ようこそ一之瀬がハッピーエンドを迎える教室へ   作:スカビオサ

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8話(クラスの委員長)

新生Aクラスはクラスの逆転に大いに沸いているが、今はホームルーム中だ。

こんなことで減点は勿体ない。ここは一つ増大した発言力でバシッと決めよう。

 

「みんな、ホームルーム中だよ。」

 

うん、一之瀬さんいつもありがとうございます。今回の件の立役者にそう言われては、クラスメイトも落ち着きを取り戻さざるを得なかったようだ。

 

「どうやら、この結果からして、みんなこのシステムは分かっていたみたいね。でも誤解があるといけないから、ちゃんと説明するわね。まず、この表が示しているのは各クラスのクラスポイントで、このクラスポイントがクラスごとの優劣を決めているの。クラスポイントを100倍した額がプライベートポイントとして毎月1日に支給されるわ。プライベートポイントというのは現金の代わりに使っているポイントのことね。みんなが4月の入学時、各クラスは平等に1000ポイント与えられたところからスタートして、5月このクラスポイントになった。Bクラスはクラスポイントを980ポイント残したことでAクラスの940ポイントを上回り、Aクラスに昇格した。ここもOKね?そして、この高育で卒業した際に得られる特権はAクラスにしか与えられない。つまり、特権を得たければAクラスで卒業する必要があるということね。後はそうね、このクラスポイントはテストの成績によっても影響を受けるわ、直近だと中間テストね。ざっくりとこんな感じだけど質問はある?」

 

どれも推測通りだ。クラスポイントという存在自体は初耳だが、理解するに何の問題もない。気になることと言えば…

 

「ポイントの減少の詳細を教えていただけますか?」

 

これもまた一之瀬さんだ。星之宮先生は一拍置いて答える。

 

「残念ながら詳細は教えることはできないの。でもみんながイメージしているような、授業の私語、居眠りといった学生に相応しくない態度が減点対象になるわね。」

「ではクラスポイントにマイナスはあるんでしょうか?」

 

今度は僕が聞いておく。今なら目立ったところで何も不思議ではない。

 

「ええ、Dクラスのことね。クラスポイントにマイナスは無い。見えないマイナスも無いから、ずっと0から上がれないなんてことはないでしょうね。勿論、素行や成績を改善した上でだけれども。」

 

Dクラスのことを話すとき、少し嬉しそうにするの、何なんだ。まあ、0ポイントなんて中々無いんだろうな。

質問はここで途絶え、次に4月末に行った小テストの結果が張り出される。

勉強を頑張った甲斐があったようで僕の名前は一番上に存在していた。

 

「木之原、95点ってまじかよ…!」

 

自慢げにしてると心証が悪くなりかねないので、顔を引き締める。決して調子に乗ったりはしていない。

すぐ下に一之瀬さんと神崎君が名前を連ねていた。二人とも90点か、明らかに難度が高い3問の内、1問は正解しているということだ。調子に乗っていられないな。平均点も高く80点を超えている。まあ、最後の3問以外は明らかに簡単だったからね。

これだけ明らかに作為があると次のテストは何かありますよって言ってるようなものだな。

まともにやっては解けない問題が大量とかありそうだ。

 

「今回のテストには無いけど、テストには赤点があって、仮に今回だと40点ぐらいね。もし赤点を下回ったら、即退学だから、中間テストも気を抜かないように。まあ、先生はみんななら乗り越えられると確信してるけどね。」

 

確信ね、まあ今回のテストのような難易度なら見た感じ、赤点になるような生徒はいなさそうではあるな。最低点でも60点はある。

問題は今回のような高難易度の問題ばかりの場合か。

 

「赤点は平均の半分ということで問題ないでしょうか?」

 

どこからか声が飛ぶ。質問が多いのは良いことだ。Sシステムに代表されるように学校のシステムは敢えて隠されている。勿論、質問しても答えが得られない場合もあるが、そうだとしても答えられないというヒントを得ることが出来る。とりあえず違和感を持ったところをつついてみるのはこの学校との向き合い方として正しいと言えるだろう。今回、学校側が盛大に騙し討ちを行ってきたことで、クラスメイトも警戒心を持っているようだ。

 

「うん。クラスの平均を2で割って、四捨五入した値が赤点のラインになるわ。このライン以上でないと赤点よ。」

「先生、他のクラスの点数は開示していただけないでしょうか?」

 

