悪の化身の英雄賛歌   作:wakawaka

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時間軸補足です。
             一日目
        アンリマユファミリア襲撃
              ↓
      ゼウスとヘラがいないこと発覚
              ↓
     アンリマユファミリアの勝利で抗争終了
              ↓
             二日目
              ↓
           孤児院バイト開始
              ↓
         アンリマユ、ウラノスに呼び出し
              ↓
         アストレアに捕縛される(神会開始)
              ↓
       アストレアファミリア、バイト参戦
              ↓
          エヴァ、クビにされる
              


悪神とフレイヤファミリア

<side フレイヤファミリア>

 

 フレイヤファミリアは女神フレイヤを異常なまでに崇拝する集団だ。誰もがその女神の一番になるべく血で血を洗う闘争を日々行っている。

 

 だが、彼らも負けた。アンリマユファミリアという実力だけならゼウスとヘラにも劣らない者達によって。その後の彼らの行動は迅速だった。目が覚め次第即座に報復へと彼らは動いた。彼らは一度の敗北で心を折られる事は無い。女神の庭が犯されたとあれば彼らは自分の命をかけてでもその侵入者をかみ殺す狂犬となる。それも誰の指示も聞かない質の悪い狂犬である。

 

 そして、また負けた。それも一瞬で。その騎士は彼らの存在を知りながら子供達と遊び続け自ら一人になると彼らを一蹴した。余りの実力の差により彼らの誰一人も戦闘すらさせてもらえなかった。

 

 それが神会が終わるまでの彼らの行いである。なお、第一級の幹部は揃って治療系ファミリアによって固く固く拘束され加えて女神から直接絶対安静の命令を受けており全員病床である。

 

 その報告を聞いた主神は答えた。

 

「凄いわね。あの子の眷族。」

 

 美の神は讃えた。

 自らの眷族を誰一人殺さず無力化しそしてそれを何とも思っていない。ゼウスやヘラの眷族達に届き得るその力を持ちながらその在り方はあまりにも超然としている。

 

「あの神の入れ知恵?違うわね。恐らくあの魔女の方。何かを仕込んでいることは分るだけど何が仕込まれているかをまるで悟らせていない。厄介な子達。」

 

 悪の眷族を名乗りながら、普通に暮らすという異常をその実力をもって押し通す者達。それも子供の面倒を見るというバイトまで始める異常。アストレアの眷族もガネーシャの眷族も迷い始めている。

 

「監視を付けなさい。ただし、決して敵意を向けたり何かを仕掛けたりしてはダメ。」

 

「あの子達は本当に底知れないわ。それにあの魂・・・。」

 

 美神は微笑む。この暗黒期という中にありながら笑ってこのオラリオを傲慢に歩く者達。そして間違い無くこのオラリオに特大の火種を落とす者達。

 

「楽しみね。」

 

 彼らは本当に黒竜を倒すのか、それともオラリオを滅ぼして地獄の蓋をこじ開けるのか。悪の名を冠するファミリアは何をするのか美神は未知を楽しんでいた。

 

「でも、負けっぱなしはいやね。それに他の闇派閥もしばらくは動けないでしょう。オッタル達が回復し次第仕掛けるわ。」

 

 そうして、彼らの意思は決定した。彼ら彼女らにとって女神の神意こそが絶対なのだから。

 

 

◆◆◆

 

「以上がフレイヤ様からの指示です。」

 

「そうか。」

 

 そこには医療系ファミリアによって厳重に拘束された猛者とフレイヤファミリアの幹部達がいた。

 

「あの騎士は俺が相手をする。魔女の方は好きにしろ。」

 

「黙れ、脳筋」

 

「そうだぞ脳筋」

「力負けした脳筋」

「唯一の取り柄で負けた脳筋」

「そもそも情報もなく戦えるか脳筋」

 

「ふ、力に溺れる愚者よ。知恵の実を食して来るが良い。」

 

「そもそも、いきなり現れたあの者達の謎も解けず1対1も出来るわけも無いだろう脳筋。」

 

