作者の読み込み不足でした。申し訳ございません。
英雄の都オラリオ、そこに多くの冒険者がやってくる。
ある者は未知を、ある者は富を、ある者は名誉を、ある者は力を求めてやってくる。
何故オラリオが「英雄の都」と言われているか?
理由は簡単だ。
それは「ダンジョン」の存在故である。
正確にはモンスターがあふれでる穴がありそれに蓋をする形で「バベル」と呼ばれている塔が建造されているのだ。
『世界三大秘境』と呼ばれるものの一つに数えられているという。
そして、そこに『神の恩恵(ファルナ)』を受け眷族になった冒険者達が命をかけて挑むのだ。
「と言うのが大まかな知識だ。」
「はい。ありがとうございます。主様。」
「はあ、相変わらずエヴァは固いですね。」
青年な姿とバンダナが特徴的な肌黒な青年が説明し、エヴァと呼ばれた長い金髪をおそした騎士然とした美女が答え、長い白髪をなびかせた少女が嘆息した。
もし、彼らを表すならば両手に花状態のハーレムパーティーだろう。
「もうすぐ、オラリオです。検問どうします?」
「決まってんだろ。」
「ですよね。」
「俺らは『闇派閥(イヴィルス)』、悪党だぞ。」
青年はいや悪神は嗤い、白髪の美少女は背徳感に身をよじらせ、エヴァが確かな覚悟をもって同意を示した。
「まあ、どうせあそこを仕切っているのはゼウスとヘラだ。派手に行くのが正解だろ。」
「じゃあ、防壁ごとぶった切っちゃいましょう!」
「と言うわけだ。エヴァ。」
「やっちゃえ、エヴァ!。」
「分りました。抜剣します。」
その瞬間光が一帯を覆った。
それは一人の人間の行き着ける一つの極地。
竜狩りで名をはせた大英雄にしてとある国において希望と絶望の象徴となった光の奔流。
それを彼女はただ一柱のためのみに剣を抜く。
◆◆◆
オラリオは大きな変化の最中にあった。
ゼウス、ヘラの連合派閥による三大クエストの討伐。そして・・・全滅。
彼らは正しく英雄達であったが一匹の獣に敗れた。
黒竜によって。
それにともない、ロキファミリア、フレイヤファミリアへと代替わりが発生した。
しかし、それに伴い闇派閥の活性化が発生、その結果、暗黒の時代と言わざるを得ないほどオラリオの治安は悪化したのだ。
正しく人類の行く末に直結する闘いは日夜行われていた。
その日もいつも通りの殺伐とした日々が訪れていたが違った。
オラリオの憲兵、ガネーシャファミリアのメンバーは今日も日々悪化する治安と格闘していた。
彼らの仕事はオラリオに住む人々を守ることであり、彼らは正しく精強の名にふさわしい力を持ち、オラリオに住む人々からの信頼も厚い。
そんな彼らの仕事にはオラリオの関所とも言えるものの役割をしている。
その日も彼らは職務に従っていた。
「OKだ。次の方はこちらに!」
「あなたは何をしにオラリオに?」
「あら、ただの観光ですよ?証拠に荷物も少ないでしょう。」
「ん?日帰りか?」
「いえ、数日は過ごすつもりよ。何か問題でも?」
「安心して、お金はどうにかできるから。」
「そ、そうか。」
まれに見る美少女のため少々慌てていたが応答も問題なし。
「お金に問題無いなら、それなりに良い宿を紹介できますが紹介しますか?」
「あら、別に必要いりませんよ。後で友人も来ることになっているので。」
「そうですか。なら良かった。」
憲兵は安堵の息を漏らした。
「あら、オラリオで何か問題でも?」
「ええ、最近物騒な連中が活性化してまして女性一人で観光はあまり推奨できないんですよ。」
「へえ・・・。」
「!!」
その瞬間、憲兵達は飛び退いた。少女が明らかに不穏な空気を題し始めたからだ。そう今までに何度も感じた闇派閥と戦うような。
憲兵の行動は早かったすぐに武器を構え臨戦態勢を取る。周りの者達も示し合わせたように武器を構えた。
「嬢ちゃん。止めときな?」
隊長格の男が前に進んで来た。
「まだ、何もしていないのだけど?」
