悪の化身の英雄賛歌   作:wakawaka

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戦争遊戯1

 

 「戦争遊戯」神々の代理戦争

 

 これにより決定したことは絶対遵守される。

 

 

 

 晴れ渡る中オラリオにはとある男の声が響いていた。

 

『ついに!ついに!この日がやってきたーーー!!』

 

『今日!この日!この戦いを見れることに我々は感謝するべきでしょう!』

 

『さあさあ!まず始めに対戦するファミリアの紹介をしましょう!』

 

『暗黒期の始まりから我々を守り続けた英傑達!彼らこそ英雄の都の最前線!「勇者」率いるロキファミリアああああああ!!』

 

「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」」

 

『対するは!この暗黒期に突如にして現れた正に最凶ファミリア!その偉業はオラリオの壁の破壊に始まり、一度はこのオラリオを叩き潰した闇派閥!悪神率いるアンリマユファミリアああああ!!』

 

「「「「うおおおおおおおお!」」」」」

 

『今回の実況はガネーシャファミリア所属、二つ名は「ファイアーファイター」このカイセツ・ウルセーと!』

 

『私がするわ!』

 

『なんと!なんと!あのフレイヤファミリア主神、フレイヤ様だあああ!!』

 

「なにしてんねん!あのアバズレ!」

 

「フレイヤ様ーー!」

 

「素敵ーー!」

 

「やったーーー!」

 

 神々は特等席についてその開始を今か今かと待ち望んでいた。

 

『ではではフレイヤ様!どうか意気込みを一言!』

 

『そうね。強いて言えばどっちも負けて欲しいわ。』

 

『これは痛烈!だがしかし!アンリマユファミリアは闇派閥と名乗っていますがその辺はどう言ったお考えでしょうか?』

 

『気にしてないわ.ただ少し私の眷族達を病院送りにしてくれたけど余り気にしてないわ!』

 

『おおっと!これは突いてはならないところを突いてしまったようだああって、スミマセン、スミマセンだからオッ』

 

 ぎゃあ~と声が若干入ったが気のせいだろう。まさかオッタルされてるなんてね。無い無い。

 

『さて、気を取り直して私も実況をさせてもらうわ!私もこういうのは初めてなの。だから優しくご教授お願いね。』

 

 そしてボロボロのウルセーが返ってきた。

 

『は、はい!それでは今回の戦争遊戯を解説して行きます!ゲーム種目は旗取り(キャプチャーフラッグ)両陣営に立てられている砦の頂上にある旗を先に奪取した方の勝利となります!フレイヤ様はどう思われますか?』

 

『そうね・・・。旗取りである以上、ロキファミリアは戦いはできるだけ戦闘を避けて最短での旗取りを目指すんじゃないかしら。そもそも、正面からの戦いであればあの騎士一人に粉砕されるわ。』

 

「フレイヤ様が普通に解説して下さるなんて。」

 

「ありがたや。ありがたや。」

 

「どうせ、評判アップのためやろ。どこぞのファミリアに悪評ばらまかれてえらい事になっとったからなあ。」

 

『エヴァ・リンクスですね!彼女の力は正しく強力無比!ゼウスとヘラの団長クラスに匹敵すると言われています!』

 

『ええ、だがらロキファミリアは最短最速でこの旗を取れなければ勝機はないわ。まあ、普通ならだけど。』

 

『そうですね!普通なら!』

 

 美の女神、フレイヤは知っている。

 

 オラリオに住む者全てが知っている。

 

「勇者」のフィン・ディムナのそのファミリアの数々の偉業を。

 

 始まりはただの小人と遊戯の神だけの弱小ファミリアだった。

 

 だがそこにエルフの姫、ドワーフの豪傑というように仲間を増やしていった。

 

 その歩みは全く順風なんて言えるものでは無かった。時にゼウスの英傑にたたきのめされ、時にヘラの女傑に嘲笑われ、苦渋を舐めた数など数え切れない。

 

 されど彼らは立ち上がってきた。何度も何度も泥水をすすりながら前に進んで来た。次第に仲間は増え、その名はオラリオ中に広がり始めた。

 

