ようこそ騎士王がいる教室へ   作:笹杭L

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ようやくアルトリア以外のZero要素が出てきます。


第3話 契約

 

 

 気がつけば、入学してから2週間が経過していました。

 

 龍園くんはどうやら終わらせたみたいですね、傷が治ってます。つい先日までは傷がある状態で新しい怪我をしていましたからね。

 石崎くんやアルベルトくんの様子も、常に誰かしらの動きを気にしているような素振りが見て取れます。

 

 クラス支配に向けた計画も順調のようです。

 ぜひそのまま頑張ってもらいたいですね。

 

 

 朝は日課になりつつある椎名さんと本の感想会から始まり、その後は伊吹さんを交えての雑談です。

 最近はこの3人で行動することも増えてきました。

 

 

 授業では一応クラスの統制を図るために注意喚起を定期的に行っています。

 この狙いの一つとして、まず純粋に5月以降の取得ポイントの増加ですね。

 皆が意識してくれれば少しは評価値の低下を抑えることが出来ると思います。

 

 もう一つ、これは意図したものではなかったのですが、私の注意喚起に対しては無視または反抗される方々がいたのです。

 おそらく、優等生として認識されている私のことが気に食わなかったのでしょうね。

 授業中の私語や遅刻、など私が注意を行っても頻発していました。

 

 おそらくSシステムの真相が判明する来月以降には彼女たちのクラス内での序列は最下位になってしまわれるでしょう。

 ヘイト管理がしやすくなりますね。分かっていたのならもっと真剣に注意してくれ等の反論が出た際に、彼女たちをスケープゴートにできます。

 

 

 午前の授業が終わり昼休憩、基本的には食堂で済ませています。

 一食当たりの量が私個人的には足りなかったので、2食は同時に食べています。

 

 元々5食ほどを同時に食べていたのですが一緒に食べていた椎名さんたちに、見てるだけで胸焼けしてくると言われ自重しました。

 その代わり放課後と朝の食事の量が多くなりましたが。

 

 午後の授業も基本的には午前中と一緒で、注意喚起をしながらになりますね。

 学力が低いので私自身、自分のことに集中したいのですが、この1カ月はかなり重要になってくるので我慢です。

 

 

 放課後はその日その日で、内容はかわります。

 ここ数日はグルメ巡りで敷地内にある、食事処を片っ端から回っています。これが中々面白くてですね、基本的にはチェーン店ばかり並んでいるのですがいくつか高級志向のお店だったり、裏路地にある隠れた店だったりがあるんです。

 

 気がついたら閉店時間になっていたなんてザラですよ。

 

 そして今日も本来ならここ数日と同様にグルメ巡りに勤しむ予定ではあったのですが、龍園くんからお呼び出しがかかりました。

 

 『今日の放課後、特別棟3階の多目的室に来い。来なかったら石崎やアルベルトを差し向ける』

 

 こんな風に言われたんです。

 身体能力は水泳含めて何回か見られる機会があったので、目を付けられるだろうなとは思っていたので驚きはありません。

 

 まぁ、お呼ばれしたからには行きましょうか。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 さて。放課後です。

 彼に言われたように多目的室に訪れると、そこには龍園くんだけでなく石崎くんとアルベルトくんもいました。

 

 「よく来たな、アルトリア」

 

 「こんな放課後に呼び出してどうされたのですか? 告白するには少し親密度が足りないように感じられるのですが……」

 

 「ハッ、残念ながら違うな」

 

 「おや……では一体?」

 

 ある程度分かってはいますが、念のため聞いておきましょう。

 

 「お前はこの学校の仕組みには気づいたか?」

 

 「仕組み、ですか……それは、来月10万ポイントがもらえないことですか? それともクラス分けの基準とかですか?」

 

 「……っ!」

 

 こちらが出した情報に驚いているようですね、大方運動のできる真面目ちゃんみたいな認識だったのでしょうが、私は意外と出来る子なのですよ。

 

 「……驚いたぜぇ。まさか、そこまで頭が回るとはな。それなら、次に俺がどうするか分かってんだろ?」

 

 「ええ、配下になれとでも言うのでしょう?」

 

