悪の化身の英雄賛歌   作:wakawaka

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アスフィの苦労が増えるだけの話

 

 ここはヘルメスファミリアの執務室そこで主神ヘルメスと副団長アスフィが情報のすりあわせをしていた。

 

「ではアスフィ、現在のオラリオの状況を整理しようか。」

 

「・・・なんで私なんですか。普通ここは団長では?」

 

「ああ、そっちは別行動中だ。」

 

「はあ。」

 

「まあ、そう言うなよ。こっちも色々分かったんだぜ。」

 

「そうでしょうね。」

 

 ため息を付きながらアスフィは情報を開示し始めた。

 

「まず、今回の戦争遊戯においてアンリマユファミリアは間違い無く闇派閥の他のファミリアからの協力を得ていました。」

 

 肩をすくめた様子でヘルメスは聞いていた。

 

「だろうな。でなきゃあんな砦の要塞化のための準備なんて不可能だ。」

 

「ですが、その他にも独自の運び屋の存在がそれなりの数が確認でき彼らは一般市民でした。」

 

「闇派閥に浮浪者、いや貧困層を狙っての人手の確保、理に叶っているな。」

 

「ですが、ここで一番不可解なのはアストレアファミリアが黙認したことです。彼女達がそんなことを見過ごすとは到底・・・。」

 

「うーむ、ちなみにそこで違法行為は?」

 

「分かりません。生産拠点は我々でも突き止められませんでした。何でも重要拠点への運ぶ際は手練れが運んでいるようです。全員撒かれていますねこれは・・・。」

 

「さすがと言うべきかな。分かっているだけでアストレアファミリア、イシュタルファミリア、フレイヤファミリアが協力していた。裏のルドラファミリアやタナトスあたりも協力していると思うと情報統制は完璧すぎる。お手上げだ。」

 

「・・・聞いてて思いますが何です。その無敵の派閥!」

 

「全くだ。手を組まれたらこの都市まるごと陥落してしまう。ああ、恐ろしい。」

 

「笑ってないで真剣に聞いて下さい!」

 

「加えてこの俺も協力したんだ。完璧になるに決まっている!」

 

「ああそうでしたね!この裏切り神!」

 

「で、その戦争遊戯も終わって一週間だ。都市全体の様子は?」

 

「・・・相変わらず治安は保たれています。それに貧困層が減っていますね。何でもアストレアファミリアに寄付金が何故だか結構な額送られたようでそれをアストレアファミリアが分配したことで一時的ですが経済活動が活発化したようです。」

 

「お金が使われれば経済は動き、さらに景気は良くなる。まあ、アストレアならそうするかな?」

 

「ですが、不気味です。闇派閥が静か過ぎる。」

 

 そう、協力している事は調べがついたがその規模も不明であり、そして動きも無いに等しい。

 

「でかい花火の準備って所かな?」

 

「考えたくありませんが恐らく・・・。」

 

「良し!静観しよう!」

 

「正気ですか!?もし、これらのファミリアが繋がれば手の付けようが・・・。」

 

「あっはっはっは!それはないぞ!アスフィ!もし、彼らが手を取り合えるならこの都市はこんなにも殺伐としていない!」

 

「そうはそうですが・・・。では何故今回は協力を?」

 

「これだよ。これ。」

 

 そう言ってヘルメスは指でわっかを作ってみせた。

 

「お金?」

 

「そう。俺の方で調べた。彼らはお金を派手にばらまいたそうだ。」

 

「・・・どのくらいでしょうか?」

 

「まあ、十億は超えてたな。」

 

「そんな大金どこから!?」

 

「ああ。借金だ。と言うかこの紹介したのが俺だ。」

 

「はあ!?」

 

「で、うちからも貸したから俺はお前に殴られている。」

 

「それ返って来るんですか!?軽く踏み倒せますよ!?」

 

「大丈夫だ。保証人が付いた。」

 

「保証人?」

 

「ああ、アストレアファミリアだ。」

 

「・・・・何故?」

 

「さあ、それは俺にも分からない。」

 

「確かに彼女達が保証人に付いたなら・・・。ってそれアストレアファミリアとアンリマユファミリアが組んでることを知っているファミリアが複数存在した?」

 

「ああ、そして誰もそれを漏らさなかった。こればっかりは見る目があったということかな?彼らに。」

 

「交渉が上手かったと言う事では?たしかティンゼルというあの目を隠している女性が商人でしたよね?」

 

「ああ。だから見る目だ。」

 

「それは・・・。って言うよりお金戻ってくるんですか!?さすがにアストレアファミリアにも無理が・・・。」

 

「それは無いだろう。あのアストレアだ。」

 

「確かにアストレア様が約束を破るとは思いませんが・・・しかし彼女達は謝罪巡りをしていてそんな余裕なんてとても・・・。」

 

「まあ、そうなんだが多分アンリマユファミリアの方がどうにかするんだろう。」

 

「そんなお金ダンジョンに潜らずにはそうそう簡単には・・・。」

 

「心配するなよ、アスフィ。なにせ彼らは現最強ファミリアだ。それこそいくらでもやりようが・・・。」

 

「その通りらしいにゃ。」

 

 その瞬間アスフィは剣を抜き、ヘルメスも即座にその場を離れた。

 

「「!」」

 

「アンリマユファミリアからおーくしょん?の招待状にゃ。是非来てにゃ!」

 

 それだけ言って黒装束を着た何者かは去って行った。

 

「おいおい。どこから聞かれてた?」

 

「そんなばかな。ここは護衛が・・・。まさか!」

 

 そこには、既に気絶している護衛達がいた。

 

 傷口はほんの少しの切り傷のみ。

 

「これは・・・麻痺?ですがこんな浅い切り傷のみで冒険者が気絶そんなことが可能なのは・・・黒猫?」

 

 「黒猫」、それは賞金稼ぎ専門の殺し屋の一人だ。その手管はほとんどがナイフなどをもちいた毒殺であり、最後にニャーと言う語尾が特徴だと言われている。このオラリオにおいて恐れられる暗殺者の一人だ。

 

「・・・全くやってくれるね。アンリマユファミリア。」

 

「ヘルメス様無事ですか!?