「負けたてめえにもう一回なんかあるわけねえだろ。脳筋が!」

 

「貴様ら!!」

 

 拘束していたベルトが悲鳴を上げる。レベル6に至った猛者を抑えるために用意されたダンジョン産の拘束ベルトは破裂寸前だった。

 

「女神の神意は下った。我々に二度の敗北は許されない。全員、絶対安静を我らが女神が命じたのだ、作戦でも練るしかあるまい。」

 

「「「「「「っチ!」」」」」」

 

「どうするつもりだ我が宿敵よ」

 

「そのしゃべり方を止めろ愚図が。」

 

「我々には連携などとれん。ならやることは単純だ。分断して叩く。」

 

「ああん?」

 

「そもそも、俺達の敗因は情報不足だ。オッタルとの戦いで分かったことは相手がレベル8相当で絶対の盾と大砲持ち。加えてどこからか仲間を召喚することが可能ということだ。これでは負けて当然だ。」

 

「ああ!何弱腰になってんだてめえ!」

 

「ほざくな愚猫。波状攻撃による制圧も考えたが恐らくあの盾を突破できん。そしてそこの脳筋でも突破できない盾を貴様が突破できるとでも言うつもりか愚猫、言っておくが貴様の敏捷値よりも3つはレベルが違うであろう敵の方が速い。よって貴様は魔女の方を担当しろ。」

 

「な!」

 

「騎士の方はそもそも実力がおかしい上に大砲と壊れない盾をもっている。光の盾は恐らくスキルかそれに類するものだろう。分裂し他の者にも付与可能と思われる。あの盾を攻略することがこの戦いの絶対条件だ。」

 

 フレイヤファミリアの頭脳であり司令塔は冷静に判断を下す。普通に戦えばフレイヤファミリアは全滅すると。

 

「だが、現在の情報量では不可能、よって戦いながらの情報取得が必須だ。つまりこっちにオッタルと他の精鋭ををぶつけ長期戦を狙う。他の奴は邪魔だ。」

 

「ヘディン、そもそも全員で一斉に奇襲をかけるべきなんじゃないか?」

「あの女達を呼んだ仕組みは分かっていないが恐らく魔法だろう。」

「それを維持する魔力も有限だ。」

「最初に切り札を出させた方が良さそうだと思うのだが?」

 

「・・・まあ、それも考えたが我らには合わないと判断した。第一、俺達は仲良しごっこのあの勇者達とは違う。俺達は全員があの方のために戦うにすぎない。よって連携をとることができない。即席の連携も考えたがあの騎士は恐らくその隙を逃すことは無いだろう。割に合わん。」

 

 推定レベル8の相手というのは本当に難しいものだ。加えて相手は絶対の盾と砲撃を持っている。これらを攻略するには間違い無く情報が足りない。

 

「まずは情報収集だ。ヘルメスファミリアに使いを出せ。」

 

 その時

 

「あの、私この話聞いて良かったのでしょうか?」

 

「「「「「「「「は?」」」」」」」」」

 

 そこには件の標的が看護師姿でバイトをしていた。

 

◆◆◆

 

「フレイヤ様、わざわざこちらに来ずとも我々が伝言を致しますが。」

 

「良いのよ。あの子達をねぎらうのも私の役割よ。」

 

「ですが、未だここの治安は良くありません。もし幹部クラスが襲ってきたら現在の我々では・・・。」

 

「あら、私を誰だと思っているの?」

 

 そう言いながら美神は顔を隠すローブを被った状態でオッタル達が居る病床へとやってきた。

 

「こちらです。皆様、フレイヤ様で・・・は?」

 

「あらあら。」

 

 そこにあったのは破壊された病床とフレイヤファミリアの団長と幹部が壁にめり込む姿と、この光景を作り出したであろう張本人、アンリマユファミリアの眷族が看護師姿で立っていた。

 

「フレイヤ様すぐにお逃げを!!」

 

「申し訳ない。彼らは絶対安静と聞いていたので暴れてきたので力技で沈静化するしか無かった。」

 

