TS薄幸白髪赤瞳超絶カワイイ超能力美少女がサイバーパンク世界を行く   作:第616特別情報大隊

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フィルビーの憂鬱//モグラ狩りは……

……………………

 

 ──フィルビーの憂鬱//モグラ狩りは……

 

 

 張妙鈴さんが運転するバンはセクター13/6に入り、ごみごみとした景色がマジックミラーの向こうに広がる。

 

「ドローンが撃墜された。今、民間宇宙開発企業の情報衛星がセクター13/7上空にいないか探している。とにかく急いでくれ!」

 

 ユウト・ノイマンさんはバンに乗せられたサイバーデッキに接続したまま、張妙鈴さんに向けて叫ぶ。

 

「分かっている!」

 

 張妙鈴さんは叫び返して、細くて、まともに整備されていないセクター13/6の道路をアクセルを踏み込んで加速していく。

 

「ほ、本当に捕まえられますかね!?」

 

「さあな?」

 

 私が状況が危機的になっていくのの不安を抱くが、リーパーは軽くそう返す。

 

 それからバンはついにTMCセクター13/6の市街地を突破し、セクター13/7の産業廃棄物処理場に入った。

 

 様々な汚染を警告する看板を脇を抜けて、私たちはセクター13/7でアンディ・イトウの捜索を開始する。

 

「よし。情報衛星を捉まえた。今、セクター13/7を見下ろしている」

 

「アンディ・イトウは赤のSUVで逃亡していた。いたか?」

 

「待て」

 

 張妙鈴さんが急かすのにユウト・ノイマンさんが衛星の画像をAIに分析させる。

 

「いたぞ、いたぞ。やつを見つけた。この座標に向けて進め!」

 

「分かった」

 

 再び張妙鈴さんがアクセルを踏み、バンが走り出す。

 

 彼女が運転して向かった先は────。

 

「うわ! 今の警告見ました……?」

 

「ああ。いかにもなドクロのマークだったな。ヤバいものを廃棄しているらしい」

 

 私たちは重度の汚染に警告するように示された看板の横を抜けて、その汚染された場所に入り込んでいった。

 

「そろそろだ。だが、やつはどうやってここから逃げるつもりだ……?」

 

「TMCのエアトラフィックの情報が入った。民間企業のパワード・リフト機がこちらに向かっている。所属はサンライズ・リサイクル・サービス」

 

「そいつが脱出の手段か?」

 

「分からん。該当するパワード・リフト機はごみ処理場にTMC各地で出たごみを運んでいるものだが、どうだか……」

 

 私たちは張妙鈴さんとユウト・ノイマンさんがやり取りするのを見ていた。

 

「リーパー。どう思います?」

 

「何がだ?」

 

「この状況ですよ」

 

「俺はスパイの専門家じゃない」

 

 ドンパチがないなら自分に仕事(ビズ)はないという具合に、リーパーは現状に無関心なのです。

 

 しかし、私としては何か違和感を感じる。ただ、どこで違和感を覚えたのかがはっきりしないのですが…………。

 

 整理すると私たちはアンディ・イトウに工作担当官(ケースオフィサー)の元まで逃げることを誘導し、私たちはそれを追いかけている。ミネルヴァの工作担当官(ケースオフィサー)を拘束するために。

 

 その過程で私たちは一度もアンディ・イトウに接触していない。

 

 ふむ…………。

 

「そろそろだ」

 

 張妙鈴さんがそう言い、車は昔の倉庫らしき場所の前で止まった。

 

「ミネルヴァの工作担当官(ケースオフィサー)の確保は任せたぞ、傭兵」

 

「ああ。任せておけ」

 

 サイバーデッキから離れて拳銃を抜いて構えたユウト・ノイマンさんの言葉にリーパーが頷き、バンを降りてゆっくりと倉庫の方に向かって行く。

 

 私はそこで倉庫内容の様子をテレパシーで探る。

 

『──……どうしてここに来た? ここには来るなと言ったはずだぞ……──』

 

『──……保安部に嗅ぎつかれたんだ。そちらこそこういうときは助けてくれるという約束だぞ……──』

 

『──……だが、我々の情報ではお前に危機は迫っていない……──』

 

 おや? 何やら倉庫内では揉め事が起きているようです。

 

「リーパー、どういうことか分かりませんが、倉庫内では言い争っています」

 

「ふうん? 分かった。警戒はしておく」

 

 リーパーは私の言葉にそう返すと、倉庫カギをドアノブごと“鬼喰らい”で破壊して、倉庫の中に押し入った。

 

「何だ!?」

 

「あ、あれは……!」

 

 倉庫内にはアンディ・イトウの他に情報になかったアフリカ系男性がいた。

 

