悪の化身の英雄賛歌   作:wakawaka

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エヴァ・リンクス 29歳 無職

 

 エヴァがクビにされて1週間が経った。

 

 エヴァはその間特にどこで働く訳でもなく、時々孤児院の力仕事に付き合うくらいだった。

 

「・・・・・・」

 

 働く意欲が無いわけではない。ただ、雇ってくれる所が無いのだ。何でもダンジョンでの闇派閥が暴れたのが問題らしい。まあ、元々闇派閥に優しい所など無いのだが。

 

 クロにダメ元で頼んでみたが、

 

「クロは主様を守っていれば良いんです。」

 

 と言われてしまい、現在、エヴァは

 

「はあああ!」

 

「はい。脇が空いてますよ。」

 

 エヴァはアイズの剣の腹を素手で弾いて見せた。

 

「な!?」

 

 そして体勢を崩したアイズの顔に軽くデコピンがアイズの額を襲った。

 

 すると驚く程簡単にアイズはそのまま尻餅をついていた。

 

「・・・ぎゃん!」

 

 額を押さえるアイズ。レベル8のデコピンは予想以上に破壊力があったのだ。

 

「・・・もう一回!」

 

「構いませんよ。アイズ。」

 

 ひたすらにアイズの訓練に付き合っていた。

 

◆◆◆

 

 

「お前らスポンサー合戦始めるぞ!」

 

 唐突に主の号令が降り注いだ。

 

「すぽんさー?」

 

 エヴァがアイズの訓練に付き合って汗を流そうと思っていた時にアンリマユが帰ってきた。

 

「要するに俺達にお金を出資してくれる所を競わせるんだよ。そして一番出してくれる所に協力する。キヒヒヒ、ブンどるぜ。」

 

「お金を出す所あります?私達闇派閥なのに?」

 

「あるに決まってるだろ?何せ俺達は悪だからな。汚れ仕事関連もごっそり来る。キヒヒヒ。裏のやつらは懐が暖かい奴が多いからなあ。」

 

 アンリマユファミリアの作戦担当は主にクロとアンリマユ自らやっており今回はアンリマユが担当していた。

 

「はあ、中々見ないと思っていたらそんなことを・・・。」

 

 クロはあきれ果てていた。

 

「ちなみに、ティンゼル先輩は?」

 

「その交渉中だ。」

 

「・・・成る程。」

 

 ティンゼルの本職は商人であり、交渉、そしてその目利きに関して言えばかなりのモノだった。

 

「良いのですか?そんなあからさまに裏の住人と協力してたらアストレアファミリアとかロキファミリアが介入してきますけど。」

 

「安心しろ。落とし所は決めてある。アストレアもロキも動くことはねえよ。」

 

「・・・そうですか。」

 

 アンリマユファミリアにとって避けなければならないのは女神アストレアが行動を起こすことだ。ロキファミリア、フレイヤファミリアであればエヴァがいる限り破られることはないが女神アストレアだけは悪神であるアンリマユにとってどうにもならない力を持っているらしい。

 

「後、これから闇派閥で集まって会議があるけどお前らも来るか?」

 

「「!」」

 

 アンリマユファミリアは宣言している通り、闇派閥に属している。まあ、時々相互で助け合う程度であって、結託するような関係でもなければ仲良しでも無い。もし戦いになったとしても全く以て不思議じゃ無いためとても仲間とも呼べる関係性では無いのだ。

 

「・・・クロはどうします?」

 

「・・・行きましょう。ヴァレッタに問い詰めなくてはならないことがあります。」

 

「お、珍しいな。お前らがあそこに行くのは。」

 

「ちなみに何か用でもあるのか?」

 

「殴りに♪」

 

「おお、血気盛んだな。」

 

「もちろん!」

 

 クロは有言実行とばかりにニコニコしながら準備を始めていた。

 

「あれ、冗談じゃ無かったんですねクロ・・・。」

 

「エヴァは・・・うん。クロを止めてくれ。」

 

「・・・はい。」

 

「じゃあ、行くか!」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 闇派閥の神々は神会に参加しない。

 

 当然だ。まず間違い無く送還の対象になるからだ。

 

 だが、それはそれで仲間ハズレで寂しい。

 

 と言うわけで、秘密基地もとい闇派閥バーがオープンした。

 

 してしまった・・・・。

 

「「「「「カンパ-イ!」」」」」

 

「良いね!良いね!」

 

「オラリオがアンリマユファミリアに傾いた!」

 

