TS薄幸白髪赤瞳超絶カワイイ超能力美少女がサイバーパンク世界を行く   作:第616特別情報大隊

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愛のある生活//そののちのこと……

……………………

 

 ──愛のある生活//そののちのこと……

 

 

 私が意識を取り戻したとき、私はリーパーの自宅にいた。

 

「お目覚めになりましたか、ツムギ様?」

 

 家事ボットが私の方を多目的センサーで覗き込み、そう尋ねてきた。

 

「ええ……。水を持ってきてくれますか…………?」

 

「畏まりました」

 

 喉と口の中がからからで辛い。

 

 それにまだ頭痛が残っている。頭が殴られているみたいに鈍く痛む。

 

「どうぞ」

 

 それから家事ボットがミネラルウォーターのボトルとコップを持って来てくれた。私はボトルのキャップを外して、ボトルから直接ミネラルウォーターを飲む。

 

 水を飲み干すと頭の痛みがちょっとだけ緩和した。

 

「リーパーは……?」

 

「セクター4/2に出かけておられます」

 

「ジェーン・ドウと会ってるのか……」

 

 セクター4/2でリーパーが他にすることが思い浮かばない。

 

 私はポケットをごそごそと漁るとジェーン・ドウに貰った薬のボトルを取り出し、蓋を開けて錠剤を口に放り込んだ。

 

 それから私はリーパーが帰宅するのをベッドの上で待った。

 

 そして、1時間ほど経ったときだ。

 

「ん。ツムギ、起きてたのか?」

 

 リーパーは何食わぬ顔をして、ベッドにいる私を見た。

 

「ええ。だいぶ良くなりましたから。今は耳鳴りがする程度です」

 

「それはよかった。お前が倒れたあとは酷い状態だったからな」

 

 私がそう返すのにリーパーは肩をすくめる。

 

「ともあれ、仕事(ビズ)の方は完了した。マグレガーは無事にトーキョーヘイブンに戻り、例の民間軍事会社(PMSC)の方も掃討作戦を大井統合安全保障が開始した」

 

「それは何よりです。安心できます」

 

「ああ。だが、ジェーン・ドウから変なことを聞かれた」

 

 リーパーはベッドの傍の椅子に座って私の方をじっと見る。

 

「ホテル・ニューエンパイアの監視カメラに、お前とマグレガーを襲った生体機械化兵(マシナリー・ソルジャー)が同士討ちをするのが映っていた。そうジェーン・ドウに言われた。お前がやったのか?」

 

「ああ……。あのときは他にどうしていいのか思い浮かばなかったので」

 

「ふうん。ジェーン・ドウはそのことにかなりの興味を示してたぞ。近いうちに何か言ってくるかもな」

 

「それは人間を洗脳して操る実験をやろうとか、そういうことですか?」

 

「他にあるか? ジェーン・ドウと六大多国籍企業(ヘックス)にとっては喉から手が出るほど欲しい技術だろ」

 

「それはそうですね」

 

 リーパーのいうことはもっともだ。

 

 私が相手を洗脳して操れるとしたら、ジェーン・ドウの雇い主である大井はどのような悪行を思いつくだろうか。

 

 少なくとも片手の指で収まる範囲ではないだろう。

 

「その能力、俺に試してみるか?」

 

「冗談でしょう?」

 

「いいや。興味がある」

 

 リーパーはそう言ってぐいと私の方に迫った。

 

「あれは相当に疲弊するので面白半分でやりたくないです」

 

「面白半分じゃない。いざってときのためだ」

 

 いくら言ってもリーパーは聞いてくれなさそうです。

 

「はあ。では、少しだけ試してみましょう」

 

 私はそう言ってリーパーの思考に潜り込む。

 

 相変わらず野生の本能があるくらいで、人間らしさの見当たらない思考だ。

 

 その思考に深く、深く私は潜り込んでいくが────。

 

「……っ!?」

 

 私は急に恐怖に襲われてリーパーの思考から脱出した。

 

「どうした?」

 

「あなたは……一体…………?」

 

 リーパーの思考の奥底には何か得体のしれない化け物が潜んでいた。

 

 純粋な殺意とでも呼ぶべきか。

 

 そこに憎しみや敵意という人間的な殺意の理由はなく、ただただ殺意だけが化け物の形をして存在していた。そんな存在を私は認識していたのだ。

 