「オーケー。アンディ・イトウだな? そこにいるのがお前の飼い主(ハンドラー)か? そこを動くなよ。殺すなとは言われているが、手足を1、2本斬り落とすくらいは許可されるだろうからな」

 

 リーパーはサディスティックに笑ってそう言い、“鬼喰らい”の刃をアンディ・イトウとアフリカ系男性に向けた。

 

「よし。押さえたな。これでハッピーエンドだ」

 

 後ろからはユウト・ノイマンさんと張妙鈴さんが入ってきて、ユウト・ノイマンさんがアフリカ系男性に銃口を向けながら手錠を準備する。

 

 そのときだ────。

 

「え……?」

 

 不意に背後から2発の銃声が響き、ユウト・ノイマンさんの頭が弾けて倒れ、リーパーは一瞬で振り返って鬼喰らいで銃弾を弾いた。

 

「ちっ! 勘のいい傭兵だな。だが、動くなよ。動けばこいつを殺す」

 

 私の頭部に金属の感触がして、そう警告するのは張妙鈴さんだ…………。

 

「どういうことだ、張。どうして君がここにいる?」

 

「気づかなかったのか、イーサン? そこの間抜けは泳がされていたんだ。お前の居場所をここにいる大井の保安要員が知るために。それを防ぐために私が来た」

 

「クソ。そういうことか……」

 

 張妙鈴さんにイーサンと呼ばれた男性は悪態をついたのちに呻く。

 

「張妙鈴さん。あなたもミネルヴァの……」

 

「だとしたら、何だと言うんだ?」

 

「いえ」

 

 今まであった違和感の一部が溶けた。

 

 私たちはそもそも工作担当官(ケースオフィサー)の居場所を知るためにアンディ・イトウを追いかけていたのだ。彼がそのまま工作担当官(ケースオフィサー)とともに逃亡するかどうかは分からないはずだった。

 

 仮にその場から逃亡したとしても、ここで押さえる必要はない。衛星なりドローンなりで追跡を続ければよかったのだ。

 

 ジェーン・ドウもアンディ・イトウも工作担当官(ケースオフィサー)も、ふたりとも拘束しろとは言っていたが、その場所などについて指示はしていない。

 

 だが、私たちはここまで必死に追いかけた。

 

 ……──他でもない張妙鈴さんの運転で。

 

 それはアンディ・イトウがマークされていることを工作担当官(ケースオフィサー)に伝え、工作担当官(ケースオフィサー)の存在を秘匿し続けるためだ。

 

 衛星やドローンで彼の存在が捕捉されると困るから……。

 

 彼女は途中からこの作戦を別の目的に利用していたのです!

 

「そいつはもう大井にマークされている。始末してずらかろう」

 

「分かった。残念だよ、アンディ」

 

 イーサンと呼ばれた男が懐から拳銃を抜こうとし────。

 

「えい」

 

 私は一瞬でテレパシーにより張妙鈴さんの思考に入り込むと、私に突き付けていたはずの銃口をそらし、イーサンの手を狙って発砲させた。

 

「ぐあっ! 張、一体何をする……!?」

 

「わ、私じゃない! 何かが……!」

 

 イーサンが悲鳴を上げて、張妙鈴さんがうろたえる中、リーパーが動いた。

 

 リーパーはまずは私の後ろでうろたえていた張妙鈴さんの腕を斬り飛ばし、返す刀でイーサンの腕を切断。一瞬の攻撃でふたりは無力化された。

 

「ふん。歯ごたえがない。無事か、ツムギ? 怪我は?」

 

「いえ。怪我はありませんけど……。これもジェーン・ドウが予想したシナリオなんでしょうか…………」

 

「本人が来るから聞いてみたらどうだ?」

 

「え?」

 

 そこでパワード・リフト機のエンジン音が響き、倉庫のシャッターが武装した大井統合安全保障のコントラクターたちによって開けられると、すぐさま完全武装の彼らが突入してくる。

 

「ご苦労様でした、リーパー、ツムギさん」

 

 そして現れてのはジェーン・ドウだ。

 

「どうしてここが? リーパーが報告を?」

 

「いいえ。アンディ・イトウです」

 

 アンディ・イトウは大井統合安全保障のコントラクターたちに拘束されず、自分の足でジェーン・ドウの下まで来た。

 

「ご苦労様でした、イトウさん。ご協力に感謝します」

 

「約束通り、これでもうこの手の仕事(ビズ)にはかかわらないでいいんだな」

 

「ええ。終わりです。報酬は指定された口座に」

 

「ありがとう、と言うべきか」

 

 アンディ・イトウとジェーン・ドウはそんな親しげな会話をしています。

 

「ど、どういうことですか……?」

 

 私は思わず尋ねる。

 

「シンプルなことですよ。アンディ・イトウは大井に忠誠を向けている、二重スパイだったということです」

 

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