ようこそ一之瀬がハッピーエンドを迎える教室へ   作:スカビオサ

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14話(ちょっかい翔 龍園君)

5月8日金曜日

 

朝のホームルームでテスト範囲の変更が告げられた。

やはり、今回も例年と同じ問題が出ると言ってよいだろう。早速、クラスのみんなと過去問を共有し、これが今年も出題されること、過去問をクラス外には漏らさないこと、それをテストまでに確実に暗記することを要請した。勿論、勉強が苦手な生徒には勉強会でフォローすることで将来への備えとする。

 

過去問の配布についてはもう少し遅らせる案もあったが、このクラスは一之瀬さんの件もあり、上昇志向に溢れている。過去問があるからと怠ける生徒はいないだろう。自クラス内は問題ない。

 

だが、他クラスもシステムの発表からの混乱が落ち着き、クラスの体制が固まったことだろう。今後は他クラスからの干渉についても警戒しなければならない。

 

 

 

 

 

特別棟1階、人通りの少ない場所でAクラスの生徒とCクラスの生徒が対峙していた。

 

「一之瀬が万引きをしたことがある。そう聞いたが、本当か?」

 

確認と言う体を取っているが、確信しているのか、にやけ面で問う。

 

「そうだな、それは本当だ。それがお前に関係があるのかよ?」

 

Aクラスの生徒、柴田颯が冷静に返す。

 

「おいおい、そんな奴にリーダーを任せて良いと思ってるのか?いつ裏切るか分かったもんじゃねえぞ。」

「俺たちは認めてる。それでいいだろ。他クラスが何か言う事じゃない。悪いけど、俺、部活にいかなきゃいけないんだ。」

「何だ、腰抜けかよ。自クラスのリーダーが悪く言われてるのに何もしないとは。」

 

Cクラスの生徒はどこか焦った様子で挑発を行う。

 

「どう言われようとも構わない。ここでお前に攻撃したところで意味なんてないからな。それじゃ。」

 

そうしてグラウンドに向かって走り出す。

 

 

 

 

 

カラオケルームにて。

 

「なるほどな。」

 

紫がかった黒髪をした生徒が配下からの報告を受ける。

 

「どうやら一之瀬クラスの守りは相当に硬いらしい。どれだけ悪く言おうとも、堪えた様子を見せないとはな。逆上して殴りかかってくる生徒でもいれば、儲けものだったが、いるはずもないか。」

 

その男、龍園翔は部下からの報告の中で、気にかかった点を思い出す。

 

「ククッ、まさか俺の行動が読まれてるとはな。」

 

Cクラスの配下が接触したAクラスの生徒がどうやら、木之原君が言ったとおりだ。と漏らしていたらしい。

木之原葵、BクラスがAクラスに昇格した立役者の一人であり、入試首席。

ただの仲良しクラスと考えていたが、面白い奴がいたらしい。即時昇格しただけはある。

 

「少なくともAにこの手は通じねえな、一之瀬の過去なんて面白いもんが聞こえてきたから、利用してやろうと思ったが。」

 

この策は、学校側に告発されないラインを狙った嫌がらせでしかない。リスクを背負えば、痛手を与える自信はあるが、Aだけに拘る必要はない。

今後の展開を考えつつ、龍園はニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

5月15日金曜日 昼休み

 

僕は勉強会のメンバーを伴って、図書室に来ていた。メンバーは総勢18名、講師役が僕、神崎君、帆波さんの3名で、他の15人が生徒だ。それぞれが5名受け持つ形になっているが、今日は全員で来ていた。

 

中間テストが近いということもあって、日頃より人が多いのを感じる。読書が好きということもあり、4月末はよく来ていたのだ。生徒会に加入してからは、なかなか来れていなかったが。

 

各自の勉強内容を見ていくが、まあ元Bクラスだ、基礎は出来ているし、大きな問題は無い。そうして勉強を続けていると周囲が騒がしくなってきた。

どうやら、その原因は揉めている生徒らしい。

 

Dクラスの須藤君とCクラスの山脇君か。

ふーん?対象は理解できるが、こんな人目が多い所で仕掛けるか?となると、これは関係ないか。

ぼーっと眺めていると、帆波さんが動いていた。

 

「はい、ストップストップ!」

 

女性が割り込むには勇気を要する構図だったが、彼女は臆することなく仲裁に入る。

 