 ゼウスとヘラが去った後は変わってこのオラリオを守り続けた。

 

 だからこそ、彼らは言われるのだ。「英雄」と。

 

『成る程!ロキファミリアもアンリマユファミリアもどちらも目が離せませんね!』

 

『さあ!開幕は間もなくだあ!両陣営は既にお互いに砦に構えている!私はもう既にドキドキが止まりません!』

 

『ええ、本当に楽しみ!』

 

 

◆◆◆

 

 この日、商人ティンゼル・アーチャーは己の運の無さを呪っていた。

 

「どうして!私が!こんな!ことに!」

 

「当たり前でしょう。あなたもアンリマユファミリアなんですから。ね、先輩!」

 

「くっ!先輩面した付けがこう回ってくるとは!」

 

「それにまあ、あなたの役割は最終防衛ラインなんですから。そんなに緊張しなくていいじゃないですか?」

 

「だってここに来るんですよね!?あのロキファミリアが!あの勇者が!」

 

「ええ。確実に来ます。というか、そうで無くては彼らに()()()()()()()()()。」

 

「どうして!あなたはそんなに堂々としてるんですか!?私よりヤバい所担当なのに!?」

 

「まあ、もし失敗してもエヴァがどうにかしますし、最悪オラリオごと吹き飛ばせば良いかと・・・。」

 

「・・・さすが、あれの眷族。イカれてる。」

 

「あなたもでしょう。ねえ、主様を囮に()()()()かましたロクデナシ先輩!」

 

 痛いところを突く後輩

 

「あの状況で一緒に捕まってれば私は絶対お陀仏でしたよ!お互い生きてるんですからノーカン!ノーカン!」

 

「そうですよ。クロ、彼女がいなければ私と主様は会っていませんでしたから。」

 

 久々の戦場にも関わらずこちらも全く緊張していないようだった。

 

「とんだ偶然奇縁もあったものですね。」

 

 ティンゼル意外のほほんとしながら時間が経っていく

 

「本当に!なんで!こんなことに!」

 

「さて、それじゃあ持ち場につきましょうか。」

 

「そうですね。」

 

 この二人は本当にいつも通り、ティンゼルは泣き続けた。こんなことに陥れた己の友人を必ず殴ると呪いながら。

 

「はああああ。まあ、負けたらロキファミリア行きなだけですし、今回は死ぬ危険無いですし、ましですか。」

 

「良いんですか?ロキファミリア行き?」

 

「・・・良くはないわよ。」

 

 ロキファミリアに行って自分達に何しろと?

 

 それが彼女達の共通の思いだろう。

 

「じゃあ勝ちましょう。」

 

「あなた次第でしょう。後輩その2。」

 

「誰が後輩その2ですか!」

 

「私は構いませんよ。・・・後輩。何だか久々です。」

 

 何故かその1は本当に嬉しそうに答えた。

 

「こっちは本当にお気楽なようで。」

 

「事実でしょう。誰がレベル8を倒せるんですか?しかもチート持ちの。」

 

「・・・そうですね。スキルにおんぶに抱っこでは団長失格ですね!」

 

「出たよ。こういう奴はこうやって知らないうちに強くなるんだよ。化け物め!」

 

「そうですね。それだけは同意見です。レベルが上がらないこっちの身にもなってください。」

 

「ひどいですね。私だって泣きますよ?」

 

ゴーン!

 

そして遂に試合開始のゴングが鳴り響いた。

 

「あ、始まるみたいですね。」

 

「ぎゃーーーー!」

 

「何をそんなに騒ぐんですか?」

 

「だって相手勇者よ!私達完全にアウェイよ!この後待つのは誹りと罵倒の嵐!このオラリオで一旗挙げたかったのに・・・。」

 

「・・・元々闇派閥の商人に信頼も信用もあるわけ無いでしょう。」

 

 気にすることが勝つ前提でその後の不幸なのだからこいつも十分可笑しいなあ。と思うクロ。

 

「それはそうでしょう。主様が選んだんですから。」

 

 エヴァはファミリアの人数が増えて本当に楽しそうだった。

 

