アンリマユ要素頑張りたいと思います。
時間軸は大抗争の1年前とします。私の読み込みが浅く申し分けございません。
「主様、これからどうするんです?」
アンリマユファミリアがオラリオを襲撃してから一週間が経過した。
「ん?まあ、ひとまず職は得たからなあ。一応商会としての登録も終わったから、そっち系で色々やるかあ。」
「あれ、主様は商人目指していたんですか?てっきりダンジョン攻略に参加することになるかと思っていたんですけど。」
クロは早速、朝食の準備をしながら答えた。
「いや、武力で頂点でも経済力では圧倒的に負けてるからな。そろそろこの一週間で仕込んだ火種の使いどころだ。」
「ああ、あれですか?良いですね!」
「てめえも仕込んでんだろ?本当にてめえは子供には甘いよな。」
「当然ですよ。子供は無垢で無邪気なんですから。」
そう言いながら二人は悪い笑みを浮かべていた。
その時、部屋の扉が開いた。
「おいしそうな匂いですね。クロ。」
外を巡回していたエヴァが戻ってきた。
「また巡回してたんですか?主様の指示とは言え、エヴァは本当に悪のファミリアの団長何ですかね?」
朝はオラリオの巡回、昼は看護師のバイト、夜はまた巡回と彼女は正しく街の守護者になっていた。
「エヴァはエヴァだ。それ以上でもそれ以下でもねえ。」
「つまり?」
「エヴァが自分を悪だというなら悪なんだろ。」
「ええ、私は悪党ですよ。クロ。」
あっけからんとするその騎士は自らを悪と誇らしげにいつも言うのだ。クロにとっては未知の存在である。
「まあ、確かに世界滅亡計画に普通に参加してますけど・・・。本当に私はあなた達のことが分からなくなりますよ。」
この中で一番新米のクロは彼らの過去を知らない。彼女とアンリマユがどのようにして出会いどのようにして今の状態に落ち着いたのか。これはこのファミリアの一番の謎である。
「そういえばエヴァに教えたんですか?これからのこと。」
「いや、何も。」
「良いんですか?」
「エヴァは俺の指示に従うからな。特に何も知らなくても問題ない。」
「はあ、エヴァはそれで良いんですか?」
「ええ、私は主様とクロの笑顔を守るだけです。暴力沙汰は任せてください。」
都市最強となった騎士は明るく自分の役割を明言した。
「殺しは無しだぞ。アストレアと今敵対すると色々とまずい。」
いつも通りの平常運転。普通だったらこんな平穏な生活はオラリオを襲撃した者には与えられないが彼らは例外中の例外である。
「まあ、この宿もアストレア様が後見人だから借りられてますからね。」
「アルバイトもですね。・・・私はクビになりましたが。」
少しシュンとするオラリオ最強。
「私達の事情も考慮すると言ってキッチン付き。今更ながら主様の交渉術に脱帽です!」
クビにした本人は全くもって気にしていないようだ。
「ちげえよ。あいつはそういう神だ。あいつは俺達をオラリオの敵と判断するまで無下には扱わないし差別もしない。手助けだってする。」
「へえ~闇派閥を相手にですか?おめでたい女神様ですね。」
「いや、単にそういう奴なんだよ。目の前で困っている奴がいたなら誰であれ助ける。あいつの眷族までは知らねえがな。」
アストレアという女神の在り方を聞きクロは何とも言えない表情になった。
「・・・そうですか。なら、私達とは相容れませんね。」
「当然だろ。正義と悪だ。相容れたらそれこそどうかしてる。」
そうしてる間に朝食が出来上がり三人での朝食を終えた。
「それじゃ、俺の方はでかい花火の準備だ。まあ、楽しみにしてろ!」
「行ってらっしゃいませ、主様。」
「私の方も色々仕込んでおきますね。お気を付けて。」
そうして悪の神はニヤニヤしながら宿を後にした。
「さてと、仕込みの様子を見て・・・それから・・・。」
「あ!アンリマユ様!昨日はありがとう!」
「お宅の騎士様のおかげで怪我しませんでした。」
「フレイヤファミリアなんてぶっ飛ばしちゃえ!」
何故か賞賛される闇派閥の神。いつもなら機嫌が悪くなることだが今日は気にならない。何故ならついに彼の念願の楽しみな計画が始動するからだ。
彼はいつも通りの道を通って自分の店にたどり着く。それは登録されたばかりでまだ売り物も並んでおらずボロボロの出店だ。だが、これは見せかけなのである。彼の本命は別にある。
「やあ。アンリマユ様」
そこには約束通り一人の人間がやってきた。少し陰があるこの男こそアンリマユが会いたかった人間である。
「ほらよ。約束のブツだ。」
そういってアンリマユは一袋を彼に渡す。
「せいぜい、すぐに渡すことだな。」
「あいよ。」
そういって彼はさっさと去って行く。アンリマユは商会としての登録が済んでいるため商売をすることは何も問題がない。だが、その売り物が何かは彼とその客以外知ることはない。
◆◆◆
<side 一般人>
(どうしてこうなってしまったんだろう?)
