東方鳥人族 ~the Illusion Land and the Lonely Last Survivor. 作:影のビツケンヌ
あくまでメインは無限者なので、亀更新はご容赦くだs(殴
異星人が幻想入りした噂は、和紙の上に溢した墨のように広がっていった。
観光も兼ね、人里への買出しに行く一輪に同行したジェイビークは、初めこそ警戒されたものの、命蓮寺の時と同じくすぐにそこに溶け込んだのだった。
そして今、彼は人里の喫茶店『クランキー』のカウンター席でコーヒーを飲んでいた。
ぬえの言っていた通り、まずはこの世界のルールや常識に慣れるべきだ。彼女らのような知能の高い妖怪はともかく、本能のままに人を殺し喰う下級妖怪に襲われては、流石に無傷ではいられないだろう。幸いここの自然環境はタルタゴ程厳しくはなく、むしろ過ごし易い。本格的な準備も容易なはずだ。
彼がそんな考えを巡らせていた矢先、二人の少女が隣に腰を下ろした。
「マスター、強いの頂戴」
「私もお願いします」
「あのねぇ、ここは喫茶店であってバーじゃないから。人生に疲れたOLみたいな注文しないで」
マスターと呼ばれた、クランキーを切り盛りする外来人の男――加崎則夫は、去年の五月下旬から自分の店を訪れるようになったこの少女二人をよく知っていた。
机に突っ伏している青いツインテールの少女は、自ら作成した高出力自由電子レーザー砲『シュリュウ』で幻想郷を救った、河童のエンジニア・河城にとり。両手で頬杖をつき顔を覆っている、若干ウェーブした黒い長髪の少女は、『シュリュウ』の設計と、その動力源となったモノポールドライブの作成を行なった妖怪スカイフィッシュ・空素子。
「もし、何だか随分困っているようだが、どうかしたのかい?」
ジェイビークは、浮かない様子の二人を放っておける程非情ではなかった。彼のモットーは、『この世に自分に関係ないことはない』。お人好しに見えるかもしれないが、即ち対岸の火事という言葉自体存在しないも同義なのだ(彼が隠遁生活を送っていたのは、そんな自分の性分を自覚し、戒める為でもあった)。
「筋電義手の製作が滞ってるんだよ。接触感覚のフィードバックができないし、そもそもレスポンスに難がある」
ジェイビークの問いかけに、にとりがそのままの姿勢で応じた。
「私も手伝おうか?」
「無理ですよそんな一般ピーポーに理解できるような話題じゃ…」
頬杖を解除しジェイビークに顔を向けた素子は、彼の容姿を見るなり台詞を途中で止めてしまった。一時停止ボタンを押したかの如く硬直したかと思えば、その表情を恐怖と困惑との間で目まぐるしく行ったり来たりさせ、最後には、
「…チョウゾ?」
「あ、ああ。私はチョウゾ」
「本物ッ! やっぱり本物の鳥人族だぁっ!!」
満面の笑みを湛え、店内一杯に響き渡る悲鳴にも似た黄色い歓声を上げた。
「私の世界のことがゲームに?」
「はい、実際にプレイした訳じゃありませんが。少なくとも、幻想郷の中では詳しい方だと思います」
ジェイビークは知る由もないだろうが、外界に於いてサムス・アランの活躍は『メトロイドシリーズ』というゲームとして知られている。その世界観の所々に、かつて高度な科学力を誇った古代文明のような扱いで、鳥人族――チョウゾの名が散りばめられているのだ。
これはあまり知られていない事実で理由も不明だが、素子はスカイフィッシュの姿になると、幻想郷と外界を隔てる結界をすり抜け、自由に行き来できる。彼女がこのようなサブカルチャーに詳しいのは、そうして外の娯楽に数多く触れているからである。
話題が筋電義手からコスモ暦に大きく逸れてしまった。素子は慌てて軌道修正し、ジェイビークに自分とにとりの抱える問題について話した。
「四島小櫃?」
「はい、私達と一緒に世界を救った仲間で、友人です。私達は彼の為の筋電義手を作っているんですよ」
「外来人としては最強クラス。私の見立てだけど、総合的な戦闘能力は大妖怪にも匹敵するんじゃないかな。でも何かここ一ヶ月位見ないなぁ…」
二人の語った人物、その名を四島小櫃は、大妖怪八雲紫の手で西暦2129年の地球から連れてこられた刺客である。同じ世界線から幻想入りしてくると予測された男、ブラスト・ハンドレッドの抹殺の為に。彼は自らの正義に従い、幻想世界滅亡の根源たるブラストを、仲間達と協力して排除、平和を守った。
そこまでジェイビークが理解した時だった。
「ううっ…?!」
唐突に、彼の頭に激痛が走った。
「ジェイビークさん!」
「どうした?!」
「何?」
少女二人と店主の、身を案ずる言葉は急速に遠のき、彼の意識は真っ白に塗り潰されていく。
白い世界は、自分が未だその全貌を把握していない世界――幻想郷の景色へ、徐々に移り変わる。
自然豊かな光景に、ふと影が差す。それは光を蝕む闇となり、やがて幻想郷全土を覆い隠す。
闇は世界を混沌へと
絶望に支配されたその中に、彼は光を見る。
光は新たな光を集め、それらと共に世界を巡って闇を祓い、燦然と輝く。
その一瞬、それらの光は少年少女の姿を映したようにも見えた。
闇の消えた世界に、光は馴染み、還っていく。
「…ああ、そうか」
ジェイビークは、深い嘆息を伴い呟いた。
彼の見たのは、天啓。即ち、チョウゾの予知だ。
「あの光が、か」
「えっと、…大丈夫ですか?」
「うむ、問題ない。それより、義手だったかな? 是非とも私に任せて欲しい」
「えええっ?!」
「今、私は確信した。彼は――小櫃はこの世界の闇を祓う光となろう。私は、どうしてもその彼に力を貸したいのだ」
かくして、今は不在の
しかしそれが彼の手に渡るのは、大分先の話。
ジェイビークが無限者の展開を予知しました。ようやくメトロイドっぽさが出てきた…のか?
尚、これを投稿した時点での時系列は
鳥人族
英雄のいぬ間に →三月上旬
無限者
本領 →二月下旬
と、こちらの方が若干進んでいることになります。