ようこそ一之瀬がハッピーエンドを迎える教室へ   作:スカビオサ

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3話(自己紹介は緊張するもの)

「新入生のみんな~、私は1年Bクラスを担当する星之宮知恵です。普段は保健医をしています。この学校は学年ごとのクラス替えが存在しないので、みんなとは3年間ずっと一緒です、よろしくね~、それと、今から1時間後に入学式があるけど、その前に今から学校のルールが書かれた資料を配布します。前から配っていくから後ろの人に渡してあげてね~」

 

こんな学校の先生だからどんなアクが強い人が出てくるかと考えていたが、親しみやすそうな先生だな。その点は一安心か。前から資料が回ってくるが、これ自体は入学以前に見たものと同じものだ。先生は資料が回り切ったのを確認してから話し始めた。

 

「この資料自体はもうみんなは見たことあるよね、この資料にも書かれてるようにこの学校では通称Sシステムを導入してます。これから配る学生証を使って、校内の施設を利用したり、商品を購入できます。学生証にはポイントが入っていて、そのポイントを消費する形になるから、注意してね。1ポイント=1円の価値を持っていて、お金と同じようにこの学校にあるものは何でも買えちゃいます。」

 

そう、このSシステムこそが現金が用いることのできない高育内において現金の代わりとなるものだ。ここまでは事前説明通りではあるが、学校にあるものは“何でも”買えるか。

初めての学校側の人間だ、それっぽい匂わせとかありそうだなと思っていたが、早速怪しいのが来たな。

 

学生証と携帯端末が配られる。 携帯端末は普通のスマホのような見た目をしており、使い方もそう難しい物でもなさそうだ。

 

「施設はこの学生証を通すか提示することで利用することができるから、学生証は忘れないようにね。それからポイントは毎月1日に振り込まれることになっています。今、みんなには10万ポイントが支給されているはずです。」

 

先生の発言を聞き、教室が一気に騒がしくなる。無理もない。たかが高校生に10万円をポンと渡すなど、どんな高校だという話だからな。まあ、このポイント自体は最初の生活準備金のようなものだろう。寮には一般的な家具は備え付けられているらしいが、生活の基盤を整えるためには足りないものも出てくるはずだ。

 

「ポイントの額が大きいことに驚いたかな?この学校は実力で生徒を測る、つまりこの10万ポイントは入学時のみんなへの評価だから遠慮なく使って大丈夫。ただこのポイントは卒業時には全て学校が回収するから現金化はできない点に注意してね。基本的に使い方は自由だからため込むも良し、じゃんじゃん使うのも良し。学生生活をエンジョイしてね!ただ学校はイジメには厳しいから、脅してポイントを譲渡させたりとかは駄目だからね~」

 

注意深く聞くと、どうにも意味深に聞こえるものばかりだな。

10万円は支度金のようなものだと考えていたが、そうではなく、あくまでも僕たちの現時点の評価に基づいているものだと…つまり成績が上がれば支給額が上がり、下がれば支給額も下がるということだろうか?

「さて、質問がある人はいる?」

先生はどこか期待するかのようなテンションで問う。

正直、聞きたいことしか無いのだが…周りのクラスメイトが味方という保証も無いし、聞くなら個別に聞くべきか、そう判断し、質問はやめておく。

 

「どうやら、いないようだし、先生は職員室に戻るね。聞きたいことがあったら、気軽に声かけてね、またね~」

 

どうやら先生の出番はこれで終わりらしい。高校生にもなると各自それぞれで交流して名前を覚えていくのが当たり前なんだろうか?このままだと神崎君の名前しか分からないのだが…

 

どうやらクラスメイトにとってもこれで終わりなのは予想外だったらしい。一瞬の間、静寂が訪れた。そこに差し込むようにして明るい声が響いた。

 

「もし、良かったらみんなで自己紹介しない?」

 

ストロベリーブロンドの髪を持つ美少女が立ち上がり、そう言った。

みなの内心の不安を解消するこの提案はすぐさま受け入れられ、自己紹介を始める雰囲気が出来上がった。

 

「じゃあ言い出しっぺの私からでもいいかな?私の名前は一之瀬帆波、中学では生徒会長をやっていたので、この学校でも生徒会に挑戦したいと考えてます、これから3年間よろしくね!」

 

自己紹介を終えると自然と拍手が沸き起こる。クラス内の雰囲気は悪くなさそうだ。

一之瀬さんの自己紹介を基準に各自やっていた部活、趣味などを織り交ぜながら自己紹介が進んでいった。窓際の前から順番に自己紹介をしていく。一先ずそれぞれの名前だけは覚えなくてはと、名前と顔を一致させることに集中していると、自分の番まであと数人になっていた。自己紹介を一人一人終えるたびに心臓がバクバクする。もう高校生だというのにこういうところは変わらない。情けない話だ。神崎君の自己紹介が終わり、自分の番がとうとうやってきた。

内心の緊張を誤魔化す様にゆったりと立ち上がる。行くぞ!

 

「僕の名前は木之原葵です、趣味は読書です、人付き合いは得意ではないですが、仲良くしたいとは思っています。これからよろしくお願いします。」

 

着席!フィニッシュ!う~ん30点!(甘め)

いや、仕方なかったんだ、中学は帰宅部で、アピールすることじゃないし、高校でも部活なんてする気も無かったから、部活については何も言うことが無いんだ。読書だって趣味って言えるレベルじゃないけど、入学早々、独りで本読んでるやつが読書趣味じゃなかったらおかしいだろって話で…

 

色々な考えが頭を巡る。冷静になったのは数人の自己紹介が終わった後だった。

聞き逃してしまって、クラスの半分近くの名前が分からない。結局、僕は目標とした最低限の戦果すら得ることはできなかったのだった。

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