ようこそ一之瀬がハッピーエンドを迎える教室へ   作:スカビオサ

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16話(趣味は読書、つまり?)

今日、僕は食堂には久しぶりのボッチ飯と洒落込んでいた。

いつもは神崎君や柴田君と昼食を取っているのだが、今日はとある理由から一人ぼっちだ。1人寂しく山菜定食を食べている。

 

その訳というのも、綾小路君を観察するためだ。決してストーカーではない。先に食堂にいたのは僕だからね、ストーカーということはあり得ない。彼は今、券売機横で何かを観察している。どうやら何かを見つけたらしい。山菜定食を購入した生徒に櫛田さんと共に声を掛けている。距離が遠く、会話は聞こえないが、恐らく過去問の交渉だろう。昨日の今日で、ヒントから気付くとは流石に陰の実力者なだけはあるだろうか。

 

どうやら交渉は成立したらしい。

 

見たいものは見れた。教室に戻るか。

 

 

 

 

 

それからの日々は穏やかだった。Cクラスからの嫌がらせも無く、授業に取り組み、昼は友達とご飯を食べる。放課後は生徒会だったり、友達と遊んだり、体を鍛えたり、本を読んだり、特別語ることの無い充実した日々を過ごしていた。

 

強いて言えば、一人で図書館に行く機会があった時に椎名さんと久しぶりに会ったぐらいだろうか。彼女とは4月頃からの付き合いになるだろう。

 

クラスの自己紹介にて趣味が読書と答えた僕は、それを事実とするため、図書館に足を運んだのだ。いや、実際に物語を読んだりするのは好きだし、嘘ではないのだが、著名な文学作品を抑えてない状態で趣味を読書とするのはおこがましいのでは、とそんなことを考え、空き時間に図書館に通っていた。そこで彼女から接触があったのだ。最初は、僕にも春が…と盛大に勘違いしたものだが、結局、読書仲間が欲しかっただけという感じだ。そんなこんなで付き合いが続いている。僕の友達は自クラスが殆どだから、これはかなり珍しいと言って良いだろう。

 

実際、他クラスで連絡先を持っているのは…橋本君、櫛田さん、こんなところかな。うん、友達とは呼べないよね。

橋本君は何か擦り寄って来ただけだし、櫛田さんの連絡先とか学年全体で持ってる人多すぎて、全くレアじゃないからな。

 

そうして僕たちは中間テストを終えた。

 

 

 

 

 

6月1日

テスト自体の返却はまだの様だが、今日はポイントが振り込まれる日だ。確認すると振り込まれた額は97000だった。ポイントは特に増えず、単に素行の面で引かれたというところだろうか。中間テストの成績でポイントが増加すると予測されるが、それはまだ反映されないらしい。

 

帆波さんから連絡が来る。内容もこのクラスポイントについてらしい。手早く返信しつつ、朝の支度を始める。

朝食を取り、部屋を出ると、そこには帆波さんがいた。

 

「おはよー!葵君!」

 

朝から元気だな。僕も朝は弱いわけではないが、ここまでの元気は出せる気がしない。

 

「おはよう。それで他クラスのクラスポイントは分かる?」

「うん、Bが900で、Cが430だね。Dはそのまま0みたい。」

 

他クラスに友達なぞ殆どいないため、こういう情報は帆波さんを頼ることになる。何だかんだBは橋本君、Cは椎名さん、Dは櫛田さん。と連絡先はあるから聞けないことも無いんだが。

 

やはりポイントの増加は無いか。仮に隠されたポイント増加方法があるとかだと、相当な情報リードを許すことになるから、そこは一安心だ。どのクラスも素行などの要因で少しは点数が引かれてると言ったところか。

 

「Cの減少分が大きいね。」

 

Cは60ポイントも減らしている。学校の基礎的なルールが明らかになった後という事を考慮すれば、減り過ぎだろう。

 

「やっぱり、他クラスに絡んだりしてるからね。被害者が学校に訴えが出てるわけではないとはいえ、素行の面の評価は下がっても仕方ないのかもね。」

 

龍園君も色々と学校のルールを調べるために試行錯誤している様子だからな。生徒会入れば、学校の基礎的なルールは把握できるんだけどね。とは言え、彼は組織に入って、雑用なんてやるタマじゃないだろう。そもそも彼は不良として悪名高い。生徒会に入ろうとしても門前払いされるだけか。南雲副会長なら面白がって入れるかもしれないが。