「そうはいってもなあ。こんな物騒な殺気を放てる娘を、ハイどうぞとオラリオに入れるわけにはいかんのよ。」
「失礼な憲兵さん。仕方ないでしょう、そもそもどこに安全で安心に旅ができる所があるというの?これぐらいで怪しまれたらたまらないわ?」
「たしかにな。だがなあ・・・。嬢ちゃんみたいな奴と俺は何度もあってきたのよ。こんな囲まれた中で笑っていられるような奴は世間知らずなアホか、自分の力に酔いしれてるアホ。と、とびっきりの頭のいかれたクソやろうだ。」
「てめえ。今まで何人殺してきた?」
「「!!」」
周囲の警戒が一気に跳ね上がった。
「ふふ、本当に失礼。」
少女は普通に答える。しかも笑顔を崩さずただ淡々と。いや、嘲笑うように。
「てめえは入れられねえ。とっとと帰んな。」
「嫌だと言ったら?」
そこからは早かった憲兵達は一斉に飛びかかり彼女を取り押さえた。
「おい!こっちは捕縛した!こいつの仲間がやって来るらしい。警戒を怠るな!」
「ふふふふ。」
「何が可笑しい。」
「条件達成。ただそれだけよ。」
「何?」
「早く逃げた方が良いわよ。」
その瞬間光の奔流がオラリオの前にほとばしった。
「だって、英雄の一撃がやってくるんだもの。」
◆◆◆
瞬間フィンの指が大きくうずいた。
「ロキ!何があった!」
「見てみい!フィン!壁が吹きとんどる!」
「何!?」
「すぐにリヴェリアとガレスを向かわせろ!やったのはどこのファミリアかすぐに情報を集めろ!」
「「「はい!」」」
ロキファミリア団長にして勇者の二つ名をもつフィンが迅速に指示を飛ばす。
「一体誰が?」
「いや、それよりも対応を急がなくてはオラリオ自体が崩壊する。」
「ロキ!」
「もう、やっとる。フレイヤやろ。」
「ああ、オッタル達が必要だ。」
「フィン。遊びやないちゅうことか?」
「ああ。」
フィンがうずきの収まらない指をさすりながら頷いた。
その瞬間、轟音が響いた
「もうすでに行ったようやな。」
「あれは・・・オッタルか。」
「あのフレイヤとフィンが同じ判断をしたちゅうことかあ。」
「ああ、そういうことだ。」
「ロキはフレイヤの所に行っていてくれ、間違い無く闇派閥が動く。護衛はつける。君と神フレイヤが落ちればオラリオは終わりだ。」
「せやな。」
己の見いだした傑物を楽しそうに見つめながら道化の神は笑う
そして
「フィン。」
「何だ?」
「気いつけてなー。」
いつも通りに送り出す。
「分っている。行ってくる。」
彼も普通に答えた。出会ったころから何も変わらない。後は己と己のファミリアを信じて挑むだけだ。
そして彼は己の槍をもって駆けだした。
◆◆◆
「派手にやりましたねエヴァ。」
一仕事を終えたクロは楽しそうに崩れるオラリオの壁を見ながら嗤っていた。
「まあ、上等だろ。何せ相手はあのゼウスとヘラの眷族どもだ。これぐらい挨拶にしかなんねえよ。」
「それほどなんですか?」
「当たり前だろ。あいつらの格は正しく天界一だ。そんなやつらが選んだ者どもが普通なわけがねえ。」
彼らも既に臨戦態勢、喧嘩を売ったのはこちら側だ。もう引くことはできない。己の目的を果たすためこちら側もやり抜くのみだ。
「さて、ここからは正面衝突だ。」
「本当に上手くいくのでしょうか?」
「失敗したら失敗したで逃げるだけだ。」
あっけカランとした態度で彼らは雑談を始める。
「というか。あいつが本気になれば数の差なんてあって無いようなものだ。」
「まあ、そうなんですが。」
その瞬間、爆風が響く。
「あ、今衝突したっぽいですよ。」
「来たか?」
「はい。男が一人突っ込んできます。他にもちらほらと。」
「やっぱりか。だがここが正念場か。あいつらを交渉の席に付けたければ実力を示さなきゃ話にならない。」
「さすが、オラリオ。それにしても実力主義かあ。私、絶対に落第ですね。」
「あくまで交渉が目的だがな。まあ大丈夫だろ。」
「じゃあ。俺も行くわ。」
「がんばっていくださいねえ~」
