『さあさあ!どちらも正念場!お互いに王手を掛けていると言っても良いのでは無いでしょうか!』
『そうね!思った以上に接戦で楽しいわ!』
『・・・おおっと!ここで遂にアイズ・ヴァレンシュタイン脱落か!』
『マインドダウンでしょうね。あんなにフルでエンチャント掛けてればそうなるわ。でも時間を稼いだという意味では間違い無く大金星ね。』
『おおおお!あのフレイヤ様からお褒めの言葉が出たあああ!』
「「「「「「「ちっっっっ!」」」」」」」
『エヴァ・リンクスも何故あそこまで付き合ったのかは分かりませんがここからは彼女も本気になるでしょう!』
『ええ。だけど・・・そう簡単じゃなさそうよ。』
『それは・・・・ってえええええええええええ!』
ロキファミリアの陣地の旗もアンリマユファミリアの陣地の旗も砦の頂上に掲げられている。ルール上お互いにその「旗に干渉」することは禁止行為だ。
だが、それ以外は可能だ。つまり・・・
『なんとなんと!ロキファミリア自身の旗の周りを砦ごと凍らせたああああ!』
『あくまで旗の入手が勝利条件だから時期稼ぎにはなるわね。』
『一体どうやって・・・・ってああああ!魔剣があんなに!』
「はああああ。これで借金確実やなあ。」
「そこまでしてどうすんだよ・・・。」
「アイズたんのためや!必要経費や!」
「ならため息だすなよ。」
「ああん!それはそれ!これはこれや!」
「・・・アンリマユ。あなたも借金あるわよ。」
「・・・・・・・。」
『なんとなんと!魔剣の攻撃の嵐がエヴァ・リンクスを襲ううううう!』
『・・・まあ、いよいよ佳境ね。』
砦にたどり着いたエヴァ・リンクスが見たのは氷の壁に囲まれた砦だった。
「これは・・・。ナインヘル以外にこれほどの魔法の使い手が・・・。いえ、魔剣の類いですか?なんともお金使いが・・・。う゛、私達もでしたね。」
将来のことについて頭を痛めたが、やることは変わらない。
「ひとまずはあれをどうにかしなくてはなりませんね。」
砦には最後の人員が配置されており全員が魔剣による武装がされていた。
「!発見!発見!エヴァ・リンクスです!第一陣用意!」
「まあ、そうなりますよね。」
「放てええええ!」
エヴァは己の盾のスキルを発動し防ぐ。
オラリオ1の後衛の魔法を受けてほぼ無傷のエヴァにとって問題にならない。
「目標、無傷です!」
「構わん!続けろ!」
リヴェリア、ガレスの足止め。アイズによる足止め。そして氷の檻によるさらなる足止め。
・・・・時間稼ぎ
葛藤、逡巡そして決意。
「防いでみなさい!ロキファミリア!」
私は悪だ。
そしてあなた達の敵である!
「我が剣よ答えよ・・・告げる。我が祖国の盾にして剣よ。打ち鳴らせ我が主の勝利のために。我が同胞の祈りをここに。約束はついに果たされる。」
「「「「!」」」」
「止めろおおおお!」
もう遅い。
「光芒一閃」
ここでエヴァが知らないことがいくつか存在した。
1つアイズに時間を掛けたにも関わらずリヴェリア達が追ってこなかったのは何故か。
2つどうしてロキファミリアはここまで折れずに時間稼ぎをしていたのか。
3つロキファミリアはジャイアントキリングで成り上がったファミリアだと言うこと。
まあ、ようするにロキファミリアは総じてーーー諦めが悪い。
「そうするだろうと」
「思っておったわ!」
「リヴェリアさん!ガレスさん!お願いします!」
「な!」
「一体なぜあなた達がそこに!」
そう、エヴァは知らない。
リヴェリアとガレスが地上から追いかけたのではなく魔剣によって風魔法で空から人間ロケットとして陣地に先回りしていたことを。
そしてそのための時間をアイズヴァレンシュタインが風魔法をもって隠しながら稼いでいたことを。
絶対強者の傲慢と油断、その僅かな隙を掻い潜ってみせたことを。
「レアラーヴァテイン!」
「ドワーフを!なめるなああああ!」
「な!」
二人はエヴァの攻撃の前に出てきた。
そして・・・
「「はあああああああああああ!」」
リヴェリアの魔法、ガレスの必殺の一撃がエヴァの残光とぶつかった。
「避けろ!死にますよ!」
思わず叫ぶエヴァ。
「・・・クハハハ!やはりそれがお主の素か!」
「そうだな。やはり根はお人好しのようだ。」
「「だが!」」
エヴァの斬撃は魔法と組み合わせると同時にスキルを発動することで間合いを殺し飛ぶ斬撃となり「残光」と彼らが呼ぶ技となっていた。
残光を躱す方法は残光による相殺、単純な力による相殺、高質力の魔法による相殺。
つまり同等かそれ以上の技をもって抗わなくてはできない。
だからこそこの二人の力と魔法。
作戦会議の時、
『彼女はきっと本気を出さない。』
『だから、ここまで来たら頼むよ。リヴェリア、ガレス。』
『はあ、人間ロケットの次は奴の残光の軌道を変えろ。か無茶を言うのお。』
『できないかい?』
『・・・我々を舐めてくれるなよ、フィン。』
『じゃあ、頼むよ!二人とも!』
『『はぁぁぁぁ。』』
正直安請け合いをしすぎたと感じている。
だが!
