TS薄幸白髪赤瞳超絶カワイイ超能力美少女がサイバーパンク世界を行く   作:第616特別情報大隊

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本日2回目の更新です。


試し斬り

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 ──試し斬り

 

 

 安いハンバーガーを食べ終え、適当にごみを清掃ボットに向けて投げる。

 

 セクター3/1のような場所では清掃ボットが常に街を綺麗に保っている。これがいわゆるセクター2桁の場所では、荒れ放題になっているのだ。

 

 そもそも治安からして大違いである。

 

 セクター1桁にはしっかり大井統合安全保障のコントラクターがおり、彼らが警察業務を行っている。持っている武器は自動小銃や機関銃と物騒だが、少なくとも治安を乱す人間には対処してくれる。

 

 セクター2桁で治安を守っていると自称しているのはヤクザやチャイニーズ・マフィア、コリアン・ギャングの類で、とてもではないが治安がいいとは……。

 

「飯は食ったし、運動でもするか」

 

「運動ですか?」

 

「ジェーン・ドウから仕事(ビズ)の知らせだ。セクター12/4まで行くぞ」

 

 どこか嬉しそうにリーパーはそう言った。

 

仕事(ビズ)の内容は?」

 

「殺しだ。それも大量に。こういうのはやりがいがある」

 

 ああ。この男にとって仕事(ビズ)はゲームなのだ。

 

 無課金でプレイヤースキルを磨き、そして大量に殺してハイスコアを出す。殺しも、強奪(スナッチ)も、全てそういうゲーム。

 

 酷く軽薄な殺しの理由で、軽蔑すらする。

 

 だが、決して地下施設の人間がやっていたような弱い者いじめではない。リーパーは少なくとも安全圏から弱者をいたぶるような男ではないのだから。

 

「お前も仕事(ビズ)に使えとジェーン・ドウから指示が出ている。一緒に来てもらうぞ。約束通り、俺の仕事(ビズ)を手伝ってもらう」

 

「はい。異論はないですよ」

 

「決まりだな」

 

 リーパーは本当に楽しそうで、クリスマスの朝の子供のようだった。プレゼントを開けて大喜びする子供だ。

 

 この男がどれだけ幼稚で、社会不適合者で、残忍だったとしても、リーパーにはその全ての文句を実力でねじ伏せる力がある。他者にありのままの自分を認めさせる力というものが備わっている。

 

 私にはそれが酷く羨ましく思えました。

 

「どうした?」

 

「いいえ。何も」

 

 私がリーパーの顔をじっと見ていたのに気付いてリーパーが不思議そうに尋ねるが、私はそう返すのみだった。

 

 それからリーパーと私を乗せた車は高速道路を駆け抜け、セクターをどんどんと下っていく。街の風景は煌びやかな高層ビル並ぶ摩天楼から、色あせた建物と淀んだ空気が漂う場所へと変わっていった。

 

 セクター12/4に着く時には私にも見慣れた光景が広がっていた。

 

 路上生活者たちのテントと段ボールハウスが所狭しと並び、あちこちにごみの山ができていて、通りには電子ドラッグジャンキーが道端で吐瀉物と一緒に倒れている。そんな荒んだ光景だ。

 

仕事(ビズ)の詳細をそろそろ聞かせてもらえませんか?」

 

「ああ。夢蛇(モンシャー)というチャイニーズ・マフィアの掃討だ。どうして連中を掃討するかの理由は知らん」

 

「理由は不明なんですか?」

 

「ジェーン・ドウはこういう仕事でいろいろな場所に貸しを作っている。で、あいつはそうやって作った伝手を重要な仕事(ビズ)の際に使用する。強いて言うならば、そういうジェーン・ドウが交渉のカードを増やすためだ」

 

「なるほどですね」

 

 ジェーン・ドウは大井の人間だろうが、これが直接大井の利益に繋がっているというわけではないと。ジェーン・ドウは様々な組織や個人に恩を売りつけて、それによってコネを作る。そのための仕事(ビズ)というわけだ。

 

「説明は十分か? なら、殴り込むぞ」

 

「え! そんないきなり……。作戦とかは…………?」

 

「必要ない。一掃すればいいだけの仕事(ビズ)に作戦なんて不要だ」

 