「おまえもなあ~。」
青年の見かけをした神もついに闘いのリングとなったオラリオに足を踏み入れた。
「さあ、地獄の始まりだ!」
どこまでも残酷に、どこまでも冷酷に、彼にとって悪とは自分そのモノ。どこまでも己の欲求に従って子供たちの抵抗を楽しむ。
それが彼の愛し方だから。
◆◆◆
女は駆ける。風のごとく、そして正しく自分達を撃滅せんとする者達に抗い己の意思を貫くために。
「告げる。我が祖国の盾にして剣よ。打ち鳴らせ我が主の勝利のために。我が同胞の祈りをここに。約束はついに果たされる。」
詠唱と共に彼女には多くの武器が付き従う。その中から彼女は愛剣を選ぶ。
「” ”」
それはもう失われたもの。されど彼女の中に確かにあるもの。ありったけの力を込めて騎士は全てをなぎ払う。
彼女は闇派閥になることを選んだ。
それがどれだけ罪深いことだったとしても。
彼女を救ったのは間違い無くその悪であったから。
彼女の罪は許されない。されどもう彼女は揺るがない。
例えこの先が地獄だとしても、それでも助けになりたい「神」に出会えたから。
大英雄 エヴァ・リンクスは「アンリマユファミリア」の団長なのだから。
「出てこい。ゼウスとヘラの眷族ども。さもなくばオラリオはここで私が潰す。」
「そうか。」
「!」
その瞬間、轟音と共に一人の男、いや一匹の獣が現れた。正しく精強さと重さをもった正しく最強の一角が姿を現した。
「貴様がゼウスとヘラの眷族か?」
「違う。奴らはもういない。」
「・・・何?」
「だが、俺がいる。女神の命により今から貴様を葬る。」
「・・・そうか。」
エヴァはもたらされた情報から自分達がひどい勘違いにあっているのだと理解したが目の前の戦士をどうにかせねば自分の立場もない。何より壁を吹き飛ばした手前引くに引けないのだ。
「行くぞ!」
「来い!」
もう既にやけになった女と現、オラリオ最強の男の闘いが始まった。
「さてと、俺もやりますか?」
「あら、何をするの?」
「来まってんだろ。地獄を作るんだよ。」
「そう。あなたが・・・。」
「ん・・・。てめえは!?」
「あなたを相手にするんだもの。私が出るのは自然な事でしょ。アンリマユ。」
「そりゃあそだな。アストレア。正義の女神。」
「ここでやり合うのか?」
「ええ、あなたを止めるのは私の役割だもの。」
「そりゃそうだな。」
「ところで、ゼウスのじじい達知らね?」
「あら、知らないの?彼らはもういないわ。」
「いない?」
「ええ。黒竜に敗れて、全滅したわ。」
「え!?」
「えってまさかあなた知らなかったの?」
「え、ゼウスとヘラいないの?ていうか負けたの?じゃあ黒竜は?健在?まじかあ・・・。」
「あら、本当に知らんかったの?」
「・・・・・。」
「というかそれが目的で壁吹き飛ばしたの?」
「・・・・・まあ、その、なんだ?・・・すまん。」
「すまん。すむわけないでしょう?」
女神の後ろからゴゴゴと怒気が吹き出ていた。
「だよなあーーー。」
まさかの大前提から違う。というか、もう既に戦う理由自体、根元からなくなってしまっている。だがもう既に帯剣し、怒りが爆発している女神が目の前にいるのだ。ここからは悪の神と正義の神の闘いに他ならない。さて、どうしたものかと思いながら、男神はナイフを女神は剣を抜き駆けだした。
◆◆◆
オラリオの中央広場では一人の白髪の少女が歌っていた。だが周りの様子はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。冒険者も一般人も発狂し、美しい広場は崩壊していた。そこにオラリオ随一のヒーラーが駆けつけた。
「これは一体?」
あまりの自体に駆けつけた者達は唖然としていた。
「歌をきくなあ!!」
「!!」
歌?と疑問に思った束の間、さらに絶叫が響く。そして最高のヒーラー、アミッド・テアサナーレはその意味を理解した。確かに歌だ!歌が聞こえる!