「じゃあ、最後に円陣でも組みます?」

 

「円陣ですか?」

 

「良いんじゃない。たった3人だし。」

 

「私、初めてです!」

 

「私もですよ。」

 

「私は行商時代に何度か。」

 

 彼女達は和気藹々とお互いの肩を組んだ。

 

「かけ声はどうする?」

 

「決まっています。」

 

「主様が主様ですから。」

 

「はああ。あれのどこにそんなに惚れたのやら。」

 

「あなたもでしょう?」

 

「・・・ノーコメント」

 

「では、円陣組んで。せーの」

 

「「「我ら絶対悪なり!」」」

 

「じゃあ、蹂躙しますか!」

 

「物騒なことこの上ない後輩だなあ。」

 

「主にエヴァが!」

 

「他人任せか!」

 

 ここに悪のファミリアが動き出す。

 

 獲物は英雄の最先端。

 

 これに始まるは喜劇か悲劇かそれとも目を覆いたくなるような惨劇か。

 

 未だそれを知る者はだれもいない。

 

 だからこそ、

 

 さあ!神々よ!御照覧あれ!

 

 

 

◆◆◆

 

 ロキファミリア側の陣営では隊列が組まれていた

 

「さて、できる限りの準備を僕達はした。」

 

「後はそうだな。神々に祈りでも捧げるかな?」

 

「よせよせ!フィン!」

 

 ノアールが笑いながら答えた。

 

「うちらの神に頼んだ所で良いことある気なんてさらさらしないね!」

 

 バーラも応じる。

 

「冗談だ。」

 

 そしてそんな己の主神を思い浮かべ苦笑する勇者。

 

「僕達は最善を尽くしたし、策も十分だ。なら後は勝つだけだ!」

 

 フィンは隊列の先頭に立ち団員達に告げる。

 

「・・・一ヶ月前、僕達は叩きのめされた。それはもうコテンパンにだ!思わず記事を読んで僕自身笑ってしまったよ。だがまあ、悔しさの方が大きかったよ。」

 

「なにせたった2人に僕達は負けたんだ。これじゃあ恥さらし所か嘲笑ものだ。」

 

「だが、それじゃあダメだ。笑われっぱなしで折られる程僕達はお人好しじゃない。負けたらやり返す。それがこのオラリオの伝統だ。」

 

 そう。それでこそオラリオ。であり英雄の都たりうる理由。

 

「舐められたままでは居られない。」

 

 団員達に火がともる。

 

「天にいるゼウスとヘラの奴らに笑われるなんて受け入れられない。」

 

 武器を握る手が自然と強くなる。

 

「屈辱はここで果たす!ここで僕達は彼らを超えていくぞ!」

 

「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」

 

 ここにロキファミリアはリベンジマッチを宣言した。

 

 そして戦いのゴングは鳴った。

 

◆◆◆

 

『始まったーー!』

 

「行くぞ!!」

 

「「「「「「おう!」」」」」

 

『先陣を切ったのはやはりロキファミリア!』

 

『やっぱり序盤はスピード勝負のようね。』

 

 ロキファミリアから飛び出すは勇者率いるノアール、バーら、ダインの幹部達とそして足の速さを重視した面々。彼らが旗を取る要である。

 

 そしてここからは時間との勝負であることはロキファミリアもアンリマユファミリアも共通の認識であった。

 

 この旗取りにおいて最も重要なのは攻守のバランスである。

 

 攻城戦のような一方が守りに徹するようなものではなく、お互いに守るもの、奪うものが存在する以上攻守に分かれる必要がある。

 

 手段として守りに徹して隙を伺うという方法も存在するがその場合ロキファミリアはエヴァという超戦力故に、アンリマユファミリアは数の暴力を使われる故にこの方法は絶対に使えない。それをお互いに気づいているだろうとお互いの策士は気づいていた。

 

 相手が知略を用いてくる事を前提に駆け引きを行いそして出し抜かれた方が負ける。

 

 それこそがこのゲームの主題だ。

 

 試されるはファミリアの頭脳の勇気と知略。そしてファミリアの信頼である。

 

 

