ようこそ一之瀬がハッピーエンドを迎える教室へ   作:スカビオサ

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24話(龍園君のアドバイス)

無人島試験 2日目 朝

 

どうやら朝になったらしい。時計を見て確認すると、時刻は5時。まだ起きるには早いのか、テントの中のメンバーはまだ寝ている。

起きた時に人がいるって違和感が凄いな、そういえば無人島試験だったな。

 

「ふぁあ」

 

大きなあくびが出る。結構寝たはずなんだけどな、まだ少し眠い。とは言え、二度寝する気にもならないな。顔でも洗うか。

テントから出ると、そこには同時にテントから出て来た帆波さんが居た。

 

「あっ、おはよう、葵君」

 

眼をこすりながらこっちに向かってくる。眠そうだな。

 

「おはよう、早いね、帆波さん。顔洗いに行ってくるね」

「うーん?私も行くよ。ついてく」

 

帆波さんはまだ寝ぼけているみたいだな。

二人して井戸の方へと向かう。顔を洗うと、少しだけ眠気が飛んだ気がした。井戸があるのは大きいな、水をポイントで買う必要も無く、節約を考えなくて良いから、こういう時にも我慢しなくていい。

 

「今日は、偵察だよね?」

 

顔を洗い終わると、そう聞いてくる。

 

「うん、そうだね。それぞれがどういう方針でこの試験に取り組むのか、それを見ておきたい。まずはCクラスかな」

「じゃあ、私も同行して良い?」

「勿論、帆波さんの方が他クラスにも顔が利くだろうからね。助かるよ」

「クラスのリーダーとして当然だよ、それに…彼女としてもね」

 

少し顔を赤らめながら言う。

 

「頼もしい彼女を持てて嬉しいよ」

「さらっと言うなあ…もう少し照れてくれても良いのに」

 

そう言いつつ、抱き着いてくる。

 

「誰か起きてくるかもしれないよ」

 

辞めて欲しいとは思ってないが、一応言っておく。夏だとは言え、早朝は少し冷え込む。伝わってくる体温が心地よい。

 

「じゃあ、テントの方見てて。それまでこうしてるから」

 

力を強めてくる。触れるたびに愛しいという気持ちが溢れてくるのは不思議なものだ。

髪を触りながら、頭を撫でる。どれだけの時間そうしていただろう。

バッと体を引き離す。

 

「あっ、ん?」

 

少し切ない声を出しながら、帆波さんは後ろを振り返る。

 

「麻子ちゃん…」

「おはようー、お邪魔だった?」

 

網倉さんが笑顔でこちらを見てくる。どちらかと言うとニヤニヤしてると表現すべきか。

 

「そんなことないよ、ただ躓いちゃって、支えてもらってただけ」

 

追及されてもいないのに言い訳を始める。

 

「ふーん、10分間も支えてもらってたんだ」

「え…もしかしてずっと見てたの?」

「帆波ちゃん、動揺し過ぎ、カマかけただけだよ。私、今来たばかりだし」

 

帆波さんの顔が急激に赤一色に染まる。

 

「全く、木之原君も隅に置けないなあ。奥手かと思いきや、意外と肉食系?」

 

こっちも揶揄ってくる。

 

「恋人のスキンシップとしては、まだ微笑ましい方だと思うけどね」

「まあ、それは私も思うけどね。帆波ちゃん本当に初心だから。そこが良いんだけど」

 

分かる。完全に同意。

 

「もう麻子ちゃん!」

 

帆波さんが網倉さんに飛び掛かった。二人でじゃれてるところを見て、ほっこりしていると、後ろから声を掛けられた。

 

「あの二人は何をしているんだ?」

 

呆れたような視線を二人に向けながら聞いてくる。

 

「ん?神崎君か、おはよう。さあね、いつもみたいに遊んでるだけじゃない?」

「ああ、おはよう、まあ偶に見る光景ではあるか。」

 

一拍おくと、また話し始めた。

 

「それで今日は偵察に行くということで良かったか?」

「うん、帆波さんとCクラスに行くつもりだけど、神崎君も来る?」

「Cについては気になるが…いや、やめておこう。俺はBクラスの偵察に行くことにする」

「そっか、じゃあそっちは頼んだよ」

「ああ、任された。取り敢えず俺は顔を洗いに行ってくる」

 

そう言って神崎君は井戸の方へと向かって行った。そろそろじゃれ合いを止めるか…

 

朝の点呼を終え、そろそろ偵察に向かおうと準備をしていると、手にポテチとジュースを持ったCクラスの生徒がやってきた。

 

「随分と質素な生活をしているみたいだな。Aクラスの癖に節約生活か?」

 

開口一番、煽りとは。

 

「また何とも言えない挑発だね。Cクラスはポイントが欲しくないみたい。」

「俺らはお前らとは違って夏を満喫してるんだよ、お前も来たかったら来いよ、一之瀬。

龍園さんからの伝言だ。今すぐ浜辺に来い。このバカみたいな生活が嫌になる夢の時間を共有させてやる。伝えたからな」

 

そう言って、ポテチとジュースを見せびらかす様にしながら帰って行く。クラスメイトは怒りというよりも困惑しているようだ。

 

「どうやら、全てのポイントを使いリタイアする腹積もりらしいな」

「金田君をそのままにしている以上、その可能性が高いと思っていたけれど、それで間違いないだろうね」

 