「ロキの敗北は大きいね。ああ、あいつの悔しがる顔見たかったわー!」

 

「んで、その立役者はどんな気分?」

 

「最高!」

 

 アンリマユも他の闇派閥の神々もビールを片手に騒いでいた。

 

「だよねえ!」

 

「イエーイ!」

 

 神々は秩序の崩壊が進むことを喜んでいた。元々が邪悪であり混沌を好む彼らにとって秩序ほどつまらないものはないのだ。

 

「それにしても、どうやってあのアストレアファミリアを味方にしたんだよ?」

 

「それはクロの実績だオレじゃねえ。」

 

「さすが、悪の神。正義の使徒も懐柔なんて楽勝ってか。」

 

「それにあの剣の姫がこちら側についたのは将来的にもでかいねえ。」

 

「俺達も勧誘したんだあけどなあ。フラれちゃった。」

 

「元々こちら側の素養が高かったからねえ。彼女。」

 

「と言う訳で聞かせてよ!どうやったの?クロちゃん!」

 

「秘密です。」

 

「か~!つれないね~!」

 

 ちなみにバーのマスターはクロが務めていた。

 

 何でもいつもやってくれていたマスターが地元に帰ってしまったらしい。口は固いようだが、何でも孫が生まれるとかなんとかだったらしい。ちなみに雇ったのはアンリマユである。結果、その変わりとしてクロがマスター変わりだ。

 

「・・・ヴァレッタいませんね。」

 

「確認しました。『今日は止めとく』らしいですよ。」

 

 エヴァは神タナトスから聞いた話をクロに伝えた。

 

「さすが闇派閥の参謀、危機管理が素晴らしいですね!」

 

「クロはやり過ぎてはだめですよ。あなたがレベル1であることはもう知れ渡っています。自らを危険にさらさないで下さい。」

 

「分かってますよ。ですからエヴァが居るんです。」

 

「私は一人しかいませんよ。」

 

「もしもの時は主様最優先ですよ。私の命なんてその程度で構いません。」

 

「泣いてしまいますよ先輩が。」

 

 ティンゼル先輩は後輩想いの強い先輩なのだ。

 

「主を犠牲に逃げる眷族は眷族失格です。」

 

「泣きますね先輩。」

 

「さて、精一杯給仕しましょう。エヴァ。」

 

「ええ。主様のためですから。」

 

 

 

 その日、白髪と金髪の給仕は大いに会をもりあげたらしい。

 

 詳細は不明。

 

 なお、クロはこの後ヴァレッタの隠れ家の一つをフィンにチクった。

 

 

 

 

 

 後日、

 

「エヴァ、あなたに客です。」

 

「私にですか?」

 

 急な来客が孤児院にあった。

 

「はい。」

 

 とある人物が孤児院を訪ねてきた。

 

「1週間ぶりね。バゼットいえエヴァ・リンクス。」

 

「何故あなたが?」

 

 そこには、元上司であり臨時看護師長であったアマネがいた。

 

「あなたへの給金払い損ねてたでしょその分私に来たわ。」

 

 そう言ってはにかんだ笑顔と共にエヴァは1週間ぶりの再会を果たすのだった。

 

 

 

 

「・・・ありがとうございます。」

 

 エヴァはアマネを孤児院の中に招待した。

 

 エヴァはクビになった時そのまま出てきてしまっていたため働いた分の給料が未払だったものの支払いにわざわざ来てくれたのだ。

 

「いいの、いいの。働いた分は報酬がでるわ!」

 

 そういって巾着袋をエヴァに渡した。

 

「それにごめんね。看護師長があんな感じで・・・。」

 

「いえ、先輩達もすみません。私のせいで迷惑を掛けてしまって。」

 

「良いのよ。許可を出したのは私だし、それにあなたはその信頼にきちんと応えてくれた。文句はないわ。」

 

「・・・・・ありがとうございます。」

 

 エヴァは少し戸惑いながら給金をもらった。

 

 てっきりもう会うことが無いと思っていたので少し嬉しかったのだ。

 

「でも、何故アマネさんが直接・・・今なら丁度忙しい時間帯では・・・。」

 

「ああ、今は病院閉めちゃってるの。」

 

「本当ですか!?」

 

 あの人でごった返していた病院が閉鎖!

 

 あり得ない!そんなトラブル・・・トラブ・・・

 

「理由は・・・ひょっとして私ですか?」

 

「まあ、半分はねえ。もう半分は・・・私達の意思、だけど。」

 

「すみません!」

 

 先輩達も生活が掛かっている。その仕事場を閉鎖させるなんて、何と言うことを!