 

『おおっと!早くも!遂に遂に二つの陣営が激突します。西側からは騎士が単騎で独走!対する東側は勇者率いるロキファミリアの精鋭達か!』

 

『勇者がここで騎士を倒すのか!それとも騎士がここで勇者を下すのか!』

 

『ええ!ええ!見物だわ!』

 

「来ました!」

 

 ロキファミリアもエヴァを補足していた。

 

「数は!」

 

「1!エヴァ・リンクスです!」

 

「やはりか!作戦通りにやるぞ!散会!」

 

『あら、戦わないようね。ここは逃げに徹するのかしら。』

 

「む!」

 

「済まないが、あなたの相手は出来ないんだ。」

 

 そう言いながらフィンは何かを投げた。

 

 フィン以外の団員も何か地面に投げている。

 

「成る程。煙幕か!」

 

「最初から私に敵意もなく、眼中にもない。そしてこの霧の中誰一人迷う事無く切り抜ける練度。そして統率力、なによりその勇断、お見事。」

 

 エヴァはそう勇者を賞賛しながら自分もその作戦に乗った。

 

「では、こちらも先に行かせて頂きます。」

 

『おお!両雄激突を回避!激突を回避!』

 

『お互いに消耗を避けたということかしら。』

 

「行きましたね。団長。」

 

「ああ、一当たりはあるかもと思ったけど有り難い。ここで人数をある程度削られると思ったけど無傷で行けそうだ。」

 

 ここまで作戦通り。エヴァ・リンクスが攻撃側に回ることは十分に予想出来ていた。フィン側にとって最も最悪だったことはここでフィンの部隊が壊滅されることだ。

 

 最悪ここで戦闘が起きた時のための秘策はいくつか用意していたが、使わないに越したことはない。

 

「ですが、それはあちらもですね。」

 

 これで攻撃側はトラップでも無い限り無傷でお互いに守備側にたどり着くことになる。

 

「ああ、だからこそあの二人と戦闘向きの者達を残してきたんだ。」

 

「頼んだよ。ガレス、リヴェリア。」

 

 勇者は振り返ることなく疾走する。

 

 こうすることが何よりも彼らのためになると知っているから。

 

◆◆◆

 

『そしてそして!先に主陣営に行き着いたのはやはりアンリマユファミリアあああ!はやああい!』

 

『そうね、うちの子よりも早かったわ!』

 

『そして待ち受けるは断崖絶壁の岩!え!岩ああ!?』

 

『ええ。確かにこの位置に岩なんて・・・。ありがとう。無かったようね。ということは魔法で作り出したのかしら。』

 

『まさか、あのオッタルがカンペ代わりをするとは・・・。だが!しかし!ここは実況の場!情報ありがとうございます!そして!ロキファミリア!天然の要塞を作り上げたああああ!』

 

 

 

「・・・これは。」

 

 フィンと遭遇して幾分か後、エヴァの前には岩の壁が出来上がっていた。

 

「成る程。あなた達か?」

 

 そしてその岩の上にはガレスとリヴェリアの姿があった。

 

「まあな!」

 

「これ以上進まれると、砦での戦闘になるからな。」

 

「そうなると儂らとて全力で戦えん。」

 

「その方があなた達にとって良いのでは?」

 

「レベル8を相手に自ら枷をはめるのは単なる自殺行為だ。」

 

 リヴェリアもガレスも格上との戦闘には慣れきっていた。

 

「・・・成る程。ゼウスとヘラの眷族と相当やりあったそうですね。」

 

「フン!」

 

「嫌というほど。」

 

「一応言っておきます。降伏するつもりは?」

 

「「ない!」」

 

「そうですか。なら、力ずくで行かせてもらう!」

 

 先に動くはエヴァ。振り上げた大上段からの一撃で岩の壁を一つ切り裂いて見せた。

 

 エヴァほどの戦士なら岩を迂回するより正面から切り崩す方が早いし合理的だ。

 

 だが、

 

「第一陣!魔法一斉射!」

 

 切断された岩陰から魔法士が現れ、左右と上からその攻撃の雨が降り出した。正に数の暴力。

 

