ようこそ一之瀬がハッピーエンドを迎える教室へ   作:スカビオサ

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41話(体当たり最強!)

その後も僕たちは着々とプログラムを消化していった。

 

女子の綱引きは1勝2敗で惜しくも、敗北したが、障害物競走や二人三脚では安定した結果を残すことが出来た。団体戦は練習が難しいという事もあり、特に練習に取り組んだのが、この2種目だったため、練習の成果を発揮できたというところだ。

 

ここで大きかったのは、須藤君が障害物競争で鬼頭君を下したことだろう。学年別最優秀賞を争う強力なライバルが一人後退した。今のところ、団体戦は各クラス1勝1敗のため、イーブン。個人戦である100メートル走、ハードル競走、障害物競走で全て1位を取っているのは、現在、柴田君、神崎君、須藤君のみということになる。一つだけ2位を取ったとなると、僕、橋本君、龍園君、鬼頭君あたりだろうか。

 

女子の方だと矢島さん、木下さんは全て1位を取っている。やはり陸上部は強い。龍園君は漏れた情報を用いて、堀北さんや小野寺さん、神室さんと言った1位を狙える女子に確実に当て、得点を削いでいる。

 

次は騎馬戦だ。騎馬戦は1年女子から始まるため、僕たちは準備をしつつ、観戦している。

 

ざっくりと説明すると、騎馬は4人1組、各クラスから4騎馬作り、全部で16騎馬が存在することになる。1騎馬に付き、50点、各クラスから1つ選出される大将騎は100点持っている。

 

このルールは時間制限方式であり、3分間に倒した敵の騎馬と生き残った味方の騎馬により点数が決まる。保持している点数は相手を倒したときに獲得する点数でもあり、生き残った時に獲得できる点数でもある。

 

大将騎は得点が高いため、当然狙われることにもなる。そのため、敢えて運動能力が比較的低め(本当の最下位メンツは補欠要因とした)の生徒で大将騎を組み、そこを他の騎馬で守るという陣形にした。Dも同様の作戦であり、AとDで固まり、攻めてきた騎馬を一網打尽にする作戦だ。膠着状態になる可能性もあるが、その場合は流しても良いと考えている。

 

試合開始の合図が鳴る。

 

大将騎を中心に、2クラスで守りを固める。それを見て、BとCはまとまって攻撃を仕掛けて来た。伊吹さんの騎馬が堀北さんの騎馬を狙う。そこに続いて、多くの騎馬が堀北さんの方に向かう。一点突破。硬い布陣を相手にするなら、妥当な戦略だ。

 

帆波が周囲の騎馬に指示を出し、自分自身の騎馬も駆り出し、堀北さんの騎馬の方へと向かう。あくまでも堀北さんの騎馬を囮に背後から狙う形だ。堀北さんは優れた運動神経と武術らしき動きを用いて、2対1でも凌ぎ続ける。

 

救援に向かう帆波の前にBクラスの神室さんの騎馬が立ち塞がる。

 

「一之瀬、あんたのお陰で私は解放されたようなもんだけど、手心は加えない。容赦なく、いかせてもらうわ」

「私も負けないよ。綱引きでは負けちゃったけど、団体戦なら得意分野だもん。私一人なら勝てなくても、みんなとなら勝てる」

 

騎馬の俊敏さで言えば、神室さんの騎馬の方が優れているように見える。けど、帆波の動きに合わせて、騎馬が動くことで常に有利な位置を取り続け、攻撃することが出来ている。何度か攻防が続いたのちに、帆波が神室さんのハチマキを奪い取った。

 

この間に堀北さんは伊吹さんのハチマキを奪い取ったが、もう1つの騎馬にやられ、ハチマキを取られてしまった。そして救援に向かった騎馬がその騎馬のハチマキを背後から取り、かたき討ちを果たした。

 

点数的にもリードを取ったことで戦況は加速する。BとCが大将騎も動員して攻めてくるが、生じた数の利で迎え撃ち、女子騎馬戦は赤組の勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 

