悪の化身の英雄賛歌   作:wakawaka

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戦争遊戯その3

 

 エヴァ・リンクスがロキファミリアを単身で相手している時、当然フィン・ディムナは全速力でアンリマユファミリアの陣地に向かっていた。

 

「全員急げ!リヴェリアとガレス達もいつまで持たせられる分からない!」

 

 ロキファミリアの出した作戦は電撃作戦である。

 

 つまり、速度こそが絶対に必要な要素。

 

 よって部隊は全員レベル3以上という精鋭部隊、人数は20名以上でありながらその統率力は他のファミリアの追随を許さない程だ。

 

 ちなみに速さのステータスが低いモノは早いものが背負って走ることでカバーしている。

 

「団長そろそろ例の歌の有効範囲に入ると思われます!」

 

「よし!全員すぐに耳栓用意!よってここからはハンドシグナルによる意思疎通となる!全員合図を見落とすな!」

 

 この部隊の絶対的な関門になると考えられるものは呪いの歌をもつクロという少女。

 

 聞くだけでアウトという中、フィン達はとある者達に呪いに対する耐性を持つ耳栓を秘密裏に用意させた。(とある苦労人はそれによりストレスで倒れた)

 

「・・・!目視確認!来ます!」

 

「耳栓装着!最速で攻略するぞ!」

 

「任せな!」

 

「どんとこい!」

 

 そして間もなく歌が響いた。

 

 それも広範囲にしかしそれはやはり聞くことで効力を発揮し、そしてこの呪いへの耐性をされた耳栓があればある程度は抑えられたようだ。

 

(よし!耳栓のおかげで近づける!)

 

 フィンもノアール達も勝利をを思った。

 

 だが、

 

「うふふふふ。まさか本当に私の呪いの対策を用意するなんて凄いですね!」

 

「でも・・・知っているわ、それ。」

 

 彼女の呪いの方法は歌である。そして歌である以上それが一曲だけであるということはありえない。

 

「・・・本当はこれ取っておきたかったのですけど仕方ありませんね。」

 

 そして、放たれるのは

 

  ーーーーー第二楽章 「絶叫」ーーーーーー

 

 「アアああああああああああ!」

 

 それはたった一音の歌。

 

 だが、その歌の本質は音の収束である。

 

 当然そんな声の使い方は喉に絶大な負担を掛けるが音の収束そして呪いの収束が起こる。そしてそれによって起こるのは、耐性に対する特攻である。

 

 

 

 

 

(・・・!指がうずいた!)

 

 フィンの勘は指に集中している。それが疼いた。それも危険信号!

 

『散開!』

 

 すぐに彼は合図を出した。

 

 それに即応する団員達。だが、正しく音にのってやってくる呪いは恐ろしい速度で到達する。

 

 最初にとある獣人が巻き込まれた。

 

「があああああ!」

 

 発狂、暴走。

 

「「「「「な!」」」」」

 

(耳栓の耐性が突破された!気付かれたか・・・・。いや、早すぎる。どうしてだ。この耳栓の事を知っているのはディアンケヒトファミリア、ヘルメスファミリア、そして・・・。)

 

「まさか!彼女達か!」

 

 

 

 

 

「ふっふーん!これこそまさにバチコーンだわ!」

 

「後でフィンにどやされても知らねえぞ、アリーゼ!」

 

「なによー。あなたも爆弾作りしてたじゃないライラ。」

 

「・・・仕方ねえだろ。こっちが助けてもらったのも確かだ。帳尻は合わせてやるよ!」

 

 

 

 

「おいおい似非優等生女神!何、手え貸しとる!」

 

「「「「「はぁぁ!」」」」」

 

 神々は驚きの声を上げる。

 

「あら、ばれちゃった?」

 

「当然やろ!あの耳栓対策の速度知らなきゃできへん!そしてそれ知ってる奴であいつらが信用すんのは限られとるわ!」

 

 呪いの歌特攻の耳栓その存在が知られれば対策されるのは目に見えている。

 

 だからこそ、その秘匿に対しては万全の対策が取られていた。そのため協力者も信頼できるものに限られていた。正義のファミリアであるアストレアファミリアもその筆頭である。