 ちなみに例えレベルの差があれど魔法攻撃は有効に働く場合が多い。

 

 理由は魔法の威力は込めた魔力の量に大きく左右されるからだ。レベルが上がる事でも当然威力が上がるが、込めた魔力の量次第では格上にさえ大きなダメージを与えられる。

そしてその属性のよってはその副次効果も期待できる。

 

 加えて今回はリヴェリアが存在する。彼女の持つ「妖精王印(アールヴ・レギナ)」は中でもレアスキルであり、効果はリヴェリア自身の魔力アビリティ強化と自分の魔法円の中にいるエルフの魔法効果の増幅、また周囲に拡散する魔素を回収して精神力を回復させる効果を持つ。よって彼女の周りにいるエルフ達は普段と比べて大きく実力を発揮できる。(と言うかハイエルフと一緒に戦えるだけでエルフ達は奮起している。)

 

 よって数の暴力そしてそこにさらなるバフを乗せることでエヴァ・リンクスへの包囲網を構築していた。

 

「間もなく、焔は放たれる。忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む。至れ、紅蓮の炎、無慈悲の猛火。汝は業火の化身なり。ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを。焼きつくせ、スルトの剣--我が名はアールヴ」

 

 そして都市最強魔道士と言われるリヴェリアの魔法は他の追随を許さない威力を持つ。

 

「レア・ラーヴァテイン」

 

 彼女の攻撃魔法が炸裂する。炎が立ち上り辺り一面は火の海と化し炎の竜巻が舞い踊っていた。

 

「範囲重視、バフも重ね掛けした。・・・これでどうなるか。」

 

 炎の檻となっていた竜巻が解けた。そこにはほぼ無傷なエヴァがいた。

 

「・・・確か、あなたには他にも氷の魔法がありましたね。威力重視で炎を選んだんでしょうがハズレです。私は炎に慣れている。」

 

「嘘!リヴェリア様の魔法さえもほぼ無傷!」

 

「それに慣れてるって一体!」

 

「俺達の魔法も一体どうやって!」

 

 そんな中一人のドワーフが間髪入れず突貫した。

 

「まあ、やはりこうするのが一番じゃな!」

 

 崖上から大上段の一撃がエヴァを襲う。だが、それも見えない盾に防がれた。

 

「明らかに何かの盾があるな。」

 

「スキルか魔法か攻略するしか道はなさそうじゃな!フン!」

 

「せあ!」

 

「ゴハ!」

 

 ついでにもう一撃を見舞ったが今度はエヴァが剣で迎撃。その一撃はガレスの力を凌駕し、ドワーフの大戦士を吹き飛ばした。

 

「やはり1対1では勝負ならんか。」

 

「分かっていたことだ。だが。」

 

「ああ、ここでの1分1秒がこの戦いを左右する。」

 

 そう。彼らの役割は所謂、時間稼ぎ。

 

 相手はエヴァ・リンクスという超級の戦士であり、全ての手札も不明な相手だ。

 

 ならば、無理に倒そうとはせず、ヒットアンドアウェイの持久戦を仕掛けこちらの攻撃部隊が旗を取るのを待てば良いと言うのが彼らの策であった。

 

「陣形維持!このまま包囲殲滅をする!相手は守りの間攻撃してきていない!隙を与えるな!」

 

 単純な暴力に対する数とその連携による対処。それにはレベルの差を覆せる魔法士の存在とその穴を埋められる力を持つ大戦士が必須だが、その両方がこのファミリアには存在する。都市最強魔道士の名を持ちエルフの王族のハイエルフたる「リヴェリア・リヨス・アールブ」そしてドワーフの大戦士「ガレス・ランドロック」。両雄ともこの都市が誇る英傑である。

 

 この二人がいる限りこの陣形が崩れることは早々あり得ない。

 

 そしてこの無限の連携を成すために多くの者が関わっている。

 

 マナを保つためのポーションを運ぶ者、そして、それを呑んでいる間その隙をさらさないために代わりに魔法を撃つ者。そして魔法が止んですぐ攻撃に出られる戦士達の存在そしてその傷ついた戦士を癒やすヒーラー。