 

 エヴァは基本恩義には報いる人間なのだ。

 

「あの・・・一体何が問題に?」

 

「まあ、クレームがね・・・。」

 

「クレーム?」

 

「私がクレームを入れました。」

 

「クロ!?」

 

 突然の乱入。

 

「当たり前です。エヴァは真剣に患者を救いました。その結果が解雇なんてうちが舐められたも同然です。正式にギルドを通じてクレームを入れておきました。」

 

「い、いつの間に・・・。」

 

 エヴァ自身自分達に影響力があることぐらい分かっている。だからこそ変装もしたし穏便にクビになったのだ。だが、クロにとっては自分の家族が不当に解雇されたのが勘に障ったらしい。エヴァのクビにされたことを聞いた後、事態の情報をかき集めギルドを通してクレーム(脅迫付き)をいれたのだ。

 

「すぐに取り消しを。」

 

「良いのよ。エヴァさん。クレームは正当なものだったし、ガネーシャファミリアの方々も困り果てていたから。」

 

「当たり前ですよ。ここはオラリオ、弱肉強食。現最強の私達を怒らせる何て憲兵ごときにどうこう出来るわけありませんよ。」

 

 自信たっぷりなクロを見て頭を抱えるのはエヴァだった。

 

 いやまあ、嬉しいと言えば嬉しいがやり方が・・・やり方が・・・。

 

「とまあ、そんな感じで誰かが謝罪に行くってことで私に白羽の矢が立ったて訳!どう?笑えるでしょう!」

 

 全員職を失ったんじゃあ笑えないんじゃ。

 

「・・・そうは言っても、看護師長は都市外に居たんですよね?なら私達のことを知らない可能性も・・・。」

 

「ええ、知らなかったわ。」

 

 衝撃の事実。

 

「ですが、知りませんでした。では済まないのが世の中です。」

 

「クロ・・・。」

 

「エヴァが甘いのは知っています。ですが、私達の主はアンリマユ様です。あの方が今舐められるのは不味いことです。分かりますね?」

 

「・・・・・・。」

 

 ・・・成る程。それは正論。

 

 クロは正しいし、きっと私より未来が見えている。私は陰謀とか謀略が苦手だからそう言うモノををクロにいつも押しつけてしまっていたのだ。その弊害が今回、アマネさん達の失業と言う結果を生んでしまったのだ。

 

(いや、それは言い訳ですね。)

 

 そもそも通常のエヴァは誰かを貶めることが出来ない人間だ。聖人とかなのではなく、ただただ出来ない。主の命令、容認できない事態があればエヴァ・リンクスは容赦をしない。だが、それが無ければエヴァは基本誰も傷つけることを良しとしない極めて善良であり、無害な人種なのである。

 

 だから、アンリマユファミリアの陰謀策謀はクロとアンリマユがやっている。

 

(私を、ファミリアを守るために、願いを遂げるために、誰よりもクロは辛いモノを背負っているのに・・・私が団長だっていうのに。)

 

 また・・・押しつけてしまっている。

 

「分かっているわ。クロさん。」

 

 アマネさんはそれでも話を続けた。

 

「でも一応、謝罪に来た身だからね。何で看護師長がああ言う態度をとったかだけ話を聞いてくれる?」

 

「・・・エヴァ。」

 

「聞きましょう、クロ。」

 

「・・・・・」

 

 そしてアマネさんは語り出した。

 

「看護師長はね。昔からオラリオに居た訳じゃ無いわ。当然冒険者を目指していた訳じゃ無いのよ。でもね、当時の看護師長の恋人、まあ、後の旦那さんがね自分も人類の役に立ちたいって言ってオラリオに一緒に来たのよ。」

 

「・・・と言うともしかして、その旦那さんは冒険者?」

 

「いいえ。お医者さんだったのよ。それも腕のいい人だったらしいわ。」

 

「成る程、だから看護師に・・・。」

 

「ええ。まあ、そこからはトントン拍子に結婚して、子供が出来てってまあ、普通の家庭を築いたらしいわ。まあ、当時のオラリオも中々にヤバかったらしいけど。フフ。」

 

「ロキファミリアも言ってましたね。ゼウスとヘラはヤバかったて。」

 

「・・・でね。その旦那さんも精一杯医者としての役割を全うしていたらしいわ。でもねその日はある患者が運ばれたの。」

 

「ある患者?」

 

「どうせそれが闇派閥だったていう感じでしょう?」

 

「クロ。」

 

「ええ、その通りよ。」

 

 驚く様子を見せることなくアマネは結末を話始めた。

 

「となると、後はお察しですね。暴れて・・・いや自爆ですか?」

 

「もちろん、護衛はいたんだけどね。その、間に合わなかったのよ。それにその時ちょうど子供が産まれたばかりの娘さんも一緒だった。」

 

(・・・なら、どうして私をこの人達は雇ったのでしょうか?)

