ある所に平和な村がありました。
そこには争いはなく、皆がお互いに助け合いながら生活をしていました。
誰もが慈愛に溢れ、苦しい時は助け合い、悲しい時、怒りが溢れた時でさえ彼らは争いをしませんでした。
そんな常識外れに治安の良い村が形成されていました。
理由は簡単です。
この村にはとある生け贄がいたのです。
『私達の生活がいっこうに楽にならないのは原因となる悪がいるからだ。』
『物事が上手くいかない元凶』
『全ての悪』
それらを背負う大罪人を彼らは平和のために作り上げたのです。
ある日、一人の生け贄が力尽きました。
なんてことはない、日々暴力と罵声、この世のモノとも思えない屈辱を受け続けたその男は精神を摩耗し廃人となり、そして最後は村人による行きすぎた蛮行を受け死んでしまったのです。
村は急いで新たな人身御供を求めました。
なにせ、そうでもしなければこの村は治安を保てなかったのです。
そして、遂にとある少女に白羽の矢が立ちました。
その少女の家は村の中でも貧しく、周りの助けが無くては生きていけないため親たちは喜んで自分達の子を差し出しました。
少女は他の子と何一つ変わらないただの少女でした。
いつもは近所の子と一緒に遊んで暮らし、夜になったら両親と一緒に床に入る。それがその娘の世界の常識でした。
ですが、それはいともたやすく壊されてしまいました。
生け贄となった初日、少女は使われなくなった小屋に鎖で繋がれました。
少女は叫びました。
「助けて!パパぁ!ママぁ!」
ですが両親は何もしません。それどころか彼らの見る目は既に憎きモノを見るような憎悪に溢れていました。
そこから先、ただただ少女は地獄を味わいました。
「嫌!いやあああああ!」
「はっはははは!もっと泣け!叫べ!おらああああ!
ある男は暴力を
「・・・許してぇ」
「あなたなんか!生まなければ!私達はもっと幸せだったのに!」
ある者はひたすらに罵倒を
「・・・もう何も悪いことしないからぁ」
誰も来なければ彼女は光が一切入らない空間に閉じ込められ精神を壊していきました。
「・・・パパ助けてよぉ、ママ行かないでぇ。」
少女は一日中泣きました。
泣いて、叫んで、喚いて、ただただ救いを求めました。
「助けてぇ、誰かぁ。だれ、だ・・・・・・・・・」
でも、少女は気付いてきました。
誰も自分を救わないのだと。
少女は徐々にあらゆるものを失っていきました。
始めは涙を。
次に痛みを。
それから感情。
そして光を。
少女には自死の自由さえありませんでした。
少女を失うことは村にはとって損失だったのです。
しかし、彼女は時間が経つに連れ傷跡が腐り始め、過度なストレスによりもう廃人へとなっていき、食事を食べることすらできなくなっていきました。
そこで村はあることを思いつきました。
『そうだ!隣の行商人にポーションっていう人の傷を癒す薬が売られているらしい。それをたらふく買おう!』
『そうか!傷が癒えるなら「あれ」は長持ちするぞ!』
『だが、どうする?「あれ」はもうほぼ動かないぞ。そのポーションってのもそこまで万能ではあるまい・・・。』
『だから言ったんだ。お前の所はやりすぎだって・・・。前の奴にトドメさしたの反省しなよ!」
『ワっはっはっは!それは悪かった!悪かった!』
『・・・じゃあこんなのはどうだい?』
その日、村は隣の村に居た行商人から大量のポーションを手に入れました。ちなみにお金は村の住人の物をかき集めて買い取ってもらう形で払いました。この村の人々にとってはこの少女の存在は良くも悪くもそれほど重要だったのです。
そして、変わったことがもう一つ。
「やあ!■■■■!今日から僕が君の世話をするよ!」
もう誰も呼ばなくなった少女の名前共に、一人の少年が屈託のない笑みと共にボロボロの少女の前に現れました。
「・・・・・・・・」