「そして何よりお前は私達を配慮して全力を出せない!」
「本気なら儂らを殺しかねんからのう!」
力を加減していることが判明している時点でこの結末は決まっている。
「・・・やられましたね。」
「これで!」
「延長戦じゃああああ!」
エヴァの残光は二人により軌道を大きく変えられ、ロキファミリアの旗へと吸い込まれる。
レベル8が生み出した残光。
全力の一撃ではない。だが、魔剣の氷などたやすく砕く。
そして・・・この戦争遊戯において相手の攻撃によって己の陣地の旗を灼いての規則は存在しない。つまりロキファミリアは全員の棄権のみの敗北条件となる。
よって・・・・。
『旗が壊されたあああああああ!』
『あらあら、これは。』
『ルール上いいのかああああああ!』
「かまわないさ。何せ今回のルールでは相手側の旗の破壊は一切禁じていない。」
「おいおい、それはいい加減じゃないのおヘルメスう。旗が破壊されたのはあの二人がエヴァちゃんの攻撃の軌道を変えたからよ?」
「じゃあ何かい?彼らがわざと軌道を変えてわざと旗を破壊させたって証拠があるかい?」
「へりくつだあ。」
「でもまあ、ここで終わるのは勿体なくね?」
「おいおい。」
「面白ければ良し!」
「適当だね。君達は。」
がやがやする神々。
だが、
「構わねえよ。」
悪神はつまらなそうに答えた。
「あら、良いの?アンリマユ。」
「そもそも今回の戦争遊戯はルールをわざと穴だらけにしたんだ。これぐらいしなきゃフェアじゃねえ。」
悪神は嗤った。
「ってことは・・・。」
「ああ。傾いた。ロキファミリア側にな。」
「ふふふふ、そうね。」
「はあーーー。エヴァはエヴァかー。」
「よっしゃああああああ!」
ある者は笑い、ある者はため息を吐いた。
「あるぞ!あるぞ!」
「この戦争遊戯ロキファミリアの勝ちだああああ!」
神々は笑う!そしてレベル8という規格外を出し抜いて見せたロキファミリアの策略を力を勇気を称えた。そしてロキファミリア側に大金を突っ込んだ神々は歓喜をあらわにした。
「まあ、こうなるだろうな。」
「そうね。」
それに対して悪と正義の神は何ともないようにつぶやいた。
「なんや?見て分かるやろ?うちが断然有利や。」
ロキはビールを片手に沸いていた。
「ああ。それがどうした?」
「ああん?自分まだ何かあるんか?」
「ない!だがまあ何とかするだろ。」
明らかに不利なのにも関わらず悪神は嗤う。
「随分と信用しとるんやなあ。」
「・・・あいつらは俺の眷族だぞ。そこらの奴らとは格が違えよ。」
「そうやな。でもそれはうちもや。」
「まあ、見てろよ。お前らがエヴァを出し抜いたように、俺の眷族もやらかすぜ。キヒヒヒヒ。」
ロキファミリア陣地・リザルト
フラッグ・・・破壊
ロキファミリア防衛組・・・全員その場で棄権
(理由 これ以上の戦力低下を抑制するため)
アンリマユファミリア・・・フラッグロストのため勝利条件、ロキファミリア全員の
棄権。
(備考 エヴァ・リンクス、自らの陣地へと全力で移動中)
『エヴァ・リンクス自らの陣地へ疾走!』
『でもこれ間に合わないわね。』
「どう見る、オッタル。」
そこでは女神の護衛として立っているフレイヤファミリア団長オッタルと副団長のアレンが神々によって映し出される映像を見ていた。
「ロキファミリアが有利だ。」
「ああん?それだけか?」
「お前も知っているはずだ。ロキファミリアは強い。」
「・・・っち!」
ゼウスとヘラ亡き後、オラリオの二大派閥と呼ばれていたが、仲良しこよしではないむしろ小競り合いが多かった。個の力ではフレイヤファミリア、連携でならロキファミリア。それが二つの派閥の違いとも言える。
