TS薄幸白髪赤瞳超絶カワイイ超能力美少女がサイバーパンク世界を行く   作:第616特別情報大隊

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都市伝説//サロメ

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 ──都市伝説//サロメ

 

 

 私とリーパーはセクター8/4にあるカンタレラさんの家を訪れた。

 

「リーパー、ツムギちゃん。生き残れたようで何よりだね」

 

「ええ。カンタレラさんのおかげです」

 

「いいよ、いいよ。そういうのは。とりあえず上がって」

 

 カンタレラさんに招かれて、私たちは彼女の部屋に。

 

「で、佐久間レフはやっぱり地獄についての研究をしていたの?」

 

「みたいです。私たちが見たもの加えて、ジェーン・ドウからはこれが」

 

 私はカンタレラさんのデバイスに佐久間研究室から盗み出し、ジェーン・ドウからカンタレラさんに与えることが許可された映像を送る。

 

「これは……凄いね…………! まさか富士先端技術研究所でこんな実験をしてたなんてびっくりだよ……!」

 

 カンタレラさんは映像を何度もリピートして再生していた。

 

「これが何を意味してるのか、似たような都市伝説はありません?」

 

「都市伝説で、か。あいにく聞いたことはないね。この映像そのものが新しい都市伝説にはなりそうだけど」

 

「そうですか……」

 

「もうちょっと情報があれば、何か分かるとは思うんだけどね」

 

 この金属が何なのかとか、この不気味な像の意味とかとカンタレラさん。

 

「そう言えば、ツムギ。あの話はしなくていいのか?」

 

「ああ。あの不気味な女性のことですね」

 

 リーパーに促されて、私はサロメのことを思い出した。

 

「カンタレラさん。実は富士先端技術研究所で私にだけ見える悪魔がいたんです」

 

「ツムギちゃんだけに見える悪魔……?」

 

「そうです。他の存在のように見た目は化け物とかではなく、話をすることもできましたよ。ただリーパーですらその存在が認知できず、私だけが見たり、聞いたり、喋ったりしたのですが……」

 

「ふむ。どんな見た目?」

 

 カンタレラさんが尋ねるのに私はサロメの外見を語った。

 

 銀髪に爬虫類の赤い瞳という特徴的な外見を。

 

「この手の話で怪異が美人ってのは昔からよくあることなんだけど、黒髪じゃなくてプラチナブロンドってのは珍しいね」

 

「ええ。黒髪で美人のお化けはたくさんいますもんね…………。最近のホラーでも黒髪の女の幽霊はコピペしたみたいにわんさかで、どれだけいるんだって話ですよね……」

 

「最近に限らず雪女から牡丹灯籠まで昔から怪異が美人ってのは多かったし。怪談話や都市伝説を作る人もビジュアルを意識してるのかね」

 

 美人だと怪談話や都市伝説も広がりやすいんでしょうか?

 

「怪異ってのは美人が決まりなのか?」

 

「必ずしもそうってわけじゃないけど、確かに多いね。外見に特徴がある口裂け女ですらマスクしてれば美人だって話だし」

 

「へえ」

 

 リーパーは適当に発言したらしく、興味があるわけではなさそう。

 

「その悪魔は喋ったって言ってたけど、どういう内容を?」

 

「最初は私が見えていることに気づいたみたいな発言をしてましたね。『見えてるな?』的なことを言って話しかけてきました」

 

「ふむ。それも結構よくある怪談のパターンではあるけど、その続きは?」

 

「地獄門が開くことを予想していました。何か、こう、とても不気味な予言をしたその直後の警報が鳴り始めたんです」

 

「ふむふむ」

 

 カンタレラさんは私の報告に考え込む。

 

「その女性の正体を探る前にツムギちゃんはテレパシーをどのようにして感じているのか、まずは教えてくれる?」

 

「えっと、音として認識しています」

 

「映像として捉えることは皆無? 必ず音として?」

 

「えーっと……。たまに音と言うより気配で感じることもあるような……」

 

 リーパーの意識に潜ろうとしたときは、私は怪物の気配を感じた。音ではなく。

 

「その女性は強い何かしらの意識だったのかも。人間の意識だけが外に出るというのは、幽体離脱だとか、生霊だとかが類似するものとして上げられる。そういう話が出るくらいには、人間は意識だけで動いているものを語ってきた」