 「……いいねぇ、話が早い奴は嫌いじゃない。どうだ、俺の右腕になれ」

 

 まぁ、そうですよね。別に私としては彼の下に着くのは問題ないのですけど、ちょっと吹っ掛けますか。

 最近食費が多くて困っていたんですよね~。

 

 「それは構いませんが、一つ条件を結んでほしいです」

 

 「あん?……なんだ、言ってみろ」

 

 「私の身体、非常に燃費が悪くてですね……毎月の食費を賄ってほしいのです。だいたい8万前後で」

 

 そう! 私はたくさん食べます。

 今月頂いた10万のすでに半分が食費に消えています。

 

 生徒会長より先行投資として幾らか受け取っているので、そこまで困窮というわけではないのですが、抑えられる出費は抑えたいと思いまして。

 

 「……おいおい、食いしん坊かよ」

 

 「それで、どうされますか?」

 

 「……ひとつ、お前にそれを出すだけの価値があることを証明して見せろ。出来たらその条件呑んでやるよ」

 

 「いいでしょう、それで方法は?」

 

 「戦う、それだけだ」

 

 でしょうね、彼の配下に下った人たちの怪我具合から暴力で屈服されたのは見て取れます。

 しかし、勝つまで何回も勝負を仕掛けられるのは少々手間なので、これは伝えておきましょう。

 

 「分かりました。しかし、この勝負で判断してください。何回も戦うのは至極面倒なので」

 

 「……ほう、俺がお前に勝てないって言ってんのか」

 

 「その通りです。彼らの様子を見るに貴方は一度負けようと勝てるまで挑み続ける質のようですから。私としても戦うことは嫌いじゃありませんが、まだ勝負は終わってないという理由で私の食費を反故にはされたくありません」

 

 「ククク、面白れぇ。そっち方面でも期待できそうだな思考回路だな、お前は」

 

 その言葉を最後に、彼は両手をポケットから抜く。

 それと同時に纏う空気が若干重くなる。

 

 構えは無し。無構えではなく、経験から磨かれた喧嘩殺法ですか。

 余計な型に囚われない、武道をゆく人でも刺さる人には刺さる戦法ですね。

 

 こちらも構えますか。

 

 右足を後ろに引き、同時に右腕も引き絞っていく。

 左手は開き、相手に標準を合わせる。

 

 

 殺さないよう手は抜きますので、せいぜい喰らいついてください。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 お互いに気も高まり、後はいつ動き出すかとなったが、ふと開かれた窓から強い風が吹きカーテンを大きく揺らす。

 それが合図となり同時に前へ駆け出す。

 両者距離は離れていないため、コンマ単位で距離がゼロになる。

 

 先に攻撃を仕掛けたのは龍園からだった。

 狙うは顔、握られた拳を容赦なくアルトリアの顔面へと突き出してくる。

 

 アルトリアもそれを予測していたのか、身体ごと横にずらすことで回避をしていた。

 しかも、ただ避けるだけでなく殴るために伸ばされた龍園の腕を掴み無理矢理引き寄せる。

 一瞬とはいえ、体勢が崩れる龍園。もはや達人の域にある彼女がその隙を狙わないはずもなく。

 

 

 ドンッと踏み込み、込められた体重をそのまま彼の腹に掌底として叩き込む。

 

 「……ぐぼっ!!?!」

 

 強烈な一撃を撃ち込まれた龍園は思わず膝から崩れ落ちる。

 

 「……ハァ……うぐっ……ハァ……何だ、この威力……」

 

 「私の流派は八極拳。手数こそ少ないですが、一撃必殺を得意とするスタイルです」

 

 

 八極拳(はっきょくけん)

 彼女が使う格闘技のベースとなっている。

 中国拳法の一つ、極めて近距離で戦うことを旨とした武術流派。

 射程範囲こそ狭いが、近距離であるが故の力技を多く持っている。さながら"相手にゼロ距離で大砲をぶっ放す”というところ。

 

 先程の踏み込みは”震脚(しんきゃく)”と呼ばれる技で、同時に放たれる一撃の威力を高めるために八極拳では多用されている。

 本来なら、そのまま肘撃(ちゅうげき)靠撃(こうげき)に繋がるのだが、多少鍛えているとはいえ素人相手にそのような技を使ってしまえば最悪死んでしまうと考えたアルトリアは自重し、掌底1つで済ませた。