 

「そしてそれができるのは自分らの子ぐらいやろ!」

 

 だが、その秘匿は正義の眷族によって破られていた。

 

「でも、これはあの子達が決めたことよ。」

 

「・・・正義が悪に手貸してどうすんねん。何があった!?」

 

 そこで悪神も反応した。

 

「・・・っていうかおい!それ俺も知らねえぞ!」

 

「!?んなわけ無いやろ!」

 

「知らねえぞ!俺!そもそも、俺がその正義の神に協力頼む分けねえだろ!」

 

「あら?私一応あなたの保証人よ。」

 

「・・・・・・・そうだった。」

 

「・・・・・・・・・・・・・あ~。せやったわ。せやったわ。」

 

 ・・・やらかした。

 

 この神にとって世話をするということはそういうことだ。

 

 もし、彼が一線を越えていれば彼女は剣をもって悪の敵となるだろう。だが、それ以外であれば彼女は公平である慈愛をもって判断する。

 

「それにね。アリーゼ達は進んで手を貸していたわよ。」

 

「何でや。うちのアイズたんがそっちのファミリアに入るのに賛成言うんか!」

 

「・・・違うわ。そういう意味ではないのよ。多分。」

 

「ああん?」

 

「あの子達はずっと見ていたわ。その上であの子達は手を貸すことを選んだ。信じられる?あの潔癖症のリューもなのよ。」

 

 正義の女神はニコニコしていた。

 

「この意味が分かる?」

 

「分からんわ。」

 

「あの子達は信じたのよ。あの悪のファミリアを。」

 

「・・・・。」

 

「あの子達はずっと戦っているわ。中には救いようのない人もたくさんいただろうし、見たくないこともたくさん見てきたわ。」

 

 知っている。

 

 このオラリオの暗黒期においてその高潔な精神を持つ存在は極めて希有でありその存在そのものが今のオラリオにとってどれだけ光となっているのか。

 

「あの子達が戦う理由を知ってる?」

 

「いつか平和になるって。いつか皆が笑っていられる世界になるって信じてるからよ。」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

「輝夜とかライラは『そんなの幻想だ!』って言うでしょうけど。心ではいつかそうなって欲しいなって思っているわ。」

 

 それは夢物語。

 

 どこまで行っても人が人である以上不可能だろう。

 

 それでも・・・・

 

「だから、これはあの子達からの恩返し。悪を名乗りながらもこの都市に、子供達に笑い合える時間を、場所を作ってくれた人達があなたの眷族に何かをしてあげたいと思っていると判断したんだと思うわ。」

 

「・・・もし。逆やったらどうする気や。そこの悪神は絶対に悪党や。裏で何をやってるか分かったもんじゃない。そこにうちの眷族を差し出す言うんか?」

 

 カン!

 

 正義の女神はその問に対して腰に掛けていた剣を鞘ごと引き抜き目の前の床に力強く音をたてて神威を解放し宣言する。

 

「その時は私が責任をもって彼を天界に返すわ。正義の神の名にかけて。」

 

「「「「ひえ!」」」」

 

 正義の女神の宣言は神々からみても恐れるにたるものだった。

 

「・・・その言葉わすれたら承知せんで。アストレア。」

 

「俺は構わねえぜ。いつでも。」

 

「黙りなさい。アンリマユ。」

 

 どちらにしろ行く末は眷族達の手に握られている。

 

 

 

 

(アストレアファミリアか!)

 

 となるとある程度の策はあるだろうけど・・・・

 

「アぁぁぁぁアぁぁぁぁ!」

 

「ぎゃあああああ!」

 

「やえてくれえええええええ!」

 

 一人また一人と団員が発狂していく。

 

 だが、散開したことで被害はそこまででない。

 

 しかし

 

(不味いな。近づけばその分こちら側への精度も上がってくる。それに謎の構成員もいる以上これ以上は脱落者がでるのは避けたい。)

 

 現在の状況。未知の敵の存在。アストレアファミリアによる情報漏洩。

 

 それらを含めて決断を下す。

 

『僕が突っ込む。他は回避に専念。』

 