 

「なら、恨んで当然ですね。って言うかそれ聞いてて何故エヴァを雇っていたのやら。」

 

 クロも同じ結論に至った。だが、クロにとっては予想道理だったらしい。闇派閥に家族を殺された者なんてここには腐るほどいる。まあ、だからこうなって当然言えば当然だ。誰が、悪党と働こうなんて思うのだろうか。

 

「まあ、それに関しては成り行きね!」

 

「「はい?」」

 

「エヴァ何したんです?」

 

「手当てを手伝っただけ・・・だったのですが?」

 

 エヴァにとって自分のできることをしただけだったのだ。

 

「あの時のエヴァさんは凄かったわ。あの冒険者達を居るだけで黙らせちゃうんだから!本当に有り難かった。それにフレイヤファミリア達が入院しに来た時もね!」

 

「フレイヤファミリアは私が原因だったんですけど・・・。」

 

「良いのよ、そらはそれで。それにあなたは人の命を救うことに懸命で誰よりも手際が良かったもの。」

 

 だから、

 

「そう言う経験をしてきたんだなって私達全員分かっちゃったもの。」

 

 それが彼女達がエヴァを受け入れた最大の理由。

 

 人の実力を見るにはその人の実際の動きをみればすぐに分かる。

 

 オラリオの治療現場とはいつも探索で怪我を負った冒険者でごったがえすことが多い。

回復魔法を使える者、回復薬、と言った治癒の薬は多く存在するため普通の致命傷で死ぬことはそれで回避できるが、それ以上の怪我を負うものが多く存在するからだ。

 

 例えば骨折、コレを適当に治せば後々骨が曲がるなどの後遺症が残る。四肢の損失に至ってはその腕があれば繋げられる可能性もあるが無ければ義手ということになる。ちなみにこの義手はものすごく高く一瞬でファミリアが借金まみれになる程だ。

 

 でも、だから彼女達は気付いた。彼女の技術が小手先だけの技術じゃ無いと。

 

 本当に地獄のような所で何度も何度も同じことをやり続けた結果なのだと、もしかすると自分達より多くの人達に・・・。

 

「だから、一緒に働こうって思ったの。だってあなたはきっとたくさん失ってきた人だから。救いたかったのに救えなかった経験をしてきた人だなって分かっちゃったから。」

 

「「・・・・・・・・」」

 

 その技術を習熟させるには実践しかないのだ。だから、その熟練度は「見送ってきた人」に比例する。なにせ、回復薬や魔法でどうにもならない事態か、それらが既に尽きている状況を何度も経験しなければこの技術はここまで磨かれない。そして、応急手当は応急手当でしかないのだから。

 

「だから、私達はエヴァさんを信じたの。」

 

 ただただあっけカランと彼女は告げた。

 

「それに、目の前の患者を救えないより嫌なことなんて私は無いわ。」

 

 黙らされた。エヴァもクロもこの一人の何の力も持たない看護師に黙らされたのだ。

 

 その彼女のある種狂気的とでも言える在り方に。

 

「・・・そうですか。なら、撤回します。そのあなたの覚悟に免じて。」

 

「別に構わないわ。だってここはオラリオ、英雄の都だもの。その英雄を貶すのはさすがに私から見てもアウトだと思うの。だからまあ、他の皆もあそこを辞めちゃった訳だし。」

 

「「!」」

 

「辞めたんですか!?」

 

「ええ!みんなで一緒にね!」

 

(思い切りが良すぎる!確かに暗黒期であっても看護師の需要が無くなるようなことは無いとはいえ、今はどこも余裕なんて・・・。)

 

「と言う訳で、代わりになんだけど、私達をここで雇ってくれない?アンリマユファミリア。」

 

「「・・・はい?」」

 

 

 この日、アストレア孤児院(仮の名称)は遂に人手不足の問題から開放された。

 