「じゃあ!早速始めるよ!」
そうして少年は少女の治療を始めました。
もちろん、少年に医療の特別な知識がある訳では無ありません。ただポーションを飲ませ、包帯を巻き、体の清潔感を保たせるだけです。だが、少年はそれだけでは終わりませんでした。
「知ってるかい!■■■■!今、〇〇おばさんの家の前にこーーんなでっかい蛇が居てね・・・」
「聞いておくれよ!■■■■!僕はすごい発見をしたんだ!」
「見てくれ!■■■■!僕やっと!動物を捕まえられたんだ!」
「見なよ!■■■■!この包帯の美しさを!ここまで上手く巻けるのは世界でも僕くらいだよ!」
「遂に!遂に!やったっぞ!■■■■!世話役の面目躍如!薬の調合成功だ!」
「・・・・・・・・・・」
その少年はずっと少女の世話をし続けました。
何日も何日も少年は少女に話しかけ世話をし続けました。
その間も少女は地獄の苦痛と恥辱に溢れた毎日を送っていましたが、それでも少年は変わらず少女のためにあらゆる世話をし続けました。
少年が少女を悪とみなすことはただの一度もありはしませんでした。
少年は笑います。ただただ笑います。まるでそれが役目と言わんばかりに。
少女がただの女の子だと言わんばかりに、笑いました。
そんな日々が続き、少年は少し青年に近づき少女も成長し体つきも大人へと近づくようになりました。
少女は地獄の日々を送り続けたましが、ポーションと少年の治療技術の向上により生きながらえることができました。
そして変化がもう一つ
「聞いてくれ!■■■■!僕はついに!あのドケチババアからお給金を出させたんだ!」
「・・・・ほどほどにね。ライ。」
少年「ライル」の一方的な語りはついに双方向からの語りになっていました。そして、ライとのごく短い時間の間少女は目に光りを宿すようになりました。
少年は少女にとってのユートピアになりつつありました。光りを感じる自由さえ与えられない少女にとっていつも変わらず笑って話しかけてくれるライルの存在は例え偽りであってもなお嬉しかったのです。毎日の暴力、毎日の罵声、そして身に宿っていく余りにも深い憎悪。そんな地獄でなお光りを照らす「世話係」を少女はいつの間にか愛するようになっていました。
「ねえ、ライ。私のことは気にしなくていいよ。」
少女はそんな少年の幸せのために生きるようになっていました。
「そんなことはないさ!そっちこそ気にしなくて良いよ!なにせ僕は君の世話係!君の体は君より分かっているって自負がある!だから、きっと・・・・」
ですが、未来の話は出来ませんでした。
当然です。少女に未来はありません。このまま朽ち果てるのが少女の遠くない姿だからです。少年には少女を助ける力はありませんでした。そんな事をすれば少女以上の地獄が待っていると知っていたからです。それ以上に少女の日々を見続けたことで反抗する意思も折れてしまうのです。
ですが、少女は恨みませんでした。
本当に恨まなかったのです。
そんなある日・・・・。
「■■■■。僕の世話係は今日までだ。」
ついに二人の離別が決定した。ライルには元々やるべき家業がありそれを継ぐ必要があるため世話係は別の幼い子どもに託されるようでした。
「心配するな!■■■■!僕の技術は余すこと無くそいつに伝授する!君に対して不便をかけることは・・・こと・・・は・・・・」
少年は泣いていました。ただただ泣いていました。
そんなに泣かなくても良いのに。
「ごめん。ごめんよ。■■■■。」
良いのです。あなたは悲しまなく良いのです
「何も変えられなかった!何も出来なかった!」
少年の吐露する激情が少女に熱い想いを抱かせました。
「君が殴られて!罵声を浴びせられて!悲鳴を上げてるのに!僕は!僕は!君に何一つ、何一つ・・・!」
ああ。本当に私はあなたを■■になれて良かった!
私はあなたに■をすることができて良かった!