 

 「⋯⋯イギリス人が⋯⋯中国拳法か⋯⋯ファンシーがすぎるぜ」

 

 「世の中グローバルですよ、グローバル」

 

 「……そうかよ……おい石崎! アルベルト! お前らも参加しろ!!」

 

 自身1人では勝てないと悟ったのか、龍園は配下である石崎とアルベルトにこの戦いに介入するよう命じた。

 命じられた石崎とアルベルトは少し困惑しながらも、アルトリアたちへと近づいてくる。

 

 「……別に一対一で戦うなんざ言ってねぇからよ……問題ないだろ?」

 

 「……まぁ、いいでしょう。どのみち私の勝ちは揺らぎそうにないですし」

 

 「ハッ、余裕ぶってられるのも今の内だ。 てめぇらこの女を囲め!」

 

 アルトリアを中心に正面にはアルベルト、斜め後ろにそれぞれ石崎と龍園が彼女を囲うように移動する。

 囲みが完了すると同時にアルベルトは大きな拳をアルトリアに向かって振り下ろした。

 アルトリアは先ほど同様に身体を横にずらし、両腕で抱え込むようにしてアルベルトの腕を抑える。

 

 龍園の時とは違い、即反撃に移らなかったため、一時的に硬直が発生する。

 そこに、龍園と石崎は猛攻する。

 しかし侮ることなかれ、抱え込んだ腕に全体重を乗せることで掴まれていたアルベルトは前に引きずり込まれ、彼女は地面に倒れる。

 元々彼女がいた位置にアルベルトがずれる形となったことで、逆に石崎や龍園は止まってしまった。

 

 倒れこみながらも、常に動けるように体勢を保っていた彼女は硬直が抜けない石崎へ姿勢を低くしたまま接近し、裏拳を掬うように下から上へと打ち上げる。

 初撃で鳩尾から衝撃が彼を貫き、拳を押し付けたまま正中線を上に最後は綺麗に顎を掠め、彼は背中から倒れた。

 

 石崎の隣にいた龍園、すなわち現在アルトリアの隣にいる龍園は一連の流れるような攻撃に、目を瞠り動くことが出来なかった。

 そんな龍園をアルトリアは無視し、外国人とのハーフであるがゆえに図体の大きいアルベルトのほうに向かう。

 

 彼女は攻防する気など一切なく、腕を引き絞りそのままの姿勢で片足を使い前方へと跳躍する。

 箭疾歩(せんしっぽ)と呼ばれる技術であり一息で距離を詰め、さらには歩法として上体のみが接近する特殊な動きであるため、反応するのが難しい技でもある。

 

 懐まで一気に潜り込まれ、手加減された衝捶を叩き込まれたアルベルトは威力のままに後ろへ飛ばされ黒板に背中を強打する。

 

 石崎、アルベルトの両名はわずか数秒で、悲鳴をあげることすら出来ず、沈黙する。

 倒れている二人を尻目にアルトリアは龍園に近づき声を掛ける。

 

 「どうでしょうか、私の有用性は示せたと思うのですが」

 

 「……シッ!!」

 

 圧倒的な状況の中、龍園はまだ諦めていなかった。

 無防備に近づいてきたアルトリアへ渾身のパンチを放つ。

 

 この状況でなお諦めないその動きにアルトリアも多少は驚いてはいたが、当たるはずもなく腕に手を添えられ綺麗に逸らされる。

 勢いのままに突進してくる龍園の腕と首を掴み、足を払い床へと押し倒して再度アルトリアは告げる。

 

 「私の勝ち……ですね?」

 

 「……ちっ、俺の負けだ」

 

 押し倒され一歩も動くことが出来ず、然しもの龍園も敗北を認めるしかなかった。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ……ふぅ。

 

 やっぱり手加減をしながらだと大変ですね、余計な神経を使ってしまいます。

 しかし、中々うまくいきました。

 基本的に内部へ衝撃を与える技を中心に使ったので、皆さんに外傷はありません。

 アルベルトくんも元が頑丈ですので、ある程度の技では打撲にもならないでしょう。

 