問題は単にリタイアするだけじゃないだろうという事だ、どういう意図があるのか、それはきっとこれから見えてくるだろう。

神崎君と二人で話していると準備を終えた帆波さんがやって来た。

 

「じゃあ、行こっか」

「神崎君、Bクラスの方は頼んだよ」

「ああ、そっちもな」

 

神崎君と別れ、帆波さんと2人で森の中を歩いていく、そうしてCクラスの生徒が歩いて行った方向へ進んでいくと、森の出口があった。

そこを抜けた先の浜辺にはバーベキューセットやパラソル、チェアなどが設置され、果てには水上バイクで遊んでる光景も見られた。

Cは最初から移動せず、客船の近くにベースキャンプを築いたのか。

 

「おー、これは思い切ったことをするねー」

 

帆波さんもこの光景には素直に驚いている。

僕たちに気付いたのか、Cクラスの生徒が駆け寄ってきた。

 

「龍園さんはあちらにいます」

 

そう言って案内してくれる。本当に舎弟って感じだな。

 

「よう。来たのはAクラスか、歓迎するぜ。肉でも食べていくか?」

 

龍園君はビーチチェアに寝そべりながら言う。横に立ってるのは山田アルベルト君か。遠目から見たことはあったが、かなり鍛えられた肉体だ。やっぱりCは武闘派揃いだな、やはりCとだけは暴力の土俵には上がりたくないな。いや、Dの須藤君もかなり強そうだし、高円寺君も肉体凄いからなあ。Dも…となると、うちのクラスはそういう方面には不向きだな。

 

「クラスメイトのみんなに申し訳ないから遠慮しておくよ。随分と大胆な手を取るんだね、金田君が反対したのも納得かな」

「へえ、死んではいないと思っていたが、お前らの所で生き延びていたか」

「暴力行為は即失格だよ?」

「ああ、だが、それは被害者が訴え出た場合の話だ、あいつがそうするとは思えねえな」

 

龍園君はクラス内の内輪揉めは何の問題にもならないと主張する。

 

「金田君は私達のクラスで保護するけど、問題ないよね?」

 

敢えて少し不満げな感情を滲ませる。気付く人間なら気付く、そのレベルで良い。彼なら気付く。

 

「あいつがどこで何をしていようが構わねえよ、だが、良いのか?そんな安易に自分たちのクラスに招き入れてよ。なあ、木之原?どうやらお前は納得していないみたいだな。」

「そんなことないとも。クラスの方針には従うさ。それにわざわざスパイだって仄めかして良いのかい?」

「その可能性を考慮しないバカじゃねえだろ、俺としちゃ、俺に逆らったやつがのうのうと生き延びてるのも癪なんでな、別に放り出してもらってもいいんだぜ?」

「そこまで言うってことは、余計に金田君は白に思えるね、安心したよ。」

 

帆波さんが敢えて、そう言ってのける。

 

「つまらねえ判断だな、あいつが俺に泣いて許しを請う姿を見てみたかったんだが。」

 

本心からの発言っぽいな…性格悪い。

 

「悪趣味だなあ…」

「おいおい、お前も裏で暗躍して人を嵌めるのが好きな人間だろ?暴力事件の時、メールを送ってきたのはお前だな?」

 

急だな、虚を突かれた。これだから探り合いは苦手なんだ。すぐ、すっとぼけておく。

 

「メール?何のこと?」

「クク。まあ、良い。この学校は退屈しなくて済みそうだ。お前も坂柳も食い出がありそうな獲物だからな」

坂柳さんね…龍園君が彼女を食える機会なんて訪れないだろうけど。

 

「さて、それじゃあ僕達はお暇するね」

 

見たいものは見れた。ポイントの使い方、テント内の物資、見えてくるものはある。

 

「おいおい、木之原、折角、招待してやったのに、もう帰るのかよ。ならどうだ。一之瀬だけでも残っていくか?何なら俺と2人でテントの中で遊ぼうぜ?」

 

自らの手を自身の股間の上に持っていき、一之瀬さんの方を見た後、敢えて僕の方を見て、挑発してくる。

 

「生憎と、私には最高の彼氏がいるからね。間に合ってるよ。それに龍園君は好みじゃないなあ、ごめんね?」

 

そう言いながら帆波さんが腕を組んでくる。龍園君、ごめんね…

 

「お前らが付き合ってるってのは本当だったか。安心しろ。冗談だ。俺もお前みたいな底抜けの善人みたいなやつは好みじゃないからな。せいぜい最高の彼氏とやらと仲良くしてるんだな」

 

直接探りを入れて来ただけか。

 

「うん、そうさせてもらうよ。ベースキャンプに戻ろっか」

 

そう言って、帆波さんは僕と腕を組んだまま、歩き出す。

 

「じゃあね、龍園君」

挨拶は基本、一応さよならを告げておく。

ベースキャンプへと戻ろうとした時、龍園君は僕に向かって言った。

 

「木之原、女慣れしてなさそうなお前に忠告しとくぜ。そういう女こそ、重くて嫉妬深くて、粘着質なんだよ。もし今の彼女に疲れたら、俺に言えよ。もっと軽くて良い女を紹介するぜ」

 

流石にその言葉程度で引き裂ける仲じゃ無いんだがな。

それに帆波さんがそんな人な訳はないだろう。遊んでそうな見た目して女性を見る目はあまり無いのかもな。

 

そんな龍園君の有り難いアドバイスはすぐに忘れ、僕たちはベースキャンプへの帰路に就いた。

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