地獄へと落とされた少女はその奈落の底で確かに人並みの想いを人知れず享受することができたのです。
あなたのおかげで私は悪になりきらなかった。あなたが肯定してくれたから、あなたが隣で話しかけてくれたから、あなたが私を人でいさせてくれた。だから
「ありがとう。」
「さようなら。ライル。幸せになってね。」
たった一人への確かな親愛を友愛をそして愛を少女は大切に抱きしめました。
その道行に光りあらんことを。
あらん限りの幸福を。
私の地獄が彼の幸福になれるなら、私は紅蓮の炎に身を任せましょう。
地獄を見続けた少女はただただ純粋に一人の少年の幸福を願った。
だが、その願いは、少年にとって呪いになった。
◆◆◆
「・・・・・」
「早く立ち上がりなよ。お嬢さん。」
「カハ!」
血を吐きながらクロは立ち上がった。
そもそもレベル1がレベル5に立ち向かう時点でどうかしている。
だがそれでもこの戦いが生まれているのはクロがフィンの槍裁きを見る動体視力を持っていることと、フィンが少女を間違って殺さぬよう手加減しているからだ。殺し合いならばとっくに勝負はついている。
「ここら辺一体にポーションが隠されているとは思わなかったけど、それを含めて君が立ち続けていることに僕は敬意を払うよ。クロ。」
「・・・ありがとう・・・ございます。」
体中の傷は隠しておいたポーションを拾い回復させる。だが、あまりに傷が深すぎて全快にはほど遠い。
「リタイアしたらどうだい?」
「・・・しませんよ。」
クロはボロボロになりながら愛刀を杖代わりにどうにか姿勢を戻した。
『アンリマユファミリアの魔女!クロがボロボロだあああ!勇者容赦ねえええ!』
実況もさすがにその一方的具合に引いていた。
「いややあああ!クロちゃんをいじめないでええええ!」
「勇者のバカやろおおおお!」
「糞勇者!ドS勇者!でも好き!」
「もっとやれえええ!勇者ああああ!」
「クロちゃん逃げるんだあああああ!」
神々は勇者派と魔女派に分かれて喧々囂々の騒ぎになっていた。
「良いの?アンリマユ?」
正義の女神は悪の神に問う。
「俺はあいつの好きなようにやらせてるから何も言わねえ。」
「なんや、なんや。薄情な主神やなあ。」
「ああ?そうでもねえだろ。だってあいつまだ立ってるぜ。」
孤児院の場で
「おねええちゃああああああん!」
「うわあぁぁああん!うわあああん!」
「急いで!目隠し!」
「人数が足りん!タオル寄越せ!」
「うーーーん絵面が悪すぎる。」
「さすがにコレは子ども達には見せられんな。」
「さすがにねえーーー。」
「オイ!フィン!やりすぎだろ!そいつ子ども人気ヤバいんだぞ!トラウマ増やすな!」
「アリーゼこれはさすがにやり過ぎです!抗議しに行きましょう!」
子どもも大人も喧々囂々になっていた。
「待って待ってリオン!これは戦争遊戯!私達が行っても何も変えられないわ!」
「ですが!これは余りに!」
「はあ、黙っとれ青二才。」
「輝夜!何を今更。私達は彼女達に協力すると決めたはずです!」
「はああああああ。これだから脳みそお花畑が。何度も言わなきゃ分かりませへんの?あのクロ達が挑んでいはるのはこの都市随一の武闘派集団。加えて勇者に至っては直感だけで危機を回避できる異常性。そしてそれを利用できる頭脳をもっていはるのです。分断される時点で、エヴァさんがいない方が手薄になるは必死。だからと言って防衛に回したんでは人数差でごろ押される。ただでさえ、殺し禁止なら資金力の差とチームの層の薄さがどうしても如実にでてまうの?ここまで理解してはる?脳みそお花畑の青二才様?」
輝夜の仕方ないなあというような説教がリュー・リオンに突き刺さった。
「分かっているに決まっている!だが!」
友人がいたぶられる姿に潔癖性をもつ妖精は耐えることが出来ない。
「あそこまでする道理がどこにある!?」
そこでアリーゼが会話に割って入った。
「そうね。フィンがあそこまですることはあまり考えれない。」
「え?」
「そうだな。あの勇者は甚振る趣味はもってねえ。っていうかそういうことはできねえな。もしそうなったらあいつの夢に支障がでる。」
「・・・ライラまで。それはどういう意味ですアリーゼ?」
「多分可笑しいのはフィンじゃない。クロの方よ・・・。って言うかもうさっさと使いなさい!クロ!」
「「「「?」」」」」
「アリーゼ、何か知ってるの?」
「あれ?言ってなかったっけ?クロの裏技。」
「「「「「はい?」」」」」
「あーー。すまない。団長殿。それはこっちの方で隠した。何せそれ一発ネタだから。」
「そうだな。ばれれば終わり。そもそも1対1の状況すら作らせてもらえない。」
「ライラ?輝夜?」
「私らもここまで徹底的にやると思わなかったんだよ。おかげでもうこっち見てられねえ。」
「勝てるって言うんですか?ここから?あの勇者に?あのフィン・ディムナに?」
「ああ。っていうかもう勝ってる。」
「そうね。」
「後は・・・タイミングか?」
アリーゼ、ライラ、輝夜だけはクロの勝利を疑っていなかった。
「それは一体・・・・。」
アンリマユファミリア、副団長、クロ。
彼女のステータスは変化しない。正確にはとあるスキルによってレベル1からの昇格が不可能なのである。数値の上昇は可能だが他の冒険者のようにランクアップして強くなっていくことができない。
だが、世界を呪う彼女にとってそれは問題にならない。
なにせ彼女はこの世界の悪であり、呪いそのもの。一人で世界を滅ぼし得る彼女にランクアップする必要性は皆無である。
だが、今はまだその時ではない。
なら、私はまだ舞台の上の駒でいい。ただの性格のの悪い歌い手で構わない。
ああ、でも久々に、昔を思い出したし、やろう。
さあ! 恩讐よ、恨みの炎よ!燃え上がれ!あの日のように!