そしてアンリマユファミリアが台頭してくるまでオッタルは間違い無くオラリオ最強の冒険者であった。英雄の都と呼ばれるオラリオにおいて最強に至ることは並外れた試練を超えていかなければならない。その敗北の数は泥を舐め続けた屈辱は彼を英雄の一角へと押し挙げた。正に求道者の道を行く眷族は言う。
「だが、どうなるかは分からん。」
「・・・あのクソ魔女が勇者に勝つってのか?」
「可能性はあるだろう。」
「何だ?羽虫?」
そこにはフレイヤファミリアの参謀ヘディン・セルランドがいた。
「黙れ愚猫。そもそもあの魔女の方が底が知れんだろう。」
「精神攻撃か?っち小賢しいだけだろう!」
「だが、フィンには無意味だ。」
「ああ。その通りだ。だが、彼女達はわざとこのセットアップをした。」
「わざとだと?」
「見てれば分かるだろう。明らかにロキファミリアサイドの情報の漏洩があった。」
「はん!ざまあねえな。」
アレンはロキファミリアの失態を嗤った。
「無様だとしか言えない。だが、」
「ああ、あの騎士が遊び過ぎている。」
「・・・・」
「俺達はあいつに敗北した。それも個人単位で言えば何人が挑み敗北したかすら分からん。だが、挑んだからおそ分かる。時間のかけ過ぎだ」
彼らはあの騎士の尋常じゃない強さを知っている。そもそもフレイヤファミリア幹部を全員負傷していたとはいえ、素手で制圧してのけたのは彼女の異常さが際立っている。
「あの騎士が本気なら恐らくこの戦いは一方的で終わったはずだ。それでもあの騎士は魔女が戦う機会と時間を与えた。何かを成し遂げるために。」
「他に狙いがあるっていうのか?」
「・・・そうだろうな。」
「見てれば分かるだろう・・・。」
(side ティンゼル・アーチャー)
アンリマユの砦の中一人の女性が汗だくで防衛をしていた。
「何で!私が!こんな!目に!」
彼女はありったけのクソ爆弾を投げて抵抗する。
ティンゼルは商人である
ティンゼルはアンリマユの眷族である。
ティンゼルは・・・
「ああでも、やるしかないよねえ。」
押し寄せるはロキファミリアの精鋭。
既に何人かの者を戦闘不能にしたが、どれも非殺傷なこともあり少し時間を与えれば復活してくる。この戦闘がなりたっている要因は彼女が持つスキルと武器にある。
彼女は目があまり良くない。だが、自ら包帯で目を覆うのは別の意味がある。彼女は魂の動きが見えるのだ。それは商人としての彼女に成功を与えたのだ。魂の揺らめきはその者の嘘を暴き、色は本性を写す。正に商人にとってチートな力である。だが、反面彼女は自信の視力そのものを失っていった。見えすぎるという過ぎた力は彼女から徐々に光を失わせていた。
それでも、彼女はその力を使い続ける。ただただ、己が商人であり続けるために。
そして、彼女が持つ黒い刀のような「何か」これは「ノワール」と呼ばれる武器である名付けたのはティンゼル自身である。これが何か彼女は良く知らない。彼女もいつの間にか手に入れていたモノだからだ。
「これ以上、人でなしにはなれないからなあ。」
「そうかい?」
「ならさっさと旗をよすがいい!悪の神の眷族よ!」
ついに追い詰められ最上階に上がられたティンゼルは苦笑する。
「無茶いうなあ。でもね・・・」
ノワールを茨と化してカーラ、ダイン達に襲いかかる。
「甘い!」
「それはもう散々見た!」
茨を躱し肉薄する二人。
もう既に茨を見切りだした、ダインとバーラそして精鋭達は砦へと王手を掛けていた。
「貫けぇ!」
「ああ!もう!」
そして遂に彼らの刃は彼女に肉薄する。
「!」
しかし、一方的にはならない。
「商人、商人言ってる癖にあんたレベル2いや3はあるね!?」
「そりゃあ、勿論、強いに!こしたこと!ありませんから!」
「ほう?カーラを止めるか・・・。」
そこに3人目の新手がやってきた。
「お前も来たか、ノアール。」
「茨がちょいと面倒だったがな。後衛もどんどんくる。気張るぞ!貴様ら!」
「おう!」
「任せな!」
(あ、不味いなあ。でもおおおお!)