少し時間を置き、男子騎馬戦が開始される。

作戦は女子と同じだ。大将騎を守る布陣。ただ須藤君が入っており、平田君が騎手を務める騎馬と、柴田君、神崎君の運動神経抜群メンバーを馬にそして僕を騎手とした騎馬は攻勢に出る。どちらも身体能力が高いメンバーで構成されており、並みの騎馬1騎であれば、すぐに崩せる算段だ。

 

須藤君の騎馬は勢いよく、掛けていき、正面に居たCクラスの騎馬とぶつかり合う。須藤君は強烈な体当たりを食らわせ、騎馬そのものを崩壊させた。ルール上、体当たりは許容されているし、騎馬が崩れれば、その騎馬は失格だ。当然、点数は得られないが、相手の数を減らせるし、十分に戦略として成り立つ。

 

さらに須藤君が別の騎馬に強烈な体当たりを食らわせ、何とか、相手は耐えるも、敵騎手の意識が逸れた瞬間に僕が背後からハチマキを奪う。そこで僕たちを止めるため、BとCの騎馬がやってきた。Cの一つは龍園君の大将騎でもある。須藤君によって崩されるのを防げるのは、アルベルト君しかいない。必然、彼が出てくることになる。

 

そこで僕が龍園君の前に立つ。

 

「木之原か…」

「須藤君の下へは行かせないよ」

「ククッ、さあどうかな」

 

横から長い手が伸びてくる。とっさに弾き、距離を取る。

 

「鬼頭君…!」

 

当然、もう一つのBの騎馬が僕を妨害してくる。鬼頭君の運動神経が良いことは分かっていたが、手の動きが速すぎる。

須藤君は1つ騎馬を体当たりで崩したところで、龍園君とやりあっている。

 

「みんな、逃げるよ!」

 

鬼頭君とはやりあっても、まず勝てない。長い手とそれを扱う技術、今の一瞬で敗北を予感した。反射で弾けたからよかったものの、これは無理だ。

 

全力で走ってもらい、他の敵騎馬の下へ走る。鬼頭君が須藤君の方へ向かう場合は、その隙に他の騎馬を倒せばいい。

急に走ってこられて動揺している敵騎馬に体当たりをかまし、揺れているところで、ハチマキをすぐさま奪い取る。

 

「おい、鬼頭来てるぞ!」

 

とっさに頭を下げる。危なっ!

 

「次、葛城君のところ!」

 

そのまま葛城君が馬になり、戸塚君が騎手を務める騎馬へと向かう。せめて大将騎を殺して終わりにする。

途中で別のBクラスの騎馬が立ち塞がるが、大きく迂回して、避ける。

 

戸塚君に体当たり。体勢を崩し、そのまま、すぐにハチマキを奪う。次は鬼頭君だ。

 

「反転、全力でぶつかって!」

「おいおい!無茶させるな!」

「全く…」

 

少し前に走りつつ、回るように騎馬の向きを変え、速度に乗る。追ってくる鬼頭くんの騎馬に全力でぶつかる。

正面衝突。両騎馬は共に大きくバランスを崩し、崩壊する。

 

「痛え…」

「無茶苦茶だ…」

「ごめん!怪我はない?」

 

ざっと確認するが、どちらの騎馬にも負傷者はいなさそうだ。勝つためとはいえ、無理に動いたからな。胸を撫で下ろす。

 

改めて戦況を確認すると、残っている敵騎馬は龍園君とBクラスが一つだ。須藤くんの騎馬は龍園くんにやられてしまったらしいが、残っている6騎の内、4騎で龍園くんを囲んで、落とし、残りの2騎でBの残りを落とした。その際に龍園君も1つハチマキを取り、1つ騎馬を崩したが、何とかこちらが勝利した。  

龍園君のハチマキにはワックスが塗られていたらしいが、量も偶々、髪のワックスが付着しただけだと言い張れば、通ってしまうようなものであったため、これ以上、問題になることは無かった。

 

 

 

 

最後の200メートル走も特に波乱も無く、終了した。柴田君、須藤君、鬼頭君、そして僕が1位を取ったが、神崎君は橋本君との勝負で僅差の敗北で2位。ここで神崎君が首位争いから一歩後退する。ここで学年別最優秀賞はこの2人のどちらかの可能性が高いと言えるだろう。因みに全体だと団体も含め、全てにおいて1位を取っている南雲先輩が有力だろうな。堀北先輩については個人戦では全て1位だが、団体では1つ落としているし…恐らくそうなるだろう。

