アンリマユファミリアがオラリオに襲来して1ヶ月が経過した。
アンリマユファミリアは依然として目立った行動は起こしていなかった。やっていたことは孤児院のアルバイトに看護のアルバイト、そして小さなお店を出したぐらいだ。しいて特出すべきことはその主神がすぐに尾行を撒くことだ。このオラリオという中でどこに居ようと彼につけた尾行は撒かれてしまう。その隙に何をしているかが問題点ではあるがすぐに見つかるためヘルメスファミリアも要観察に徹していた。
「か~これがあのファミリアの動向か?えらい善良やな~。」
そこにはフレイヤ、ロキ、アストレアの3柱が一同に会していた。
「何故私が呼ばれたかと思ったけどそういうことね?」
「せやで。特にそこのビッチ女神の悪評とかえらい広がり方しとるしなあ?」
そう言ってロキは優雅に紅茶を飲む美神に視線を向けた。
「他にも何かやってる匂いがプンプンしとるで~。」
「というと、あの病院騒ぎかしら?」
「はあ、私の眷族達はびっくりするぐらいボコボコにされてるわ。それはもうあのクソ神達以来ね。」
「せやけどあれ、絶対自分所の眷族が悪いやろ。病院に突撃って何をどうしたらそうなるんや?」
「私も困っているのよ。でも、私の悪評が許せないそうなの。それを止めるためって言われては愛の女神としては止めずらいわ。」
「・・・相変わらずあなたの眷族はあなたへの崇拝心が強いのねフレイヤ。」
「迷惑にも程があるやろ・・・。」
女神の談笑は続く中一人の男神がやってきた。
「やあ、麗しの方々。お求めの情報持ってきたよ。」
「かー、相変わらずいけ好かない奴やな。それでどんな感じや?」
「うん。何か仕込んでるね。名義になっている人物は不明だが、最近、元々アパテーファミリアが利用していた隠れ家が買われてたよ。それもけっこうな値段の張るヤツ。」
「へ~それで?」
「他にもそういう所買われてたけど、ここだけなんだか人の出入りが多くてね。やっていることは変じゃないんだが、どうにもきな臭い。」
「でも、それは許可無く買われたわけではないんでしょう?」
「ああ、しっかりと手続きを踏まれた上で買われている。だが、そこにあのが特権が使われていた。」
「確定やな。」
「けれど、そんな所で何を?」
「それが分からない。うちの団員に調べさせたがどれも普通の居酒屋の店舗を作ろうとしていること意外には不自然なものは無かった。」
「あら、確かあの神も店持ってたわよね?」
「ああ、調べたところ管理元になっているようだよ。アンリマユファミリアが。」
「店舗拡大にしては時期尚早。なら考えられるのは・・・。」
「まあ、公でも集まれる拠点の設営だろうな。何も不自然ではなく、何も変な事はしていない。俺達がどれだけ怪しいと踏んだところできっと関係者以外には意味を理解出来ない。恐らく、そういう類いのモノだろう。」
「なんだか、遠回りなやり方ねえ。」
「ああ、遠回りだがようやくあの悪神のやり方が見えてきた。」
「と言うと?」
「簡単に言えばグレーゾーンを攻めている。まあ、有り体に言えばアストレア様が動き出さないギリギリを攻めていると言うところだ。」
「・・・・・。」
「えらい怖がられ取るなあ。自分。」
「そういえばアストレアファミリアの子達と仲が良いっていう噂もあったわね。いえ、これは民衆の支持を得ようとしているというところかしら。」
「・・・なるほどなあ。」
トリックスターと謳われる神は嗤った。
「そこのビッチ女神の評判を落とし、そしてそこに対抗馬として自然と自分達が上がるように噂を広げる。それに加えてアストレアファミリアちゅう正義の味方との友好アピールで自分達の評判爆上げ。なかなか面白いことなっとるなあ。」
「とすると不味いな。彼に武力、だけでなく商売による経済でもオラリオが乗っ取られかれない。ただでさえ彼に闇派閥がまとめられている可能性が高い。このままじゃ下手したらオラリオそのものが飲み込まれるぞ。」
ロキ、フレイヤ、ヘルメスは事の重大さを重く受け止めていた。
「・・・アストレア、あなたはあの悪の神のやりたい事は分かる?」
「アンリマユのやりたい事?」