 

 ロキファミリアの全員が己の役割を理解しそれに全神経を注いでいるそれにより生まれるのがこの無限の連携である。

 

 そしてこれが、ロキファミリアが二大派閥の一角であった理由である。

 

 この戦いにおいて相手を殺すことは敗北であるためその分、エヴァ側は手加減せざるを得ず、しかし、ヒーラーを多く持つロキファミリアは癒やしてすぐ戦線復帰できる。

 

 その結果が今エヴァ・リンクスという超級の戦士をここに縫い止めていた。

 

 だが、一見完璧な作戦であるこの策だが、穴がある。当然ガレスもリヴェリアもそれは承知している。それは・・・

 

「・・・これは、確かに凄い。これほどの連携。そして、私に対して全員が本気でぶつかってくる勇気。確かに都市を守ってきただけの事はある。だが!」

 

「「来るか!」」

 

「我、ここに願う。魂をここに精神をここに肉体をここに、 礎になるは我が大罪。

代償せしは我が同胞。」

 

 彼女の仲間を呼ぶチート魔法。この戦争遊戯では助っ人禁止だが、それに呼ばれるものが人間以外なら問題ない。つまりこの1対多でこそ成り立っている状況は彼女がもし、人間以外も呼び出せるなら簡単に覆る。

 

「詠唱を止めろ!」

 

「撃て撃て撃て!」

 

「俺達も出るぞ!」

 

 だが、彼女は揺るがない。魔法は最低限避け、戦士の攻撃は素手で受け流した。

 

「併行詠唱!」

 

「当然と言えば当然じゃがな!」

 

 攻撃、回避、詠唱、その全てを同時に行う一つの技。

 

 ガレスの攻撃は剣が使われるが他の戦士の一撃はただただ素手で捌かれる。そして、魔法も威力の小さいと思われるものを見分けて最低限で済ませていた。

 

「嘘でしょ!」

 

「まさか、今まで俺達の攻撃を分析していたのか!?」

 

「下がれ!私がやる!」

 

そしてリヴェリアの特大の魔法が飛んだ

 

「ヴァース・ヴィンドヘイム!」

 

 リヴェリアの最高の攻撃魔法。

 

 だが、彼女の攻撃は完全に防がれていた。

 

「な!まさか詠唱しながら盾を展開できるのか!」

 

「我はここに禁忌を犯す、我はここに声を上げる、天よ我の涙を持って行け、我の絶叫を持って行け――――告げる。汝の身は我が下に、我が願いをここに記す。誓いを此処に。我は常世総ての悪を敷く者。故にこれは我の願いなり。故に私はここに悪を謳う。」

 

「我が英雄よ来たれよ」

 

英雄再臨(オラトリオ・リ・アドベント)

 

 その瞬間彼らの前には総勢10名の戦乙女が現れた。

 

「「な!!」」

 

 これほどの数を呼ぶ?

 

『おおっと!これは有りなのか!?』

 

『今回の戦争遊戯では助っ人が禁止されていたはずですが・・・フレイヤ様?』

 

 美の神はがたっと立ち上がり瞠目していた。

 

『・・・そういうこと。ならばこれはルールに抵触しないわ。』

 

『それはどう言う・・・。』

 

『だって彼女達は・・・。』

 

 

「おい!これはルール違反じゃ無いのか!」

 

「そうよ!助っ人禁止でしょ!」

 

「参加メンバーはそっちは三人だって確認は取れているぞ!」

 

だが、それに対して腰にレイピアを携えた女性が答えた。

 

「関係無いわよ。」

 

「まあね。」

 

「そうね。」

 

「だって私達~」

 

「とっくの前に!」

 

「死んでいますから。」

 

 少女達は笑いながら自分達の正体を明かした。

 

 

◆◆◆

 

「どう言うことや、アンリマユ。」

 

「ん?何がだ?」

 

「あれはどういうことや!」

 

「だから言ってたろ。あいつらは死人。エヴァの魔法で肉体を得ただけの存在だ。だからあれはまあ、要するにエヴァの使い魔だ。何の問題もない。」

 

