ようこそ一之瀬がハッピーエンドを迎える教室へ   作:スカビオサ

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5話(クラス配属の法則)

「すいませ~ん、少し聞きたいことがあるんですけど、良いですか?」

 

キャラを偽り、軽いような感じで、学食で山菜定食を食べている先輩に声を掛ける。いや、先輩かも判断は付かないが、初日から山菜定食を食べる人間なんていないだろう。()

 

「なんだい?見ての通り、今、ご飯を食べてるんだけど。質問なら他の人にしてくれないか。」

 

緊張したような声が返ってくる。

こんな人畜無害な後輩だというのに何故か警戒されているらしい。いや、僕も知らない人から声を掛けられたら、こうなるかもな…

 

「先輩は山菜定食が好きなんですか?僕も無料だということで食べましたが、あまり美味しいとは言えないですよね?ほらスペシャル定食とか豪華でいいじゃないですか?」

 

「悪いかい?僕は好きで食べてるんだ、放っておいてくれないか。」

 

すぐに突き放してくるな、どうみても好きで食べてるように見えなかったから声を掛けたんだが。とにかく話を続けたくないって感じか。極まった人見知りなのかね。まあ他にも人はいるし、その人たちに聞けばいいか。

 

「そうですね、食事中にすいません、迷惑料として5000ポイント払いますよ。次はスペシャル定食でも食べて下さい。」

 

「えっ、いや、後輩から貰うわけにはいかない。気にしてないから、どこかに行ってくれ。」

 

一瞬、期待したな。本当に金欠なんだな、可能なら端末を盗み見てポイント残高とか見れないかと思ったが。プライドか、それとも後輩から金を巻き上げていると思われるのを警戒したか。

 

「分かりました。じゃあ、これだけ最後に。先輩は何クラスですか?」

 

「…2-Dクラスだが、それがなんだ。」

 

「いえ、では失礼します。」

 

そう言ってその場から去る。結局、クラスしか聞けなかったが、得るものはあった。反応からしてSシステムについては緘口令が敷かれているのだろう、先輩から全て聞き出してしまえば、有利に立ち回れてしまうからな。ぼろが出ないように必死で後輩である僕を遠ざけた、とすると納得できる。極まった陰キャだってあそこまで拒絶はしない。僕が第一印象から悪すぎて、速攻で嫌われたとかでない限りは。クラスはDか、仮にクラス対抗なら山菜定食を食べる人は同じクラスに集中するはずだ。

もう少し聞いて回るとしよう。

 

午後3時ごろ、寮に帰宅した僕は慣れない会話での疲労を感じていた。自分がどう思われてもいい相手にはああやってガツガツいけるんだけどな~。それでも根がコミュニケーションに向いていないからか、無理をした反動が来る。

 

それでも収穫はあった。

ポイントはクラスごと、それは確定とみて良い。山菜定食を食べている人は殆どがDクラスだったところからして、Dクラスはみんな金欠なんだろう。仮にクラスごとにポイントが支給されているとするなら納得だ。

 

それとクラスには優劣がありそうということも分かった。山菜定食を食べているDクラスの生徒は2年も3年も同程度いたからだ。つまり今年は偶々Dクラスが微妙、と言うことではなく、Dクラスは成績下位が集められている可能性が考えられる。勿論2年連続程度ならおかしくはないのだが。

それにDクラスが金欠ということを理解した上で、山菜定食以外の定食を食べている人に話しかけ、何で山菜定食なんか食べてるんですかねと振ってやれば、明確に答えはしなかったが、Dクラスを馬鹿にするような雰囲気を発していたからな。じゃあ、先輩はAクラスなんですね?とあたかもAが一番上かのように聞いたら、不機嫌そうにBクラスだと答えていたが。

 

やっぱりA~Dの順なのか、と自分の能力に少し落ち込みもしたが、まあそんなものだろう、一番になれない。似合ってる。

つまり、支給されるポイントはクラスごとに決まっており、優秀な生徒からAクラス、Bクラスと配属されていくと。おそらくはクラス間での争いとなるだろう。争う理由は何なのか、決まっている。特権だ。希望する進学、就職先に応える。この特権を巡り、クラス間で争い合う。これがこの学校のシステムということだ。

 

ポイントを増減させる方法は不明だが、成績、素行が有力だろうか。個人であれば自分が気に掛けるだけで良かったが、集団ともなればそうはいかない。集団に呼びかける必要があるが、正直、自信が無い。自分なりに確信できる根拠はあるし、説明すれば理解はしてもらえるだろう。ただ名前も覚えられているか怪しいような人間だ、まじめに聞いてもらえるか、どうか。

 

一先ず、神崎君と情報を共有しよう。端末で夜、一緒にご飯を食べないかと誘う、勿論情報の共有もしたいと付け加える。

少し待つと返信が来た。どうやらOKらしい。約束を取り付け、それまでは少し仮眠をとることにした。コミュ障は会話をするとエネルギーを消費するんだ、回復しないとな。

 

どこでも見るようなチェーン店のレストラン前で待つ。流石に20分前は早すぎたか。こういう時、いつも早く来てる気がするな。とは言え、二度寝すると寝過ごしそうで怖かったんだよな。

 

手持ち無沙汰な状況を紛らわすように端末を適当に触る。誰かから連絡来てないかなとか。連絡先は1件だし、来てるわけないんだが。来るとしたらドタキャンぐらいだろう。そうして佇んでいると、横から声を掛けられる。

 

「やっほー、待ち合わせ?」

 

こういうときはすぐに振り向かない方が良いんだ、自分ではなく別の人に声を掛けている可能性もある。自意識過剰だと思われては恥ずかしいからな。

 

「おーい、木之原君?無視しないでよー」

 

どうやら僕に声を掛けていたらしい。といっても僕に声を掛けてくれる人なんていただろうか、そう思って振り向くと美少女がいた。

 

「一之瀬さんか、買い物帰りですか?」

 

シャンプーなど日用品が入った袋を持っているのが見えた。

 

「うん、木之原君は待ち合わせ?」

 

「はい、これから神崎君とご飯を食べる約束をしているんです。」

 

「そっか、そういえば昼も二人でご飯に行ってたよね。仲いいんだ?」

 

そんなとこまで見てたのか。視野が広いな。

 

「仲が良いと信じたいですね。まだ初日だけど現状、一番話しやすいとは思ってます。」

 

あっちがどう思ってるかは知らないけどね…それに話しやすいも何も、他とはまともに話していないが。

 

「じゃあ、私はお邪魔かな、もう帰るね、じゃあねー!」

 

彼女は空いた片手で手を振って、この場を去ろうとする。そうだな…

 

「待ってください!」

 

帰ろうとした彼女を引き留める。彼女ならば僕の悩みの解決策となり得るかもしれない。

 

「嫌でなければなんですけど、もし良ければ一緒にご飯を食べませんか?勿論神崎君にも許可を取る必要はありますが…」

 

「えっと…」

 

急にらしくもないやつが攻めてきて面を食らっているのかもしれない。僕もそう思うが、誘ってしまった事実は変わらない。攻め続ける。

 

「クラスについて話したいことがあります。今後のことを考えれば損はしないはずです。」

 

誠意をアピールするために極力目を見て、そう伝える。誠意が伝わったのかは分からないが、彼女は承諾してくれた。

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