 

女子は陸上部が強いという結果だ。ただ200メートル走では、小野寺さんが木下さんを僅差で下すこととなり、一矢報いた形になる。帆波はどちらかと言うと、スタミナがある方だから、余裕をもって、1位を獲得できていたし、堀北さんは矢島さんに敗北したが、2位を獲得していた。

 

その後は上級生の200mリレーが行われた。

 

午前の部が終わり、結果が表示される。現状は赤組がそこそこの差を付けて優勢だ。推薦競技の結果によっては逆転もあるため、気は抜けない。

 

昼食の時間だ。各自、いつもの食堂で食べるなり、グラウンドで食べるなり自由ではあるが、その内容はどれも同じになるのではないだろうか。見るからに高級だと分かる仕出し弁当だ。生徒会で体育祭の運営に関わっているときから気になっていた。

 

この学校の良くない点の一つに、なんでも揃っているようで、何もかもあるわけじゃないという事がある。当たり前の事ではあるが、普通の学校であれば、移動に制限など無いため、近場に行きたい場所が無くとも、遠出をすれば行くことができる。しかし、ここはそうではない。そのため、高級弁当なんて食べる機会は無いのだ。しかも、無料だし、これを選ばない生徒の方が少ないだろう。圧倒的に。

 

クラスのテントで全員一緒にご飯を取る。弁当の他に汁物が欲しい人もいるだろうということで、豚汁を調理して持ってきている。運動は苦手だけど、少しでも貢献したいという女子によるサービスだ。暑い夏ではあるが、疲れからか、あるいはこの特殊な環境故か、食事が進む。

 

「この弁当上手いなー」

 

弁当に舌鼓を打っている柴田君を尻目に、神崎君とざっくりと今回の体育祭について話し合う。

 

「やはりCはBとDの情報を掴んでいるようだな」

「みたいだね、組み合わせから考えて確定だと思う」

「うちのクラスから情報が漏れていないのは幸いだが、Cの追い上げは苦しいものがあるな」

 

各クラスの得点で見れば、A、C、B、Dの順だ。

 

僕たちのクラスはとにかくアベレージが高い。しっかりと練習を積んできたこともあり、運動が苦手な子以外は入賞することも多い。また柴田君を筆頭に1位、2位を安定して取れる生徒も、他クラスと比べると多い。

 

Cはアベレージが高いという点は僕たちと同じだが、突出した生徒がいないことが挙げられる。勿論、陸上部の2人がいるし、アルベルト君もいるのだが、アルベルト君は走るのはそこまで得意では無いみたいで、上位入賞は安定して取っているが、1位は少なかった。龍園君自身は組み合わせを上手く操作し、1位を連発しているが、クラスメイトは組み合わせを操作できても、僕たちのクラスの動きが読めず、結局1位を逃すなど、Cは情報アドバンテージは大きく、平均的な点数は高いが、1位を取り切れないことも多い。偵察に力を割いていた分、僕たちと比べ、僅かに地力が劣るといった印象だ。あくまで走る能力と言うだけで、パワーだと勝てそうにないが。

 

Bは一部の突出した生徒が頑張っているが、それ以外はぱっとしない。もともと学力寄りのクラスではあるため、妥当な結果でもある。坂柳さんの分、点数が得られないのも痛いだろう。

 

DもBと似たような感じだ。須藤君という突出した生徒を抱えているし、他にも平田君、小野寺さん、堀北さんと粒ぞろいだが、平均がBよりも低い。幸村君や外村君、佐倉さんなどはワーストあるいはその一つ上という事も多く、運動が苦手な生徒が多い印象だ。上は本当に高いが、平均が低く、下も相当低いという極端なクラスだ。

 

やはりCが強いな。推薦競技は点数も大きい。ここで勝てるかが大切だ。

しかし、この段階から出来ることは無い。僕は頭を休め、適当に会話をしつつ、次の種目に備えることにした。

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