「・・・は?」

 

「あら、そうなの?それはこちら側が悪かったわね。ところで、あなたがアンリマユの眷族?」

 

 看護師姿ではあるがそのあまりにも白い魂を女神フレイヤは見間違うことはない。

 

「はい。私がアンリマユファミリアの団長エヴァ・リンクスです。」

 

「私はフレイヤ、この子達の主神なの。それでこれからどうするつもり?」

 

 穴だらけの床と天井。しかし、眷族達はそろって壁にめり込んで意識を失っている。この様子を見るに素手で己の最高戦力を倒してみせた闇派閥の眷族はやはりゼウスとヘラに匹敵するといって間違い無い。

 

「・・・そうですね。ひとまずはこの方達を別の病床に移そうと思うのですが。他の病床に空きがあるかどうか・・・。」

 

 意外と普通の返しが返ってきたことに少し驚いていると、ドタドタと他の看護師達が降りてきた。

 

「大丈夫!新人ちゃん!」

 

「誰!?新人をこの激やば病床に当てた奴!今すぐでてきなさい!」

 

「大丈夫よ!新人ちゃんこんな陰湿な行為する奴は私達が許さないから!」

 

「いえ、私は大丈夫です。ですが、私が原因で・・・病床が。」

 

「大丈夫よ!元々この部屋は吹き飛ぶだろうってことで隔離させておいた所だから。」

 

「なにせフレイヤファミリアはいっつも仲間同士で殺し合ってるような所だものね。」

 

「ですが、私その弁償できるようなお金も・・・。」

 

「大丈夫よ!フレイヤファミリアに請求がいくから。」

 

「・・・(唖然)」

 

 フレイヤはただただ唖然としていた。己の眷族が暴走しそしてこの眷族に鎮圧されたまでは何とか対応できていた。しかし、その後の先輩看護師達からの自分の完璧な無視と眷族への罵倒は女神に少なくないダメージを与えた。

 

「本当になんてイカれたファミリアなのかしら。」

 

 全員気絶しているので言いたい放題である。

 

「大体、女神様第一だからって孤児院にも監視員出してたらしいわよ。」

 

「あそこってアンリマユファミリアがバイトしてるっていうところ?」

 

「そう!そこがねもう子供達の笑顔に溢れててまさにこの世の楽園だったわ。」

 

「え、でもアンリマユファミリアって闇派閥じゃ・・・。」

 

「それがね。なんかいい人達じゃないかって噂になってるのよ。」

 

「え?」

 

「でね。それもあって私、確かめに行ったのよ!」

 

「いつの間に行ったの?」

 

「昼休みにちょっとね。」

 

「そしたら、アストレアファミリアも加わってね!もう子供達大はしゃぎでね!もうもう!私このために頑張ってるって感じたわ!」

 

「良いですよねえ子供!」

 

「ええそうよ!でね、そこでね私見たのよ。怪しい影。」

 

「ええ!?」

 

「それでね。他の人に聞いたらそれフレイヤファミリアって言ってたわ。きっと仕返しよ。あそこ最強から降ろされちゃったから。」

 

「確かに、あそこならやっても可笑しくないですよね。本当に団結しなくちゃいけないのは今なのに。」

 

「本当!こっちの身にもなって欲しいわね!」

 

 そんな会話をしながら彼女達は、その主神の存在に気づかず壊れた病床から荷物を移動させ始めた。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 女神フレイヤは精神にダメージを受けていた。具体的にいうと自分のファミリアが明らかにヤバい奴ら判定をくらっていて自分もヤバい奴判定を食らっているということを正面から言われたことで膝から崩れ落ち、そしてもはやアンリマユファミリアの方がましと闇派閥にさえ負けたという事実を前に女神はノックアウトを喫した。

 

「フレイヤ様!フレイヤ様あああああ!!」

 

 この日以降フレイヤファミリアは少し他の人達に優しくするようになった。

 

 なお、これ以上のイメージダウンを避けるためアンリマユファミリア掃討作戦は保留となった。

 

 

 

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