アミッドは理解した後すぐさま服を裂き簡単な耳栓を作った。幸い歌の音量はたいしたことが無い。恐らくこれはマーメイドの歌と似た攻撃だと判断した。
「あら?あなたたちは聞いてくれないの?」
「あなたこそ今すぐこんなこと止めなさい!!」
「もしかして、あなたがゼウスとヘラの眷属?」
「!!違うわ。」
「そうなの?その人達どこにいるか知ってる?」」
「知ってるも何も。もういないわ。」
「え?」
「彼らは黒竜の討伐に失敗して全滅したわ。」
「本当?」
きょとんとした少女の反応にアミッド達は瞠目した。
「・・・まさか。本当に知らずに来た?」
「・・・そうね。」
「な!!」
「・・・・。」
「・・・・。」
無言の間がお互いの間を占めていた。
「・・・やってしまったことは仕方ありません。」
「仕方なくなんかありません。今すぐ止めなさい。」
「・・・お断りさせて頂きます。」
妖艶に微笑みながら少女は告げる。
「だって私達は『悪』ですから。」
「そうですか。なら力ずくで行きます。みなさん!精神攻撃は私が無力化します!どうかあの少女の捕縛を!」
「私の呪いを無効化?」
「私はできますよ?」
「・・・・あはははははははあはっ!」
「あなた一人で!!世界を呪うこの私に!?」
「無理にきまっているでしょう!!」
その瞬間呪いの出力が上がったアミッドも応戦するが
「っな!?」
量が違う。出力が違う。浄化が防壁がもたない!!
「私は世界を呪い、破滅を願うものですよ。」
「世界を救えないあなたが勝てる訳ないでしょう?」
聖女はあらん限りの力で破滅の魔女の歌に抗った。
◆◆◆
オラリオの崩壊した城壁、その近くで多くの冒険者がその闘争に唖然としていた。あの猛者が名も知らぬ者に圧倒されていたからだ。
「これは・・・。」
「・・・まずい。」
「すぐに救援を!」
「無理だ!!」
「近づけない。」
オッタルと謎の侵入者の闘いは正しく死闘だった。だが、この自力の差は・・・。
「間違いない。」
「レベルに差があるな・・・。これは・・・。」
リヴェリアとガレスはそう結論づけた。
「いくつぐらいだ?」
「少なくとも2ランク。」
「つまり・・・。奴はレベル8。」
「それもレアスキル持ちだなあれは・・・。」
オッタルが押されている一番の理由にして、敵が一撃たりともオッタルからの攻撃を受けていない理由は不可思議な盾の力にある。
「ちっ、あの野郎、遊ばれてんじゃねえぞ!」
アレンからの檄とも呼べなくもない檄が飛ぶ。
オッタル当人は自分の不甲斐なさに怒りを感じていた。こちらは満身創痍。あちらは怪我すらしていない。いや、これは・・・。
「無駄だ。この盾はあなたには破れない。」
「何だと?」
「これは力が強ければ破れるようなものではないのだ。」
「・・・。」
「・・・味方を呼んではどうだ。」
「一斉に掛かれば私を倒せるかもしれませんよ。」
「貴様は俺の獲物だ!」
「・・・そうか。」
エヴァは周りを見渡し、そこにいるの皆このオラリオの中でも選りすぐりであると感じた。だが・・・
「お前達では無理だ。」
「それに、もう終わらせる。」
「「「!!」」」
その瞬間光の奔流がほとばしった。
「詠唱を止めろ!!」
フィンの声が響きフレイヤファミリアの第一級もロキファミリアの第一級も一斉に飛びかかった。
しかし・・・
「させると思う?」
すらりとした体系で二本のレイピアをもった美女がガレスの一撃を抑えた。
「わーい!りっちゃん参上!」
身長が小さい幼い幼女がアレンの最速の一撃を大楯で防いだ。
「団長の晴れ舞台です!」
シルクハットを被った吟遊詩人が音楽を奏でながらリヴェリアの魔法を相殺した。
「やって下さい団長。」
「かましてください団長。」
赤と青の全く同じお下げをした少女が白黒の騎士の連携を防いだ。
「がんばれ~。団長~。」
フルプレートの少女が4つ子の一斉攻撃を受け止めた。
「守ってやんだからちゃんと決めろよ。」
フィンの槍を同じ槍使いの女が雑に抑えていた。
「まあ、そういうことです。諦めて沈んで下さい。」
オッタル渾身の一撃を片手剣で受け流して見せた少女が宣告した。
「なっ!!」
そして
『アルス・マグナ』
その一撃は全員をなぎ払い辺り一帯を吹き飛ばした。
その日オラリオは敗北した。
大英雄の圧倒的な強さにオラリオの第一級冒険者はなぎ払われ、そして一人の術者による精神攻撃により多くの民間人と冒険者が戦意喪失。
ただ、
「いや~知らんうちに終わってたわー。」
「そうですね~。」
「なんかー。うちが勝ったぽいんだけどー?」
「だから?」
「終わりません?」
「なんで?」
正義と悪の戦いはお互いの眷属が来るまで続いた。
なお、アストレアファミリアはクロの被害に遭っていたためしばらく動けなかったもよう。