そして彼女は遂に切り札を切る。
彼女のスキル「第三の眼」
その力は魂の可視化。普通なら神々にしか分からぬ魂を彼女は観測する。
それを応用すればとあることが可能となる。
「「「なあ!」」」
ダインの拳は空を切り、カーラとノワールの刃は全て防がれる。
ダイン、バーラ、ノアールの攻撃が全て弾かれたのだ。
フェイントを交えたそれらをレベル3である彼女は正確に打ち落とした。
「どなっている?」
「私達はレベル4、しかも3人がかりなのに。」
「押し切れん・・・」
「どういう絡繰りじゃ・・・。未来でも見えているのか?」
正に完璧な対応。
そして、不気味なまでの力。
「・・・その剣。いや、今は茨のムチか。それはまさか精霊武器か?」
「「!」」
「まあ、さすがに分かりますよね・・・。」
「信じられん・・・。まだ精霊いや大精霊が下界にまだいるとは・・・。」
神々の使い、古代の英雄達の多くを後押しした者達。
「これ以上は無理ですね・・・。ノワール他をお願いします。」
そして精霊の武器をティンゼルは地面に刺した。
そうすると茨は展開し、砦を覆った。
そして砦を登らんとしていたロキファミリア達は困惑の渦にいた。
「何だ!?」
「急に茨が!?」
「おい!触るな!」
「・・・・・・・・・生きててごめんなさい。」
「またかよおおおおおお!」
「あはは!エルフはクソ雑魚メンタルです!あはははは!」
「まずい!壊れた!」
「取り押さえろおおおお!」
「うわあああああ!」
「おいおい。・・・やりすぎだろ。」
「でも、まあ、これで後3人ですね。」
「ほほう。俺達に勝てるってか?」
「いいえ。」
商人は腰から一本の剣を引き抜きながら言う。
「負けなければ良いんですよ。」
「そうかい!やってみな!」
「わはははは!その意気や良し!」
「それでは手始めに」
そこに持たれるは例の爆弾
「な!」
「クソ爆弾です♪」
「「「うおおおおおおお!」」」
回避を試みる3人。しかし、それよりも早くそれは爆破する。
飛び散るクソの匂い。
そしてブツ。
もちろん衝撃はあるため容易には近づけない。
だが、明らかにこれは人に当てるものでは無い。何せこの元の使用用途はモンスター避けだ。獣人ならしばらく全く鼻が全く効かなくなる類いのものであり、それを濃縮し爆破させる。なお絶対に死人が出ないよう柔らかい作りになっている。その分中身の出方は生々しい。
「はあ、最悪ですね、これ・・・。」
「「「お前が言うな!」」」
クソまみれ4人が向かいあう。
「さて、泥沼ならぬ糞沼の戦いです!」
正気かこいつ?
それが3人の結論だった。
旗の前に立ち爆弾を携えながら殿を務める彼女。
当たり前でしょう。と彼女は言う。
人でなしの眷族は嗤ってみせる。
後に、「儂、結構戦ってきたがこれ以上にイカれた戦場を知らん。」と老兵が語る戦いは佳境に入ろうとしていた。
一方・・・・
「凄いな君・・・。」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・。」
無傷なフィンと血まみれ、満身創痍のクロの姿があった。
次回、決着!