神々の会議が踊りに踊っている頃、悪の神の眷族は子供達に翻弄されていた。
「クロねえ、おままごとしよう!」
「だめえ!クロねえは私と花冠作るの!」
「はいはい。私は一人しかいませんから慌てちゃだめですよ。」
クロは慣れた手つきで子供達の相手をしていた。が・・・。
「エヴァねえこっち、こっち」
「待て!そっちは危な・・・。ああ、ミキちゃん今行くから、泣かな・・・」
「・・・う、うわあああん!!うわああん!!」
だが、そんな願いは空しく少女達の泣き声が響いてしまった。
「エヴァ・・・。あなた下手すぎませんか・・・。」
「・・・すみません。」
本当に申し訳なさそうにしゅんとするエヴァ。
「・・・でも、確かに人手が足りないですね。」
「と、言うわけで手伝ってもらっても?自称正義の味方さん?」
そう言うと物陰が一斉に動き出し少女達が現れる。
「やっぱりばれてたかあーーー。」
そこには、申し訳なさそうに燃えるような赤い髪をした少女がいた。
◆◆◆
(side アストレアファミリア)
その日もアストレアの眷族達は街の巡回をしていた。いつ通りの殺伐としながらも僅かな均衡で保たれている平穏を守るため彼女達はオラリオを守っていた。
「リオン!こっちこっち良いアクセサリーあるよー。」
そこにガネーシャファミリア団長の妹アーディも加わって愉快な日々を送っていた。
「行ってきなさいよ。リオン。」
「で、ですがアリーゼ。」
「はよ行け、青二才。禄に化粧もできないお前には良い機会だ。」
「リオンが化粧かー。エルフに化粧って反則じゃない?」
「い、良いのではないでしょうか?」
「うん。決まり。リオン可愛くしよう計画開始ね!」
「そんな計画・・・。」
「止めとけ、リオン。うちらにはあの団長を止められない。」
「・・・ック!」
「はーやーくー。リオン!」
「・・・行ってきます。」
ああ、なんて愉快な日々。多くの血が流れる毎日だが、こういう瞬間は永遠にあってほしいと心から思う。そんな瞬間のためにリオンは、アストレアファミリア戦うのだ。
その瞬間、
ドッゴーーン!!
オラリオの城壁が粉砕された。それも恐らく一瞬で・・・。
「リュー!アーディ!カグヤ!すぐにみんなを避難させて!」
すぐさま、アリーゼの指示が飛ぶ。
「マリュー達は治療班へ。急いで!!」
「敵さんは本当に場所と時間を選んでくんねーな。」
ライラは文句を言いながらアリーゼと共に走った。
「逃げろーー!」
「早く!こっちだ!」
あちこちで人々の逃げる声が響いた。アストレアファミリアは全力でその避難を助けるために行動した。
「早く!こっち・・・。」
「!何か来るわ!!気をつけて!」
アリーゼが何かに気付き警戒を発した。その瞬間、一人の少女が広場に降り立った。
見た目は黒い喪服のようなドレスを身に纏い長い美しい白髪をたなびかせその美しい顔と姿に何よりその少女が纏う不気味さに民衆は足を止めた。
「役に立ちますね。一度きりの安全飛行着地セット。」
「あなた、何者?」
アリーゼは剣を構えて彼女に問いただした。
「あら、聞く必要あります?」
ー私は「悪」ですよ?ー
その瞬間少女達は彼女に向けて剣を振るった。だが、一歩遅かった。
何故なら、彼女の詠唱はもう、終わっているのだから。
「絶望の歌、聞いてくださる?」
その声と共にアストレアファミリアは正気を失った・・・。
◆◆◆
「なんてことあったじゃない?」
「ありましたね~。」
「そうなのですか?」
「ああ、エヴァは別な人達とやってましたから、知りませんよね。実はあの後アンリマユ様とアストレア様の喧嘩を止めたりとかで意外と関係あるんですよ。私と彼女達。」
「アストレア様?」
「そう、正義の女神様です。」
「・・・成る程。では主様とは・・・」
「そう!犬猿の仲ね!」
「何故そんなあなた達が?」
「今、そっちの神様も会議出てるだろ?それもあってうちらがあんたの所を監視することになったんだよ。少なくとも他人じゃあないからな。」
「まあ、一緒に神様の喧嘩止めた仲ですからね。」
「安心して!今、私達はあなた達と争わないわ!」
「少なくとも子供達が居ますからねー。」
「あんたへの恨みは忘れてやれねーがな。」
淡々としながらも彼女達は優しげな眼差しをしていた。
「仕方ないでしょう。そうでもしなきゃ、あなた達がエヴァの方に行って死んでたかもしれないのよ。」