「どうやら無理だったみたいだな。ちょっと残念だ」

 

 私がリーパーを見つめるのにリーパーは本当に残念そうに肩を落とす。

 

「晩飯は何がいい?」

 

 そこで珍しくリーパーは私に夕食について尋ねた。

 

 いつものは勝手に決めてしまうのに本当に珍しい。

 

「ラーメンが食べたいところです」

 

「病み上がりにラーメンか? 大丈夫なんだろうな?」

 

「心配してくれるんですか?」

 

「ああ。当たり前だろう。お前に今死なれたら困る」

 

 そうですね。リーパーはいずれ私と殺し合いたいのです。

 

「大丈夫ですよ。今日はがっつり食べたい気分なんです。頭痛も収まりましたし、食べに行きませんか?」

 

「分かった。いいぞ。車を出す」

 

 リーパーはそう言い、私たちは車に乗り込む。

 

「ラーメンと言ってもいろいろあるが、どんなのがいいんだ?」

 

「麺が太くて、豚骨醤油のやつがいいです。あとは海苔が乗っているやつですよ」

 

「細かいな……。ラーメンなんてどれも同じだろ?」

 

「ちーがーいーまーすー」

 

 ラーメンはいろいろと奥の深い食べ物なのですよ。

 

「近くにその手の店はないな。普通の豚骨か中華そばだけだそうだ」

 

 リーパーはARで検索したのかそう告げる。

 

「残念ですね。なら、ここは豚骨にしましょう」

 

「了解だ」

 

 かつてはラーメン屋が激しい競争を繰り広げた首都圏ですらこのありさまです。

 

 メティスがほとんど全てを牛耳る合成食料というものは、食の多様性を喪失させるグローバリゼーションってものなのでしょう。

 

 TMCもいずれはラーメンは一種類だけしか生き残らないかもしれないです。

 

「着いたぞ」

 

 私がそんなことを勝手に憂いていたとき、リーパーがそう言ってきた。

 

 車はいかにもなラーメン屋の前に止まっており、看板には『龍龍亭』とある。

 

「もう口の中がラーメンですよ。早くいきましょう」

 

「ああ。俺はそうでもないが」

 

 リーパーは豚骨の臭いが少し気になるのか、渋い顔をしていた。

 

「らっしゃいませ!」

 

 元気のいい接客ボットの挨拶に出迎えられて、私たちはカウンター席に座る。

 

「がっつり食べたいところですが、ちょっと量が多いかもです……」

 

「残せばいいだろ」

 

「それは勿体ないじゃないですか。作ってくれた人にも失礼ですし」

 

「ちゃんと金を払えば問題ないと思うがな」

 

 私は最終的にいろいろと食べるべく、子供向けメニューのラーメンセットを注文。今は子供なのでキッズメニューを頼んでも文句を言われる筋合いはありません。

 

 リーパーの方はラーメンを単品で頼んでいた。

 

「リーパーはラーメンとかあまり興味はない感じだったんですか?」

 

「あまりな。食べようと思ったことも少なくて、以前数回食べただけだ」

 

「ちゃんとしたラーメンですか? カップラーメンですか?」

 

「同じようなものだろう?」

 

「全然違いますよ」

 

 リーパーがどうでもよさそうに言うのに私は憤然とそう返した。

 

「ご注文の品となります」

 

「いただきます!」

 

 それから注文した品が運ばれてきて私たちは食べ始めた。

 

「ん? これはなかなか美味いな……」

 

「でしょう?」

 

「なんでお前が得意げなんだ?」

 

 リーパーはラーメンをすすってその味に満足そうにしていたので、思わず私もどや顔してしまった。

 

「でも、昔はもっといろいろなラーメンがあったんですよ」

 

「前世ってやつか? あれは本当なのか?」

 

「どう思います?」

 

 私はリーパーに冗談めかしてそう尋ねた。

 

「ずるいな。お前には嘘と本当が読めるのに俺には読めないんだから」

 

 リーパーはそう言いながらも腹を立てた様子はなく、ラーメンをすすっていた。

 

「怒らないでください。ほら、餃子ひとつあげますから」

 

「貰っておこう」

 

「あ! ふたつ取ったー! 私の餃子ですよ!」

 

「また頼めばいいだろ」

 

 私とリーパーはそんなやり取りをしながら、TMCの夜を過ごしたのだった。

 

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