「「「「「申し訳ございませんでしたあああああ!!!」」」」」
それが正義を謳うファミリアがロキファミリアにした初めての土下座であった。
「「「「「・・・・・・」」」」」
ロキファミリア全員は無言になるしかなかった。
「ああ、うん。これはどういうことだい?」
代表してフィンが答えた。
そして、ビクッとアリーゼ達は震えた。
「いやあ、そのお、あのお・・・。裏切ったことについての謝罪です。」
もはや、怒られることが分かっておびえる子どものようになっているアリーゼ達は正直にそう答えた。
「・・・成る程。」
実はこの時アリーゼ達は過去一震えていた。
それもそうだ。アリーゼ達は迷惑を掛けてしまったファミリア達に謝罪して回っていた。そもそもロキファミリアが耳栓を作るにあたり結構な有力ファミリアが協力していたのだ。それを滅茶苦茶にしたとあってはそれはもうきつーくお叱りがあったのだ。
アリーゼ達もある程度は覚悟していたが、毎日怒られ、裏切り者扱いのことで結構心が抉られていた。一人だったら泣いていただろう。だが、黙々と彼女達はそのお叱りを受け無償労働を行い、少しずつ信頼を得ようとしていた。
そして、今日は後回しにしていたロキファミリアの日となった。
後回しにした理由は、まあロキファミリアがピリピリしていたと言うこともあったが一番は絶対に恐ろしい目に遭うと分かっていたからだ。
ロキファミリアに反逆するとはそう言うことだ。レベル3が10人では相手になる訳がない。
「・・・うん。まあ、今回敗因の一つは君達だ。」
「申し開きも御座いません!」
「でも、一番の原因は僕達だ。僕達が甘かった。それに尽きる。だから僕達は君達をどうにかする気は無いよ。」
「え、あの、良いんですか?」
アストレアファミリアのヒーラー、マリューが震えた声で聞いた。
「ああ。だが、こっちから聞きたいことがある。それに答えて貰えるかい?」
「・・・どうして裏切ったかっていうことよね。」
アリーゼは覚悟を決めた目でフィンを見た。
「ああ、その通りじゃ。お主らは絶対に奴らには味方しないと思っておった。だが、貴様らが寝返ったことでこちらは大幅に不利になった。」
「ノアール、止めないか。負けたのは私達の実力不足だ。」
「・・・だがのう。」
「ああ、うちからもええか?」
そこで道化の神が話しに加わり始めた。
「なんであの正義の権化があの悪の神に力を貸すんを許したんかは正直分からへん。でもな、これは聞かんといかん。何で自分らはあのファミリアに力貸すん?主神の指示だけやないやろ?それともそれが自分らの正義言うんか?」
アストレアファミリアは黙った。
だが、それでも言わなければならない。
もし、正義を貫きたいなら。
そして、最も高潔なエルフが答えた。
「発言をいいでしょうか?」
「リオン!」
「うん。構わないよ。」
「リヴェリア様そしてロキファミリア、裏切ったことは申し訳ないと思っています。・・・ですが、私達は決めたんです。彼女達を『悪』にはしないと。」
「どうしてそう考えたんや?」
「・・・明確にこうだというような考えはありません。でも私達はあの人達を信じることにしたんです。それに、あのまま戦争遊戯が始まれば絶対に彼女達はこの都市で少なくとも居づらくなると考えました。それでは、この都市はまた最悪の日々に戻るかもしれません。それは我々にとっては防ぎたい・・・のです。」
「随分と信用しとるんやな。」
「まあ、まだお互いに利用し合っている感はあるけどなー。」
「それでも、君達は彼女達を選んだ。」
だからアリーゼは宣言する。
「ええ。だから、もしものことがあれば私達が命に代えても彼女達を止めるわ!」
「できるのかい?君達に。」
「その時考えるわ!」
「「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」」
もはや開いた口が塞がらない。
「「「「・・・すみません。」」」」」
そしてもう一度謝る正義の使徒達。
「一応、補足させていただきますが、アストレア様の許可は取れています。」
「・・・まあ、あの女なら止められるっちゅうことやな。」
頭に浮かぶのはロキにとって最も理解の及ばない女神だ。
「・・・なるほど。君達の考えは分かった。じゃあ、もう一つ質問だ。君達に協力したのは誰だい?」
「「「「「!」」」」」
「これでもロキファミリアの団長で勇者なんて名乗っているんだけど、君達だけで僕達を欺くのは限度がある。」
それは慢心でもなければフェイクでもない。フィン・ディムナのその頭脳と勘を出し抜くことは本当に至難の技だ。