「「「「「「な!」」」」」」

 

「不思議に思っていたよ。エヴァちゃん達が来た時クロちゃんとエヴァちゃん以外のメンバーはあの商人を名乗る子だけ。その商人ちゃんもクロちゃん達と面識が無かった。それなら、あの子達は?あのロキとフレイヤの前に現れた少女達は?一体誰?どこから来た?」

 

「それがまさかの死体やと?まさかあの騎士は・・・。」

 

「死霊術士」

 

「ザッツ・ライツ!」

 

「つまり、ネクロマンシーっていう奴だね。」

 

「騎士騎士言ってたけど本当は死霊術士だったのかあ。」

 

「二つ名付ける前に知れて良かったあ!」

 

「いや!それどころじゃ!」

 

「だが一体どうやって?」

 

「天に昇った魂を引き寄せる事なんてその専門の神でも簡単には・・・。」

 

「なら、答えは単純やろ。」

 

 すぐに答え導き出した遊戯の神は答える。

 

「天に帰ってないんやな。その魂。」

 

 その罪深い回答を

 

「イグザクトリー!」

 

「はあ!?まさか!下界の子が魂を扱えるっていうのか!」

 

「そう!エヴァは魂を自分の持つ魔法領域に魂とその武装の記録を保管している!」

 

「嘘でしょおおお!」

 

「うわー、それはまた。」

 

「おっかない魔法・・・。」

 

「お前一体何発現させてんだよ!」

 

「教えろや。アンリマユ!どうやって魂をあの騎士は手に入れたんや!」

 

「ああ、あいつの場合はな、まあ、簡単に言えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まあ呼び出すときに相当量の精神力を消費するがな。」

 

「な!」

 

「ひえ!」

 

「こおわ。」

 

「・・・直接魂を得たやと?そんなもん・・・例え神でも許される事あらへんで!それに!人の子の魂を保管するだけで無くその体をマナで作り出すなんてそんなもの普通どうやっても不可能や!仮に出来たとしてもそんなのでたらめすぎる。そしてそれを維持やて?どんな反則した?アンリマユ!」

 

「してねえよ。そもそもエヴァの魔力量は常人を凌駕している。加えてあいつの精神性も他の奴には決して真似できねえ代物だ。あいつは本当に存在そのものがチートなんだよ。」

 

「せやかて、維持するには足らんやろ!」

 

「そうだな。常に人間の一人の形をマインドだけで維持させ、加えて戦うマインドも与え続けるなんてことは不可能だ。()()()()()()()()()()()()()()んだよ。」

 

「はああ!?無理やろ!魂だけで何が出来んねん!肉体も精神も再現出来たとして、その維持をし続けるエネルギーなんてどこに、も・・・・まさか!」

 

「クハハハハ!そう!あるだろ!言ったじゃねえかあいつは自分で殺した仲間の魂を奪ってるって!そう!魂は正真正銘あいつら自身のモノだ!なら、その魂を薪にしたらあ?」

 

「何やっとんねん!もし魂全部使い切りでもしたらそれはもう本当の終わりや!完全にこの世から消滅してしまうんやぞ!」

 

 正に悪魔の所業。魂を奪い、そして死後も己の魂をする減らしながら戦わせるそんなクソさえも劣る行為が実行されていることにロキは激高していた。

 

 だが、

 

「ああ?それがどうした?」

 

「「「「「「「なっ!」」」」」」」

 

「なあ?オレ、何度も言ったよな?」

 

◆◆◆

 

「死人だと。ならばここに居る貴様らはなんだ!?」

 

「私達は団長によって作られた?再現された?肉体に取り憑いているだけだよ?」

 

 よく分からないというようにフルプレートの少女は答える。

 

「「つまる所は魂だけでの延命をしているのです。」」

 

 青と赤のそっくりな顔立ちの少女達がただただ漠然と答える。

 

「魂だと?それも死者の魂を?」

 

「ええ。」

 

「バカな!エヴァ・リンクス!それは、死者への冒涜だ!死者は天に還る。それがこの世界のルールであり理だ。それをお前は自ら歪めたのか!」

 

