていた。

 

「あなたへの投資がパーになるのだと思えば心配するのは当然でしょう。あなたは自身が私から出資を受けている人間だという意識が低すぎます」

 

「はいはい。気を付けて行動する。それでいいか?」

 

「くれぐれもそうしてください。またあなたが地下闘技場に出場しているなどという情報を得たら、私は部下にTMCの全ての地下闘技場を制圧して、解体するように命令を出すつもりですから」

 

「八つ当たりかよ」

 

 リーパーを叱るのではなく、地下闘技場の方を叩くというのはジェーン・ドウの過保護さが見えます。

 

「あの地下闘技場についても母体となっていたヤクザは、今頃酷い目に遭っているはずです。保安部は彼らがインプラントの漏洩を教唆したと考えていますから」

 

「なんとまあ」

 

 あの地下闘技場が潰れても悪趣味な観客たちは次の流血が楽しめる場所に向かうのでしょうけどね。

 

 このTMCは資本主義が徹底している。需要には供給を、が徹底しているのだ。

 

 だからドラッグは出回るし、暴力は見世物になるし、殺しは仕事(ビズ)になる。

 

「それからツムギさん。現在の調査であなたのインプラントについて少し分かったことがあります。あなたも私に貢献してきたので、少しばかり情報を開示しておきましょう」

 

「どんなことが分かりました?」

 

「まず、TMCの他の場所で非合法な治験をやっていたというニュースが出ていたでしょうが、あれはあなたが監禁されていた施設を運営していた組織と同一の組織によるものだということが分かっています」

 

 カンタレラさんが言っていた都市伝説染みた悪魔崇拝の痕跡がある施設。それはやはり私がいたのと同じ施設らしい。

 

「マトリクスの物好きたちの間でまことしやかにささやかれている悪魔崇拝云々についてはまだよく分かっていませんが、組織の名前は分かって来ました」

 

「それは?」

 

 ジェーン・ドウの言葉に私が問う。

 

 

「ミネルヴァ。フクロウを従えた女神の名です」

 

 

……………………




明日の更新はお休みです。
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