彼はこの始まりを振り返った。彼はごく普通の一般人で元々は生肉を扱う商売で生計を立てていた。しかし、この闇派閥との抗争により店は全壊。一緒に住んでいた家族は無事だったがどこも同じような有様でどこも雇ってくれる所はありはしなかった。そのためその日暮らしを繰り返していたが、妻が病気になったことでさらに家計は悪化。もう既に彼には犯罪をしてでもお金を稼ぐ意外に家族を守る方法を知らなかった。
そんなある夜、彼は悪の神に会った。
「お前この袋をあるところに運んでくれないか?」
その神を彼も知っていた。オラリオを半壊させ二大ファミリアを相手に勝利してみせた闇派閥の神。彼はその神から凄まじい寒気を感じた。
「な、何を運べって言うんだ!た、頼むから家族だけは!」
「別に取って食おうって訳じゃねえよ。ちゃんとお金も出す。これぐらいな?」
そういって悪の神は10万ヴァリスを出した。
「な!!」
彼はもうこの時に悟った。これは闇への誘いだと。
だが、どうしてもお金が必要な自分に選択肢はなかった。
「・・・分かった。受けよう。」
「おう!ありがとよ。じゃあ、ここに運んでくれよ兄弟。しっかり届けたらお金を払ってやる。」
そう言って悪の神は自然な動作で肩を組んできた。
「・・・分かった。荷物は?」
「これだ。」
そういって悪の神は懐から巾着のような袋を取り出した。
「中身は見るなよ。それをこの地図の家にいる主人に渡せ。合図はドアを3回、5回、4回のリズムでノックすることだ。あばよ!」
そういって悪の神は去って行った。
彼の体は震えていた。もしこれをガネーシャファミリアに届ければ自分は助かるのだろうか?いや、そんな甘いことはないだろう。大体、彼らにはロキもフレイヤの眷族もかなわなかった。裏切れば自分も家族もどうなるか分からない。ならばやらなければならない。
「・・・俺は、俺は、俺は」
そうつぶやきながらドワーフは音を立てないように街を駆け抜けた。そして目的地に着き教わった通りに合図を送った。そうすると黒いローブを被った者が立っていた。
「・・・ご苦労。」
そういってかその男は袋を預かり、お金をその場で渡してきた。
「次も頼む。」
そういって彼はその家の扉を閉めた。
「はあ、はあ、はあ。」
彼はおびえていた。自分は一体何を渡したのだろう?あれで何が起こされるんだろう?今まで善良に生きてきた男はこの日自分が本当にまずいことに加担したのだと自覚し、体を震わせた。手にあるのは約束の10万ヴァリス。ただの荷物を1つ運ぶだけで10万ヴァリスは破格だ。間違い無く真っ当なものではない。
「俺はこうするしか・・・。」
男はもうどうしようもない自分に対して笑うしかなかった。
その次の日彼はすぐに薬屋に行き妻の治療薬を手に入れる事が出来た。
「あなた、この薬どうしたの?」
家計事情を知る妻はそう聞いてきた。しかし、彼は
「いやなに、旧友がなあお前の話をしたらお金を立て替えてくれたんだよ!正に持つべきものは真の友だな!」
「そう。それは良かったわ。しっかり返さなくちゃね。」
彼はその日愛する妻に嘘をついた。もう、彼は陽ノ下を歩けない。これから自分が歩くのは薄暗い夜の道であると薄暗い覚悟を決めて。
その日から彼は夜中に活動することが多くなった。数日の内に彼は以前の月の収益の倍以上を稼いでいた。そして彼は今日も稼ぐ。今のオラリオの夜は控えめに言って最悪だ。アンリマユファミリアが来てから落ち着いたと聞いたが、自分のような存在が蠢いていると思うと全くもって楽観的になれない。しかし、もう後戻りは出来ない。
いつか自分が正義に裁かれるその日まで・・・。男はこの道を歩くことを覚悟した。
◆◆◆
「と、思っているだろうが実は全く違うんだなあ。これが。」
悪の神は嗤う。
「大体、俺達にそんなヤバい薬を作る財力なんざねえ。だが、それっぽいことなら可能だ。」
実は悪の神はこの方法で他に何人かに荷物運びをさせていた。そうすることで彼は自分の動かせるコマを増やしていたのである。ちなみに彼の財源はアルバイトで得た金ではなくスリで得た非合法の金である。だが、そんな大金をもっていることがばれればアストレアに問い詰められアパートを追い出されるのが落ちだ。だからこそ・・・
「そもそも中身はただの小麦だ。全くもって合法だ。」
そうして彼はほくそ笑んでいた。