「んだ、テメェは、部外者が口出すなよ。」

 

須藤君が鋭い視線を向け、噛み付く。

 

「部外者? この図書館を利用させてもらってる生徒の一人として、騒ぎを見過ごすわけにはいかないの。もし、どうしても暴力沙汰を起こしたいなら、外でやってもらえる?」

 

それでも一之瀬さんは毅然と立ち向かう。

 

「それから君たちも、挑発が過ぎるんじゃないかな? これ以上続けるなら、学校側にこのことを報告しなきゃいけないけど、それでもいいのかな?」

「一之瀬か、そもそもお前が俺たちのことを上から説教できる立場なのかよ、犯罪者だって聞いてるぜ?」

 

山脇君は帆波さんの立場を貶めるように敢えて周囲に聞こえるように言う。

 

「君たちCクラスはいつもそれだね。私の立場が何であれ、君たちが周りのみんなに迷惑を掛けている。それは変わらないでしょ?それに勝手にこんな騒ぎを起こして、龍園君に怒られても知らないよ?」

「くっ、行こうぜ。こんな所で勉強してたらバカが移る。」

「だ、だな。」

 

彼らはそんな陳腐な捨て台詞を残して去っていった。

帆波さんの方に合流する。

 

「お疲れ様。」

「ううん、こんなの大したことないよ。」

 

「君たちもここで勉強を続けるなら、大人しくやろうね。以上っ。」

 

一之瀬さんはDクラスの面々にそう告げ、踵を返す。だが僕は立ち止まる。彼らを見ていて少々気になったことがある。

 

「えっと、一つ聞きたいんですけど、どうしてその範囲を勉強しているんですか?大航海時代は範囲外の筈ですが。」

 

Dクラスの面々は驚いたようにこちらを見ている。

代表して黒髪長髪の美少女がこちらに答える。というか堀北鈴音さんか、会長の妹だ。

 

「先ほどのCクラスもそう言っていたけれど、どういうこと?」

「どういうことって、先週の金曜日にテストの範囲が変更になると先生から連絡されませんでした?」

「いえ、それは…とにかく情報提供感謝するわ。」

 

堀北さんは敢えてぼかすとそう言い残し、すぐにこの場を去り、どこかへと向かって行った。他のメンバーも彼女に追従し、去って行ってしまった。

 

「えっと…情報伝達が上手くいってなかったのかな?先生が忘れてたとか?」

 

帆波さんがそう言うがそんなことがあるだろうか?

それよりは作為があると考える方が自然だ。とは言え、自分の担当するクラスへの伝達を遅らせるなどデメリットしかない。

 

星之宮先生が常日頃言ってることだが、Aクラスで卒業すると、そのクラスの担任は特別なボーナスが貰えるらしい。肩入れすることは禁止されているが、どのクラス担任だって自クラスにAで卒業してほしいと思っている筈だ。

 

Dクラス故に見切りをつけた?確かにDクラスは歴代で初めて1ヶ月でポイントを全て吐き出したクラスだ。何もおかしくはない。ただ、そうだとしても敢えて遅らせる必要はない。

 

見切りをつけた、どころではなく嫌悪している?その場合でも同じことだ。範囲変更の連絡をしないというのはリスクを伴う。あるべき平等性が担保されていないからだ。Dクラスの生徒が担任を飛び越え、上に訴え出たら、茶柱先生も無傷ではいられない筈だ。いくら嫌いとは言え、そんなリスクを犯すだろうか?

 

これも試験の一環というのは?それも微妙だ、彼女の口ぶりからしてCクラスもテスト範囲の変更は知らされていた。恐らくBクラスも知らされているだろう。

 

ではDクラスだけが知らされない、そういう試験だと?可能性はあるが、最初からそんな試験が行われるだろうか?Dクラスが0ポイント故の特別な試験、救済措置ということか…?だがそれは他のクラスにとって、あまりにも不平等だ。可能性としては、低いな。

やはり先生に確認を取るべきか。

 

つんつん、頰に感触。

 

「大丈夫?」

「っ、ああ、大丈夫、ごめん。」

「本当に?話しかけても反応が無かったから。」

「考え事をしてただけ、戻ろっか。」

 

そう声を掛け、みんなの元に戻っていく。ひとまずは続きをしないとな。

 

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