 正義の使徒達も寝る時間を確保できるようになったらしい。

 

 よって問題は万事解決したのだった。

 

 

 

 追記

 

 エヴァ・リンクス 29歳 無職 就職活動継続中

 

 

◆◆◆

 

 おまけ

 

 

 とある酒場に二柱の神が出会っていた。

 

 酒場は閑散としており他の客は誰一人いなかった。

 

「で、今回の顛末はどう言うことなのアンリマユ?」

 

「まあ、簡単に言うと有能で信頼できる職員が大量に入った、でいいんじゃねえか?」

 

「そんな適当が通ると思う?」

 

「そんなカッカすんなよアストレア。てめえの所のための金策もちゃんとやったし、孤児院の人材も集めた、上々だろ?」

 

「一体どこからがあなたの策略?あなたが他の闇派閥と繋がっていることは分かっているわ。何をする気?」

 

 事実アストレアファミリアの眷族達が戦争遊戯の時その存在を確認した。だが、不思議なことにその本拠地、そして生産工場を突き止めることが出来なかったのだ。

 

 そのためアリーゼ達はアンリマユファミリアに協力するだけとなった。もし、他の闇派閥の拠点を突き止めれば即座にそこを落としていただろう。

 

「ただでっかい花火が打ち上がるだけだよ。安心しろ、戦争遊戯でてめえの眷族が味方したのもその後起こった事柄も全部オレは関係してねえ。全部クロとエヴァそしてあのティンゼルの成果だ、分かってるだろ?」

 

「・・・そうね。でもあなたはきっと何かを準備している。そうでしょ?」

 

「キヒヒヒ、してるなあ!だが、テメエは止めねえ。いや、止められねえ。何せ薄々気付いてるだろ?俺が何をやろうとしてるのか!」

 

「・・・・・・・」

 

 アンリマユが行おうとしていること、それは本当に突飛でもないことが多い。だが・・・まさか!

 

「ほら見やがれ。てめえが全ての正義を肯定する以上てめえもオレもこれから始まることを止める資格はねえ。何せこれは正義でもあり悪でもあるからな。キヒヒヒ。」

 

「これが目的だったって言うの?それを私に気付かせることが・・・。」

 

「ああ。正義の神であり、オレを知り尽くすからこそてめえは気付く。」

 

「・・・アンリマユ、あなた!」

 

(やられた!私はこれでアンリマユから目を離せなくなった。)

 

 そして、これは私を盤面から除外するための罠!

 

「気付くのが遅えぞ。アストレア~。」

 

 悪の神は正義の女神が狼狽する様を嘲笑っていた。

 

「・・・良いわ。乗ってあげる。」

 

「へえ。」

 

「その代わり私はあなたと一緒に住むことにするわ。」

 

「はあ!?」

 

 これがギリギリの1手。

 

「当然でしょう。あなたが盤面から私を除外するなら私はあなたを盤面から除外しなきゃバランスがとれないわ。」

 

「マジ?」

 

「大マジね。手始めに私もあなたのホームに今日中に引っ越すわ。」

 

「させる分けねーだろ!」

 

「あ、そこ私がオーナーだったわね。」

 

「く!急いで引っ越してやるよ!」

 

「私が逃がすとでも?」

 

 吹き荒れる神威。この女神本気で悪神を一日中監視するつもりのようだ。

 

 そしてアンリマユにはこの女神ここまで強硬手段にでると思っていなかったのだ。

 

「・・・・・降参です。」

 

「今日からお世話になるわね♪アンリマユ。」

 

「くっ!」

 

 床に崩れ落ちるアンリマユ。

 

「そんな顔しなくても良いんじゃないかしら。」

 

「お前は平気なのかよオレといっしょで。」

 

「ええ、うっかり剣を喚びそうになるくらいよ。」

 

「・・・しゃれにならねえじゃねえかよ、それ。」

 

「そうね。」

 

「・・・てめえの眷族騒ぐぞ。」

 

「ちゃんと説明はすれば分かってくれるわ、アリーゼ達だもの。それに家事全般は私はできるからきっちり手伝うわ。」

 

「これだから正義の神は嫌いなんだ。なりふり構わず助けようとしやがる。」

 

「私も悪の神は大嫌いよ。子ども達を泣かせるんだもの。」

 

 交わる事なき二柱の神。

 

 されど、二柱の関係はまるで腐れ縁のようで、どこか親しみがあるようなモノに他人からは写るのだ。

 

 彼らは今日も談笑を続ける。

 

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