つまりアンリマユの考えはこうだ。スリで得たお金を怪しい運び屋に扮して運ばせる。そうすることで彼はスリで得たお金を失うが彼のコマが出来上がる。それに加えて運ばせている物も中身はただの小麦だ。ばれても何も問題ない。というかむしろ憲兵達が必死になって突き止めそれがただの小麦だったという場面を見たいという密かな企みもある。
「俺は金を失うが最終的にこのコマ達は俺に従うしかなくなる。そして後々あいつらにこの店の商品を高値で買わせればマネーロンダリング完了。あいつらも金を得られて俺も金を得られる。正にWINN、WINNの関係の完成だ。フハハハハハハ!」
それが彼がこの一週間夜中にこそこそしていた理由である。
「しかし、スリの技術は本当に使えるな。習って良かったぜ。」
そういって彼は初めて降り立った下界の国のロクデナシの顔を思い浮かべるのだった。
「・・・さてとそろそろ何だが、取りあえずまくか。」
そうして彼はまた歩き始め後ろをストーキングしていた者達を手早く巻いて次の目的地であり本命にに到着した。
「遅かったじゃねえか王様?」
そこには闇派閥の神々が揃っていた。
「うるせえよ。じゃあ着々と始めるぞ。闇ギルド発足だ。」
彼らは笑っていた。新しいおもちゃ箱を送られた子供のように。そしてこれから出来上がるであろう舞台で踊る眷族達を想像しその凄惨な有様を楽しむのだ。
「いいの?アンリマユ、下手したらアストレアに送還されるよ?」
「ああん?別に問題ねえよ。なにせ合法だからな。ちゃんとお前らのおかげで手に入れた綺麗なお金を使って買ったしなこの地下施設。」
そうして着いたのは街の外れにあるボロボロになった廃屋だ。だが、実はこの地下に施設があることがとある者達によって発見された。
「ここ多分、アパテーあたりの隠れ家だった場所だよね。よく残ってたなあ。」
「そうだな。さて、さくっと改修してデコレーションして作っちゃおうぜ、遊び場!」
「そうね。でも稼働するのは何年後?」
「まあ、ぼちぼち信用できる人手も手に入れなきゃだしなあ、数年はかかるな。」
「本当に便利ね。あなたのギルドに融通の利く、その紙。」
「だろう?」
「だけど僕たちも結構お金使っちゃったからしばらく派手には動けないかな?」
彼らはこの話をアンリマユから聞かされ居ても立っても居られず自分達の貴重な財源に手を付けたのだ。
「良いだろ?俺達にとって数年なんてすぐなんだから。とことん慎重にやろうぜ。いづれはこれがオラリオの首を絞めていくんだからよ。」
「アンリマユ最高うううう!」
「ヒュー♪ヒュー♪」
「よ!悪の王様!」
「楽しもうぜ!お前らああああ!」
「「「「おーーー!」」」
ここに彼らは新たな遊び場の誕生を喜んだ。
ばれれば一巻の終わり、全員まとめて良くてオラリオ追放だ。だがだからこそやる意味がある。眷族達と狂ったような娯楽をそれこそ彼らの暇つぶし。
◆◆◆
「ところでアンリマユ?一つ聞いても言いかい?」
闇派閥の一柱神ルドラは質問してきた。
「なんだ?」
「お宅の騎士様にうちの眷族何人かぶちのめされてるんだけどどういうことだ?」
「はあ?うちの眷族に何か文句でもあるのか?」
「いや、一応俺達オラリオぶっ壊そうとしてんじゃん。そこら辺普通潰し合うのは避けるべきじゃない?」
「なあ、兄弟。一つ考えて見ろよ。目の前に気に食わない奴がいる。お前ならどうする?」
「そりゃあ、ぶちのめすな。」
「そういうことだ。」
「・・・なああるほど!理解出来た!そりゃあそうだ!気に食わないからぶちのめす!正にその通りだ!」
あっさりと理解したルドラ。
「やってることゼウスとヘラじゃん。」
「分別あるだけましだろ。」
「でもさ、都市最強が俺達潰してくるって不味くね?」
「まあ、あれはどこまでいってもやってること善良だからなあ。」
「だよね!?どうしたってあの騎士は悪じゃないよね!?」
「俺が指示を出せば従うから大丈夫だ。」
「信じられるか!?」
「ほい、証拠。」
アンリマユは病院でフレイヤの幹部が壁にめり込んでいる新聞記事を出した。
「これはフレイヤファミリアの乱闘の?」
「あ!よく見たら騎士ちゃん看護師姿でいるじゃん!?」
「え!?これやったの騎士ちゃん!?恐!」
フレイヤファミリアの件をちゃっかり自分の手柄にして悪の神は自分に都合のいい嘘を吐く。そうして半ば強引に盟主扱いされるアンリマユであった。なお盟主の仕事は一切やる気ない模様。