私から光を永遠に奪ったあの日にように!
「・・・次で終わらせよう。クロ。」
フィンが繰り出す至上の一槍殺さぬよう手加減はするが回避もカウンターも許さぬ一撃にして、これまでのクロの行動を分析しての最適化された一撃。
クロも己の愛刀を構えた。
静寂が広がった
一瞬の緊張、爆音、そして・・・・・・
二人の交錯の後、立っていたのはクロであった。
「「「「「「「なっ!」」」」」」」
「使ったな。クロ。」
悪神は嗤った。
「なっ!クロは何をしたんですか!?アリーゼ!」
「ふっふーん!教えてあげるわ!リオン!あれはね!」
「偽り写し記す万象」
「これは・・・私自身が受けた傷を・・・そのまま相手に返す・・・『報復』の呪いです。って言っても・・・聞こえてませんよね。私も聞こえていませんし。・・・だから『報復』は使いたくないんですよ。自分と同じ状態にするなんて吐き気がします。肋骨の骨は折れて肺に刺さってますし、手足の骨はあちこちヒビ、右腕は粉砕骨折です。臓器に至っては悪くなってない臓器は多分ありませんよ。・・・このままじゃ死にますね私。」
血を吐きながらクロはつぶやく。
クロの自己分析は正確だった。幼少期から地獄を見続けた彼女は己の死の境界が分かるようになっていた。そして、何より死なないために己の状態をいつも把握できるよう知識をつけていた。
「・・・さて先輩に・・・加勢」
だが、それぐらいで負けるならフィン・ディムナは勇者と言われていない。
・・・ズシ
「・・・冗談でしょう。」
勇者は立っていた。それも満身創痍でクロと一緒の状態つまり放っておけば死ぬほどのダメージを受けてなお立っていた。
「・・・まさか、凶戦士化?無理矢理発動させたの?」
事実だった。勇者は己が意識を失う程の衝撃を受けたと判断したと同時に詠唱を開始していた。凶戦士化は一種のトランス状態だ。脳のドーパミンが過剰分泌されることで意識を無理矢理保ったのだ。
「はあ。しつこすぎですよ。英雄。」
レベル6相当のステータスをもち、精神異常が意味をなさない現在のフィンに勝つ方法はクロには一つしかない。
「こっちは片手。あちこち骨はヒビ受け方ミスればあの世行き。何が殺し禁止ですか!?死にますって。私。」
独り言をつぶやきながらクロは感覚が限界の限界まで冴え渡るのを感じた。
「・・・でも、まあこの感じ懐かしいなあ。」
久々の死の間際の世界。脱力していき体が生きるための最適な状態へとなっていった。逃げだす本能はとうの昔に死んでいる。戦わなければ私は私でいられない。
「英雄さん。あなたはどれだけ瀕死の状態でいたことがありますか?」
返答は獣のような一槍でやってきた。理性をなくしてなお鋭利な一撃。それはどこまでもその勇者と言われるまで戦い続けてきた小人の人生を写していた。
それに対してクロは目を閉じた。もう、血がにじんで視界もギリギリだからだ。
そしてついに決着した。
「・・・片腕持って行かれましたね。ですが、そんな体で戦っちゃだめですよ。そんなに力めば全身イカレますって。でも、まあ・・・。」
クロはギリギリで体を反らして片腕を犠牲に立っていた。
正に肉を切らせて骨を断つ戦いだった。
そして勇者は気絶していた。魔女の腕を奪い、貫いた姿で。
「格好良いですよ。勇者。」
最後にその勇姿を賞賛し、魔女はその場を後にした。
『なっななななななんとおおおお!最悪のファミリアの魔女!クロがああ!あの勇者フィン・ディムナを撃破ああああああ!』
『ええ。良い戦いね。』
「うそおおおおおおおおお!」
「うそやろおおおおおおおお!」
「やりやがったあああああああ!」
「レベル差4のジャイアントキリングうううううう!」
「ヒャっはあああああああああ!」
「分からなく成ってきたらぁぁぁぁぁぁ!」
「最っっっっっっっっっ高うううううううう!」
アンリマユファミリア、ロキファミリアの戦いはここで大きく変化を迎えた。ロキファミリアはフィン、リヴェリア、ガレスを失ってはいるが旗の目前。アンリマユファミリアの守りはティンゼルに託されていた。
「頑張れ!商人!」
「気張れ!ノアール!」
「老兵の意地を見せろおおお!」
オラリオが二つの派閥の戦争遊戯に燃えていた。
『さあ!さあ!さあ!ついにこの戦争遊戯もいよいよ終盤!決着はこの余りにもイカれた戦いになった。』
『はあ。こんなに良い戦いなのに最後がコレなんて・・・。』
(早く!早く!早く!後輩早く!先輩もう無理!無理!無理いいいい!)