またもや一之瀬さんが切り込む。

 

「やっぱり目の付け所がシャー……違うわね、一之瀬さんは。もちろん他クラスの点数も開示されてるわよ。個別じゃなく、平均点だけだけどね。」

 

そう言って、星之宮先生は笑うと、もう一枚の小さな紙を張り出した。へえ、元Aクラスと同程度か、学業成績もポイントに関係するだろうという予測だったからな、勉強を頑張った人も多かったんだろう。

 

「もしかして、誰かが聞かなければ教えて貰えませんでした?」

「うんそうよ。だって教える決まりはないもん。聞かれて答えられることだったから教えただけって感じ?」

 

一之瀬さんの表情を見るに、この学校のいやらしさを改めて感じているんだろう。必要な情報は自分で集めるってのは確かに今後必要になってくる力ではあるのだろうが。

先生はニコニコと評するのがぴったりの表情をしながら、教室を退室していった。

その後、クラスの生徒たちは思い思いに雑談を始めた。

 

「にしてもさー。やっぱ下のクラスほどバカってことなんだなー。Dクラスなんてクラスポイントはもう0だし、今回の小テストもダントツで平均点が低いしよー」

 

柴田くんの意見に一部の生徒が賛同する。Aクラスになったこともあり、慢心が見られる。何せ学校の事前評価を覆したんだ、気持ちは分かるが、良くない傾向だ。

 

「確かに、今のところそう判断するしかないけどさ。本当にそれだけなのかな?」

 

一之瀬さんが問いかける。

 

「え? どういうことだよ一之瀬」

「もし本当に学力だけでクラス分けされたなら、下位クラスほど逆転は無理じゃない? 全ては努力次第だって言っても、背負ってるハンデは小さくなんてないもん。優秀な人間だけがAクラスに集まっているなら、ほぼ逆転は不可能だからね。気負って過ごす必要はないけど、この結果だけで気を抜くのはダメじゃないかな」

 

そこに神崎君も呼応する。

 

「俺も同感だ。DとAとには確かに明確な差がある。だが、学力だけの判断ではないだろう。事実、木之原は入試を首席で合格している。点数だけでクラス分けするなら間違いなくAクラスだ。」

「なるほど……確かに」

 

いや、首席合格なんて神崎君にも言ってないのに…何で知ってるのさ、星之宮先生が何か言ったな?

 

「まあ、僕に関しては面接の点数が悪かったりしたんだろうけどね。それに中学時代は交友関係なんて無いに等しかったし。」

 

持ち上げられすぎても、居心地が悪いので、手馴れた自虐を入れ込んでおく。

ただ僕はともかく、改めて考えると、一之瀬さんがBなのは気になる点だ。1カ月ともに過ごしたからこそ分かることだが、学力はトップクラスだし、運動能力も悪くない、協調性に関して言えば、学年でも一二を争うレベルだろう。中学時代は実はワルで、とかそういうのがあるのだろうか?

 

「それに今回、僕たちのクラスはAクラスへと上がりましたが、これも一之瀬さんたちの尽力あってこそです。3人がシステムに気づいていなければ、より多くのポイントを失っていた可能性が高いでしょう。決して慢心していい結果だとは思いません。」

 

浜口君か。実際、現Bクラスには総合力で劣っているはずだ。ポイントの差から考えても、有利を取れたとは言い難い。せいぜいが同格だろう。

 

「確かにな。じゃあ中間テストに向けて勉強しないとなあ。」

 

今回のテストでクラス下位だった生徒は不安を漏らす。

 

「今のところ、このクラスから赤点で退学者が出ることはないと思うけど、中間テストに向けて皆で勉強して平均点の向上を目指した方が良いと思う。どうかな?」

 

クラスの委員長からの提案があり、僕と神崎君にも協力が要請される。勿論、承諾する。

結果として僕たち3人がクラスの学力に不安がある生徒を各自数人受け持つこととなった。

それと今後に向けて、プライベートポイントを集約しようという案も出てきた。お金に関わることなので即決とはいかないが、一之瀬さんならば信頼できると言うことで、彼女にクラスの銀行の役割を任せる形になりそうだ。プライベートポイントは今後、武器として用いることになるだろう。その際、集約の手間を省けるのは大きい。

クラス全体が良い方向に動いている、そう感じていた。

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