「そうね。フィン達から聞いたわ。あんたの強さ。」
「けど、家を壊すのはダメでしょ。」
「その件は、ギルドが何とかするそうですよ。」
そう言って情報交換をするアストレアの眷族とクロ。
「それで、手伝ってもらっても?」
「もちろんよ!」
「だが条件がある。」
「いいじゃない。カグヤ。」
「ダメだ。団長。彼女達は間違いなく敵になる。」
「まあ、アンリマユ様はアストレア様のこと嫌いですからね。」
「けど。この子達を任せたのもアストレア様よ?」
「そうなのだが、私にも何故こんなことをしたのか腑に落ちん。」
「カグヤ。アストレア様を信じましょう?アストレア様にも考えがあるはずよ。それに子供達の顔を見て?あの子達は笑顔よ。この暗黒期のオラリオでこれがどれだけ大事か分っているでしょう?」
そうして輝夜が見渡せば子供達の笑顔が確かにそこに溢れていた。
「・・・そうだな。本当に私は団長に勝てないらしい。」
「話は終わったかしら。ちょっと・・・そろそろやってくれないと私の身が持たな・・・」
いつの間にかクロの体には多くの子供達が乗って重りになっていた。
「ん?意外だな?それぐらいレベル2もあれば十分・・・。」
「・・・もしかして。」
「そんなことが・・・。」
「ん?言ってなかったのですか?クロはレベル1です。」
「嘘!」
「エ~ヴァ~!何で人の情報もらしているの?」
「手伝ってもらうんです。それぐらいの情報が無ければいざと言うとき子供達の安全に関わります。」
「はあ~。さすが騎士様・・・。」
「ね。良いでしょ。カグヤ。」
予想外にも情報がもたらされこれが嘘か本当か分らないが、なんというかこのエヴァと名乗る女性がただの天然のような気がする輝夜。
「はあ~。あなたも大変だなクロとやら。」
うんうんとするライラ。
「あ、そういえば名前聞いていなかったわ。私はアリーゼ!アリーゼ・ローヴェル!よろしく!悪のファミリアさん!」
「私はエヴァ・リンクスこのファミリアの団長です。」
即応する互いの団長を見て、彼女達はここに「自分達は振り回される側同士」であるという認識を強めるのだった。
「はあ~。本当に生真面目。私はクロ。姓はないわ。」
「まあ、名はどこでも知られるだろうからな。ゴジョウノ・輝夜だ」
「ライラだ。姓とか気にすんな!」
その後順々に彼女達は名乗っていった。そして最後に・・・
「リュー・リオンです。」
正義のファミリアと悪のファミリアがここに邂逅した。
「じゃあ、取りあえずは子供達と遊びましょう!」
その瞬間待っていましたと言わんばかりに子供達は少女達に飛びついた。なにせアスレアファミリアはオラリオの少年少女のヒーローなのだから。
「闇派閥と私達が一緒に仕事かあ。人生何があるか分らないもんだなあ。」
ライラは楽しげにつぶやいた。
「本当にね!それにあの二人本当に子供達を守っていたわ!」
「そうですが。アリーゼ、彼女達は・・・。」
「リオン。聞いていたでしょ。あの二人このオラリオに住む人達誰も犠牲にしなかったのよ。」
そう、彼女達はこのオラリオに大きな傷を残したかのように思えたが、犠牲者は出ていなかった。自分達も魔法にかかり一時倒れていたがそれだけだ。
「つまり、あの人達は悪い人かも知れない。けど私達の知る闇派閥じゃないかもしれないわ!」
「本当に。不思議な話。」
アストレアファミリアは全員、今回疑問をもった。彼女達は自らを悪であると自負している。
「だが、彼女達は悪と・・・。分らない。どうして彼女達は誰も犠牲にしなかった?それに・・・」
加えて、オラリオに変化があった。彼女達により壊滅状態にあった秩序側のファミリアの代わりにあの二人はオラリオを守っていたという報告があったのだ。第一級がのきなみダウンしている中、闇派閥の台頭が全員の不安を煽っていたが、彼女達は率先してその闇派閥からの攻撃を守っていたというのだ。
だからこそ彼女達は確かめなくてはならなかった。彼女達を・・・。このオラリオを混沌にする敵となりえるかいなか。だが、謎は深まるばかりだ。彼女達は悪だと言うが、行動は善行そのものだ。・・・分らない。
「まあ、ひとまずは会議の結果を待ちましょう。」
その日、彼女達はいつも通りの見回りに戻ったが闇派閥の活動が非活性化しているらしいという新しい情報を受けてさらなる疑問を持つのだった。