「はあ……」

 

 この人に安全で確実でまともな作戦というのは期待しちゃダメなんですね。

 

「連中の拠点はあそこだ。ジェーン・ドウが言うには今は丁度、幹部どもが集まっているということらしい。そこを強襲して殺しまくる」

 

 リーパーは車を古びた店構えの中華料理店が見える場所に止めて、私にそう言った。中華料理店の前には明らかに堅気ではない自動小銃で武装した人間がいる。

 

「私は何をすれば?」

 

「敵を殺して、敵に殺されるな。簡単だろ?」

 

「全然」

 

 それができれば誰も苦労しないんですよ。

 

「お前の実力を鍛える機会でもある。楽しくやれよ」

 

 リーパーはそう言って車を降り、同時に日本刀を腰に下げる。

 

「その日本刀、本当にただの日本刀ですか?」

 

「いや。ヒヒイロカネ製の超高周波振動刀だ。電磁射出機能付き。できればただの日本刀に縛りたかったが、ジェーン・ドウからやめろと言われた」

 

「それはそうでしょう」

 

 流石にただの日本刀ではリーパーがいかに超人的だったとしても、これまで生き残るのは無理だったはずです。

 

「名前とかないんですか?」

 

「“鬼喰らい”。一応愛着がある。こいつのおかげで生き延びられたこともあったのでな。それにこいつは殺しやすい」

 

 黒い金属製の鞘に納められた超高周波振動刀の柄を、リーパーはポンポンと叩く。

 

「説明は十分だな? やるぞ」

 

「了解」

 

 ここまで来て拒否権も何もない。やるしかないのだ。

 

 私はリーパーについていき、リーパーは中華料理店の前に立つ男の方に向かう。

 

「止まれ! 何か用事か、兄ちゃん?」

 

 武装した男が引き金に指をかけて、リーパーを制止する。

 

「ああ。お前らを殺しに来た」

 

 次の瞬間、リーパーの握っていた“鬼喰らい”の刃が男の首を刎ね飛ばした。

 

 その行動の私の認知できたモーションはほとんどなく、リーパーが“鬼喰らい”の柄を握って、私が瞬きをしたときには既にリーパーは男の首を刎ね飛ばしていた。

 

 ナノマシン混じりの血液が中華料理店の壁に吹き付けられる。

 

「行くぞ。派手にやれ」

 

 それからすぐさまリーパーは犬歯を覗かせた獰猛な笑みを浮かべて、中華料理店の扉を蹴り破った。

 

「な、何だっ!?」

 

「どこのどいつだ!」

 

 中華料理店の中には円卓を囲んで老齢の男が3名座っており、その周りには武装した男たちがうんざりするほど大勢存在していた。全員が自動小銃などで武装しており、突入したリーパーに銃口を向ける。

 

「パーティタイムだ」

 

 リーパーは一番近くにいた男の首を刎ね飛ばし、さらに次を狙う。

 

「クソ! どこの人間か知らんが殺してしまえ!」

 

「了解!」

 

 老人の指示ですぐさま武装した男たちが発砲。リーパーに無数の銃弾が迫る。

 

「よく狙え。当たらないぞ」

 

 しかし、リーパーは“鬼喰らい”を振るって銃弾を弾いた。弾いたのです。飛んでくる複数の銃弾を弾き飛ばしやがったのです。

 

 マジですか、この男……!?

 

「畜生! こいつ、サイバーサムライだ!」

 

「化け物だぞ!」

 

 サイバーサムライ。高度な機械化によってまさに刀一本で主力戦車(MBT)すら撃破すると言われる都市伝説染みた存在。

 

 しかし、まさかチャイニーズ・マフィアもリーパーが機械化していない、ただのサムライだとは思いもしていないだろう。

 

「ツムギ。お前も仕事(ビズ)をやろうぜ。どっちが多く殺すか競争だ」

 

 リーパーは余裕そうにそう言い、私に参戦を促す。

 

「はいはい。仕事(ビズ)をしましょう」

 

 私も殺しは行う。ただリーパーのようにゲーム気分でハイスコア狙いという軽薄な理由で殺すつもりはない。

 

 私は私が生き延びるために殺す。人の命は地球より重いそうだが、それなら私にとって私の命はブラックホールより重い。私にとって自分こそが何よりも大事なのだ。

 