「そうだな。恐らく正義を司るあなたならアンリマユの行動を俺達より読み取ることができるはずだ。少なくとも俺達よりは。」
「・・・アンリマユがオラリオに来たその日、私はすぐにアンリマユに会いに行ったわ。彼が明確に人類の敵になったと思ったから。・・・でも違ったわ。」
「彼はただゼウスとヘラと合同して黒竜を討ちたいだけだった。」
「信じられるんか?それ?」
「彼は悪の総体。悪の化身、全ての悪の肯定者。悪の極地に至った超越存在。本来ならば即座に送還するのが妥当ね。」
正義の女神は言い切る。あの存在はどうしようもない災厄だと。
ただ、
「でも、きっとだからこそ、彼はどの神よりも子供達にとって優しい存在と言えるでしょうね。」
「どういう事や?」
「・・・それは正義の女神が見逃すということかい?」
「私は、あの神を見張り続けようと思います。きっとそれが私の役目でしょうから。それじゃあ私は戻らせてもらうわ。紅茶ありがとう、美味しかったわ。」
「か~これだから正義の聖女様は、自分のその偽善者気質、直した方がええんちゃうか?」
「・・・もし、私が正義の聖女なら、彼は
そう正義の女神は告げる。誰よりも悪を裁くことを成すはずの女神はそう言って静観を決め込んだ。悪神が真の意味で人類の敵になるその日まで。
◆◆◆
アンリマユファミリアの悪二人は大いにはしゃいでいた。
「主様~!結果は上々ですよ!」
「こっちもだぜ!」
「「ウェーイ!」」
アンリマユのコマ作り兼マネーロンダリングすなわち資金洗浄も回るようになったためお金も入ってきたのだ。加えてクロによってフレイヤファミリアの悪評も広がりアンリマユファミリアの地位も安定し始めたのだ。
「ヒヒヒヒヒヒ、俺達はついにこの都の頂点に立つ!」
「良いですね!良いですね!」
「あの、主様。」
「どうしたエヴァ?」
「私達が頂点とって何を為さるおつもりで?」
「何ってそりゃあ。ふんぞり返ってた連中を笑ってこき使ってやるんだよ。俺は美女、美少女を侍らせてやるよ。ヒヒヒヒヒ。」
「・・・そういうことでしたら私とクロが侍りますよ?」
「・・・それ言うか?普通?」
一見嫉妬とも捉えられるがエヴァはそういうことに執着することはない。
「主様のことは私達が命を賭して守りますが、そこまで接近を許せば私達では守れない可能性が出てきますよ?」
「「あっ」」
「忘れてました。主様、嫌われてるんでした。」
「後、アストレア様は静観を決め込んでだそうです。」
「・・・何か萎えた。と言うより俺達働き過ぎた。」
「クロ、ある程度の収益上がるようになったらこっちはしばらく放っとけ。」
「良いんですか?」
「ああ、でかい花火を打ち上げるにしても時間が掛けた方が面白いことになるからな。ここからじっくりやらせてもらうぜ。まあ、きっと他の奴らが我慢できず暴走するだろうからその時便乗しようじゃねえか。」
「それじゃあ、どうしましょうか?このままじゃ私達、ただの良い奴らになっちゃいますよ。悪のファミリアなのに。」
「まあ、何事も雑にやってもいいことはねえからなあ。しゃーないな。ちょっとぶらついてくるぜ!」
「私はバイトに行ってきますね!」
「私は主様と一緒に行きますよ。」
「看護のバイトは良いのか?」
「はい!今日は休みをもらっているので!」
「なら。デートとしゃれ込もうぜ!」
「はい!是非!」
「と言うわけだが、ノープランだ。」
「主様が行きたい場所に行きましょう。お代は全て私が出しますので!」
「お、おう普通逆じゃね?」
「いえ、主様にお金を払わせるのは眷族としてダメではありませんか?」
「お前本当に律儀だよなあ。」
そうして悪の眷族と神のデートが始まった。
「まずは、孤児院だな。お前がクロにクビにされた。クハハハ!」
「・・・笑わないでください!その私は子供と接する機会が少なくて・・・。」
「良い訳は結構!俺も商会での立ち上げでしばらく来てないんだ。今はどうなってるんだ?ってぐわーーー!」
「「「あー!黒いお兄さんだあ!」」」
「あ、主様!?」
来て早々悪の神は無邪気な子供達に押し倒されてしまった。
すると中から見覚えのある少女が様子見にやってきた。
「あら、アンリマユ様じゃない?」