「実は、その-・・・・。」
「どうせ、アバズレのとこの鬼畜メガネやろ?」
「!」
「はあ。やっぱりか。道理で女神フレイヤが解説をやっているわけだ。そして、ヘディンが手を貸したのなら情報統制は完璧だろう。してやられたね。」
「・・・戦う以前に我々は負けていたというわけか。」
「ぬう!ぬかったな!」
「ここまでされるとぐうの音もでないね。お見事アストレアファミリア。」
叱られると思ったら突然の称賛。
アストレアファミリアは呆然としてしまった。
「・・・勝ったのはあいつらだぜ。勇者様よう。」
ライラが少しだけ場を茶化した。
「ああ、確かに僕達はアンリマユファミリアに敗れた。だけど今回僕達は悪神と駒を指し合っていると思っていたんだ。そしたら指していたのは君達だったんだ。これはお見事としか言えないよ。あっはっはっはっは!」
「・・・あれ?私達、褒められてる?」
「良かったじゃないですか。団長?」
「はあーーー。」
アリーゼは少し緊張から解放されることが出来た。
「でも!」
「「「「「「!」」」」」」
「今回のことで僕達は多額の負債を抱えた訳だ。知っているよね?」
「は、はい。あはははは」
青ざめていくアストレアファミリア。
「と、言うわけでアストレアファミリア。借金返済の手伝いを頼みたい。無料で。」
「・・・おいおい、ふっかけてきやがったぞあの勇者。」
「もはや鬼畜の所業ですねえ。」
「・・・みんなごめん!でもやらなきゃダメね!」
「あ、アリーゼ、ですが私達もそろそろお金が・・・。」
「もやし生活よ!」
「・・・おいおい、マジかよアリーゼ。」
「そ、そうなるよねえ。」
「何をいまさら。分かっていたことだ。」
イスカやマリュー達も覚悟を決めた。
こうして、アストレアファミリアはここに地獄の借金返済に追われることになる。
ちなみにアストレア本人はアリーゼ達の計らいでアンリマユファミリアの孤児院でクロ達と一緒に子どもの面倒を見ることになった。(もやし生活ではない。)
「みんな!頑張るわよ!」
「「「「「はあ~」」」」」
アストレアファミリアの苦悩はまだ始まったばかりだった・・・・。
「良かったのか?フィン?」
ノアールはそう笑う勇者へと聞いた。
この敗北はファミリアにとって痛い敗北になったのは間違いない。
何よりファミリアを一人強引に奪われたのだ。いくらノアールでも心中は穏やかでは無い。
「ああ、構わない。してやれたからね。ここまで見事にやられては僕も笑うしかない。」
「そこまでだったか、奴らは・・・。」
「ああ。僕はこれは僕とあのクロという少女、そしてロキとアンリマユの駒の打ち合いになると思っていたんだが・・・違った。」
「・・・アストレアファミリアか。」
「そうだ。僕と打ち合っていたのはアンリマユファミリアの誰でも無い。あのアストレアファミリア団長アリーゼ・ローヴェルだったんだ。前提から間違っていたとは、いっそ清々しいかな。ノアールはどう思う?」
「・・・実力不足だったことは否めんな。何よりあやつらの意地を見誤った。」
「ああ。少しレベル差を意識してあと少しで勝てるという焦りに全員飲まれたね。」
もはや完敗だ。
・・・だが、ノアールはフィンの様子の変化に気付いていた。
「・・・良い経験じゃったな。フィン。」
フィンはきつく拳を握っていた。
「・・・余計なお世話だよ。ノアール。」
「フハハハハ!後身の成長は目覚ましいのう!」
それが今回の戦争遊戯の結末だった。
おまけ
戦争遊戯前
「と言うわけで私はクロを応援するわ!」
アストレアファミリアのホームに戻ったアリーゼはどう宣言した。
「団長殿。一応私達は正義の女神たるアストレア様の眷族だ。奴らと手を組むのは正義といえないように思えるが?」
「そうね!でも、今回は戦争遊戯!お祭りよ!それに私達はファミリアは違ったとしてもクロと同僚だわ!子供達と一緒に応援してあげようと思うの!みんな!どう思う?」
「アリーゼ。確かに私らはあいつらと一緒に孤児院の手伝いをしてるがあいつはきな臭いことをしているのも事実だ。証拠にフレイヤファミリアの悪評の広がり方を調べてみたら孤児院周辺のじじばば達だったぜ。それもクロがよく話してる奴らだ。」
「他にも、アンリマユと思われる神が闇派閥の神と密会をしているというたれ込みもありました。正直私はアストレア様の眷族としてアンリマユファミリアを応援するのは反対ですね。団長殿。大体正義の眷族である我々が悪のファミリアの味方をしてどうするんです?」