 龍園くんから敗北宣言を聞けたので、拘束を解きます。

 そのまま制服の乱れを整えながら、倒れ伏している2人を起こしていきます。

 

 起き上がったのを見て、改めて龍園くんに先の契約について確認します。

 

 「さて、龍園くん。今回の勝負は私が勝ちましたので、貴方の支配下には加わりますが毎月の食費を賄ってもらいます」

 

 「分かっている。毎月8万だったか、融通してやるよ」

 

 「ありがとうございます! これからよろしくお願いしますね、マスター?」

 

 「おいおい、何だ? 厨二拗らせてんじゃねえよ」

 

 「契約ですからね、貴方が上で私が下です」

 

 「はっ、言ってろ」

 

 これで、今月私が熟すべきタスクはあらかた終わりましたかね。

 なんといっても、食費の心配がなくなるのはとても大きいですよ。この契約で一番の収穫ではありませんか。

 

 「まぁいい。アルトリア、これからの計画を話す、場所はケヤキモールのカラオケだ。1時間後に来い。それと……この部屋を片付けておけ」

 

 その言葉を最後に龍園くん一行は、多目的室から出ていきました。

 

 …………えぇぇ。

 

 片づけを押し付けられました。負けた腹いせですか?

 机自体は元から隅に配置されているのでそこまで時間はかからないでしょうけど、面倒がすぎますよ。

 

 後でお仕置きしてあげないとですね。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 龍園がアルトリアに負け、カラオケの個室で計画を話し終えた翌日

 

 

 「麻婆豆腐お待たせアル!」

 

 デェェェェン!!

 そんな効果音の幻聴が聞こえ、俺たちの前に現れたのは……。

 

 赤、ただひたすらに赤い何か。

 もはや、赤を超えて赫。

 

 どう見ても常人が食していいものではない。

 激辛がかわいく見えてくる、至高の一品。

 

 麻婆豆腐。

 店主から告げられた料理名だが、確かによく見れば麻婆豆腐なのだろう。

 しかし、脳がそれを拒絶する。

 

 煮えたぎったマグマ。

 地獄の釜茹で。

 『オレ外道マーボー今後トモヨロシク』

 

 そんな表現がまさしくぴったりな目の前の料理。

 ん? 今なんかいた気が……。

 

 

 「どうされたのですか、龍園くん。食べられないので?」

 

 それを平然と食しているアルトリア。いや、悪魔。

 

 口には笑みが浮かんでいるが、それはおいしいからじゃない。

 こいつは間違いなく嗤っていやがる。俺がこの麻婆豆腐に勝てないと分かっていて。

 だがな、甘いぜアルトリア。

 

 「……抜かせ。食べるに決まってんだろうが、俺は負けねぇ。てめぇらもだぞ、石崎、アルベルト」

 

 レンゲを持ち上げ、マグマを掬う。

 どろりとした赤い物体、浮かぶ豆腐。

 

 「はっ……はっ……はっ」

 

 持ち上げたは良いが、そこから腕が動かず、過呼吸が止まらない。

 本能が、体がこいつを拒絶する。

 いや、止まるな。こいつごときに負けるようじゃ、俺に未来はねぇ。

 

 「やってやるよ、あまり俺を舐めんじゃねぇぞ!」

 

 

 パクリ。

 その一口と共に世界は真っ赤に染まり、俺は意識を失った。

 

 

 「ふんっ、お仕置き完了です」

 

 





《激辛麻婆豆腐》
三ツ星レストラン 紅洲宴歳館・泰山から提供される料理。

提供される料理はどれも非常においしく世界から愛されている中華料理だが、唯一この激辛麻婆豆腐は辛すぎるという理由で人気はあまり高くない。
一部の激辛愛好家は、この辛さを乗り越えた先に見える美味さにやられている。


八極拳
言峰綺礼が修めている中国武術。
アルトリアも戦闘用に調整してはいるが、あくまで大会でのみ使用するため綺礼のような【マジカル☆八極拳】ではない。


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龍園は恐怖なんて感じたことない。
と原作であるので、恐怖というものには鮮度がありますもやりたかったんだけど、彼女のキャラ的に無理そう。悲しい。


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