 

「ああ。大丈夫だ。」

 

 ふう、と安堵の息を吐きながらヘルメスは手紙の内容を確認した。

 

「内容は?」

 

「待ってろって。今確認を・・・。これは・・・。」

 

「どうしました?」

 

「何でもスポンサーオークションらしい。」

 

「すぽんさーおーくしょん?」

 

「ようするに最強ファミリアにお金を提供して使わせてあげるっていうことだ。表裏問ずにな。」

 

「表裏・・・。それって!?」

 

「ああ。厄介なことだ。闇派閥に取られれば本当に都市が沈みかねない。」

 

「はあ!?」

 

「貸したそばからぼったくる気満々じゃないか・・・。」

 

 正に悪辣。しかも普通スポンサー側の方が上のはずがその武力のせいで簡単に切られる可能性まである。

 

 そう言いながらヘルメスは不敵な笑みを浮かべていた。

 

「アスフィ!楽しい謀略の時間だ!」

 

 陰謀、謀略、それも確かな遊戯である。

 

「・・・・・・・・。」

 

 こうしてヘルメスファミリアは動き出す。誰よりも先に出し抜くために。

 

 この先が未知に繋がると信じて。

 

 

◆◆◆

 

おまけ

 

 

(side アイズ・ヴァレンシュタイン)

 

 アイズ・ヴァレンシュタイン二つ名は『剣姫』そう呼ばれる少女には趣味と呼ばれるものは特にない。年齢も幼いにも関わらずその名はオラリオ中に響き渡った。

 

 その彼女は今ある悩みがあった。

 

「ダンジョンに行けない・・・。」

 

 アイズがアンリマユファミリアに来たのは戦争遊戯の影響が一番だが、その次にあったのは黒竜の情報を得るためだ。彼女にとって決して譲れないそのために彼女はここに立っている。そのためには強さが必要だ。だが、強くなるにはダンジョンに行って己の限界を超えて偉業を成す必要がある。

 

 だが、それはクロが許さなかった。リヴェリアはアイズだけを見るわけには行かなかったため逃げ出す隙がそれなりにあったが、クロは常にそんなアイズの逃走を阻んでいた。そんな馬鹿なと思うだろうがマジである。

 

 そして、何より

 

「あ!小っちゃい先生!」

 

「違うよ剣姫だよ!」

 

「アイズ先生!」

 

「あいずちゃーん!」

 

 もう呼ばれる名前が統一されないが己より幼い子供達という存在を前にアイズ・ヴァレンシュタインは驚く程無力だった。

 

 そこから先アイズは壁に追い込まれそのまま蹂躙されるのだ。

 

「アイズちゃん!?ほら皆!救出するわよ!」

 

 その度にアストレアファミリアと言う優しき正義の使徒に助けられているが味わうのは悲しき無力さと無邪気な子供達の強さである。

 

 今、アイズにある表情は無である。

 

 

 

「クロ、いつ私を強くしてくれるの?」

 

 アイズは遂に直談判を起こした。

 

「アイズ、私は言いましたよ?協調しなさいって。あなたが強くなるのはそれからです。」

 

「むううう!してるもん!」

 

 こんなやりとりも既に何度も行っている。しかし、どれだけアイズが脱走を試みようとも失敗するのだ。現在レベル3のはずのアイズはレベル1のクロの防衛など簡単に避けられるはずなのだが、見つかり、施設防衛のために用意された罠という罠が作動されいつもアイズを捕らえクロに怒られるのだ。

 

「良いですか?アイズ、あなたは日々助けられています。ロキファミリアの時も今もです。この意味が分かりますか?」

 

「・・・分かる。」

 

「あなたは一人ではありません。エヴァも居ます。先輩も居ます。私も居ます。ついでにあの正義の使徒達も居ます。みんな一人では出来ないことをそれぞれが役割を担うことで可能にしているんです。だから、アイズ、あなたもみんなと協力することを学びなさい。」

 

「私、私は強くなりたいの!」

 

「はあ、アイズ、リヴェリアは何て言ってました?」

 

 それはリヴェリアに叩き込まれたことだ。

 

「う!」

 

 遂にシュンとするアイズ。

 

「・・・分かりました。まずは経験しましょう。」

 

「経験?」

 

 それはリヴェリアに叩き込まれたことだ。

 

「そう、まずは一緒にやることです。」

 

 そう言ってクロは頭に手を置いた。

 

 アイズは考えた。

 

 協調することは重要、分かっている。だけど分からないのだ。

 

「・・・じゃあ、クロ一緒にやって!」

 

 それがアイズの精一杯だった。

 

「良いですよ。」

 

 手を止めキチンとアイズに目線を合わせてクロは言った。その顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 その後、時々アイズは憤怒を浮かべる時があったがクロは大体笑って許していた。

 

 それは時に生徒と先生のようで、時には姉と妹のようだったと正義の使徒達は語っていた。(疲労困憊だったため詳細はよく覚えていない模様。)

  

 

◆◆◆

 

 

 その頃

 

「それでは話を聞きましょう。エヴァ・リンクス」

 

 エヴァは看護師長との面談を行っていた。

 

「あなたが何故ここでバイトをしているの?」

 

 エヴァ・リンクス VS 看護師長

 

 雇用者と被雇用者の仁義なき戦いが切って落とされていた。

 

   

 

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