 その点において利他的になるつもりは毛頭ありません。

 

「撃て、撃て! ぶち殺せ!」

 

 さらなる銃撃がリーパーと私に向けられるのに、私はテレキネシスでその銃弾を空中で捕えた。空中で銃弾は運動エネルギーを殺されて静止した。

 

「お返しします」

 

 受け止めた銃弾を逆方向に再加速させて男たち叩き込む。

 

 防弾ベストを着けていた人間もいて、さらに私のテレキネシスによる再加速が十分でなかったために全員は屠れなかったが、かなりの数を倒すことに成功した。

 

「それ、やはり面白いな」

 

「感心してないであなたも敵を斬ってください、リーパー」

 

「もちろんだ。お前には負けないからな」

 

 リーパーは私の言葉に嬉々として武装したチャイニーズ・マフィアに斬りかかっていく。チャイニーズ・マフィアの中には明らかに高度な機械化をした人間もいたが、そんな相手だろうとリーパーはお構いなしだ。

 

「死に腐れ、サイバーサムラァァァァイ!」

 

 だが、そこでゴリラのような機械化した巨体の男が奥の方から現れ、馬鹿デカい重機関銃の銃口をリーパーに向けた。男は叫びながら引き金を引き、重低音の銃声が中華料理店の中に響き渡る。

 

 リーパーは叩き込まれる大口径ライフル弾を弾きながら遮蔽物として店に備わっていたカウンターに飛び込み、私も一緒にカウンターの中に逃げ込む。

 

「へえ。これはいいな。あれは俺がやる。ツムギ、お前は周りの連中を倒していいぞ」

 

「了解です」

 

 この状況でまだ楽しむ余裕があるとか、本当にこの人は……。

 

「じゃあ、殺ってくる」

 

 で、私とリーパーの間には連携も何もなく、ただリーパーが引っ張るのに私が振り回されるだけです。

 

 しかし、リーパーのあの動きは────。

 

「まるで未来が見えているみたい…………?」

 

 弾丸がどこをどう飛ぶのか──。誰がどう攻撃を仕掛けてくるのか──。

 

 リーパーにはその全てが見えているかのような動きをしていた。彼に向けて発射されたはずの弾丸は一発として彼に当たらず、かすりすらもしない。

 

 しかも、明らかに死角から放たれた銃弾についてもリーパーは回避している。

 

 たとえ機械化していたとしても死角から飛んでくる銃弾を躱すなんて大道芸ができるはずはない。まして複数の方向から飛んでくる銃弾を同時に処理するなんて不可能だ。そんなことができるインプラントがあれば戦争は変わってしまう。

 

 それができる彼は一体どういう人間なんでしょうか?

 

「さて、それよりも仕事(ビズ)を、と」

 

 考えている暇はない。ここは戦場だ。考えるより動かなければハチの巣です。

 

 私は中華料理店の銃弾で割れた窓ガラスを使って敵を攻撃する。重機関銃でばらばらに砕けた防弾ガラスが宙を舞い、的確に男たちの首を狙った。

 

「クソ、クソ、クソ! 何なんだよ、これはっ!」

 

「畜生おおおお!」

 

 男たちの防弾ベストは軍用のものと違って首筋を爆発物の破片などから守る部位がない。あくまで心臓を中心とした部位を守るだけのもの。それゆえに私の喉を狙った攻撃はよく効いた。

 

「いいぞ、いいぞ。いつもより賑やかだ」

 

「この野郎……!」

 

 リーパーは重機関銃を乱射しているゴリラ男の懐に飛び込み、胸に“鬼喰らい”を突き立てると一気に頭に向けて斬り上げた。

 

「げごっ、げげっがあっ……!」

 

 ゴリラ男は体内のインプラントや皮下装甲を引き裂かれながら、狂ったような悲鳴を上げ、そのまま頭まで真っ二つに引き裂かれて死亡。散らばったインプラントの残骸とナノマシン混じりの血液が周囲を彩る。

 

 

「スコア更新、だな」

 

 

 リーパーはその様子を見て、ただ子供のように笑っていた。

 

 

 愉快そうに、楽しそうに、純粋無垢に──────。

 

 

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