ティンゼルは己の全てを使って防いでいた。
ノワールをもう一度抜き前後左右、上空と広範囲を押さえさせ、それを掻い潜ってきた者達を「第三の目」で相手の魂の揺らぎから行動を推測して反撃していた。だが、もう限界は時間の問題だった。
「あああああああ!後輩いいいい!早くうううう!」
「押し切れええええええ!」
「触るなよ!絶対触るなよ!触るなってえええええ!」
「・・・・もう嫌あ。」
もはやここは違った意味で地獄だった。
ある者はネガティブモード。ある者は糞爆弾の餌食になりひたすらに体を洗っており、砦の中にいったものは罠のトレンドマークにより迷子になった。
「なんでここだけコメディみたいになってるの?」
「本当にね。他は激アツなのに。」
「戦いは凄いはずなのに、なんかその、うん。笑える。」
「くっくくく。バカでしょう!コレ考えた奴!」
「敵も味方も阿鼻叫喚。なんだコレ!しかも絵面も最悪!」
神々は笑った。
そして全員この勝負の終わりを予感していた。
そして、それは訪れた。
「良し!俺も抜けた!」
「同時に行け!」
「しまっ!」
ついに決着その時ついにそれは流れた。
「・・・歌?」
「!いかん!」
「早く!耳栓を!」
「全員外してます!」
「早く付けろおおおおおお!」
ノワールという触ると精神に攻撃を与える武器に対して耳栓は意味をなさない。よってここに付いたものは団長が術者を押さえていることも含めて全員耳栓を外していた。それが裏目にでた。
「あ、まずい!」
呪いの歌、それは聞くだけで発狂状態にする。抵抗するには耐性を保持するスキルが必要だ。よって、こうなる。
「クソッタレがあああ!」
慌てて耳を塞ぐノアール。
「最高!後輩!」
チャンスを見逃すものは商人じゃない。
彼女はノワールを振り回し全員を場外に落とした。なにせ両耳を塞いでいる以上避けるのには制限が出来る。そこからは一方的だった。クロの歌にやられたものは発狂そして戦闘不能。歌を避け両耳を塞いだ者はティンゼルの精神攻撃武器の餌食になった。
結末はそれで終わり。
耳栓を付けた者も咄嗟の連携を失い旗を取りにいけず呪いの汚染により耐性を突破され結果発狂、戦闘不能となった。
「・・・まあ。私は歌うこと・・・好き・・・ですから。ね。」
クロはポーションを体中にかけ傷を回復させていた。
だが、血が流れすぎて死にかけなことには変わりなかった。
そして花火が上がった。
勝利の合図だ。
「はああ。終わった。」
エヴァは笑って腕を掲げた。
「先輩、クロ、勝ちましたね。」
『決っっ着ううううう!』
『凄かったわ!』
『アンリマユファミリア!やりやがったああああ!』
『でもこれでロキは荒れるでしょうね・・・。』
「フハハハハハ!フィンめしくじりおった!」
「笑い事じゃ無いぞ!ガレス!」
「そうじゃな。ファミリアは荒れるのお。まず間違い無く。」
「私が暴れるぞ。」
「まあ、ここからは神同士の交渉次第じゃな。まあ、悪いようにはならんだろ。」
ロキファミリアの棄権組はそんな感じだった。
「ぬああああああ!アイズたぁぁぁぁん!」
「ほら、俺が勝った。」
「あなたじゃないわ。あなたの眷族よ。」
「だから俺の勝ちなんだよ。」
「はあ、クロちゃんの治療お金掛かるわよ。」
「・・・・・どれくらいだ?」
「下手すると0が7個ぐらい付くかもね?」
「・・・俺二度と戦争遊戯しねえ。」
「それが良いわね。」
「うそやろおおおおおおおお!」
「こっちはこっちで大変ね。」
「慰めにいけよ?神友だろ?」
「あなたの方が重要よ。私にとって。」
「ッチ!」
戦争遊戯 リザルト
勝者 アンリマユファミリア
死者 0
重軽傷者 多数
精神汚染者 多数
備考 クロ、フィン・ディムナ 集中治療
ロキファミリア、アンリマユファミリア借金過多により財政圧迫
アンリマユファミリア、アイズ・ヴァレンシュタイン獲得