そこには燃える赤髪をなびかせる少女アリーゼがエプロン姿で立っていた。
「アリーゼさん・・・。そのお邪魔します。」
「アリーゼで良いのよ!エヴァさん!それにフレイヤファミリアとのバトルウォーで活躍は知ってるわ!さすがレベル8ね!」
「いえ、あれはただ治療がまだ済んでいない方々でしたので万全だったらどうなったことやら・・・。」
「それでもきっとあなたが勝つわよ!きっとね!それに病院で乱闘なんて信じられないわ!」
「おーい!おしゃべり団長!さっさと戻ってこねえと焦げるぞこれ!」
中からライラの声が響いてきた何やら料理中だったようだ。
「あら、それは大変ね。すぐ戻るわ!」
そう言ってアリーゼはパタパタとキッチンに戻っていった。
「・・・で、クロの奴はどこに。」
「ええっと。あ、居ましたね。」
そこには子供に囲まれているクロがいた。
「みんな~!怪我しないように遊びましょうね~!」
「「「「はーい!」」」」
「普通に生き生きと働いてるな。」
「そうですね。悪巧みするよりも生き生きしてますね。」
「もしかして本当に天職だったか?」
「まあ、クロは子供大好きですからね。」
それはもうキラキラしながらクロは孤児院の先生をやっていた。
「クロ!こっちは任せて!おやつも出来上がったわ!」
「はい!ありがとうございます!アリーゼ!輝夜、手伝ってください。」
「分かっている!こら、抱きつくな。すぐ相手をしてやる。」
「あいつらも天職だろ。」
「まあ、正義の眷族ですからね。主様が色々したおかげで闇派閥がなりを潜ませていますから、今はボランティアに精を出してるのでしょう。」
「まあ、監視もあるだろうけどな。」
「・・・どうする参加するか?」
「いえ、主様。私達はデートしましょう。それはもうイチャイチャと。」
「イチャイチャデートか、さては自分だけ子供に好かれなくてショック受けたな?」
「ギクっ!」
「お前、意外と繊細だよな。ほら膝枕してやる。」
その瞬間、エヴァは己に出来る限りの丁寧さとスピードを盛って膝枕に食いついた。
ポワーー♪
「・・・そんなにかよ。」
そういって悪神は己の膝を枕にする眷族の髪をぶっきらぼうに撫でた。
「さて、気を取り直して次行くぞ!」
「と言っても、もうお昼ですね。どこで食べますか?」
「どこでも良いだろ?あれ、こんな所に酒場が・・・。」
その酒場の名は「豊穣の女主人」というらしい。
「いらっしゃいませー!」
そして看板娘の薄鈍色の少女が出てきた。
「・・・チェンジで。」
「えーそんなこと言わないでくださいよー。」
「主様。この方が何か?」
「・・・まあ、言わない方が面白いか。」
そう言ってアンリマユは大人しく席に着いた。丁度昼下がりなので冒険者よりも一般人の方が多いようだ。
「お、以外と値段も良心的だな。」
「はい!お昼時は一般人向けの値段設定なんですよ!夜は高くなって冒険者料金になるんですけどね!」
「ほー考えられてるな。」
「そういえばアンリマユ様も何か居酒屋を始めようとしているとか・・・。」
「おう。知り合いとの伝でな。まあ、まだ店主もいねえから皮だけだけどな。」
「商売敵になるかもですね!」
「そうだな。まあ大分先の話だし、そもそもここからそれなりに距離があるからな。」
そう言いながらメニューを見ながら淡々と話をする悪神。
「じゃあ、これ頼むわ。」
「私はこれで。」
「ご注文承りました!」
そういって街娘はキッチンに向かっていった。
「とても明るい方でしたね。」
「・・・何やってんだか。」
「主様?」
「いや、こっちの話だ。」
ちなみに料理は綺麗に食べるアンリマユだった。
「後は、何するエヴァ?」
「・・・そうですね。」
「・・・仕方ない。ここは王道に服屋にでも行くか?」
「!、かしこまりました!」
そういって一柱と一人の眷属はショッピングを楽しんだ。ちなみに全て料金はエヴァ持ちである。
◆◆◆
「ああ、買った、買った。こうやってみるとお前何でも似合うな?」
「あ、あございます!あ、主様に喜んでもらえたのなら嬉しいです!」
そう言いながら恥ずかしさが隠せないエヴァ・リンクスは顔を真っ赤にしたままだった。