ライラも輝夜も事件の裏の事を密かに調べていた。すると怪しい動きがいくつかあったのだ。だが、どれも大したものではなく動くべきかどうかも怪しいラインのために彼女達は情報を伏せていた。
「・・・そうね。輝夜の指摘もライラの指摘も最もね。」
「・・・アリーゼ。」
リュー・リオンは心配そうに彼女を見た。
アリーゼもそんな事は分かっていた。でも、アリーゼはそれでもこの戦争遊戯に関わらなければならないと確信している。
それは、
「ねえ、みんな正義って何だと思う?」
「「「「!」」」」
「私は今、幸せだわ。だってみんな笑ってるもの。あんなに地獄の中だったのにクロ達が来て、治安が一気に良くなって活気が戻ったのよ。凄いことだわ。」
「団長殿、残念ながらこれは嵐の前の静けさですよ?ほぼ間違い無く。」
アストレアファミリアきってのハードな人生がを送ってきた輝夜は断言した。
「そうだな。アタシもそう思う。」
アストレアファミリアはアリーゼとアストレアが集めたファミリアだ。
そしてどんな思いで彼女がこの地で戦い続けたのかも皆知っている。そして、そのためにどれだけ多くのものを失ったのかも。だからこそ辛く苦しい一時に今という平和な時間を作ったクロ達アンリマユファミリアにはアストレアファミリアの面々は少なからず感謝していた。
「だから、私はクロ達を助けたい。だってクロ達が表に立っていればその分動きにくくなるでしょ?」
「・・・アリーゼ気持ちは分かるぜ。アタシ達だって驚いているこんな平和がやってくるなんて。きっとフィン達もだ。だけどあいつらは多分アリーゼが思うほど良い奴じゃねえ。間違い無くいつか『毒』になる。しかも特大のな。」
「・・・そうかもしれないわね。でも、まだ違う。そうでしょ?」
「正気ですか団長殿。そこの青二才の病気が移ったのですか?」
「何だと、輝夜!」
「はいはい、仲良しねえ相変わらず。」
「でもね、アリーゼ。あの人達はとても強いよ。私達じゃ一蹴されるわ。それじゃいざっていう時止められない。」
「ええ。だから強くなるわ。今よりずっと。」
「・・・遠いですよアリーゼ。ロキファミリアとフレイヤファミリアを一蹴するファミリアを止めるられるのは冗談抜きでそれこそ英雄と呼ばれる人達だけでしょう。私達がそこに届くには時間が掛かりすぎる・・・。」
化け物を止められるのは同じく化け物だけだ。
「分かっているわ。でも、そうしたいと思ったの私。だってそうでしょ?私達は正義のファミリアでクロ達は悪のファミリア。交わることはないって私も最初は思ったわ。でも話してて可能性はあるって思えたもの。」
アリーゼはそれでもまっすぐ笑う。
「そういう作戦の可能性もあるぜ。あいつらにとって天敵なのはアストレア様だ。もしかしたら、アストレア様を送還するためにアタシ達に良い姿を見せているかもしれねえ。」
「ええ!だから私はクロ達と話そうと思うわ!そういうのも含めて。」
「正気か団長。私達はロキファミリアからの協力妖精を受けている!。それなのにアンリマユファミリアに協力する気か!?」
まさかの直球勝負。
輝夜の言葉遣いも壊れ始めた。
「・・・多分そうなるわ。」
「「「「「「!」」」」」
「おいおい、応援するだけじゃねえのかよ。団長。」
「でも、このまま戦えばきっとひどい戦争遊戯になるわ。それこそもう、アンリマユファミリアは良いファミリアって言われないくらい。」
「・・・それは直感ですか?アリーゼ。」
リューの聞いたことは重い意味がある。何せアリーゼ・ローヴェルには虫の知らせとでも言うべき高確率で当たる「直感」があるのだ。
「ええ。だからここで1度止めるわ。」
ようやく、アリーゼの思惑を彼女達は理解した。
「ここが分岐点ってか。最初からそう言えよ。団長。」
「言わないわよ、ライラ。だってロキファミリアに反逆するのよ。勝っても負けてもただじゃ済まないわ。だからやるなら全員の賛成が絶対条件!」
「はあ、それで、どうするともりだ団長殿?」
「決まってるわ!今ここで多数決を取る!」
「はええな。おい。」
「でもまあ、」
「そうね。」
「うんうん。」
「決まってる。」
「そうですね。」
「はい!じゃあ、賛成の人はいつもの!」
「「「「「正義の剣と翼に誓って!」」」」」
それは変わること無き宣誓。
彼女達がこの暗黒期において輝くための希望の証。
「よし!全員私の正義にひれ伏したわね!バチコーン☆」
「「「「「「「イラッ☆」」」」」」」」
斯くして正義は始めた悲劇の物語を喜劇にする。そのために。