 

「Bクラスがポイントを比較的減らしてるのもそれが理由か。」

「Cクラスに絡まれることが多いみたいだからね。私たちに絡まなくなってからはBクラスを狙ってるみたい。」

「Bクラスは元々優秀な人間が多い。それゆえプライドが高い傾向があるし、Bクラスに速攻で落ちたことを煽られたら、歯止めが利かない人間もいるんだろう。」

 

葛城君は自身の派閥を何とか抑えてるみたいだが、坂柳派はそうではないみたいだからな。坂柳さんはクラスメイトを駒としか見ていないから、特別、忠告はしないし、自身の実力に圧倒的な自負がある。多少の小競り合いでポイントが減る程度、気にしてはいないんだろう。

 

二人してエレベーターに乗り、1階へと向かう。エレベーターが4階に止まると、同クラスの網倉さんと白波さんがいた。

挨拶をして、乗り込む。流石に同クラスとは言え、男女比3:1は息苦しいな。エレベーターの端っこに陣取る。

網倉さんがこちらを見て、ニヤリと笑って、帆波さんに、こっそり何かを話しているのが視界の端に見えるが、こういう会話に男が参加するのはご法度というものだろう。気にしないことにする。

 

エレベーターを出て、寮から出ると、想像以上の熱気が僕を包んだ。僕は割と早い時間に寮を出ることもあって、最近まで暑さを感じていなかったが、6月にもなると8時前でも日差しが強く、汗が噴き出る。この学校にも夏服というものはあるが、制服なので、そこそこのお値段がする。プライベートポイントは多くの活用が出来ることもあり、それにポイントを使うべきかは悩みどころだ。買うのなら早めに買った方が良いか。日頃、節約できる部分はしているからな。これぐらいは許されるだろう。

3人から少し離れた位置で歩いていると、網倉さんが近づいてくる。

 

「最近、帆波ちゃんと一緒に登校すること多いけど、何かあった?」

 

少し微笑みながら聞いてくる。大方付き合ってるんじゃないのー?とかそういうやつだろう。

帆波さんが答えてくれなかったから、方針を変更したか。ここで付き合ってると言えたら、良かったが、言うとただの嘘になってしまう。ここは本当のことを答える。

 

「特に何もないよ。生徒会の仕事もあるし、クラスについて話し合いたいこともある。歩きながら話せば、時間を有効に使えるからね。一緒に登校してるだけだよ。」

 

答えると、彼女はつまらなさそうな顔をした。面白い展開じゃなくて申し訳ないが、僕は悪くない。

 

「じゃあ、木之原君は好きな子とかいないんだ?」

 

割と答えにくい質問をしてくるな。まあ、2カ月、クラスメイトとして過ごしてるわけだし、そんなものか。網倉さんは帆波さんの親友ポジって感じだから、話す機会も多いし。振り返ると、僕も当初とは言葉遣いを変えてるわけだしね。

 

「黙秘かな。それに今は学校が楽しいから、あまりそっち方面に意識が向いてないかも。」

「ええ、じゃあ彼女とかも別に…ってこと?」

「出来たらいいんだろうけどね、生憎相手がいないよ。」

「ふむふむ。なるほど、ありがとね、答えてくれて。」

 

そういって帆波さんたちの方へ戻っていく。何やら楽しそうに話している。仲が良さそうでいいことだ。白波さんが親の仇に対して向けるような視線で睨んでくることだけは本当に解せない。

 

朝のホームルームが始まり、各クラスのクラスポイントが発表された。当然、事前情報通りの数値だ。

Aクラスのままであり、かつ他クラスとポイントを引き離せていることもあり、クラスからは喜びの声が聞こえる。

クラスの士気は高く、各々が自身の課題に立ち向かっている。学生なのだから遊びたい盛りだろうが、それでも上手くバランスを取って、次に備えている。これはこのクラスでしか出来ないことだろう。団結感と現状の好調さ、それが合わさり、数値上でも分かるぐらいの成長を見せているクラスメイトも何人かいた。元Aクラスと比べても、Aが下がり調子という事を踏まえれば、総合力は拮抗するレベルになったと言っていいだろう。今はこれでいい。このままの流れで、帆波さんが導いていけば、追われるものとしての王道の戦い方が出来ていくはずだ。

 

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