 

「言っちゃ悪いが、それは全部否定されている話じゃないのか?」

 

「悪魔だって人はオカルトだって言ってきたけど、あんたは見たんでしょう?」

 

「ああ。見ただけでなく、ぶち殺しても来たぞ」

 

「じゃあ、考えもせずに否定しないで」

 

「はいはい」

 

 リーパーはもう口は出さないと言うように適当に頷いた。

 

「でも、他の悪魔はリーパーにも見えたんですよ。彼女だけが違っていて……」

 

「その場に実体がなかったのかも。他の悪魔は実体と意識が一体化してそこにあったけど、ツムギちゃんだけが見たのは意識だけをそこに飛ばして、富士先端技術研究所の様子を観察していた、とか」

 

「ううむ。分かりません」

 

「確かにこれらは憶測にすぎないからね」

 

 自分自身、本当にアストラル投射とか幽体離脱を信じているわけじゃないしとカンタレラさんは言っていた。

 

「その悪魔は他に何か話していた?」

 

「制御室に入ったときにもそこにいて、私に『願いはないか?』ということを聞いてきました」

 

「ツムギちゃんの願いっていうと、やっぱりインプラントを除去?」

 

「です、です。けど、対価が必要だってことで交渉が決裂しました」

 

 私はリーパーを犠牲にするのを避けたということは言わなかった。リーパーに知られたらからかわれるだろうし、何となく打ち明けにくかった。

 

「正解かもね。悪魔と取引する話はいろいろとあるけど、どれもハッピーエンドとは言えないオチになっている」

 

「けど、ゲーテのファウストだと神様に救われてませんでしたっけ?」

 

「あれは悪魔であるメフィストフェレスが願いを叶えたとは言い難かったし、元になった話ではファウスト博士は爆発で死んでる」

 

「うへえ」

 

 ジェーン・ドウも言っていましたが、悪魔と取引しなくて正解だったかもです。

 

「悪魔は他には?」

 

「名前を名乗りました。サロメ、と」

 

「サロメ…………」

 

 カンタレラさんは考え込む。

 

「やっぱりサロメと名乗る悪魔だと、その名前はヘロディアの娘から拝借したかな」

 

「ヘロディアの娘?」

 

 退屈そうにしていたリーパーが思わず尋ねる。

 

「そう、洗礼者ヨハネの首を欲した新約聖書の人物」

 

 カンタレラさんがそう言いますが、私もリーパーも聖書はさっぱりです。

 

「ま、当時の偉い人の娘で、キリスト教の聖人である人を斬首させた美女ってだけ分かってればいいよ。このサロメって子は芸術家には人気で、ちょい役なのにたくさん絵画が書かれているぐらい」

 

「へえ。確かに聖人を斬首させたとなると、まさに悪魔みたいなやつだな」

 

「でしょ? まあ、芸術家だけでなく、悪魔にも人気なのかは知らないけど」

 

 リーパーは斬首と言う単語を聞いて楽しそうにそう言い、カンタレラさんはこれ以上はお手上げと言うようにそう言った。

 

「私の体験した話はこれぐらいです。報酬には十分でしょうか?」

 

「うん。十分だよ。けど、せっかくだから一緒に夕食食べにいかない?」

 

 ここでそうカンタレラさんが誘ってきた。

 

「奢れっていうわけか?」

 

「ただ一緒にご飯が食べたいってだけ」

 

「そうか。なら適当にバーガーでも食いに行くか?」

 

 リーパーはやはりハンバーガーが好きらしい。

 

「もっと温かいものにしましょう。いろいろと怖い話をしてたら背筋が寒くなってきましたから……」

 

 悪魔とか幽霊とか都市伝説の話は面白いのですが、不安になったり、怖くなったりするのが困りものなのです。

 

「この近くにお好み焼きのお店ができたみたいだけど、行ってみる?」

 

「それはいいですね。そうしましょう」

 

 ほかほかのお好み焼きならば、怖い話で寒くなった背筋を温まりそうです。

 

「オーケー。車を出そう」

 

 リーパーの合意し、私たちは車でお好み焼きを食べに向かった。

 

 

 こうして私の認識する世界は少しずつ正常に戻っていく。

 

 だが、まだ全ての謎が解けたわけではなく、異常は存在し続けているのだ。

 

 

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