『了解!』

 

 故にここからは彼自身によるごり押し。

 

 フィン・ディムナのスキル勇猛勇心(ノーブル・ブレイブ)精神汚染の異常に対する高抵抗(レジスト)がつくスキル。そして魔法ヘル・フィネガスそれらをもって彼は抗う。

 

「もうここで切るしかないな!」

 

 最初からこの選択肢は可能性に入れていた。

 

 精神異常に対して特攻のスキルと魔法を持つフィンならばレベル1とされている彼女をたやすく戦闘不能にできると予測していたからだ。

 

 だが、その場合フィンは理性を失うためノアールに指揮権が移行する。

 

「アぁぁぁぁアアぁぁ!」

 

 そして当然、一人突っ込むフィンに向けて歌の呪いが放たれる、そして耳栓が壊される。

 

そして、

 

【魔槍よ、血を捧げし我が額を穿て】

 

 自らを凶戦士とする魔法が発動する。

 

 狙うは呪いの魔女ただ一人。激増するステータスによって彼はさらに加速し・・・そして。

 

 

 宙を舞った。

 

 

「「「「「「な!」」」」」

 

「私、目は良いですよ?」

 

 

 

 決断は迅速ノワールは即座に接敵を開始する。

 

 (不味い!見誤った!)

 

 レベル1ではなかった!?

 

 はめられた!

 

 そう思ったノアールは最速のごり押しを開始した。

 

「ノアール!先に行け!」

 

 フィンの口が動く。それをノアールは読むことが出来た。

 

 フィンは理性のある目でノアールに託した。

 

「く!行くぞ!お前らーー!」

 

 

 

 

「あれ?魔法切れるの早すぎません?」

 

「そうだね。僕自身どうして切れたか知りたいんだけど。まあ、多分君の呪いの副次効果かな?」

 

 発狂と発狂の魔法による結果とフィン・ディムナという規格外の英雄の精神力の結果、この結果に成った。

 

「まあ、でも君の投げ技にも驚いたよ。君、レベル1だろ。」

 

「そうですよ。」

 

「ははははははは!レベル1に投げられるなんてランクアップして初めてだよ。」

 

 完璧な投げ技だった。

 

 これは相手の動作を正確に捉えなくてはできない。

 

 だが、レベル1では出来ない。まず目で追うことが不可能だからだ。だが、技は成っていた。つまり・・・

 

 はははあはは!笑い声が響く。

 

「完璧に予測したのかい。僕の槍を。」

 

 魔女は嗤う。

 

「だけども君も無傷じゃ無いね。」

 

「ばれますか?」

 

「ああ。これでもレベル6相当の一撃を投げたんだ。ただじゃすまない。」

 

 第一級冒険者の一撃をレベル1の冒険者がカウンターでしかも投げ技を仕掛けるのは並外れた経験と技量が必要だ。タイミングがずれれば腕がねじれるか何も出来ずに吹き飛ばされる。つまり投げられた時点で奇跡だ。

 

 そしてそれらを成すには力の分散、逃がすことが出来なければならない。

 

 完璧に相手を投げる方向に。

 

「凄いな。君は。」

 

 素直な賞賛を勇者は魔女に送った。

 

「だけど君は痛みを感じないのかい?」

 

「いいえ。しっかり痛いですよ。ただこれ以上の痛みを知ってるだけです。」

 

 彼女の過去、人生に何があったかはフィンは知らない。

 

「成る程。」

 

 だが、フィンの中で彼女への闘争心が芽生えていた。彼女の完璧な投げ技そしてそれによる代償を感じさせない振る舞い。そして、第一級冒険者に負けずとも劣らない迫力に冒険者が何も感じない訳がない。

 

 だからこそノアールを行かせたのもある。

 

「じゃあ。やろうか。」

 

 ここからはただの闘争だ。

 

「アンリマユファミリア、副団長、クロ。潰してあげます。似非勇者。」

 

「ロキファミリア、団長、勇者、フィン・ディムナだ。やってみなよ。お嬢さん。」

 

 

 

 さあ、冒険を始めましょう。

 

 

 

 

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