「これが、美女の特権か・・・。正に服の方がお前に合わせてくるとは・・・。これでクロでも大分面白いことできのは確定だな!」
「どうでしょうか?あの子は黒を好みますから・・・。下手したらあの店主が・・・。」
「普通に先生してるときはあんなにゆるふわなのにな。勿体ない。まあ、その件は俺の方で命令しておいてやるよ。」
エヴァは共に犠牲になる少女を思い、黙祷した。
「・・・まあ良いだろう。気晴らしも済んだし、家に帰って何か面白いことを・・・」
その瞬間、悪神は一人の少女に釘付けとなった。正確にはその心に。
「おい、エヴァ。あいつは誰だ?」
「えっと、あの金髪の子供ですか?」
「ああ、あいつだ。」
「ええっと、私は余り詳しくないのですが、隣にリヴェリア様がいるので恐らくロキファミリアかと。」
その瞬間、悪神はどこまでも嗤った。
「フヒヒヒヒ!良いな!あれ、良いぜ!決めたぜ!エヴァ!」
その瞬間エヴァは絶対なる忠臣へと変わり主の前で膝をついた。
「はい。如何様にもお申し付けください。主様。」
「ロキファミリアからあいつを奪いとるぞ!」
この瞬間アンリマユファミリアの行動は決まった。
「は!至急、クロも呼びつけます。どうしますか?直接潰すことも可能ですが?」
「黒竜のためにあいつらは必要だ。だから、そうだな。ここは正面から奪いとろうぜ!」
「つまり・・・」
「
この日、最悪のファミリアがついにオラリオの頂点の片割れに敵として牙を向いた。
おまけ
「お客様、本当に美人ですね!こちらなんてどうでしょうか?」
服屋の店員はまれに見る美女に興奮していた。
「良いですね!良いですね!何でも似合いますね!今度うちでモデルやりませんか?」
「あ、あの、これは肌の露出が・・・。」
「良いじゃねえか。恥ずかしいモノじゃねえんだし。」
悪神も参加しそれはもうお着替え人形のように次々と服を着せられていくエヴァ。
「第一、俺に肌を隠しても今更だろ。」
「あ、主様だけなら構いません!で、ですがここには他の客も・・・。」
「よし!店主、こいつにもっとエロい服を!安心しろ何かあったら俺が弁償してやる!」
「いえいえ!これほどの逸材、私の方がお金を出させていただきます!」
そう言って店の倉庫と店を往復する店主はあらゆる服を持ってきた。
「次はこちらなどどうでしょうか?」
「!?」
「ほーう。バニーか。良いな・・・。良し!エヴァ!着ろ!」
「あ、あの、その、これはもうご、ご容赦を・・・。」
戦々恐々とするエヴァ、だが悪神に止めるという選択肢は無かった。
「なあ、これが素ってもはや芸術だと思わないか?」
「はい!恥ずかしがる表情、そして純粋な乙女だからこそ見せる恥じらいの仕草!パーフェクトです!こちらも創作意欲が高まります!」
「ヒヒヒヒ!お前も良い性格してるな!」
「ええ!私はそもそもこの都市には美人が多いと聞いて来たんですから!」
「美男美女にあらゆる服を着せて楽しむ!私は決して局部を出すような服は売りません。見せないからこそ服は彼らをより際立たせるのです!」
「良い性癖してやがるな。だが、惜しい!」
「!?惜しいとは?」
「簡単だろ。お前はこれまでどれだけの人数で試した?」
「ええ!それは、もう大勢の美男美女を・・・。」
「このエヴァのレベルをか?」
「!?い、いいえ!あなた様の眷族ほどの方は!方とは・・・!!」
店主は拳を爪が肌に刺さるほど握りしめた。どれだけ行っても自分は服屋の一経営者そんな者に絶世の美女が力を貸してくれる、ましてやモデルになってくれるなんてことはなかったのだ。
「ならばうちの美女と美少女を貸してやる。」
「ほ、本当ですか!」
「!?」
顔を青ざめるバニーガールエヴァ。
「ただし、これは契約だ。悪魔と契約を結ぶ覚悟がお前にあるか?」
「あります!自分はただ、美男美女に自分の服を着せたくてここに来たんです!」
店主の欲望があふれ出す。それを悪神は嗤った。
「いいぜ!契約成立だ。」
歓喜する店主。絶望するバニーガールエヴァ。そして何も知らず売られたクロ。
「クハハハハ!手駒一人追加だ!」
なお、悪神は悪神だった。
彼は、後に多くの者をいろんな意味で虜にする服を作り出すのだが、それはまた別のお話である。