 明らかになる、その騎士の魔法の真実。それに対してエルフの王族たる彼女は怒気を隠すことが出来なかった。

 

「・・・はい。私はそのルールを歪めてここに彼女達を呼び出しました。私の魔法はスキルと連結してます。簡単に言えば私は、スキルによって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のです。そして魔法でもって肉体をもって再臨させています。」

 

 恐ろしき事実がロキファミリアに突き刺さる。

 

「嘘だろ・・・。」

 

「何と酷いことを・・・。」

 

「死人を辱めるなんて!」

 

 団員達はその事実の恐ろしさに戦慄していた。

 

「仲間を殺した。・・・じゃと。」

 

 それはいかにガレスといえど例外では無かった。

 

「・・・ええ。私は、私の過去の身分は、ルミナ帝国、竜騎兵団、団長エヴァ・リンクス。」

 

 そして彼女はさらなる真実を告げる。

 

「そしてその国は、私自身が滅ぼしました。」

 

「「「「「「な!!」」」」」

 

「そこにある全ての命と共に私が全て終わらせました。」

 

「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」

 

 もはや、誰一人言葉を発することは出来なかった。

 

「・・・本気か?エヴァ・リンクス?」

 

 リヴェリアが再度問いただす。

 

 彼女自身ここに来てからのエヴァ・リンクスの行動をつぶさに観察していた。だが、どれも正に騎士の鏡であり、看護師としてもどんな患者にも分け隔て無く接する姿は素直に好感を覚えていた。

 

「ええ、事実です。」

 

 どうか嘘であって欲しかった。だが、その騎士の顔を見てリヴェリアは確信を得る。

 

 なにせ、その嗤い顔は本当にこの暗黒期に見続けた顔だったから。

 

「・・・見損なったぞ!エヴァ・リンクス!魂を弄ぶだけで無く、その剣で自分の故郷の国を民を殺し尽くしたと言うのか!?」

 

「ええ。ちなみに彼女達のエネルギー源は彼女達の魂そのものです。ですから長引かせれば彼女達は完全に消滅しますよ?」

 

 彼女はまるで何事でもないように淡々と答える。

 

「・・・・・・もう良い!」

 

「・・ああ・・もう語るな!」

 

 彼らはもう既に武器を掲げた。

 

 それこそ彼らが英傑たる所以。

 

 邪悪に屈せず、自らの矜持と共に己の得物を振るってみせる。

 

「「貴様らはここで塵も残さん!!」」

 

 エヴァは嗤う。嗤ってみせる。

 

「何を今更。」

 

 どうしようもない子供に言い聞かせるように

 

「最初から私は、いいえ、私達は言っていましたよ。」

 

 悪の神も悪の騎士も正直に告げている。

 

「俺達は」

 

「私達は」

 

 だから、いつものように彼らはまた告げる。

 

「闇派閥だ。」

 

「闇派閥です。」

 

◆◆◆

 

 

 悪は嗤う、嘲笑う、誰よりも凄惨に誰よりも美しくそして儚く・・・

 

 英傑達は怒気を抱いて己の武器を手にする。だが、普段の彼ら彼女達なら気付いただろうその矛盾に、彼女達が隠すその矛盾に・・・。

 

 そして、それを勘だけでほんの僅かだけだけ気付いてみせた少女が一人、この戦いを見守っている。

 

 どうか、どうか、誰もが笑って終われますようにと。

 

 そんなありきたりな願いを叶えるため少女は盤上で駒を既に指していた。

 

 魔女に授けたのは勇者の情報とその攻略法、騎士に託したのはその時間、勇者に掴ませたのは嘘を交えた悪の情報。

 

 魔女は笑った

 

「あなた正気ですか?」

 

 騎士は微笑む

 

「それでクロと主様が笑ってくれるなら。それに先輩も。」

 

 正義の眷族は誰よりも高らかに声を上げる

 

「さあ!英雄譚を始めるわ!」

 

 かつての道化がそうしたように。

 

 かくして少女の指した盤面は動き出す。

 

 さあ、賽は投げられた!

 

 

 

 




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